石器作りの脳をのぞく、石器はデザインや教わるの事始め?+北仏ルーアン再び

石器作りの脳をのぞく、石器はデザインや教わるの事始め?
+北仏ルーアン再び
~アシュールの握斧は石器時代人ホモ・エルガステルのユリーカ~

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アシュール握斧作り教室はジェスチャーと言葉が有効
(アシュール握斧作り教室はジェスチャーと言葉が有効)
アシュール握斧発見地北仏ルーアン再び
北仏アミアンのサンタシュール地区の名を冠する石器、アシュール握斧のサイエンス小ネタにつき、ルーアンのフォトを添えます(再掲)。
ルーアン街歩き過去記事はこれです↓
古き佳きルーアン モネとジャンヌダルクを訪ね北仏ルーアン再び 後編
雨上がりのモネの大聖堂 モネとジャンヌダルクを訪ね北仏ルーアン再び 中編
モネとジャンヌダルクを訪ねて北仏ルーアン再び 前編
鳥は恐竜の忘れ形見そしてジャンヌダルク最期の地ルーアン





Place du Vieux Marche広場のレストランREVdownsize
(Place du Vieux Marche広場のレストラン;北フランスのルーアン)
考古学のDIY、石器を作ってみよう
遺跡から発見される石器を当時の材料(石、骨など)だけで、人の手で実際に同じ物を作ってみて、作り方や難しさなどを調べる研究があります。このように実験して考古資料の用途や製法などを推定する研究を実験考古学と呼ぶそうです。

考古学と脳神経科学で脳の進化にせまる
更に実験考古学を脳神経科学や心理学と融合させたユニークな研究があります。出典著者米国エモリー大学のDietrich Stout氏らは石器を作っている時に脳のどの部分が働いているかを調べてヒトの脳の進化が道具作りの文化に導いたかを研究しています。


雨上がりの青空に白いレースのような石細工が映えるサンマクルー教会downsize
(雨上がりの青空に白いレースのような石細工が映えるサンマクルー教会)
170万年前の技術革命、アシュール握斧
一番古い石器(剥片石器)は260万年前頃のオルドワン石器ですが、仕上げは荒っぽく形はバラバラ、偶然うまく欠けた石片を使っていたようです。100万年近くこのままだったのがやっと170万年前頃(前期旧石器時代末期)、木の葉型で整えられた3次元対称形の両面加工石器、アシュール型の握斧(hand axe、ハンドアックス)が現れます。

アシュール握斧はヒトとともに世界進出
アシュール握斧の製作者はどうやらホモ属(Homo、ヒト属)のホモ・エルガステル(Homo ergaster)らしく、スマートな「トゥルカナ・ボーイ」が有名なH.エルガステルは初めて酷暑乾燥の大地に進出し、同時代のホモ・エレクトス(Homo erectus) は初めてアフリカを出てユーラシアに進出し各地にアシュール握斧を残しました。北フランスのアミアン(Amiens)のサンタシュール地区(Saint-Acheul)で19世紀半ばに初めて発見されたことからアシュール文化(industry)と呼ばれます。

旧市街への訪問者を出迎える大時計downsize
(旧市街への訪問者を出迎える大時計)
「石器総本家」か、「匠」の脳は3倍に・・
精巧で美しいアシュール握斧が生まれた170万年前頃、ヒト属の脳(容積)は現代人に近い3倍の大きさ(860ccくらい)に増えました。アシュール握斧は3次元的にも対象で刃先は鋭利、「匠の技」がないと作れない石器、170万年前の匠ってどんな職人さんだったんだろう?

考古学研究者たちの石器作り教室
実験考古学では、未経験の学生や研究者は「生徒」として実験石器作りのベテラン研究者の「先生」から石器作りを教わるそうです。


ルーアン焼きの老舗店downsize
(ルーアン焼きの老舗店)
MRIで石器作り中の脳を覗く
Stout氏らは石器を作る「生徒」の実験者の脳の働きをリアルタイムの脳画像(FDG-PET、MRI、DTI)(※文末参照)で調べました。

行き当たりばったりと計画的な石器作りを比べる
単純で偶然も左右するオルドワン石器と、仕上がりをイメージして手順を進める必要がある精巧で対称形に整ったアシュール握斧を作るときの脳の働きを比べました。

雑念を払う、計画的手順に働く、脳部位「下前頭回」
するとオルドワンでもアシュールでも共通に活性化した(働いている)脳の領域がある一方、アシュール石器作りの時にのみ活性化した脳領域が運動前野背側部、運動前野腹側部、下前頭回です。特に下前頭回は「作業を切替る=気分を切替える」、「雑念を払い、集中する」に働く部位です。

サンマクルー教会を小さな広場が囲んでいますdownsize
(サンマクルー教会を小さな広場が囲んでいます)
石器作りの「王道」を探る5つの実験
英国セントアンドリュース大学のT.J.H. Morgan氏らは5種類の習い方で「生徒」に石器を作ってもらい成績を比較しました。①見本を見て作る、②「先生」を真似ながら一緒に作る、③一緒に作る「先生」がゆっくり見せながら教える、④一緒に作る「先生」がジェスチャーで教える、⑤一緒に作る「先生」が言葉で教える、の5種類で出来栄えと成功率などを比べました。

ジェスチャーと言葉が石器作りの成績を向上させた
①から⑤の順で成績がよく、特にジェスチャーや言葉のコミュニケーションを伴う(④、⑤)ことで成績が向上したそうです。Morgan氏らはオルドワン石器なら見本や模倣(①、②)で済むが、アシュール握斧作りには教えることや原始的な言葉が必要だったのでは、と推測しています。

集中と我慢こそプラモと石器の極意か???
プラモ製作には出来上がりイメージ(デザイン)、計画性、戦略、それに我慢と集中が必要です(特に才能も器用さも無く飽きっぽい私には)。もちろん石器作りはそれ以上、デザイン、イメージや計画性、3次元動作制御、忍耐と気分切替え、教え教わるジェスチャーや言葉のコミュニケーション・・などなどすべてを統合した当時先端の技術基盤(technology platform)だったと思います。

船の竜骨を思わせる天井downsize
(船の竜骨を思わせる天井)
ストーン・エイジの和風総本家
アシュール文化は中期旧石器時代ネアンデルタール人のムスティエ文化に、さらに中石器時代、新石器時代へつながってゆきますが、オルドワンからアシュールへの“飛躍“は革新だったようです。偶然出来た、使った道具と目的を見据え仕上がりと工程をイメージして出来る道具とは全く別物、和風総本家の職人さんたちを見れば分かること。

道具を使う動物たちもいます
チンパン、カラス君、カケス君、ゾウさん、タコさん、イルカちゃんなど動物たちは“今、目の前にある物をうまく活かして”、また、“チョイチョイと加工までして”とても上手に道具を使います。また、“ヒトが設計、設定した”ゲームや罠や仕掛けをちゃんと理解して正解!しますよね。
カケス君の過去記事です↓
カケス君に質問です 君は賢いか はい+みなとみらいとお台場

ヒトは、計画、設計・デザイン、手順・マニュアルでルビコン川を渡った?
でも「何が欲しいから、何を使って、どう作ろうか」をゼロから計画的にデザインし、手順をイメージしながら道具を創り出し使うのは現生人類(Homo sapience)だけです。170万年前のご先祖様は「知恵、戦略、マネージ」のルビコン川を渡ったのかも?知れませんね。

石器時代とヒト進化の関連過去記事はこれです↓
花の島のホビットたちはどこから来て誰に追われなぜ消えたのか
アフリカを出て袂を分かった兄弟姉妹が日本で再会
石器時代人の歯石除去で食生活や暮らしを探る
料理でヒトは繁栄した; プロメテウスの贈り物 続編
『群れたがり人目気にする遊び好き』“ガキっぽさ”でヒトは生き延びた+ストラスブール~「心のネオテニー」は気まぐれ進化のステキな贈り物~
動物たちと歩むヒトの進化;共進化する者たち
動物を知り共に歩んだことが人類繁栄のヒミツ
ヒト進化はマーブルチョコレート 人はヒトをどのように改造してきたのか その3
人口爆発がヒト進化を加速 人はヒトをどのように改造してきたのか その2
人はヒトをどのように改造してきたのか その1移動も進化も250倍に
プロメテウスの贈り物-火がヒトの高速進化を生んだ?
縄文人は海鮮グルメ、おこげが語る世界最古
DNAに見る人類史に類を見ない日本人の優しさ-心が優しくなる三冊の本(1)


※:略号の説明
MRI:核磁気共鳴画像法magnetic resonance imaging)、「動かない」ことが条件なので石器を作っているビデオを見せると模倣しようと実際に手足を動かすときと同じ脳の領域が働く(ミラーニューロン)
PET:ポジトロン断層法(positron emission tomography)
FDG-PET:トレーサーにFDG(18F-fluorodeoxy glucose)を用いるPET
DTI:拡散テンソル画像(diffusion tensor imageI)、脳の白質(部位と部位をつなぐ配線)を見る特殊なMRI)


出典: 日経サイエンス2016年10月号記事P.72「」人類を進化させた石器作り」 “Tales of Stone Age Neuroscientist” Dietrich Stout氏執筆
出典: “Experimental evidence for the co-evolution of hominin tool-making teaching and language” T.J.H. Morgan et al. nature communications 13 Jan 2015, DOI: 10.1038/ncomms7029
出典:「トゥルカナの石器:アフリカの古い人類遺跡で見つかった、従来よりもさらに古いアシュール文化ブックマーク」 Nature Volume 477 Number 7362 p.82 (2011年9月1日)


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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報

コメント

Re: Levalloisbeeさん、こんばんは^^

美雨さま、いつもありがとうございます。いいですね、秋は旅には最高の季節ですね、私も出かけてみたいです。ルーアンは2度訪れましたが、北フランスらしい落ちついた雰囲気の街です。生憎雨でしたが、その分雨上がりが素晴らしかったです。

> Levalloisbeeさん、いつもお世話様です。
>
> やっと涼しい秋風が吹き始め、季節が移行したかな?と感じられますが、秋はおいしいものがいっぱいすぎて、ダイエットには大敵な季節でもありますね。笑
> さて、明日から三連休ですね。^^私は方角の良いところに行って、お水とりをしてこようかと思います。でも、思い立ったらやはり雨(もう、うちは雨夫婦でしょうか!?)
> それでも、気のいい土地にいって、自然にふれて、旬のものを食べ、エネルギーあふれる清らかな湧水を飲む・・・他力本願かもしれませんが、それだけで、気分も変わり、パワーをいただけるのでありがたいです。
> Levalloisbeeさんも、どうぞ良い連休をお過ごしになって、リフレッシュしてくださいね^^
>
> しかし、びっくり!@@
> ルーアンは、ジャンヌダルクのみならず、アシュールの握斧の石器時代人ホモ・エルガステルの町だったのですね。
> こんな美しい瀟洒な街並みも、時空をこえるとそこは文明の揺りかごの地だったのですね。
> 人間の道具を見ていく過程で、その脳の進化がわかるというのは本当なのですね。
> ラスコーといい、このルーアンといい、フランスには人類の起源をさぐる鍵が宝のようにありそうですね。
> ためになるブログ、感謝こめて応援☆☆☆していきまーす^^

Levalloisbeeさん、こんばんは^^

Levalloisbeeさん、いつもお世話様です。

やっと涼しい秋風が吹き始め、季節が移行したかな?と感じられますが、秋はおいしいものがいっぱいすぎて、ダイエットには大敵な季節でもありますね。笑
さて、明日から三連休ですね。^^私は方角の良いところに行って、お水とりをしてこようかと思います。でも、思い立ったらやはり雨(もう、うちは雨夫婦でしょうか!?)
それでも、気のいい土地にいって、自然にふれて、旬のものを食べ、エネルギーあふれる清らかな湧水を飲む・・・他力本願かもしれませんが、それだけで、気分も変わり、パワーをいただけるのでありがたいです。
Levalloisbeeさんも、どうぞ良い連休をお過ごしになって、リフレッシュしてくださいね^^

しかし、びっくり!@@
ルーアンは、ジャンヌダルクのみならず、アシュールの握斧の石器時代人ホモ・エルガステルの町だったのですね。
こんな美しい瀟洒な街並みも、時空をこえるとそこは文明の揺りかごの地だったのですね。
人間の道具を見ていく過程で、その脳の進化がわかるというのは本当なのですね。
ラスコーといい、このルーアンといい、フランスには人類の起源をさぐる鍵が宝のようにありそうですね。
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