苦味を知れば百戦危うからず、病原体を瞬殺

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赤いシクラメンdownsize
(赤いシクラメン、我が庭の鉢植えです)
苦みを知ることで病原菌を撃退・・
・・・するらしいです、苦味のセンサーが病原菌を探知・撃退するから。添えるフォトはたいていの苦みのもと、美しい植物のフォトです(わが庭の)。




五味を感じる味覚受容体
味覚には甘味、旨味、苦味、酸味、塩味五味があり(辛味は痛覚で味覚ではない)、食物中の呈味成分(味)を味覚受容体が「五味」として検知し、神経を介してその情報が脳に伝わることで「味覚」として“意識”されます。

白梅downsize
(白梅、ほんのり紅い色調が美しいです)
味覚受容体は化学物質センサーです
味覚受容体は呈味物質(味がある化学物質)を検出する「化学センサー(chemo-sensor、化学受容器、chemo-receptor)」で、この化学センサーの本体「味覚受容体」の仕組みは広く真核生物に共通です。
哺乳類の味覚受容体のうち、甘味受容体、旨味受容体、苦味受容体は細胞膜を7回貫通するドメインを持つGPCR(Gタンパク質共役受容体)でよく似た構造を持っています。


桃の花downsize
(桃の花、毎年よく咲いてくれます)
30種もの苦味受容体で多種多様な「毒」を検出
甘味受容体と旨味受容体はT1Rファミリー(よく似たタンパク質のグループ)のたった3種(の2個の組み合わせ)なのに、苦味受容体のT2Rファミリーは30種前後もあります(更に組み合わせで種類が増える)。苦味受容体が多種あるのは自然界の多種多様な毒物に対処するためと考えられています。


舌以外にも体中にある味覚受容体
舌には「味」を感じる味覚受容体がありますが、舌以外の体の様々な臓器にも味覚受容体があることが分かってきました。


濃赤のクリスマスローズdownsize
(濃赤のクリスマスローズ、花が首を垂れる恥ずかしがり屋)
苦味受容体は食べ物の毒を避ける防御システム
苦味のもとは植物アルカロイドなど食物中の毒物などが多く、「苦味」の味覚は食物中の毒物を検出する適応と考えられ、苦味を感じれば食べるのを避け、飲み込まずに吐き出す、言わば防御システムです。

1日1万リットルの空気を吸う鼻腔の苦味受容体
呼吸器系(鼻腔、気管支、肺)の入り口、鼻(鼻腔)はヒトでは1日1万リットルもの空気を吸い込みますが、そのとき細菌など病原菌も吸い込みます。だから、鼻腔は言わば感染防御の最前線です。著者らはその鼻腔の粘膜には苦味受容体(T2R)と甘味受容体(T1R)があることを明らかにしたそうです。

白いサクラソウdownsize
(白いサクラソウ、清楚で可憐な風情です)
「早期警戒機」苦味受容体が病原体を探知して撃退する
出典著者Robert J. Lee氏らの研究で、呼吸器系の苦味受容体(T2R38)は外から侵入してきた病原体など細菌が出す“苦味”AHL(acyl-homoserine lactone、アシル化ホモセリンラクトン)を“感じ取り”自然免疫系(innate immunity)と協力して病原体を殺すことが分かりました。

自然免疫にスクランブルをかけ、自らは毒ガス発射
呼吸器系の苦味受容体は侵入敵をいち早く見つけ自然免疫をスクランブル発進させ迎撃させる「早期警戒機」のようなものです。
苦味受容体はAHLなどの苦味物質を検出すると、
(1)ひとまず自然免疫系に「スクランブル発進をかけ」抗菌タンパク質ディフェンシンを分泌させ、
(2)自らも“毒ガス”一酸化窒素(NO)(※)を放出して、菌などを瞬殺するとともに、
(3)気管の繊毛運動(MCC)を高めて細菌の排出を促します。
(※:一酸化窒素(NO)は菌にとっては毒で、大気汚染物質ですが、ヒトの神経や血管などでは大切な働きをしています)


スノーフレークdownsize
(スノーフレーク、小さなランプシェードみたい)
本隊「獲得免疫」出動まで「自然免疫」が水際で初期防衛
相手を見極め特定の病原体やがん細胞を抑える獲得免疫系は特異的で強力ですが、準備や出動に時間がかかります(数日~数週間)。一方、より古くからある自然免疫系は相手を子細には確認せず取り敢えず速やかに出動、初期防衛活動にあたります。本体到着までひとまず水際で防ぐのが自然免疫系です。


呼吸器系の「甘味」とは?粘膜のグルコースです
呼吸器系にあるもう一方の味覚受容体、甘味受容体は何をしているのか?どうやら自然免疫が行き過ぎないようにブレーキをかけるようです。甘味受容体は粘膜のグルコースの「甘味」を感知します。

ラッパスイセンdownsize
(ラッパスイセン、一輪だけ咲いています)
感染が収まれば甘味受容体が自然免疫のスイッチを切る
(1)細菌が増えていない鼻腔などの粘膜では苦味受容体は働かず、またグルコースが潤沢で“甘く“甘味受容体が働き自然免疫系はスイッチオフ状態です。
(2)病原菌が増えるとグルコースが消費され、菌からAHLなど苦味物質が放出されるので、甘味受容体は働かず、苦味受容体が働き、自然免疫系はスイッチオンとなります。
(3)感染が収まると再びグルコースが増え甘味受容体が自然免疫系のスイッチを切るようです。


苦味に鈍感だと感染症に罹りやすい
ヒトの苦味受容体の一種(T2R38)には遺伝子多型があり、苦味に敏感なスーパーテイスターと鈍感なノンテイスターがあります。ノンテイスターは苦味に鈍感なだけではなく、感染症の罹りやすい、特に「蓄膿症」(副鼻腔炎)の罹りやすく、その場合の病状も重い(手術が要るかなど)そうです。

“コ-ヒーの苦み”で感染を予防、治療
出典著者は、コーヒーの苦みなど苦味物質をうまく使えば自然免疫系を活性化させることで、副鼻腔炎などの感染症を予防、治療に応用できるのではないか、これにより抗生物質の使用を減らせるのではないか、と提唱しています。

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出典:日経サイエンス2016年5月号P.72 「体を守る苦味受容体」 “Bitter Taste Bodyguards” Robert J. Lee氏、Noam A. Cohen氏共同執筆
出典(原著論文):”Bitter and Sweet Taste Receptors Regulate Human Upper Respiratory Innate Immunity”, Robert J. Lee e. al. Journal of Clinical Investigation vol.124 No.3 P.1393 (2014)
出典(ウェブ記事):コーヒー科学研究室「味覚受容体」
https://sites.google.com/site/coffeetambe/coffeescience/physiology/taste/receptors(リンク貼っていません)
出典(脳科学辞典):「味覚受容体」田中暢明氏執筆
https://bsd.neuroinf.jp/wiki/%E5%91%B3%E8%A6%9A%E5%8F%97%E5%AE%B9%E4%BD%93(リンク貼っていません)


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