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生き物の落とし物を食べる海綿に環境DNAを集めてもらう

生き物の落とし物を食べる海綿に環境DNAを集めてもらう
~ 選り好みせず海の動植物DNAを漉し取る海綿 ~

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環境DNAを集める海綿REV
(海面は生き物の落とし物を漉し取り、環境DNAを集めてくれる)
環境中の生き物の目録、環境DNA
生き物、特に動物たちの「落し物」、糞、ウロコ、皮膚、粘液、精子、卵、時に遺骸などに含まれるその生き物のDNA(「環境DNA(eDNA)」と言います)を分析すれば、その環境に「どんな生き物がどのくらい棲んでいるのか?」を調べることが出来ます。これが「環境DNA技術」です。バケツに水を汲むだけでその水系(川、湖など)に棲むすべての生き物の種類と数が分かります。




環境DNAの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
水を汲むだけ環境DNAによるサカナの国勢調査 サンゴ礁の魚たち
河川の場合の環境DNAのイメージ図(過去記事より)
落とし物DNAで鑑識

海の環境DNAを集めるには高価なハイテクが必要
しかし、広大な海洋から環境DNAを集めて分析するには長期自動で稼働する海中ロボットや搭載する自動DNA解析装置などの高価なハイテクが必要です。それでも調べられるDNA=生物種は限られたものになります。

石垣の海の色鮮やかな海綿downsize
(石垣の海の色鮮やかな海綿、フラッシュを焚いて撮りました)
生きた環境DNA収集装置、海綿
そこで出典著者の英国Salford大学のStefano Mariani氏らは大昔からいる海の生物、海綿に環境DNAサンプル採取をお願いすることにしました。海綿を「生きた環境DNA収集装置」として用いる方法で、安くて、簡単で、確実で、いつでも、どこでも環境DNAを収集できます。


海のリサイクル屋さん、海綿
海綿は口から海水を吸い込み微粒子の「生き物の落とし物」(糞、ウロコ、皮膚、粘液など)や微生物を選り好みすることなく濾し取って餌にする濾過食者で、海のリサイクル屋さんです。
海綿のリサイクルの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
ダーウィンの矛盾を解いたサンゴ礁の小っちゃなサカナたち 石垣の海のかわいい魚たち

選り好みせず漉し取りま
海水中に漂う微粒子を漉し取る海綿なら、選り好みせず、頼まれなくても勝手に、もれなく「生き物の落し物」=環境DNAを集めてくれます。研究者は海綿丸ごとDNAを分析すれば、労せずしてそこの環境の生態系にどんな生き物がどのくらい棲んでいるか、網羅的な「国勢調査」が可能です。

アザラシ、ペンギンにサカナ、何でも集めますよ
海水中を漂う「生き物の落し物」をひたすら漉し取る海綿はその海で泳ぐ魚たちだけでなくアザラシやペンギンの環境DNAも集めています。

生きた環境DNA自動収集濃縮装置、海綿
しかも海綿は1日に1万リットルの海水を漉し取り、既存の装置よりも1000倍も強力で効率が良いそうです。さらに海綿は大量の海水から漉し取った大量の「生き物の落し物」、環境DNAを濃縮してくれるんです

海綿が集めたサカナの種類をDNAバーコードで鑑別
出典著者のMariani氏らは地中海4カ所と南極海5カ所の海綿から63サンプルの全DNAを採取し、数万種のサカナのDNAをバーコード化したものと比べました(種に特徴的な12S mt(ミトコンドリア)DNAで種を特定する方法)。

南極の海からはペンギンとアザラシのDNAも
例えば、南極海のある海綿サンプルからは数100のヒゲペンギン(chinstrap penguin、Pygoscelis antarcticus)とウェッデルアザラシ(Weddell seal、Leptonychotes weddellii)のDNAが得られました。
31の生物種のDNAサンプルが得られ、内、22は動物の科、またはそれ以下(属、種)の分類まで特定できたそうです。


海が違えば海綿が漉し取るDNAも違う
南極海の海綿からは、寒冷な海に棲むライギョダマシやblack rockcodなどスズキの仲間(ノトテニア亜目,Notothenioidei)などの、地中海の海綿からは、地中海に特徴的なアジ科、ハタ科、ニシン科、タイ科のサカナのDNAが得られたそうです。この方法で得られた環境DNAはその海の生態系を反映していると出典著者のMariani氏ら述べています。

商品バーコードのように生き物を見分けるDNAバーコード
ここではまた、環境DNAメタバーコーディングと言う研究技術が使われています。DNAバーコード(DNA barcoding)とは、様々な生物種のDNAが混じったサンプルとある生物種に特徴的な短いDNA配列とを照合し特定の生物種(のDNA)を鑑別する方法です。
ザックリ言うと、スーパーのレジで商品バーコードで<野菜><キャベツ><100円>と確認するように、海綿が集めたDNAから<サカナ共通DNA><ライギョダマシ独特のDNA><サカナ共通DNA>と生物種を同定する方法です。


海綿の個体差が課題
出典著者Mariani氏らは海による海綿の種類の違い、海綿の個体差により、例えば海水の吸引量が違うことなどがこの方法における標準化の課題だとしています。

海底でしか集められないじゃないの?
また、カナダGuelph大学のPaul Hebert氏は、この海綿によるDNA収集では海底の生き物のDNAしか集まらないのが難点と指摘しています。でも優れた方法なので、今後、海綿を模倣した装置を開発すれば広く使えるだろうとのことです、バイオミメティクス(Biomimetics)ですね。

安くて簡単、市民も使える生物多様性モニタリング
出典著者Mariani氏らはこの海綿が集めてくれる環境DNAを‘natural sampler DNA’ (nsDNA)(自然採取DNAの意?)と名付け、水系の生物多様性をモニタリングする強力で普遍的で安価で手頃な、例えば、市民も研究に参加できるような、研究手段になるだろうと述べています。

出典:“SPONGES AS NATURAL ENVIRONMENTAL DNA SAMPLERS” STEFANO MARIANI et al. Current Biology VOLUME 29, ISSUE 11, PR401-R402, JUNE 03, 2019
出典:“Networks of sponges could capture DNA to track ocean health” Elizabeth Pennisi
Science 5 July 2019 Vol 365, Issue 6448 doi:10.1126/science.aay2394


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ダーウィンの矛盾を解いたサンゴ礁の小っちゃなサカナたち+石垣の海のかわいい魚たち

ダーウィンの矛盾を解いたサンゴ礁の小っちゃなサカナたち+石垣の海のかわいい魚たち
~ダーウィン先生、「サンゴ礁の矛盾」を解いてみました~

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サンゴ礁から湧いてくるデバスズメダイREVdownsize
(サンゴ礁から湧いてくるデバスズメダイ)
澄んだ海にサカナが群れるって変!なの?
サイパンや石垣のサンゴ礁の海に潜るとたくさんの色鮮やかなサカナたちに出会います。そしてそのサンゴ礁の海は澄んでいて遠くまで見通せます、時に視程が20mを超えるほど。これって、「オカしい」ことなんです。




石垣島サンゴ礁ダイブ
サンゴ礁のお話しにつき、石垣島でのサンゴ礁ダイビングのフォトを添えています。
石垣ダイブの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
珊瑚礁の宝石、色鮮やか魚たち 石垣島ダイビング番外編
6月の海は恋の季節石垣島ダイビング記


魚影ゆたかなサンゴ礁REVdownsize
(魚影ゆたかなサンゴ礁)
「ダーウィンが困った」
これがダーウィン(Charles Darwin)が最初に見出した矛盾(paradox)です。サンゴ礁の海が澄んでいるということは、水の中の浮遊物、つまりはプランクトンが少ないことを意味します。それならサカナなどの動物は少ないはずです。しかし、実際はサンゴ礁には多種多様なサカナや動物がたくさんいます。これは矛盾することであり、いまだに解けていないナゾなのです。

何百年に亘る「ダーウィンの矛盾」を解く
この「ダーウィンの矛盾」の新しい答えとしてサンゴ礁に根付く小さなサカナの役割についての研究があります(出典1)。
サンゴ礁の過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
海洋廃棄プラスティックがサンゴに感染症を蔓延させている+石垣サンゴ礁散歩
暑い潮に鍛えられサンゴは白化に強くなる、ちょっとユルメがミソ+石垣のサンゴ礁
海草がサンゴの海を有毒微生物から守っている+サンゴ礁の魚たち
光ってパートナーを育み護るサンゴ 石垣のサンゴ礁と魚たち


サンゴに群れる稚魚たちREVdownsize
(サンゴに群れる稚魚たち)
サンゴ礁のミリ単位の小っちゃなサカナは3000種
サンゴ礁には3000種以上の多種多様なを体長1cmにも満たない、体重も0.1gくらいの、とっても小さくてカラフルなサカナたちがたくさん棲んでいます。ハゼ、ギンボ、テンジクダイなどの仲間で、海の中の最小の脊椎動物たちです。正式には”cryptobenthic reef fishes”と呼ぶそうです(出典1)、直訳すると「隠れた、底生の、礁のサカナ」って意味?

どんどん殖えてどんどん食べられる
生息数を数えてみると1平方メートルあたり100匹に達するほどです。
幼生期間が長く、どんどん殖えて、どんどん食べられます。常に大量の幼魚がサンゴ礁のより大きなサカナたちのエサとして供給されています。


ボラ系の稚魚かREVdownsize
(ボラ系の稚魚か)
サンゴ礁のファーストフォード?
数は多いけどほとんどがより大きなサカナや他の動物に食べられてしまうので寿命はとても短く、サンゴ礁で捕食されるサカナのバイオマス(生き物の量)の60%を占めます。


寿命は短くともたくましく殖える
その代わり1年間に7世代と短い時間でどんどん繁殖して代を重ねます。この小っちゃなサカナたちは一生外洋に出ることもなくサンゴ礁で暮らします。

小っちゃなサカナたちがサンゴ礁の食物網、生態系を支えます
小さなサカナたちはサンゴ礁の食物網(食べる/食べられるの生き物の繋がり)の底辺を支えています。まるで南氷洋のオキアミのような存在です。この小さなサカナたちのエサは小さな生物遺骸などです。

6月珊瑚礁はベビーがいっぱいREVdownsize
(6月珊瑚礁はベビーがいっぱい)
その3つの答えとは
この研究(出典1、出典5)を紹介している科学記事(出典2)では、併せて他の2つの答えの研究(出典3、出典4)も紹介しています。

ん、まぁ、それぞれに一理ありかな?
そこでこの3つの答えの研究を見てみました。
1) ↑上記の、サンゴ礁の小さなサカナたち”cryptobenthic reef fishes”の働き(出典1)
2) Island Mass Effect(IME):大洋の孤島が海の中でそびえている効果(出典3)
3) 海綿の働き(出典4)
です。


蛍光色の幼魚とサンゴ
(蛍光色の幼魚とサンゴ)
海の巨大火山、海洋島の働き
ところで、海の生態系を支え豊かにしている大元は深海から栄養分を運んでくる湧昇流です。水深が深い大洋の真ん中では通常は湧き上がってこないのですが、大洋の中の孤島、海洋島は海の中にそびえる数千m級の火山(あるいは、元火山)なので、その山腹に沿って深海から栄養分に富んだ湧昇流が海面まで登ってきます。

深海から栄養分を運ぶ湧昇流
その湧昇流がもたらす栄養分とさんさんと降り注ぐ太陽光で植物プランクトンが繁茂します。これが1次生産者となり孤島のサンゴ礁のエネルギー源、栄養源となってサンゴ礁の生態系を支えています。これがIsland Mass Effect(IME)です。

海綿はリサイクル屋さん
もう1つの主役、海綿は濾過食(ひげクジラのように海水を飲み込みエサを濾し取る)の腔腸動物です。サンゴ礁のあらゆる生物遺骸や排泄物漉し取ってサンゴ礁の栄養分のリサイクルに貢献しています。

みんな正解なのかも?
結局、生態系を支えるのは、①サンゴ虫と共生する褐虫藻類や植物プランクトンなどの一次生産者、②これを捕食しより上位の捕食者のエサになることで食物網を支える小さなサカナたち、③これらの生物遺骸や排泄物をリサイクルする海綿、小さなサカナなどのリター食者、などが相まってサンゴ礁の豊かな生態系を作っているのでしょう。

ダーウィン先生、研究は続きます
だから、ここでご紹介した「ダーウィンの矛盾を解き明かす」3つの答えはいずれも正解であり、同時に真の答えの一部だと思います。そして明日の研究でまた新しい答えが見つかるかもしれませんね。やっぱり、サンゴ礁など、自然はまだまだナゾに満ちているってことでしょうか。

出典1:“Demographic dynamics of the smallest marine vertebrates fuel coral-reef ecosystem functioning” Simon J. Brandl et al. Science 23 May 2019:eaav3384 DOI: 10.1126/science.aav3384
出典2:” Coral reefs depend on lots of fish the size of jellybeans; Most fish that populate a reef are tiny snacks smaller than two inches. They live fast and get eaten young—and keep the ecosystem humming” KENNEDY WARNE National Geographic MAY 23, 2019
出典3:“Near-island biological hotspots in barren ocean basins” Jamison M. Gove et al. Nature Communications volume7, Article number: 10581 (2016)
出典4:“Sponges help coral reefs thrive in ocean deserts” James Morgan BBC Science & Environment 7 October 2013
出典5:“These tiny, mysterious fish may be key to solving coral reef ‘paradox” Elizabeth Pennisi Science 24 May 2019 Vol 364, Issue 6442 doi:10.1126/science.aay1453


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美しき究極のレーサーM.C.72; すてきにダンディーなイタリアっ子≪後編≫

美しき究極のレーサーM.C.72
; すてきにダンディーなイタリアっ子≪後編≫

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MC72側面図カラーdownsize
(いまだ記録が破られていない美しき究極のレーサー、マッキM.C.72))
M.C.202フォルゴーレの生みの親カストロディ
マッキM.C.202フォルゴーレの設計者、マリオ・カストロディ(Mario Castoldi)は戦前のイタリアを代表する航空機デザイナーの一人です。
《前編》はこれです↓クリックで飛びます
すてきにダンディーなイタリアっ子M.C.202フォルゴーレ前編DBエンジンで覚醒




「紅の豚」を地で行った名デザイナー、カストロディ
ヒコーキがまだロマンだった「紅の豚」の頃、1920〜1930年代に英国スーパーマリン社の名デザイナー、レジナルド・ミッチェル設計のS5、S6シリーズと航空機レース、シュナイダートロフィー(Schneider Trophy)レースを競ったアエロマッキ社の一連の高速水上機を生み出しました。

S6B側面図カラー
(トロフィーを永久に英国にものにしたS6B)
スピットファイアを産んだシュナイダートロフィー
ちなみに、ミッチェルのS6Bが後のスピットファイアに、また、S5、S6シリーズ搭載のロールスロイス社エンジンが後のマーリン、グリフォンに発展しスピットファイアのみならず、レシプロエンジン最高傑作機、P-51ムスタングを生んだのは皆さまご存知の通りです。

篤志家が興した国際エアレース
シュナイダートロフィーはフランスの大富豪で篤志家のジャック・シュナイダー(Jacques Schneider)が主催するエアレースでしたが、だんだんと国の威信を賭けた国際レースになってゆきました。

「3回連続優勝した国が永久にトロフィーを得る」・・
・・ルールだったシュナイダートロフィーに、第1次大戦後イタリアは3回連続優勝しますが、「他の国がレースを戦う準備がまだ不十分」との理由で永久保持の権利を放棄しました。

R3C2側面図カラーdownsize
(画期的デザインのカーチスR3C-2)
「紅の豚」の頃のフェアプレー精神
1923年米国が参加し革新的デザインのカーチスR3Cがぶっちぎりで優勝しました。ところが翌1924年は英仏伊が「対抗する機体をまだ準備できていない」ため米国はレースを延期します。
「紅の豚」の頃(両大戦間)はまだフェアプレー精神があったんですね。
ちなみにR3Cは「紅の豚」でライバル、カーチス氏が操縦するヒコーキのモデルだそうです。


M39側面図カラーdownsize
(遂にカーチスを破ったマッキM.39)
カーチスに追い付け追い越せ!単葉機M.39の開発
アエロマッキ社とカストロディはカーチスの革新的デザインに触発され(って言うかマネて)、但し、複葉のカーチスR3Cに対して単葉機として開発したのが真っ赤なM.39で性能はカーチスをしのぎました。

ミッチェルとは抜きつ抜かれつ
1926年ひとたびは速度世界記録を出したM.39で優勝したものの、その後、2回続けてミッチェルのS5、S6に苦杯を舐めたカストロディは究極の水上機M.C.72を設計しました。

究極のレーサー、M.C.72
しかしながら、あまりにも先端的なデザインのM.C.72はエンジンの熟成などに手間取り、シュナイダー・レースに間に合いませんでした。1931年のレースはスーパーマリンS6Bの一人勝ち、シュナイダートロフィーは永遠に3連勝した英国のものとなりました(そういうルールでしたから)。

今日まで破られていない速度記録
それでもカストロディとアエロマッキ社はM.C.72の開発を続け、ついに1934年、フランチェスコ・アジェッロ大尉の操縦で最高時速709kmというとんでもない世界記録を打立てました。まだ、零戦どころか、スピットファイアの影もない頃に、しかも下駄ばき(フロート付き)の水上機なのに。この記録は21世紀の現在でも破られていません!!

あまりにも美しく、はかなく
この、まるで「紅の豚」のように、イタリアンカラーの真っ赤な衣装をまとったM.C.72はものすごく美しいヒコーキです。

全身これ高速機、空気抵抗を極小にするには?
M.C.72は単葉水上機で機体全体の表面にラジエーターを埋め込んで空力抵抗を極限まで減らしました。

M.C.72の心臓は3千馬力双子エンジン
2台のフィアットエンジンを縦に接続して3千馬力にまで高めた液冷エンジンFiat AS-6のパワーを2重反転プロペラでブン回してかっ飛ぶと言う、前代未聞、当時最先端技術のカタマリのようなモンスターマシーンでした。

戦後早々引退のカストロディ
マリオ・カストロディは戦後早々と航空機設計から引退しちゃったそうです。敗戦後のイタリアの航空機産業はカストロディが腕をふるえるような状態じゃなかったのか?もういやになったのか?分りませんが、残念ですね。

ひたすら芸術のイタリア機、凡作を使い切る英国
余談ですが、道楽でこういう芸術的なヒコーキを職人芸で生み出すのはいい意味で「ラテンだなぁ」と思います。ハリケーンやウェリントンをしぶとく使い切る英国のしたたかさもいいですけど。

M.C.72の諸元
乗員: 1名、全長: 8.23 m、翼幅: 9.48 m、翼面積: 15 平方m
空虚重量: 2,505 kg、運用時重量: 2,907 kg、最大離陸重量: 3,031 kg
動力: 『Fiat AS-6』 液冷V24気筒レシプロエンジン2,850 馬力× 1基
最大速度: 時速709.209 km


出典:ウィキペディア(和英)「マッキM.C.72」「Mario Castoldi」「シュナイダー・トロフィー・レース」「マッキM.39」「カーチスR3C-2」「スーパーマリン S.5」「Supermarine S.6」「Supermarine S.6B」など

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すてきにダンディーなイタリアっ子Mc202フォルゴーレ≪前編≫DBエンジンで覚醒

すてきにダンディーなイタリアっ子MC202フォルゴーレ≪前編≫DBエンジンで覚醒
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MC202フォルゴーレ三面図REVdownsize
(MC202フォルゴーレ三面図;原図はウェブからお借りしました)
マッキ・レーサーの血筋が騒ぐ、イタリアの雷電
マッキ・レーサーの血筋が、ダイムラーベンツのエンジンを得て、本家Bf109を凌ぐ洗練されたデザインと性能を発揮したマッキMC202フォルゴーレ(稲妻、イタリア版雷電か、ライトニングか?)と言うヒコーキがありました。




第369中隊MC202serieVIIイタリア本土1943年6月downsize
(MC202フォルゴーレ1943年イタリア本土;スピナの赤帯が粋)
さすがはイタリア製、洒落たシルエット
英米独のメジャーなヒコーキに押されて、必ずしも注目を集める訳ではありませんが、MC202フォルゴーレはさすがイタリアのデザイン、ちょっと華奢だけどコンパクトで曲線で構成された洒落たシルエットです。

粋な左右非対称の翼
フォルゴーレの主翼は実は左右非対称で左が20cmほど長いのです。エンジントルクを打ち消すためでコルセアの垂直尾翼のオフセットと同じですね。なかなか粋なやり方です。

空液換装に向く設計MC202P40C
(空液換装に向く設計?MC202とP40C)
当時のイタリア空軍は?
アエロマッキ社のデザイナー、マリオ・カストロディはシュナイダートロフィーレース機をベースにイタリア空軍近代化を担うためM.C.200サエッタをデザインしますが、エンジンは870馬力で非力だは、複葉機時代の古参パイロットは視界の良さを要求するのでデザインは不本意だしスピードは出ないはで、1940年代にはすっかり時代遅れ、北アフリカ戦線ではハリケーンやトマホークにも餌食になるばかり。なんせ、MC202の兄貴MC200は吹きっさらしの操縦席なんだもん。
P-40キティホークの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
凡作だけど地味に頑張ったキティホーク、誰にでも取り柄はあるもの

空液換装の霊験はあらたか
(空液換装の霊験はあらたか)
やっとふさわしい心臓を手に入れた
ところが、事態は一変、ドイツがダイムラーDB601Aエンジン(1,175馬力)を提供し、その後イタリアでフィアット社のライセンス生産も立ち上がり、イタリア戦闘機は一斉に空冷エンジンから液冷DBに換装、カストロディもMC.200 にDBを載せ、胴体を(パイロットの我儘を無視して)本来の美しいレーサー仕様にしたのが、マッキMc202フォルゴーレなのです。

第361中隊MC202serieVIIIロシア戦線1942年秋downsize
(MC202 1942年秋Iロシア戦線;枢軸側機識別の黄色帯が妙に似合う)
ダイムラーエンジンを得て覚醒、Bf109を凌ぐ
マッキの機体はダイムラーDB601エンジンを得て覚醒、ショボいMC.200サエッタは本家Bf109をも凌ぐ性能の駿馬MC.202フォルゴーレに生まれ変わりました。同じエンジンのBf109Eを運動性はもちろん、速度でもしのぎ、パワーアップしたF型にも並ぶ速度を出して、しかも運動性は抜群でした(翼面積を比較すれば分かります)。

主翼面積比較
(主翼面積比較)
地中海を駆け抜けたイナズマMC202
フォルゴーレの配備は1941年イタリア本土ですが、本格的な実戦参加は1941年9月のシチリア島進出です。以後、北アフリカ戦線、マルタ島攻防、シチリアそして本土防衛と地中海を舞台に戦いました。


第80中隊MC202イタリア本土1941年後半downsize
(MC202フォルゴーレ初期型イタリア本土1941年;シンプルなダークグリーンも似合う)
イタリアNo1エースが駆ったフォルゴーレ
第二次大戦のイタリア空軍若きNo1エース、26機撃墜のルッキーニ大尉(Franco Lucchini)は1942年5月MC202に乗り換え、1943年7月に戦死するまでのわずか1年ほどでスピット(Spitfire)多数を含む22機を墜としています。ちなみにルッキーニ大尉はめちゃくちゃイケメンです!

究極のマッキ、MC.205ヴェルトロ
MC202の更なる性能向上を図るにはエンジン強化が必要。でもDB系エンジンをドイツに頼っていたのでは供給不足は眼に見えている。そこでフィアット社はライセンス生産のDB601Aのパワーアップ型、R.A.1050 RC.58「ティフォーネ」を開発。これを装備したMC202の発展型がMC205「ヴェルトロ」です。1200馬力級エンジンで毎時640kmの高速を発揮した究極のマッキ戦闘機でした。

マッキの機体はコンパクト
(コンパクトなマッキのヒコーキ)
あまりにも少なく、あまりにも非力で・・・
いくらフォルゴーレやヴェルトロの血筋やデザインが優れていても。DBエンジンを駆っても、生産数1150機、263機では連合軍に対して「多勢に無勢」(飛燕もそうだけど)。MC202もMC205もシシリー島攻防戦以降は押されっぱなし、ほとんどが地上で爆撃に遭って失われたようです。

イタリア共同交戦空軍第360中隊MC205V1944年夏downsize
(連合軍側のMC205Vヴェルトロ、南イタリア1944年夏;蛇の目の方が似合うなぁ)
2つのイタリア政権の下で戦ったMC205
イタリア降伏後、イタリアはバドリオ政権(連合側)とサロ政権(枢軸側)に分裂。MC205ヴェルトロはバドリオ政権のイタリア共同交戦空軍(Aeronautica Cobelligerante Italiana)とサロ政権のファシスト空軍の両陣営で戦闘機として最後まで戦いました。フランス機もそうですが、数奇な運命ですね。

以下、まったくの余談ですが・・・

エンジンがV型か、逆V=Λ型か、で印象が変わる
ところでMC202フォルゴーレもスピットもともに美しい機体ですが、印象が違いますね。搭載エンジンのデザインの違いかな?と思うのですが・・・どうでしょう?
液冷V型エンジンのマーリン一族:スピット、ハリケーン、ムスタング
液冷倒立V型(Λ型)エンジンのダイムラーベンツ一族:Bf109、飛燕、フォルゴーレ
V型「駆け上がる美しさ」 対 Λ型「舞い降りる美しさ」でしょうか?個人的な印象ですけど。


液冷から空冷へ換装
・・・はいくつか例があります。タイフーン→テンペストII、シーフューリー、三式戦→五式戦、彗星一一型→三三型、マスターMk I→Mk III、ラグ3→ラグ5N

空冷から液冷へも
・・・いくつか例があります。
P36モホーク→P40トマホーク、ウォーホーク、MC.200サエッタ→MC.202フォルゴーレ、FW190A→FW190Dドーラ、ホイットレイMk I→Mk V、Do17→Do217、ハムデン→ヘイフォード
P36とMC.200は当初から液冷向きの設計だったんじゃないの?って思います。


空冷、液冷併用・・・RAF名物
おまけですが、液空併用は・・・、ウェリントン、ハリファックス、ランカスター、ボ-ファイターなどなど、RAF(英国空軍)名物かも?

かわいい1/72プラモ
MC202の1/72のプラキットを掌に乗せるとコンパクトでスマート、やっぱりイタリアの伊達男です。仮り組みで止まってますけど・・

出典①:”AIRCRAFT NO.41 Macci C.202 in action” Roberto Gentilli & Luigi Gorena 著squadron/signal publications 出版
出典②:「第二次大戦 世界の戦闘機隊」秦 郁彦氏(執筆代表者)、1987年、酣燈社
出典③:ウィキペディア(日英)記事「MC.202」、「MC.205」、「MC.200」、「三式戦闘機」、「メッサーシュミット Bf109」、「P-36 Hawk/Hawk 75/ Mohawk」、「P-40 トマホーク/キティホーク/ウォーホーク」


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いまどき道頓堀、たくましい活気と老舗の味

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~ 猥雑さと新しモン好きが人々を惹きつける界隈 ~

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きつねうどんと豆ご飯のセットdownsize
(きつねうどんと豆ご飯のセット)
彦星か!
今はハマっ子の大阪人、Levalloisbeeは毎年5月に研究室の同窓会とお墓参りを兼ねて帰阪します。懐かしい先輩方とご先祖様に会いに行く年1回の、まるで七夕みたいな、恒例行事です。
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なにわのシャンゼリゼ、初夏の御堂筋は緑が深い
巨大水槽の草分けなにわの海遊館立体展示は今も面白い
サングラスの要らないトナカイと猫の甘い生活と秋色御堂筋





この猥雑さと新しモン好きが道頓堀downsize
(この猥雑さと新しモン好きが道頓堀)
様変わりしても賑わいの伝統はそのまま
行くたびに道頓堀に遊びに行きます。その度、ずいぶんと様変わりしましたし、一時少し寂れたのですが、今では「そらもう、えらい人でっせ」(偉人ではありません、たくさんの人)。半分くらいは外国からのお客様です。

きつねうどんと豆ご飯のランチセットdownsize
(きつねうどんと豆ご飯のランチセット;半ラーメンならぬ半うどんです)
孤塁を守る老舗2軒
昔は道頓堀は芝居の中心地でしたが、芝居小屋、その後は寄席小屋だった「中座」も、そして大阪の芸術の中心だった「文楽座」もなくなり、すっかり新興の食べもん屋さんばかりになりました。しかし、そんな中、まるで「孤塁を守る」ように今も元気に繁盛している老舗に「今井」さんと「づぼらや」さんがあります。

新興店に挟まれても風情を守る今井downsize
(新興店に挟まれても風情を守る今井)
絶品の「けつねうろん」、それも「あまき」
・・・て何のこっちゃ?「けつねうろん」=きつねうどん、「あまき」=薄揚げの甘辛く煮たトッピング、です。「今井」さんの「あまき」はそれは絶品。今回は季節のご飯の豆ご飯と煮物を併せたランチメニューでいただきました。やっぱりおいしいです。

道頓堀に老舗今井downsize
(道頓堀に老舗今井;柳はこの右手にあります)
こだわりの柳
「今井」さんと言えば店先の初代中村雁治郎はんを詠んだ句の石碑「頬かむりの中に日本一の顔」とならんで柳の樹があります。古格な店構え、暖簾ともよく合っています、Levallosbeeにはこれこそ老舗のこだわりに思えます。。「今井」さんのお客さんも3割くらいが外国の方でしょうか?


今井からづぼらやに向かいますdownsize
(今井からづぼらやに向かいます)
はす向かいの「づぼらや」ではしご
「今井」さんで腹ごしらえし、次ははす向かい(斜め向かい)の「づぼらや」さんへはしごします。裏手が」道頓堀川の店で、通された席から向こう岸が見えます、ベンチで外国の方休んでいて、室内を振り返ると、やっぱり、外国からの団体さんが入っていました。

てっさで1杯秘伝のタレが絶品downsize
(てっさで1杯秘伝のタレが絶品)
「てっさ」はタレが命、冷酒に合います
「てっちり」(ふぐちり)もおいしいですが、「てっさ」(ふぐさし)は絶品です。食事ではないので「てっさ」に冷酒です。やっぱりおいしい、タレが絶品です。値段も関東では考えられないくらいリーゾナブルで(野口英世+硬貨)です。

東京五輪で創業100年のづぼらやさんdownsize
(東京五輪で創業100年のづぼらやさん)
オリンピック・イヤーに創業100年
「づぼらや」さんを辞するときに大将に伺うと2020年東京オリンピックのときに創業100年を迎えられるそうです。めでたい!ですね。

出典:今回は特にありません。


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山火事にもめげず煙に乗って新天地へ旅する小さな生き物たち+初夏の庭の花

山火事にもめげず煙に乗って新天地へ旅する小さな生き物たち
+初夏の庭の花

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山火事大好き、煙に乗って旅に出る
山火事は悪いことばかりではありません、特に「山火事が大好きで」「煙に乗って新天地へ旅する」土の中の微生物(土壌微生物)にとっては。




しゃくなげdownsize
(しゃくなげ:今年の初夏も拙宅の庭に咲いてくれました)
恵みを受けて咲く庭の花
土壌微生物に恵みを受けている拙宅の庭の花のフォトを添えます(なんせ肥料やってませんからね)。


クレマチスdownsize
(クレマチス)
山火事は自然の遷移のサイクルを回す
山火事は多くの動植物を一掃しますが、その後、パイオニア植物がやってきてやがて森が再生されてゆく、遷移のサイクルを進める自然の営みです。森の若返りでもあります。

しゃくやくdownsize
(しゃくやく)
山火事でも生き残る土の中の微生物
山火事で地上部がすっかり灰になったとき、土の中はどうなっているのでしょう?実は土壌微生物(バクテリアやカビ)は死にません、生き残ります。

山火事で増える生きものとは?
出典著者のThea Whitman氏らがカナダ北方林の山火事後ほぼ1年を経た50地点を含む62 地点の土壌サンプルを採集して土壌微生物を調べたところ、山火事で死ぬどころか、逆に増えているバクテリアやカビが見つかりました。マシリア(Massilia)属とアルスロバクター(Arthrobacter)属の数種の細菌と、ペニシリウム(Penicillium)属とフシクラジウム(Fusicladium)属の数種の真菌です。

カルミアdownsize
(カルミア)
山火事が大好きな微生物が優勢に
出典著者Whitman氏らによると、山火事で土壌微生物は確かに生き残りますが、その構成は大きく変化するようです。つまり、高温に強い、速やかに殖える、燃えた有機物を餌にする、など、火事に適した、火事が好きな微生物が優勢になるようです。
また、山火事が激しいほど、土壌微生物の顔触れも激しく入れ替わったそうです。


植物上陸以来、土壌微生物とは持ちつ持たれつ
空気の窒素を植物が使えるアンモニアに変えて、植物からは栄養をもらうマメ科植物の根粒菌や菌根菌などの例のように、植物と土壌中の微生物は昔から緊密な協力関係を築いてきました。
植物と菌たちの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
「持ちつ持たれつ」マメ科と根粒菌の地中コミュニケーション+フランス各地の街角の花たち
1つのキノコが地球の歴史を変えた+北仏ノルマンディー再び


ルリマツリdownsize
(ルリマツリ)
植物と土壌微生物の共生関係が崩れる
多くの植物と土壌微生物は栄養共生の関係を築いており、お互いにパートナーが決まっている例もたくさんあります。そこに山火事が起こり、一旦植生が一掃されると、加えて、土壌微生物の構成が変わると、この植物と微生物のパートナー関係が崩れてしまう懸念もあります。

火事跡に何が生えるかは微生物次第
どんな微生物が山火事後に優勢になるかは、火事跡にどんな(パイオニア)植物が生えるかなどを左右します。

スズランREVdownsize
(すずらん)
煙に乗って新天地に運ばれる土壌微生物
山火事が土壌微生物に与えるもう一つの重要な影響は煙です。様々な土壌微生物(バクテリア、カビ、ウイルス)は煙の粒子(エアロゾル)に便乗して「バイオエアロゾル」となり、火事の上昇気流や風に乗って遠くにまで運ばれます。

一言主大神(ひとことぬしのおおかみ)みたい
出典著書のLeda N. Kobziar氏らによると、山火事の煙も生物多様性に影響しているようです、良いことも 、悪いことも含めて・・・

ぼたんdownsize
(ぼたん)
遠い土地にも山火事の影響が及ぶ
するとその場所で山火事が起きなくても、煙に乗ってやってきた微生物がその場所の土壌微生物の構成を変え、ひいては生態系を変える可能性があります。

「良いニュース」もあれば・・
例えば、根粒菌や菌根菌が飛んできたなら、それは「良いニュース」、植生や作物はより豊かになるかも知れません。

「悪いニュース」もある
でももし、飛んできたのが病原体なら「悪いニュース」、植物や作物の病気が遠くに「飛び火」するかも知れません。

山火事と土壌微生物の関係は重要になる
これまであまり注目されず研究も少なかった山火事と土壌微生物の関係は今後重要になってくると予測されます。

温暖化でますます山火事が頻発するので
温暖化で気候、気象のコントラストが強くなり、各地で山火事がより頻発すると心配されています。どのようにして植生や環境を再生させるかの方策を考えるとき、「火事が好きで」「煙をヒッチハイクする」土壌微生物への理解、研究は重要になると考えられます。

出典:「森林火災後には真菌と細菌が爆発的に繁茂」Jennifer Leman Natureダイジェスト VOL.16 NO. 3 MARCH 2019
出典:”Soil Bacterial and Fungal Response to Wildfires in the Canadian Boreal Forest Across a Burn Severity Gradient” Thea Whitman et al. bioRxiv Jan. 7, 2019; doi: http://dx.doi.org/10.1101/512798
出典:”Pyroaerobiology: the aerosolization and transport of viable microbial life by wildland fire” Leda N. Kobziar et al. ECOSPHERE Vol. 9 No.11 November 2018 Article 02507


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下宿人のバクテリアが磁針となって宿主の原生生物を水底に導く+南仏マントン

下宿人のバクテリアが磁針となって宿主の原生生物を水底に導く
+南仏マントン
~小っちゃな生きものが磁石に引かれてアッチへ行ったりコッチへ行ったり~

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磁石を持つバクテリアと単細胞動物ユーグレノゾア
今回のサイエンス小ネタの主役はとっても小っちゃな2種の生き物、体の中に磁石を持つバクテリア、デルタプロテオバクテリア(Deltaproteobacteria)とユーグレナ(東大発ベンチャーの健康食品でご存知の方も多いかも)の仲間の単細胞の原生生物ユーグレノゾア(Euglenozoa)です。
海岸から旧市街を望むdownsize
(南仏コートダジュールの海岸からマントン旧市街を望む)
陽光溢れる南仏の街マントン
今回主役の発見場所が南仏コートダジュールってことでコートダジュールはイタリア国境の街マントン(Menton)のフォトを添えています・
マントンの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
コートダジュールではイタリアンを、マントン再訪紀続編
紺碧のコートダジュールを抜け再びの国境の街マントンへ・・
ピンクに染まるマントンの街はアラビアの香り: コートダジュール旅行紀





海を遠望するレストランの明るいテラスdownsize
(地中海を遠望するレストラン、陽光溢れるテラス)
ユーグレノゾアに磁石を近づけてみた
出典著者のCaroline L. Monteil氏らは、南仏Carry-le-Rouetの沖の地中海の海底から採取した原生生物ユーグレノゾアを水滴の中に入れて、顕微鏡で観察しながら、磁石を近づけてみました。

まるで方位磁針、一斉に上へ、下へ
N極を近づけるとユーグレノゾアは一斉に水滴の底に向かって移動し磁石から遠ざかりました。次にS極を近づけると水滴の表面に向かって移動し磁石に向かって近づいてきました。まるで方位磁針のようです。
ユーグレノゾアが磁石でアッチ行ったり、コッチ行ったり、出典のYoutube動画

昼前の静かなテラス席そよ風が子供の声を運ぶdownsize
(ランチ準備中の静かな浜辺のテラス、そよ風が子供たちの声を運んできます)
細胞膜にたくさんのバクテリアがくっついている
ユーグレノゾア(単細胞です)の細胞膜の外側にはデルタプロテオバクテリアがたくさんくっついていました。2つの微生物は共生しています。

磁石に導かれるバクテリア「走磁性細菌」
このデルタプロテオバクテリアは体(同じく単細胞です)の中にはミクロの磁石を包み込んだ(磁性体を内包する)細胞小器官、マグネトソーム(magnetosome)を持つ「走磁性細菌」で水の中に棲みます。走磁性細菌は自前の繊毛やべん毛で泳ぎますが、地球磁場に引っ張られて彼らが好む水底の貧酸素の環境に導かれるそうです。

爽やかなブルーの幾何学模様も涼しい小さな噴水downsize
(爽やかなブルーの幾何学模様も涼しい小さなアラビア風?の噴水)
宿主も一緒に磁石に引かれたり、弾かれたり
そのため宿主であるユーグレノゾアも共生しているデルタプロテオバクテリアと一緒に磁石に引きつけられたり、反発して一斉に動くようです。

真核生物の走磁性は珍しい
ユーグレノゾアは私たちヒトと同じ真核生物で、真核生物で走磁性(磁気に向かったり、遠ざかったりする)を持つ例は極めて珍しいそうです。

絶品シーフードパスタさすが国境の街REVdownsize
(絶品シーフードパスタ、さすが国境の街)
両者はwin-win、相利共生の間柄
なぜデルタプロテオバクテリアはユーグレノゾアにくっついているのか?どうやら両者は相利共生(一緒に棲むことで互いを助けwin-winの関係にある)のようなのです。

白いキャンバスの屋根がまぶしいレストランdownsize
(白いキャンバス屋根が陽にまぶしい海辺のレストラン)
岩と水素からエネルギーを得るデルタプロテオバクテリア
デルタプロテオバクテリアがユーグレノゾアに乗っかって棲む海底の泥や砂の堆積物の中は酸素が乏しい環境です。デルタプロテオバクテリアは光合成、つまり光のエネルギーで空気の二酸化炭素を水の水素で還元する、代わりに海底の岩石などに含まれる硫黄を水素で還元する、化学合成でエネルギー(プロトンポンプによるATP産生)を得ています(つまり独立栄養です)。

水素は宿主ユーグレノゾアからもらいます
でも、そのためには水素が絶えず供給される必要があります。その水素の出所は宿主ユーグレノゾアの原形質膜に付着するハイドロジェノソーム(ヒドロゲノソーム、Hydrogenosome)に似た細胞内小器官で作られる水素です(ハイドロジェノソームは私たちの細胞にあるエネルギー生産工場、ミトコンドリアに似た細胞小器官です)。

木陰の広場カフェでくつろぐ人たちdownsize
(木陰の広場カフェでくつろぐ人たち、南仏の時間はゆっくり流れます)
酸素がなければ水素を取り出してエネルギーを得る
ユーグレノゾアは、私たちが細胞のミトコンドリアの働きで糖を酸素で燃やして(酸化して)二酸化炭素と水にすることでエネルギー(ATP)を得ているように、酸素の乏しい(嫌気的な)環境で有機酸を酢酸と水素と二酸化炭素にする(これも酸化です)ことでエネルギー(ATP)を得ています。

エネルギーの生産装置プロトンポンプ
デルタプロテオバクテリアが、光合成と同じく、硫黄を水素で還元する化学合成でATPを得るのも、ユーグレノゾアが嫌気的に有機酸を水素と二酸化炭素に分解してエネルギーを得るのも、遍く生物に共通のエネルギー(生き物共通のエネルギー通貨ATP)生産装置プロトンポンプの働きです。
生き物共通のエネルギー生産装置プロトンポンプの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
生きているってなぁんーだはいプロトンポンプです+晩秋のサザンカ

代わりに有機物をあげるよ
このようにデルタプロテオバクテリアは宿主ユーグレノゾアから恩恵を受けていますが、一方、宿主ユーグレノゾアはデルタプロテオバクテリアが生合成した有機物を得たり、デルタプロテオバクテリアを食べちゃうことで恩恵を受けています。2者の関係は持ちつ持たれつの関係、相利共生です。

もはや自力で泳がないデルタプロテオバクテリア
2者が相利共生である証拠に、独立栄養であるデルタプロテオバクテリアは本来繊毛を持ち、自身で動く(移動する)能力を持っていますが、ユーグレノゾアと共生するものは繊毛を失っています(繊毛の遺伝子が無い)。

両者にとって磁石の役割、意味とは?
それでは、デルタプロテオバクテリアの磁石でユーグレノゾアも磁界に反応して移動するのは彼らにとってどんな意味、利点があるのでしょうか?それはまだ分かっていないそうです。2者の共生にとって適した環境へと導くのかも知れません・・・。これからの研究成果が楽しみですね。

要は貧酸素の水底を目指したいってこと?
筑波大学小野田研究室のホームページによると「<中略>走磁性細菌は北半球で磁力線に沿って北へ泳ぎ,南半球では南に向かって泳ぐことが水底に向かうことになり水面から離れて,細菌の好む酸素が少ない還元層がある水底へと移動する」のだそうです。

出典:”Ectosymbiotic bacteria at the origin of magnetoreception in a marine protist” Caroline L. Monteil et al. Nature Microbiology (2019) DOI:https://doi.org/10.1038/s41564-019-0432-7
出典:”Hitchhiking bacteria might help their host navigate via magnetic fields Science” Helen Santoro Science 26 April 2019 Vol 364, Issue 6438 doi:10.1126/science.aax8550
出典:ウィキペディア記事「磁気走性」
出典:「走磁性細菌」筑波大学大学院数理物質科学研究科物理学専攻・小野田研究室ホームページ


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アルミニウムの鎧で推進1万mの超高圧を凌ぐヨコエビ+フランスのシーフード・グルメ

アルミニウムの鎧で推進1万mの超高圧を凌ぐヨコエビ
+フランスのシーフード・グルメ

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カイコウオオソコエビREVdownsize
海洋研究開発機構が超深海で見つけたヨコエビ
今回のサイエンス小ネタの主役の端脚類ヨコエビ(amphipod)の仲間、カイコウオオソコエビ(Hirondellea gigas)は日本海溝で新種として見つかった殻を持つ小さな甲殻類です。1995年、日本のJAMSTEC(海洋研究開発機構)の無人探査機「かいこう」によりマリアナ海溝チャレンジャー海淵、深度10920mで初めて採取されました。
このカイコウオオソコエビが登場する過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
日本近くの深海は汚染ゴミためって知ってました+サイパンの海




Rouenノルマンディーのオマールは絶品REVdownsize
(北仏ルーアン(Rouen)にて、ノルマンディーのオマールはやはり絶品)
フランスのシーフード・グルメ
・・のフォトを添えます。エビつながり??くらいしか思いつかなかったので・・・。
フランスのシーフードの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
昔トウガラシは辛くなかった湿地のカビ対策でスパイスに+北フランスで出会ったシーフード
予測可能な資源が競争と協力を生みヒト社会を繁栄に導いた+フランスのシーフードグルメ


水深1万m、殻も砕ける超高圧の世界
水深1万mを超える深海は超高圧の世界です。そんな高圧ではエビのような殻を持つ生物は殻が水圧に耐えられず潰れてしまうはずです。

アルミニウムの鎧をまとったカイコウオオソコエビ
そんな環境にも拘わらず体長4~5cmの小さなエビのような深海性のカイコウオオソコエビが棲んでいます。水深1万mでも殻が潰れずにすむカイコウオオソコエビの秘密はアルミニウムの鎧にあります。

Arcachonムール貝クリームソース Art16 downsize
(大西洋岸、嵐のアルカション(Arcachon)にて、ムール貝クリームソース、温まりました)
アルミニウムのゲルが超高圧から守る
アルミニウムと言ってもゲル化する水酸化アルミニウムで、このゲルが殻を守っているようです。(ゲル:寒天のように水を含んだスポンジのような構造)。
出典著者のJAMSTEC小林秀樹主任研究員らは同じマリアナ海溝チャレンジャー海淵のカイコウオオソコエビを更に調べて明らかにしました。


殻をアルミニウムのゲルがコーティング
出典著者の小林氏らの研究の結果、カイコウオオソコエビの殻(外骨格)には炭酸カルシウムとともにアルミニウムが含まれていました。アルミニウムは、アルカリ性の海水中で水酸化アルミニウムのゲルに変化して殻の表面をコーティングし水圧から守っているようです。

Saint Maloホタテの一皿REVdownsize
(北仏サンマロ(Saint Malo)にて、ホタテの一皿)
アルミニウムはどこから?
でも、ちょっと待って、そのアルミニウムはどこで手に入れたの?海水にはアルミニウムはほとんど含まれていないからです。


深海底の泥はアルミニウムが豊富
地上の土や岩と同じように深海底の泥にはアルミニウムが豊富に含まれています。酸性条件下で泥に含まれるアルミニウムは有機物と反応して生き物が利用できるかたちになります。

Menton絶品のムール貝のパスタ downsize
(南仏マントン(Menton)にて、絶品だったムール貝のパスタ)
泥のアルミをゲルにした鎧の2重の働き
カイコウオオソコエビは深海底の泥からアルミニウムを摂取して水酸化アルミニウムにします。そして水酸化アルミニウムのゲルがカイコウオオソコエビを水深1万m超えの超高圧から守っているようです。更に殻の炭酸カルシウムが溶け出してしますのも防いでいるようです。

役に立つ水酸化アルミニウム
それにしても寒天や豆腐の仲間のゲルが超高圧から生き物を守るって不思議です。水酸化アルミニウム(Al(OH)3)は白色のゲルで医薬品(日局 乾燥水酸化アルミニウムゲルなど)や吸着剤に利用され、紙に添加すると燃えない「不燃紙」になり壁紙などに使われるそうです。

水深6000メートル超えの深海底だけに棲む
カイコウオオソコエビは水深6000メートルを超える超深海底だけに棲んでいて、北西太平洋の各海溝(マリアナ海溝、フィリピン海溝、ヤップ海溝、パラオ海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝、カムチャッカ海溝)見つかっています。生態はまだナゾですが、深海に落ちてくる動植物の遺骸などを食べているようです。

まだまだ不思議がいっぱいの深海
深海はまだまだ私たちが知らないヒミツをいっぱい隠しているようですね。それにしても世界の深海生物研究をリードし、最先端をゆくJAMSTECってスゴイですね。

無人探査機「かいこう」
今回研究のもう一人の主役は深海無人探査機「かいこう」です。
JAMSTECのホームページ、無人探査機「かいこう」のウェブページには
「・<中略>・・初代である「かいこう」は、マリアナ海溝水深10,911mで底生生物の「カイコウオオソコエビ」の採取や、インド洋で熱水活動と熱水噴出孔生物群の発見などを行ってきました。」とありました。
「かいこう」のページのURLです。リンク貼っていませんのでコピペでご訪問ください
https://www.jamstec.go.jp/j/about/equipment/ships/kaiko.html


出典:”An aluminum shield enables the amphipod Hirondellea gigas to inhabit deep-sea environments” Hideki Kobayashi et al. PLoS ONE 14(4): e0206710. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0206710
出典:”This shrimplike creature makes aluminum armor to survive the deep seas crushing pressure” Rachel Fritts Science 3 May 2019 Vol 364 Issue 6439 2019 doi:10.1126/science.aax8737
出典:海洋研究開発機構(JAMSTEC)ホームページ
出典:ウィキペディア記事「カイコウオオソコエビ」、「水酸化アルミニウム」


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