エリマキシギの「三つ巴の恋のから騒ぎ」を操る超遺伝子+アルザスのかわいい街コルマー

エリマキシギの「三つ巴の恋のから騒ぎ」を操る超遺伝子+アルザスのかわいい街コルマー



エリマキシギの三つ巴の恋のから騒ぎ
(エリマキシギ、三つ巴の恋のから騒ぎ)
ユニークで楽しいトリさんの恋の駆け引き
ニワシドリ、フウチョウ、グンカンドリなどトリさんの求愛行動は変わった面白いものがたくさんありますね。今回の主役エリマキシギの恋愛騒動もかなりユニークです。





こぼれそうなテラスの花街中が花に溢れてるdownsize
(こぼれそうなテラスの花、コルマーは街中が花に溢れてる)
アルザスのかわいい街コルマー
本題のフォトがないので、何の脈略もないのですが、フランスはアルザス地方のコルマー(Colmar)のフォトを添えます。小さいけれど素敵に美しい街でした。コルマーの過去記事はこれです↓
アルザスの小さな宝石箱コルマー訪問番外編
「おとぎの国」コルマー紀行


カフェの木陰で水音を背に一服downsize
(カフェの木陰で水音を背に一服)
ひだ襟をまとったその名も優雅なエリマキシギ
さて本題、エリマキシギ(襟巻鷸、Philomachus pugnax)はチドリ目シギ科のユーラシア大陸などに棲む渡り鳥でルネサンス絵画の人物が付けている「ひだ襟(Ruff、Fraise)」のような羽衣が雄にあることが名の由来だそうです。

エリマキシギ雄の行動を操る超遺伝子
(エリマキシギ雄の行動を操る超遺伝子)
エリマキシギは三つ巴の恋のから騒ぎ
エリマキシギの雄は雌にアピールするためレック(Lek)と呼ばれる集団求愛場に集まって競い合います。そのエリマキシギの雄には外見も行動も全然違う3つのタイプがあります。

その1:なわばり死守、攻撃的な雄
「なわばり型(independent)」:例の「ひだ襟」が茶色と黒色でなわばり意識が強くレック(集団求愛場)の中で自分のなわばりを守ろうとする“攻撃的な”雄

その2:やさ男のプレイボーイ
「サテライト型(satellite)」:白い「ひだ襟」をまとい「なわばり型」の雄のなわばりに侵入、隙を見て近くの雌と交尾する“やさ男”の雄

その3:雌そっくり、“おねぇ”な雄
「雌擬態型(faeder)」:「ひだ襟」もなく外見が雌にそっくり、これを利用して他の雄と雌の出会いに割り込み「なわばり型」の雄の隙をついて雌に飛び乗り交尾する“おねぇ”な雄。
でも時々雌に間違われて“飛び乗られる”ことも・・。


カラフルな家々downsize
(カラフルな家々、コロンバージュ(Colombages)の木組みが良いアクセント)
三つ巴は「超遺伝子」のイタズラ
これらの雄の外見や行動の違いが単一の遺伝的な因子によって生じていることが分かりました(1995年、Burke氏ら)。でも同一の種なのに雄たちがこんなにも複雑に違った外見と行動をとるのはたくさんの遺伝子が関わっているはずなのに、なぜ?・・と調べたところ「超遺伝子」の働きであることがわかったそうです。

125個の遺伝子が1つのパッケージ、「超遺伝子」に
昨年2015年、Burke氏らとLeif Andersson氏らとが(独立に)これらの雄の行動を決めているのは125個の遺伝子が一続きになった長さ450万塩基の長大な遺伝子群、「超遺伝子」であることを明らかにしました。

川面のレストランとホテルdownsize
(川面のレストランとホテル、静かな水辺です)
仔は親のコピーじゃない
有性生殖では雄(父親)由来の染色体と雌(母親)由来の同じ染色体がペアを作り、更に2本の染色体(DNA鎖)は何か所か同じ部位で遺伝組み換えを行い(相同遺伝子組み換え)、常に少しずつ違った子孫が生まれます。これに遺伝子の突然変異も加わり変化する環境や生態に呼応して変種が生まれ進化が進んでゆきます。

「超遺伝子」なら3タイプの雄を説明できる?
行動のような複雑な働きには多くの遺伝子が関わるはずなのに3つの雄のタイプが単一の遺伝的因子によるように見えるこのようなエリマキシギのフシギは多くの遺伝子がワン・パッケージで伝わる「超遺伝子」なら説明可能です。

ツールドフランス応援飾り近景downsize
(ツールドフランスの応援飾りがある家)
エリマキシギの超遺伝子の仕組みを明かす
ではどうして組み換えが起こらずまとまって動くのか?Andersson氏らはエリマキシギの雄の行動を決める「超遺伝子」がどのような仕組みで出来て働いているか、「超遺伝子の仕掛け」も明らかにしました。

染色体の一部が逆転するとまとまって動く
11番染色体の125個の遺伝子DNA鎖のつながりの一部が逆さまになっていたのです(「逆位」、逆でもちゃんと遺伝情報は読み取れる)。これなら染色体のペア間で組み換えは起こらず行動を決める多くの遺伝子がひとつながりの“ワン・パッケージ”で仔に伝わります。

アイロンが看板downsize
(アイロンが看板になってるランドリー、わかり易い)
雄性ホルモンが弱い超遺伝子で“おねぇ”「雌擬態型」に
380万年前に11番染色体に「逆位」が起こり、ひっくり返った遺伝子群は組み換えが起こらず「超遺伝子」になりました。その中に雄性ホルモン、テストステロンの働きを弱める変異があり「雄らしさ」が弱くなわばりをもたない形質になりました。この超遺伝子の染色体1本を持つのがまるで「おねぇ」のような「雌擬態型」です(ヘテロ接合型)。
なお、両方とも逆位の遺伝子(ホモ接合型)は致死的で生まれてこないそうです。


色なし超遺伝子で白ひだ襟のプレイボーイ「サテライト型」に
その後50万年前に逆位の超遺伝子の一部がもう一度ひっくり返り(もとに戻る、)別の新しい「超遺伝子」が生まれ、その中に羽毛の色遺伝子の変異があり白い羽毛の形質になりました。この一部戻った染色体1本を持つのがなわばり意識が薄く白いひだ襟の「サテライト型」です(ヘテロ接合型)。
そして、最も雄らしい「なわばり型」はこれらの変異した超遺伝子をまったく持ちません(ホモ接合型)。

コルマーはフランス北東部アルザス地方にあります
(コルマーはフランス北東部アルザス地方にあります)
超遺伝子と言う“概念“
「超遺伝子」とは染色体上に隣り合って並んだたくさんの遺伝子群がまるで“1つの遺伝子”であるかのように振る舞い遺伝していくフシギな遺伝子群です。これらの遺伝子は互いに遺伝的連鎖が強く関連した機能を担うため「超遺伝子」として振る舞うと考えられています。

超遺伝子の実態
20世紀初頭にはすでに、昆虫の体色に関わる遺伝子群が「全か無か」式にまとまって遺伝するのを説明する仮設として「超遺伝子」が提唱されていました。しかし「超遺伝子」の実態が分かったのは最近で、遺伝子を読み解く(ゲノム塩基配列解読)が高い精度と安いコストで可能となり昆虫やトリで実際に超遺伝子が見つかっています(チョウ、アリ、スズメ)。

超遺伝子を初めて捉えたアカヒアリの女王選び
超遺伝子の実態はアカヒアリ(fire ant、Solenopsis invicta)で初めて捉えられました。アカヒアリは1匹の女王(BB型)を中心とするコロニーを作りますが、1つのコロニーに複数の女王(Bb型)が共存する遺伝的なグループがあります。働きアリ次第で複数女王を受け容れるか否か、が決まり複数女王(Bb)と同じ遺伝子の働きアリ(Bb)の場合のみ複数女王を受け容れ世話をするそうです。2013年Yannick Wurm氏らはこの行動を決めている実際の「超遺伝子」を見つけたそうです。

でも超遺伝子ではなく単一遺伝子だったシロオビアゲハの擬態
長らく超遺伝子の働きと考えられていたものがたた1個の遺伝子の働きだと分かった例もあります。自然はまだまだフシギを隠しているようですね。
シロオビアゲハ擬態の正体遺伝子の過去記事はこれ↓
「毒入り」は嘘ぴょ~ん、遺伝子のドミノ倒しで作る蝶の擬態+フランスの看板

↓良かったらクリックをお願いします


出典: natureダイジェスト 2016年1月号(Vol.13(1) January 2016) 「『超遺伝子』で決まるエリマキシギの恋のアプローチ法」
(※以下のURLはリンクを貼っていませんのでコピペで訪問してください)
原典: “Structural genomic changes underlie alternative reproductive strategies in the ruff (Philomachus pugnax)” Lamichhaney, S. et al. Nature Genetics 48, 84–88 (2016) doi:10.1038/ng.3430 http://dx.doi.org/10.1038/ng.3430
原典: “A supergene determines highly divergent male reproductive morphs in the ruff” Küpper, C. et al. Nature Genetics 48, 79–83 (2016) doi:10.1038/ng.3443 http://dx.doi.org/10.1038/ng.3443
出典: 科学ニュースの森 「社会性染色体の発見」(2013年01月19日) http://blog.livedoor.jp/xcrex/tag/%E8%B6%85%E9%81%BA%E4%BC%9D%E5%AD%90
原典: Science News “New 'social' chromosome discovered in the red fire ant” Queen Mary, University of London (2013年1月16日) http://www.sciencedaily.com/releases/2013/01/130116131403.htm
関連出典: 「アリの社会構造決めるカギは『超遺伝子』にあり、国際研究」 2013年01月18日 15:15 発信地:パリ/フランス http://www.afpbb.com/articles/-/2921713
出典: ウキペディア記事(英文)”Supergene“ https://en.wikipedia.org/wiki/Supergene


過去の記事リストは下のイラストをクリック ↓ (日本国内と南の島の記事は「ヨーロッパの話題」にまとめています)
パリの話題minisizeREVフランス街歩きminisizeREV
ヨーロッパの話題minisizeREV生き物とちきゅうのお話minisizeREV
ヒコーキの話minisizeREVグルメ話minisizeREV

1クリックで1円、協賛企業から寄付されます
大震災支援募金新アイコンKT20131025

ホスピタリティクリック募金

東松島市の仮設住宅の方々の工芸品ご紹介のブログにリンクしています
banner-himawari2.jpg

スポンサーサイト

テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する