匠から学ぶテッポウウオの水ミサイル+水の都ストラスブール再び

匠から学ぶテッポウウオの水ミサイル+水の都ストラスブール再び
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川面に映える緑が深い旧市街downsize
(川面に映える緑が深いフランス東部、水の都ストラスブール旧市街)
おとぎの国の水の都、ストラスブール(フランス)
かわいいテッポウウオの凄ワザのサイエンス小ネタです。水辺つながりで「おとぎの国」みたいな水の都、ストラスブールのフォトを添えます(すべて再掲)。ストラスブール過去記事はここをクリック↓
水に囲まれたプティットフランスはディズニーアニメの世界
ストラスブールはアルザスの香り木組みの家並みが陽にまぶしい





匠に学ぶテッポウウオの水鉄砲
(匠に学ぶテッポウウオの水鉄砲、未熟者も観るだけで上達)
マングローブのフナ、テッポウウオ
テッポウウオ(鉄砲魚、Archerfish)はスズキ目・テッポウウオ科(Toxotidae)のフナくらいのサイズ(15-30cm)の魚で、東南アジア熱帯地方の淡水、汽水、マングローブなど植物が良く茂った水に棲みます。

ディズニーの小屋ような陶器屋さんdownsize
(ディズニーの小屋ような陶器屋さん)
テッポウウオのハイテク、水鉄砲ミサイル
テッポウウオは水中から「水鉄砲」で水面上の昆虫などを射落とすユニークなテクで結構有名ですね。でもこれって、①光の屈折を補正して、②餌の次の位置を予測して見越し射撃、③距離、高さに応じて水ミサイル弾道を調整するなど、結構頭を使うハイテクなんです。

光の屈折を計算し見越し射撃するテッポウウオREV2
(光の屈折を計算し見越し射撃するテッポウウオ)
“しゃくれアゴ”が強力水ミサイルの秘密
テッポウウオは下顎が斜め上向きにせり出し尖っています(つまり、しゃくれてる)。この下顎に舌を添わせると喉から口先まで一直線の吹き矢の筒のようになり、鰓を急速に閉じることで正確な弾道で鋭い水流で「水ミサイル」を発射します。SLBMですね。


水面に映える花の館downsize
(水面に映える花の館;ストラスブールのプチット・フランス)
訓練と学習でテッポウウオ凄腕の謎に迫る
でも、せいぜい体長30㎝以下のテッポウウオ君がどうやって正確無比な水鉄砲ミサイルを水面上の餌に向け発射することが可能なのかは謎でした。
独フリードリヒ・アレクサンダー大学エアランゲン・ニュルンベルク(Friedrich-Alexander-Universitat Erlangen-Nurnberg, FAU)のStefan Schuster氏らの研究チームは長年、テッポウウオを飼育し、標的を撃つテストをしたり、訓練をしたり、学習させたりして「正確無比な水鉄砲の謎」を研究したそうです。


どの家も花がいっぱいdownsize
(どの家も花がいっぱい;プチット・フランス)
水中からでは光の屈折でみかけの位置がズレる
まず第一に、水中からの照準ではみかけの位置と真の位置がずれます。空気中から水中へ、あるいはその逆でも、光は密度が異なる媒体の境目を通るときに屈折して光路が曲がります。つまり水中から見える餌のみかけの位置は本当の位置からはずれて見える、しかもそのズレ具合は対象と水面との角度、また、目と水面との角度によっても変わります。

赤と白の美しいコントラスト花のレストランdownsize
(赤と白の美しいコントラスト花のレストラン)
「飛んでる餌も墜とせるよ」、高速標的も捉える弾道技術
更に飛んでいる餌でも撃墜できます。テッポウウオは高速で飛んでいる空中の昆虫も水中から水鉄砲で仕留めます。飛行速度などから水ミサイルが届くときの予測位置を割り出している訳で、これは空中戦の「見越し射撃」と同じです。以前、トンボの見越し射撃のお話しをご紹介しましたが、テッポウウオも出来るようです。
優れたインターセプター、トンボの過去記事はこれです↓
トンボとスピットは究極のインターセプター高度な機動のヒミツ

運河の堰を観光船が行くdownsize
(運河の堰を観光船が行く)
次の位置を予測して撃つ「見越し射撃」です
まるで見越し射撃、あるいは、クレー射撃のようみかけの位置に惑わされず真の的の位置を計算、推測することでヒット出来ます。その上自らも泳いで3次元空間を移動しながら撃つので運動法則によるシミュレーションはフクザツなものになります。
研究者はこの水鉄砲テクをballistic hunting technique(弾道発射技術の意?)と呼んでいます。


ストラスブールは水の都ですREVdownsize
(ストラスブールは水の都です、運河に家並みが溶け込む景色)
“凄ワザ”は生まれつきじゃない、未熟だと当たらない
でも生まれつきの“凄ワザ”ではなさそうです。テッポウウオは集団で棲みます。そして水鉄砲の腕前には個体差があるそうで、若い未熟なテッポウウオはゆっくり動く(1cm/秒)標的でも当てられません。

アルザス博物館の素朴な看板は家族でしょうかdownsize
(アルザス博物館の素朴な看板は家族でしょうか)
ベテランの水鉄砲を観察してワザを学ぶ
実は、テッポウウオの若者たちはベテランの水鉄砲を見ることで発射のコツを学ぶようなのです。ベテランのテッポウウオが水鉄砲で当てる(のと外す)のを何度も見ていると未熟だった若者テッポウウオが“練習なし”に高速標的にも当てられるようになったそうです。

青空をバックに木組みが描く幾何模様downsize
(青空をバックに木組みが描く幾何模様)
他者の視点に立って物を捉える高度な認知
他者の視点で対象物を捉える「視点取得」だそうです。どのテッポウウオでも集団のメンバーが水鉄砲を撃つのを観察するだけで練習なしに高い命中率で水鉄砲が撃てるようになります。
標的の餌との角度も距離も、観察している未熟なテッポウウオとは異なる離れた場所からのベテランメンバーの発射特性まで脳でマッピングしていることになります。「心の理論」とまではいきませんが、「相手の立場で物事を見る」と言う高度な認知を行っているようです。


テッポウウオの射撃ナショジオ原画downsize
(テッポウウオの水鉄砲;お借りした出典はこれ↓)
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9687/(リンクなし)

流体力学も知ってるの?口の形で弾道微調整
テッポウウオは水鉄砲の放物線3次元弾道だけでなく標的の3次元の動きも勘定に入れなければならないはずですが、学習で(魚にしてみれば)高いところを高速で飛ぶ餌でも正確に撃ち落とせるようになります。また、テッポウウオは水鉄砲がうまく餌に当たるように絶えず口の形を変化させて微調整をしているようなのです。テッポウウオはまるで水の流体力学も心得ているようです。

テッポウウオは視力も抜群です
テッポウウオの水鉄砲ミサイルの腕前からして目もかなり良さそうです。テッポウウオ君に「ランドルト環視力テスト(Landolt C test 、Cの上下左右を答えるお馴染みの視力検査)を行ってみると淡水魚のなかでは抜群の視力だったそうです。また、“分解能”(最小分解視角(minimum separable angle)を反映する網膜中心窩の視細胞密度も高かったそうです。

凄ワザを買われて視覚研究のモデルになりました
どうです、テッポウウオ君は凄いハンターだと思いませんか。最近テッポウウオは視覚の研究の優れたモデル動物としても注目されているようです。

出典①: 日経サイエンス2016年6月号P.90 「魚は天才ハンターだ」 “Einstein of the Sea” Jonathan Balcombe氏執筆 (原典:“Einstein of the Sea” Scientific American June 2016)
出典②: “Animal Cognition: How Archer Fish Learn to Down Rapidly Moving Targets” Stefan Schuster Saskia Wöhl Markus Griebsch Ina Klostermeier Current Biology Volume 16, Issue 4, p378–383, 21 February 2006
出典③: “Archer Fish Learn to Compensate for Complex Optical Distortions to Determine the Absolute Size of Their Aerial Prey” Stefan Schuster, 1, 2, , Samuel Rossel1, Annette Schmidtmann, Ilonka Jäger, Julia Poralla Current Biology Volume 14, Issue 17, 7 September 2004, Pages 1565–1568
出典④: “A comparison of behavioural (Landolt C) and anatomical estimates of visual acuity in archerfish (Toxotes chatareus)” S.E. Templea, D. Maniettaa, S.P. Collina Vision Research Volume 83, 3 May 2013, Pages 1–8
出典⑤: ウキペディア記事「テッポウウオ」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%86%E3%83%83%E3%83%9D%E3%82%A6%E3%82%A6%E3%82%AA(リンクなし)
出典⑥: National Geographic 日本版 記事「テッポウウオの狙撃能力の秘密を解明」 2014.09.05
http://natgeo.nikkeibp.co.jp/nng/article/news/14/9687/(リンクなし)


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コメント

Re: 感動のあまり、コメントします

lakme様コメントありがとうございます。私も、テッポウウオの知恵と技には感心しました、屈折によるズレの補正に注目して数年間もテッポウウオを地道に飼育、訓練、試験をした研究者にも。
おっしゃる通り生き物はまだまだ人智が及ばないナゾ、知恵、技を持っていると思います。思い上がらずに周りの生き物とうまくやっていかなければいけませんね。

> 凄いです。今さっき読んだ、カンガルーの赤ちゃんは母親の100000分の1の大きさで生まれるという記事より感動しました。水面の屈折率を計算したり、師匠から見よう見まねで学んだり。最近の研究で、動物達は人間が想像していた以上の知能を持っていたことが次々と分かってきているようですね。本当に、もっと彼らをいたわって、尊敬して共存していかないといけませんね。

感動のあまり、コメントします

凄いです。今さっき読んだ、カンガルーの赤ちゃんは母親の100000分の1の大きさで生まれるという記事より感動しました。水面の屈折率を計算したり、師匠から見よう見まねで学んだり。最近の研究で、動物達は人間が想像していた以上の知能を持っていたことが次々と分かってきているようですね。本当に、もっと彼らをいたわって、尊敬して共存していかないといけませんね。
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