湖底の環境DNAが語るウサギが生態系を変えたいきさつ+孤島アイスランド

湖底の環境DNAが語るウサギが生態系を変えたいきさつ
+孤島アイスランド

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ケルゲレン環境変動ふたりの主役
(ケルゲレン諸島の環境破壊者アナウサギと被害者Azorella selago)
あ~る日突然♪ウサギさんた~ちが♪・・・
1864年に南極に近い南インド洋の孤島ケルゲレン諸島(Kerguelen islands)にアナウサギ(European rabbit、Oryctolagus cuniculus)が放たれました。その後、75年間は島の植物に変化はありませんでしたが、1941年を境にアナウサギたちは爆発的に殖えて孤島の生態系をすっかり変えてしまいました。




Snaefellsnes半島no草地の山と漁港の船downsize
(Snaefellsnes半島の草地の山と漁港:アイスランド)
絶海の火山島アイスランド
ケルゲレンと同じく絶海の火山島で草地と岩場のアイスランドを訪れたときのフォトを添えています。
アイスランドの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
右足はNYへ左足はロンドンへ大地の割れ目アイスランド
氷と火の島アイスランドで生きている地球を実感


グトルフォス滝の水煙downsize
(グトルフォス滝の水煙:アイスランド最大の滝です)
弱いから「ウサギ算式」に増える
キツネ、オオカミ、イタチなど中型肉食動物、ワシなど猛禽類などに食べられるウサギは自然界では弱い存在、だからネズミと同じく多産で「ネズミ算式」に素早く増え子孫を残します。

右はニューヨークへ左がロンドンへ別れていくdownsize
(右はニューヨークへ左がロンドンへ別れていく
:アイスランドは大西洋中央海嶺のホットスポットの真上にあります)

天敵がいないとウサギは「侵略的外来種」に
アナウサギが天敵のいない海洋島(絶海の孤島)に放されたらどうなるか?「侵略的外来種」としてあっという間に増えて食べて、植物の固有種を絶滅させ、そこらじゅう地面を掘り返し、環境、生態系、景観までも短期間で劇的に変えてしまいます。
海洋島の過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
3つのWが運ぶ海洋島のユニークな生き物 生物地理学の冒険者2

吹き上がる瞬間の間欠泉ストロックルREVdownsize
(吹き上がる瞬間の間欠泉ストロックル)
「環境DNA」が語るアナウサギ環境破壊のいきさつ
外来種による環境破壊の仕組みやいきさつを過去に遡って調べることは容易ではありません。そこで出典著者のGentile Francesco Ficetola氏らは、「環境DNA」という新しい技術を使って、亞南極の孤島、ケルゲレン諸島に人が持ち込んだアナウサギがどのように短期間で「侵略的外来種」と化し、どのように環境を変えたのか、を調べました。
環境DNAの過去記事↓(クリックで飛びます)
水を汲むだけ環境DNAによるサカナの国勢調査 サンゴ礁の魚たち

風が抜ける草原で草をはむ野生馬REVdownsize
(風が抜ける草原で草をはむ野生馬)
湖底の堆積物から読む環境と生態系の歴史
Ficetola氏らは・・・
①まずケルゲレン島のLake La Poule湖の湖底をボーリングして過去600年間に積もった泥土の試料(コアサンプル)(湖底では乱されずにバウムクーヘンのように時系列に泥、砂、生き物の遺骸、花粉などが層状に積もる)を採取し、
②放射性同位体の比率から年代を割り出し、
➂埋まっている花粉やカビの胞子種類から当時の環境を推測、再現し、
➃特に草食動物の糞によく生える糞生菌の胞子からウサギの繁殖の様子を紐解き、
⑤更に新しい試みとして湖底の堆積物中の「環境DNA」を調べることで、いつの時代にアナウサギやどんな植物が繁茂していたか、を調べました。
⑥また、堆積物の地質の変化からアナウサギによる掘り返しでいかに土壌浸食が起こってきたことも明らかにしました。


静かに蒸気を溜める間欠泉downsize
(静かに蒸気を溜める間欠泉)
ウサギ以前の長い平和とその後の荒涼
太陽光と資源に乏しい亞南極圏の孤島ではもともと、まるでコケのようなセリ科のAzorella selagoが一番多く、モフモフの緑のカーペットを作り孤島の動植物を育み、少なくとも500年以上に亘って変わることなく島の生態系を支えてきました。

ウサギが増えて環境は一変
しかし、人により持ち込まれたアナウサギが1941年から突如繁殖し始め(環境DNAにウサギDNAが見られ始める)、草をはみ、土を掘り返すと土壌浸食が進み環境は一変。
セイヨウタンポポなど外来種が侵入し、バラ科の野草Acaena magellanicaが優勢となってAzorella selagoの緑のカーペットは姿を消し、生態系はすっかり変わってしみました。


雪山と滝を遠望するREVdownsize
(雪山と滝を遠望する:バスツアーの車窓から)
食べて殖えて掘って「アリスのウサギ穴」だらけに
アリスはウサギ穴から落ちて不思議の国に迷い込みましたが、アナウサギは名の通り地面に穴を掘って巣を作るため、数が増えると地面は穴だらけになり土壌侵食が進んでしまいます。

温暖化よりも強烈だったウサギ・パンチ!
1941年から始まった環境破壊は、1970年代から顕著となる気候変動(温暖化)による影響(20%弱)よりもアナウサギの影響(35%以上)の方が大きいのだそうです。

岩場に建つ家REVdownsize
(岩場に建つ家)
ウサギにとっての災難が島を救った
・・・ようなのです。1955年頃に突如、ミクソウイルスがウサギには致死的な伝染病「兎粘液腫」を惹き起こし島のアナウサギは激減しました。おかげで土壌浸食が一時的に止まり、稙生も回復しました。しかし、今はまたウサギ個体数は回復、生態系は再び危機にあります。このことからアナウサギが環境破壊の主犯であると分かります。

ウンチを食べるカビが環境変化を教える
特に糞生菌という動物の糞を餌とするカビSporormiellaがウサギの繁茂と歩調を合わせて増えています。湖底堆積物のそのカビの胞子の分析と環境DNA中のアナウサギDNAの解析で明らかになったそうです。

アイスランド航空でレイキャビクへdownsize
(アイスランド航空でレイキャビクから帰路に)
外来種の繁茂には潜伏期がある
・・・らしいのです。ケルゲレン諸島のアナウサギによる生態系破壊には導入後約75年の潜伏期(lag time)があります。気づいていれば手を打つに十分な時間です。

外来種対策には初動アクションが大切
もしも当時、初動アクションで素早く外来種のアナウサギを駆除していれば、その後の爆発的な繁殖、環境破壊を食い止められたと考えられるそうです。
そもそも人為的に持ち込まれたウサギに罪はありません。
この研究成果は、単に過去を知るだけでなく、これからの外来種対策にとても大切なヒントを示していると思います。


出典:“DNA from lake sediments reveals long-term ecosystem changes after a biological invasion” Gentile Francesco Ficetola et al. Science Advances 2018; 4 eaar4292 9 May 2018

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