凡作だけど地味に頑張ったキティホーク、誰にでも取り柄はあるもの

凡作だけど地味に頑張ったキティホーク、誰にでも取り柄はあるもの

次のフライトに向け給油中のP-40ウォーホーク(IWMにて)REVdownsize
(次のフライトに向け給油中のP-40ウォーホーク(IWM博物館にて))
レジェンドを訪ねて・・・
すみません、まったくマニアックで、えこひいきで、勝手なヒコーキ記事です。添えるフォトはイギリスのRAF博物館、IWM博物館で出会ったP-40キティーホークです。飛ぶんですよ。





最大速度
(最大速度の比較)
ホークシリーズの「有終の美」なのか?
カーティス(Curtiss)社製ホークシリーズ、P-36 Hawk、P-40 Tomahawk/ Kittyhawk/ Warhawkはヒコーキ黎明期以来の名門でありながら没落してしまうカーティス社最後のまともなヒコーキで何千機と量産されながら誰も「名機」とは呼ばない凡作です。でも凡作ながら地味に頑張った「有終の美」なところが大スキなんです。

キティホークのシャークマウス横顔(RAF博物館)downsize
(キティホークのシャークマウス横顔(RAF博物館))
善戦したナイスバディ、でも無名
やられっぱなしのフランス空軍の中でも、また、「森と湖の戦い」のフィンランド空軍でも善戦したカーチス社製P-36ホークですが、趨勢を変える力は無かったようです。

3Dで味わう時代を先取りのデザイン??
でもネ、上から見ると細い胴体に丸い空冷エンジンを装備するため機首の後ろをグっと絞る“グラマーな”デザインはFw190、五式戦、テンペストⅡを数年は先取りしていたようです(多分、苦し紛れのツジツマ合せでしょうけど)。昔々確かレヴェルのP-36の1/72プラモを作りましたが、手に取って“3D”で眺めるとなかなかにセクシーなプロポーションでした。

さすがシャークマウス事始めよく似合うdownsize
(さすがシャークマウス事始め、P-40にはよく似合う)
エンジン強化でとっても“個性的”に・・・
そのP-36ホークの空冷エンジンを液冷アリソン・エンジンに強化したのがP-40B,Cトマホーク。更にパワーアップしたアリソン・エンジンを積むため大きなあご型ラジエーターをつけた“個性あり過ぎ”のP-40D以降のキテイホーク(ウォーホーク)。でもその後のカーティス社の開発や改良は「駄作っ機の山」となってしまいましたから、これがやっぱり「有終の美」なんだろうな。

エンジン馬力
(エンジン馬力の比較)
切られ役は地道に頑張るのみ
我らが「ゼロ戦」の前では“切られ役”だし、「アフリカの星」マルセイユには撃墜スコアを稼がせてあげたりと、駄作とまでは言わなくても「名家カーティス社凋落前の最後の量産機にして凡作」とされるP-40。でもネ、実は地道に地味に頑張った凡作機のようですよ。
実際1941-1942年頃の各国で現役の単発単座戦闘機の中で比べるとそれほど悪いパフォーマンスじゃないのが分かります。重すぎる感はありますけど・・・。


後姿のキティホークゆったりしたコックピットREVdownsize
(後姿のキティホーク、ゆったりしたコックピットも実戦では大事)
砂漠空軍では頑丈が取り柄
茫漠たる海と同じく砂漠は人煙も稀な砂と灼熱の世界、もしも墜落、不時着すれば偶然通りかかるキャラバンにでも出会わない限りやがては“干物“になる運命です。厳しい自然環境では何よりも頑丈さと信頼性がいのち。P-40の多少撃たれても平気、壊れてもちゃんと基地に戻ってくるその頑丈な機体構造は、RAF、RAAF、RCAF、RSAFなど砂漠空軍では最大速度や上昇率などの”カッコいい“カタログ性能にはない大事な取り柄でした。

翼面過重
(翼面過重の比較)
シャークマウス事始め
P-40の大きな下あごみたいなラジエーターを見ればやっぱり何か描きたくなるようです。北アフリカ砂漠のRAF、第3、第121中隊は最初にレンドリースのP-40を装備した飛行隊で機首にサメの口、シャークマウスを描いていました。どうやらこれが事始めらしく、以降多くの連合国軍機にシャークマウスの塗装が広まったようです。

キティホークIV(P-40N)だが「GA?」はRAF第112中隊Drake隊長機downsize
(キティホークIV(P-40N)だが「GA?」はRAF第112中隊Drake隊長機)
ニューギニアのパールハーバー
ニューギニアの東端にミルン湾はあります。関係者以外には忘れられてしまった(むしろ最初から知られていない)空戦ですが、破竹の勢いの帝国海軍航空隊の進撃を最初にRAAF(オーストラリア空軍)が何とか食止め踏ん張ったオーストラリアの”The Battle of Britain”だったのが「ニューギニアのパールハーバー」、ミルン湾の攻防です。その主役こそスピットじゃなくてオーストラリア空軍のP-40キティホークでした。


馬力過重
(馬力過重の比較)
「とりあえず頑丈で数が揃う」二線機、二流機と言われようとも
そもそも最先端性能を求める欧州の最前線には呼ばれず、場末のアフリカ戦線、ニューギニア戦線、あるいはレンドリースによりロシア戦線で、「とりあえず数が揃う」とか、「酷い環境でもひとまず使える」とか、「頑丈で色々使えて便利」とかで投入されたトマホーク、キテイホーク(P-40B、CからD,M、Nまで)でしたが、華の戦闘機よりは地上軍協力の戦闘爆撃機として地味に、地道に酷使に耐えて立派に働きました。

90度回転し収納の独特メカの主脚downsize
(90度回転し収納する独特メカの主脚)
低空じゃめっぽう強いアリソンエンジン
高空に登れば空気が薄くなります。そのため、車でも富士山に登るとパワーが落ちますよね。ピストンエンジンのヒコーキも同じ。だから薄い空気を圧縮してエンジンに送りこむ過給機が要るのですが、キティホークのアリソンエンジンのそれはショボくて富士山の高さ3000mにも登ればハァハァ、ゼーゼー、パワーが出ないんです。

低空で名人が操れば無敵
でも低空なら無敵、同じくアリソン装備のムスタングMk1A(P-51A)戦闘偵察機は単機で侵空し結構フォッケを墜としてますし、P-40トマホーク、キティーホークでも「弘法筆を選ばず」と、Clive Caldwell, Neville Duke, Johnny Frost, Eddie Edwardsなどなど有名なRAFエースがいます、アフリカ戦線では。

砂漠空軍P-40のKill Ratio
(砂漠空軍P-40のKill Ratio)
砂漠空軍P-40はスコア3:1の善戦
1941年から1943年の2年間の砂漠の空戦(Desert war)で、彼らエースたちの属したP-40装備3飛行隊は100機のロス(事故を含む)で283機の戦果、その比率kill ratioは約3と、相手が独伊混成とは言えなかなか善戦です。

本命が来たら雑用に回されちゃった
しかし、ルフトバッフェ(独空軍)が本腰を入れてBf109のF型やFW190をアフリカのDesert warに投入し始めるとRAF(英空軍)もスピットのV型さらにIX型を投入、それまで一応「戦闘機」扱いだったP-40キティホークは地上軍支援の雑役に回されてしまいました。苦しいときに頑張ったのに・・・。


航続距離
(航続距離の比較)
液冷に換装で「九八式戦闘機」の出来上がり
P-40の初飛行は1938年、既に実用化されていたP-36の空冷エンジン(Pratt & Whitney R-1830-17 Twin Wasp 1,050 hp)を液冷エンジン(Allison V-1710-39 液冷V12 1,150 hp)に換装したのがP-40で、米国製「九八式単座戦闘機」でしょうか?三式戦から五式戦の逆ですね。

17か国が使った「無事これ名馬」
P-40トマホーク/キティホークは凡庸な性能ながら頑丈で使いやすく世界17か国で運用されました。キティホーク(P-40E Kittyhawk)の諸元は以下の通りです。P-40 トマホーク/キティホーク/ウォーホーク(Tomahawk/ Kittyhawk/ Warhawk)って「斬られ役」のイメージですが、「無事これ名馬」だったのかも?

P40三面図REV
(P-40三面図、お借りしたものを少し加工しています)
カーティス P-40 キティホークの諸元
(Curtiss P-40E Kittyhawk)
乗員:1名
全長:9.66 m
全幅:11.38 m
全高:3.76 m
動力:Allison V-1710-39 液冷V12 1,150 hp
主翼面積:21.92 平方m
全備重量:3,760 kg
翼面過重:171.5 kg/平方m
馬力過重:3.72kg/hp
最大速度:時速580 km
航続距離:1,100 km
上昇限度:8,800 m
上昇率:毎分640m
武装:0.50 in (12.7 mm) Browning 機銃×6丁、爆弾(最大)907 kg


出典: Osprey Aircraft of the Aces 38 “Tomahawk and Kittyhawk Aces of the RAF and Commonwealth” 2002年 Andrew Thomas氏著 (Osprey Publishing Ltd.)
出典: Ballantine’s Illustrated History of World War II “Pacific hawk” 1970年 John Vader氏著、宇都宮直賢氏訳、邦題「空戦<山本長官ソロモンに散る>」 (1971年 サンケイ新聞社出版局)


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コメント

Re: No title

yoyoさんいつもありがとうございます。P-40といえばサメの口、昔のP-40のプラモにはサメ口デカールが付いていました。Ju52タンテを覚えていてくださってうれしいです。レジェンド機も見られるla ferté alletの近くにお住まいなのがうらやましいです。プロペラ機はみな飛ぶ音に特徴があって楽しいですね。パリで大変なことが起こりましたが、無事でお過ごしのようで何よりです。

> kenjiさん、こんにちは、ご無沙汰しております。
> このサメ顔の飛行機、懐かしいですね〜。
> 確か子供の頃一度作った記憶があります。
> アメリカというと、シャーマン戦車にもこの手の顔を描いたものがありましたね。
>
> 時々 la ferté allet の近くにあるスーパーに行くと、色々な古い飛行機が飛んでいるのを見かけます。
> 一度ブログでも紹介されていた、ドイツ軍の大型で四角い飛行機も飛んでいました。大きいせいかゆっくり飛んでいるように見えますね。プロペラの音にも特徴がありました。
> 見かけた時には興奮してしまいました。(^^)

No title

kenjiさん、こんにちは、ご無沙汰しております。
このサメ顔の飛行機、懐かしいですね〜。
確か子供の頃一度作った記憶があります。
アメリカというと、シャーマン戦車にもこの手の顔を描いたものがありましたね。

時々 la ferté allet の近くにあるスーパーに行くと、色々な古い飛行機が飛んでいるのを見かけます。
一度ブログでも紹介されていた、ドイツ軍の大型で四角い飛行機も飛んでいました。大きいせいかゆっくり飛んでいるように見えますね。プロペラの音にも特徴がありました。
見かけた時には興奮してしまいました。(^^)

Re: No title

エヌエフ様いつもありがとうございます。過分なコメントをいただき赤面なのですが、技術屋の性でしょうか、どうしても数字を比べたりグラフにしてみたくなるだけなんです。おっしゃる通りP-40ほどカッコよくシャークマウスが似合うヒコーキはないんじゃないでしょうか?エヌエフさんの黒のJohn Player Special、艶っぽくていいですね、楽しみにしております。

> おはようございます。
> 少年時代に見ていたP40・・・ プラモの箱に描かれるサメの顔は、どれも凶悪に見えてとても強そう。
> 日本機ファンだった私は、その姿(実は内心とてもカッコよく見えていた^^)に強い嫉妬心を抱いていたのを思い出します。
>
> 様々な面からの性能を、解りやすい図説で示して頂けるのが、私のような半端ヒコーキマニアには大いに役立ちます。
> あらためて勉強になるし、何よりとても興味深く楽しませてもらってます。

No title

おはようございます。
少年時代に見ていたP40・・・ プラモの箱に描かれるサメの顔は、どれも凶悪に見えてとても強そう。
日本機ファンだった私は、その姿(実は内心とてもカッコよく見えていた^^)に強い嫉妬心を抱いていたのを思い出します。

様々な面からの性能を、解りやすい図説で示して頂けるのが、私のような半端ヒコーキマニアには大いに役立ちます。
あらためて勉強になるし、何よりとても興味深く楽しませてもらってます。
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