無鉄砲と臆病者のチームで生き抜くイトヨ + パリ郊外モレ・シュル・ロワン

無鉄砲と臆病者のチームで生き抜くイトヨ
+ パリ郊外モレ・シュル・ロワン

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実験水槽でイトヨの度胸を試す
(実験水槽でイトヨの度胸を試す)
印象派シスレーの愛したパリ郊外モレ・シュル・ロワン
パリからRERでちょっとお出かけのモレ・シュル・ロワン(Moret-sur-Loing)は、最後まで印象派を貫いた画家シスレー(Alfred Sisley)が愛した村、そのフォトを添える「無鉄砲と臆病者のチーム・イトヨ」と言うサイエンス小ネタです、水辺つながりで・・。
モレ・シュル・ロワンの過去記事です、クリックで飛びます↓
シスレーが愛したモレシュルロワン、バラと岸辺のレストラン
ワンちゃんにはご飯をあげよう+パリ郊外モレシュルロワン番外編





シスレーが愛した堰と水の村downsize
(シスレーが愛した堰と水の村モレ・シュル・ロワン)
サカナだって個性があります
「動物にも個性がある」、「集団で行動する動物も多い」ことはいろいろな例や自らの経験からも納得できます。じゃ、動物の集団(社会)と動物個体の個性との関係は?

開けた水面は危険
(開けた水面ではイトヨは丸見え、危険がいっぱい)
ひとりだけと仲間と一緒では行動が違うのでは?
出典著者Christos C. Ioannou氏らは野生のイトヨ(糸魚 Gasterosteus aculeatus)80匹を使ってイトヨがどのくらい危険を冒して餌を取ろうとするかを、1匹づつの場合と集団の場合について調べました。

石の壁にファンタジーな花屋さんREVdownsize
(石の壁にファンタジーな花屋さん)
開けた水面には危険がいっぱい
自然環境下の開けた水面は鳥などの捕食者から丸見えの危険地帯。餌は欲しいが餌(甲殻類など)開けた水面では捕食者(大きな魚や鳥)に見つかるかも?水槽を泳ぎ渡ることはイトヨにとって「危険を冒す」行為なのです。

Loing川の堰 その3downsize
(ロワン(Loing)川の堰)
覆いのシェルターを出る勇気を試す
実験室の水槽の片隅はカバーで覆われここにイトヨを放します。その反対側に餌を置き、イトヨが餌まで行くにはカバー覆いを出て上から丸見えの水槽を泳いでゆかなければなりません(「実験室だから鳥はいないよ」って言ってもイトヨには分かりませんし)。

のんびりした辻角のレストランREVdownsize
(のんびりした辻角のレストラン)
「慎重」も「無鉄砲」もイトヨの生まれつきです
1匹づつイトヨを試すと、なかなか覆いから出ない「臆病者」もいれば、迷わずさーっと泳いでゆく「無鉄砲な奴」もいて、何度か繰り返してもそれぞれの個性は変わらなかったそうです。


何も考えず飛び出すヤツ、10分以上迷うヤツ
餌を見つけてシェルター覆いを出て水槽に泳ぎだすまでの“躊躇”の時間は平均160.4秒ですが、その数値の幅はなんと5秒(考える前に飛び出す)から733秒(10分以上、餌はとっくに逃げてる)までバラついています。

かわいい看板のインテリア小物屋さんdownsize
(かわいい看板のインテリア小物屋さん)
群れると個性が相殺される
そこでイトヨたちを10匹のグループ(臆病者も無鉄砲も居る)で水槽に入れて同じテストをやってみると・・・両者の平均的な成績になりました。でもなぜ?

集団は個性を薄め全体のサバイバルに繋がる
出典著者Ioannou氏らの説明(=解釈)はこうです。
1. 無鉄砲はすぐに飛び出すが仲間がついてこないので待つ
2. 臆病者は仲間に遅れないよう少し勇気を奮って早めに出る
3. その結果、グループの行動は臆病者と無鉄砲者の中間の最適時間に落ち着き、
4. この行動が経験も浅く弱い存在であるイトヨ若者たちのサバイバルに繋がるらしい
・・とのことです


ちょっと変わった水車downsize
(ちょっと変わった水車)
若者は群れて暮らすイトヨ
まだ「所帯を持つには未熟な」イトヨの若いオスたちは群れます。その方が餌も得やすく、敵にも襲われにくいからでしょうね。リーダーもいない若いイトヨたちはどういう集団行動を取るのでしょうか?・・・と言うのが出典著者たちの興味であったようです。

個性を活かす集団が生き残る
動物だって、魚だって、ヒトと同じ、それぞれに「個性」があり、また、仲間も居て、それで「社会」を作っています。色々な個性を活かしながらみんなで厳しい自然環境を生き抜くイトヨはたくましいですね。

城塞の面影を遺す石の門downsize
(城塞の面影を遺す石の門)
仲間がいてこその個性です
これまで集団の行動(心理)の研究では個性(=個体差)を顧みず、個の行動の研究では集団となる効果に着目してこなかったのだそうで、その意味でこの研究はユニークなのだそうです。身の回りの日常を振り返れば個性が光るときも、仲間の力を頼るときもありますね。イトヨの個性と仲間意識に注目したこの研究は面白い視点だと思います。

以下はイトヨの余談(と出典)です。ご興味あれば「続きを読む」をクリックください


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3本のトゲで身を守るイトヨ
イトヨは体長10cmほどのトゲウオ科の魚で、木の葉のような平たい体の背中に大きなトゲ(背びれの棘条)が3本あるのが特徴で、流れの緩い穏やかな水系に棲みます。小さく弱いため捕食者の多いイトヨの唯一の「自衛力」が“飲み込んだら痛そう”な3本のトゲなのです。

「川のイワシ」、水辺の生態系を支えるイトヨ
イトヨなどトゲウオの仲間は水鳥や大きな川魚の餌になり水辺の生態系の底辺を支えています。なので、イトヨは常にさまざまな「敵」(=捕食者)に囲まれた環境で餌を探すことになります。

イトヨの生涯は短くて・・
イトヨの寿命は短く1年ですが、繁殖期には雄は下腹が婚姻色で赤くなり巣を作り縄張りを張って近づく他の雄を攻撃します。雌を巣に誘って産卵させると雄が卵を守ります。

若者たちは集団生活
オトナの雄は単独行動ですが、若い雄たちは集団で行動し甲殻類などを食べて育ちます。海のイワシなどもそうですが、鳥や大きな魚に捕食されるのを防ぐためでしょう。

実はイトヨ、絶滅レッド・リストに載ってます
なお、イトヨにはサケのように海へ出て川に戻るものと淡水で一生を過ごすものがあります。
日本では福島県以南の陸封のイトヨ太平洋型と本州のイトヨ日本海型が「絶滅のおそれのある地域個体群」として環境省レッドリスト(2007年版に挙げられています。


出典:日経サイエンス2017年2月号P.30 「動物の個性と集団行動」
出典:”Consensus and experience trump leadership, suppressing individual personality during social foraging” Nicholas D. McDonald, Sean A. Rands, Francesca Hill, Charlotte Elder, Christos C. Ioannou (September 14, 2016) Science Advances 2016, 2:. doi: 10.1126/sciadv.1600892
出典:” Individuals that are consistent in risk-taking benefit during collective foraging” Christos C. Ioannou & Sasha R. X. Dall Scientific Reports 6:33991 DOI: 10.1038/srep33991


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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報

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