精巧なミクロの「カメラ眼」を持つ単細胞プランクトン+光溢れるサイパン石垣の海

精巧なミクロの「カメラ眼」を持つ単細胞プランクトン+光溢れるサイパン石垣の海

ワルノヴィアのオセロイドの仕組み
(単細胞ワルノヴィアの単眼型眼点オセロイドの仕組み)
ミクロの「カメラ眼」で光を感じる単細胞プランクトン
0.1mm以下の単細胞の植物プランクトンのワルノヴィア科渦鞭毛藻(Warnowiaceae)は0.01mmのミクロの「カメラ眼」オセロイド(ocelloid、単眼型眼点)で光を感じて泳ぎ回る、いまだナゾの多い生き物です。そのミクロの眼(眼点)の仕掛け、成り立ちや進化が見えてきたと言うサイエンス小ネタです。





01ロクセンスズメダイ
(ロクセンスズメダイはせわしくサンゴ礁を出たり入ったり)
南の太陽が溢れるサイパンの海、石垣の海
海と光つながりでサイパン・ダイビング、石垣島ダイビングの過去記事のフォトを添えています。文末に過去記事へのリンク貼ってます。

02流れ着いたヤシ
(サイパン浜辺には流れ着いたヤシが生えてます)
運動も光合成もするウズベンたちは一大ファミリー
略して「ウズベン」、渦鞭毛藻類(dinoflagellates)は、渦鞭毛虫とも呼ばれ、光合成するのに鞭毛で泳ぎまわり一部は肉食と、”変な”単細胞生物です。直径わずか数10μm(0.1mm以下)ながら、系統分類では「綱」(渦鞭毛藻綱)にまとめられるほど多様で大きなグループです。

03ハナクマノミ2
(ハナクマノミと目が合った、石垣島ダイブ)
ウズベンは2本の鞭毛で俊敏に泳ぎます
ウズベンたちは2本の鞭毛を持ち、1本を鞭のように打ち振ることで前進し、もう1本は方向転換用で、急停止、急発進、急ハンドル、急回転など敏捷な運動が出来ます。

04マンタ
(石垣島のクリーニングポイントをゆったり周回するマンタたち)
単細胞のくせにカメラ眼持ってます、ワルノヴィア渦鞭毛藻
渦鞭毛藻類ファミリーのワルノヴィア科(いかにもワルそうな名前)たちは、顕微鏡サイズの直径20-30μmの単細胞のくせに約10μm(0.01mm)とミクロサイズながら、ベッド脇などに置く電気スタンドのような形の、ヒトの眼にも似た複雑な「カメラ眼」構造の単眼型眼点、オセロイドを持っています。小さな彼らはこの“カメラ眼もどき”でいったい何を“見て”いるのでしょうか?

05午後の海
(サイパンのホテル、テラスから眺める午後の海は青くまぶしい)
稀少で繊細、ワルノヴィアはナゾのプランクトン
ワルノヴィア科の渦鞭毛藻類たちは海のプランクトンで数が少なく珍しい上に、培養が出来ず、採取して実験室に持ち帰ってもすぐ死んでしまいます。そのためいまだにナゾに包まれたフシギな単細胞生物です。

06黄金の海に
(黄金の海に陽が落ちてゆくサイパン浜辺)
ワルノヴィアの単眼型眼点、オセロイドのナゾに迫る
ワルノヴィアのオセロイドの構造は1968年の研究で報告されていたようですが、何からどのようにしてできているのか?などは分かっていなかったようです。
そこで米コロンビア大学のGregory S. Gaveils氏たちはいくつかのワルノヴィア科の渦鞭毛藻たちのオセロイドの構造や由来、更にその進化を最新の手法で研究し今年2015年Nature誌に報告しました。


07クマノミ
(クマノミのペア、石垣島ダイブ)
眼点で光の方向を感じる単細胞プランクトン
植物プランクトンは光合成のため光を求めて運動します(走光性:光に向かう「正の走光性」、光から遠ざかる「負の走光性」)。そのためには光、特に光の方向を感じ取る必要があります。ワルノヴィアなど多くの単細胞生物の眼点には色素顆粒があり特定の色(波長)の光を遮ることで光の方向性を感知しているようです。

08夜明けの海
(スコールが上がったサイパン夜明けの海)
光を感じてプランクトンは浮かんだり、沈んだり
多くのプランクトンは光を感知して移動します。昼、植物プランクトンが海面に上昇し、動物プランクトンは深みに留まります、夜にはこの逆。この日周性の垂直移動を可能にするのが眼点による光の方向の感知です。

09カスミチョウチョ
(人懐っこいカスミチョウチョの大群)
最新技術と名人技を駆使したオセロイドの研究
Gaveils氏たちは、顕微鏡観察、顕微解剖(顕微鏡で見ながら小さな生きものを解剖する “名人芸”)、“細胞の部品“(細胞小器官、organelle)ごとのDNA分析(究極の“名人芸”!)などを駆使し、コンピューターによる3次元化も行い、ワルノヴィアのオセロイドの構造、成り立ち、進化を研究しました。

10木陰でのんびり
(木陰でのんびり漁の支度をするサイパンの漁師さん)
単眼型眼点、オセロイドは紅藻からパクった材料で出来ている
Gaveils氏たちは(1)“角膜”はミトコンリアから、(2)赤い杯状構造の“網膜”は色素体から出来ている、ことを明らかにしました。更にDNAを調べてその色素体が紅藻由来であることが分かったそうです。

11ハナクマノミ6
(ハナクマノミが頭上を警戒、石垣島ダイブ)
囚われの部品になっても昔自由だった頃のDNAを持っています
ミトコンドリア、葉緑体、色素体など“細胞の部品“、細胞小器官は、もともと餌だったものが、ひょんなことで細胞内に棲みつくようになり、宿主の真核細胞の部品として新しい働きを担うように進化してきました。「細胞内共生」と言います。しかしそれぞれには昔単独で生きていた頃のDNAが遺残していて、宿主のDNAとは違うため由来や進化を調べることができます。

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今回載せましたサイパン島・石垣島ダイビングのフォトの過去記事はこれ、クリックで飛びます↓
ブルーはサンゴの恋の色+試験管で眼が出来た
南極の孤立と生物地理学の冒険者たち サイパンの浜辺
3つのWが運ぶ海洋島のユニークな生き物 生物地理学の冒険者2
6月の海は恋の季節石垣島ダイビング記
珊瑚礁の宝石、色鮮やか魚たち 石垣島ダイビング番外編
集まったり別れたりふしぎな砂の物語 + サイパンビーチ寸景

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少しずつ複雑にやがてオセロイドに・・
このような研究から、ウズベン、渦鞭毛藻類の系統進化では眼点は(1)簡単な杯型の構造から→(2)色素を持つ杯型構造へと進み→(3)やがて透明なレンズを持ち→(4)更にレンズが角膜のような膜で覆われたワルノヴィアの複雑な単眼型眼点、オセロイドにまで進化したようです。

“「食べたヤツ」を食べた“ワルノヴィアの眼は二次細胞内共生
ワルノビアのオセロイドの場合、紅藻そのものが昔、細胞内共生で色素体を取り込んでいます。色素体の元になった微生物がまず紅藻に、次いで紅藻がワルノヴィアに、と2段階の取り込みが起こった「二次細胞内共生」です。

単眼型眼点は独立に何度も進化した
ワルノヴィアのオセロイドほどには複雑でなくても、緑藻類コナミドリムシ、クリプト藻類グィラルディア・セータ、コウマクノウキン門の真菌など、さまざまな単眼型眼点を持つ単細胞真核生物がたくさんいます。しかし、彼ら同士は系統分類ではかけ離れており、色素顆粒膜など眼点部品の調達も一次細胞内共生、二次細胞内共生とさまざまです。

繰り返されるデザインで非なる物が似る「収斂進化」
一方、これらの眼点はミトコンドリアや色素体が原材料で、“感光部”が微生物型ロドプシンの膜であり、それを不透明な色素顆粒が裏打ちしているなど、“共通した設計テーマ”があるようにも見えます。単細胞真核生物の単眼型眼点は独立に何度も進化した「収斂進化」と考えられるそうです。

オーソドックスと最先端を駆使したエレガントな研究
今回のGaveils氏たちの研究は、フィールドから採取した生き物を顕微鏡で観察すると言うオーソドックスな生物学の王道と、DNA解析やCT技術など最新研究技術を併せ駆使して生き物のナゾに迫るとってもエレガントな研究だと思いました。

出典:natureダイジェスト2015年10月号P.31 「微生物の「眼」はどうやってできたのか」”How to build a microbial eye” Thomas A. Richards氏、Suely L. Gomes氏共著
原典: Nature 2015 年7 月9 日号 Vol. 523 (166–167)
<以下のURLはリンクを貼っていませんのでコピペで訪問ください>
出典: “Eye-like ocelloids are built from different endosymbiotically acquired components” Gregory S. Gavelis氏他、Nature 523, 204–207 (09 July 2015) doi:10.1038/nature14593
http://www.nature.com/nature/journal/v523/n7559/abs/nature14593.html?lang=en
出典: ウキペディア記事” Warnowiaceae”
https://en.wikipedia.org/wiki/Warnowiaceae
出典; ウキペディア記事「渦鞭毛藻(dinoflagellates)」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%B8%A6%E9%9E%AD%E6%AF%9B%E8%97%BB
出典: 日本海洋データセンター(Japan Oceanographic Data Center)/ JODC Dataset
http://www.godac.jamstec.go.jp/bismal/j/JODC_J-DOSS/view/9023079


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パリの話題minisizeREVフランス街歩きminisizeREV
ヨーロッパの話題minisizeREV生き物とちきゅうのお話minisizeREV
ヒコーキの話minisizeREVグルメ話minisizeREV

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