大陸を裂き海底を駆動し生き物も変えた超巨大火山LIP

大陸を裂き海底を駆動し生き物も変えた超巨大火山LIP
記事の前に・・
個として考えてゆくこと
安全保障関連法案の参議院採決が迫っています。国民への説明不十分のまま憲法違反が強く疑われる法案が多数を頼むだけの力学で成立しかけています。安保、海外派兵の是非以前に民主主義、立憲主義の危機です。9月15日中央公聴会で公述人として意見を述べた「SEALDs」奥田氏のスピーチ全文が掲載されているウェブ頁がありました。一読をお勧めします。成立しても、成立後こそ、奥田氏の言うように「個として考え」「忘れない」ことが大切と思います
http://xn--ols92rkqkj6j.com/news-12-222 ←リンクを貼っていませんのでコピペしてください(注目情報ニュースサイト(管理人「けいっち」さん)2015/09/15記事「SEALDs奥田愛基、国会公聴会招致、スピーチ全文、書き起こし、法案中身言及せず」)





それでは今回のサイエンス小ネタです。

マントルプルームがLIP噴火を引き金に大陸を裂く
(マントルプルームがLIP噴火を引き金に大陸を裂く)
有史以前のけた違いの巨大噴火LIP
我々が通常目にする、あるいは歴史に刻まれている火山噴火とはけた違いの超巨大噴火、巨大火成岩岩石区(Large igneous provinces)、略称LIP(著者曰く「唇とも読める!」)が地殻を、環境を、生物も変えてきたようです。






アイスランドの漁港P1010092dw
(アイスランドの漁港)
フォトは大地の裂け目アイスランド
フォトはアファールと並んで大地が裂ける現在進行形の現場、アイスランドのギャオ(こちらは中央海嶺による分断ですが)などを掲載しています。
大地が裂けるアイスランドの過去記事はこれ↓
右足はNYへ左足はロンドンへ大地の割れ目アイスランド
氷と火の島アイスランドで生きている地球を実感


現在進行形の大陸分裂アファールLIP
(現在進行形の大陸分裂、アファールLIP)
現在進行形のアフリカ大陸分裂
少し前の記事で「東アフリカの大地溝帯の構造湖でシクリッド(カワスズメ)が高速進化した」話題を書きましたが、その大地溝帯こそ一番新しい“現在進行形”の「唇(LIP)」による大陸分裂の“現場”です。

噴き上がる間欠泉P1010111dw
(噴き上がる間欠泉)
唇(LIP)の“ひび割れ”、東アフリカ大地溝帯
ヴィクトリア、タンガニーカ、マラウィなど構造湖を含む東アフリカ大地溝帯は現在進行形の大陸分裂です。

沸き上がるマントルプルーム
地下深くマントルから湧き上がる巨大なマグマの塊り、マントルプルームが超巨大火山噴火“アファールLIP”として噴出し、アフリカを引き裂いています。その3つの割れ目が紅海、アデン湾、そして大地溝帯です。

点在する湖と三角屋根P1010179dw
(点在する湖と三角屋根の静かな風景が美しい)
一番新しいLIP、アファール
古生代以来、超大陸パンゲアをマントルプルームが突き上げ、LIPを引き金に大陸地殻が順次分裂してその割れ目から海洋底が広がることで現在の大陸配置になりました(プレートテクトニクス)。その続きの最も新しいマントルプルーム活動がアファールLIPだそうです。
構造湖のシクリッド高速進化の過去記事はこれ↓
2つのアゴを持つ一芸に秀でた何でも屋シクリッド
構造湖で高速進化したシクリッドたちの遺伝子のヒミツ


ホエールウォッチングの船は漁船かP1010183shipdw
(ホエールウォッチングの船は漁船でしょうか?)
深海底を掘ってLIPを調べる
著者が研究チームに参加した太平洋のLIPシャッキー海台、オントンジャワ海台の調査船ジョイス・レゾリューション号(JOIDES Resolution)による深海底掘削などでLIPの規模や成因などその実態がだんだん分ってきたようです。

氷河が削った小山P1010208dw
(氷河が削った小山)
太陽系一番の火山より大きいLIP
シャッキー海台の中の単一の火山であるタム山塊の底面積31万km2は地上最大の活火山、ハワイのマウナロア5200km2をはるかに凌ぎ、太陽系一の火星のオリンポス山よりも大きいそうです。

淡い極北の陽に水が鈍く光るP1010194dw
(淡い極北の陽に水が鈍く光る)
深海に眠る日本列島の4倍も大きな海台LIP
現在噴火しているLIPはありませんが、その規模は巨大で世界最大のLIP、オントンジャワ海台は日本国土の4倍と想像を絶する規模です。

LIPと大陸分裂REVdownsize
(LIP噴火時期と遺残場所が大陸分裂の箇所と時期によく一致する)
LIP噴火が大陸分裂の始まり、時期と場所がよく一致
プレートテクトニクスにより大陸が分裂した時期(地質年代)と同時か少し先駆けてLIP噴火時期が多くの場合一致し、分裂した大陸の両側、あるいは片側にLIPの痕跡が残っているそうです。

草をはむ野生馬P1010217dw
(草をはむ野生馬たち)
ヴェーゲナーの卓見もLIPには気づかず
プレートテクトニクスの先駆者ヴェーゲナーはその卓見で大陸移動を唱え証拠も揃えました。アフリカ大陸と南アメリカ大陸を裂いたパラナ・エテンデカLIPの両側の地質や化石も含まれています。
しかし当時の理論とデータでは大陸移動のメカニズムを説明できず、存命の内はヴェーゲナーの学説は認められませんでした。もし彼がLIPを知っていたら事態は変わったかも知れませんね。

海底が拡大して生まれた日本海の過去記事はこれ↓
お餅でシミュレーションする日本海の作り方+北仏オンフルール番外編

火山の贈り物間欠泉の穴P1010095dw
(火山の贈り物、間欠泉の穴)
上昇するマグマの巨大な塊り、マントルプルーム
マントルからの上昇するマグマの巨大な塊、マントルプルームからLIPが噴火します。LIPは普通の火山に比べ、規模ははるかに巨大、マグマ、噴煙、CO2(二酸化炭素)、SO2(二酸化硫黄)など噴出物も桁違い、期間は数百万年で地質学的時間スケールとしては短いものの、環境や生態系へのダメージは大きかったようです。
1. LIPはSO2から生じる硫酸エアロゾルによる「核の冬」やCO2、CH4(メタン)などによる温暖化など深刻な気候変動を引き起こす
2. マントルプルームからLIPが噴火するとプレートテクトニクスが駆動される引き金となり、やがて大陸は分裂してゆく(地形も気候も変わる)
3. LIPが海洋プレートに乗って移動し去ってもマグマ貯まりが残ります。そのマグマ貯まりはLIPほど大規模ではないものの噴火活動を続け、次々と火山島を創り出すホットスポットになります。その結果、陸側のLIPの名残とホットスポットの間に海洋島や海山が列を作って並ぶことになります


ギャオにはこんな狭い割れ目もありますP1010171dw
(ギャオにはこんな狭い割れ目もあります)
LIP噴火の環境、生態系への影響は甚大だった
このようにLIPは地形、気候、環境に甚大な影響を与えます。更にLIPの噴火期間、数10-数100万年は「地質学的スケールではとても短い」ながら、「生物学的スケールではとても長い」ため生態系へのダメージは深刻なものになります。

古生代の終焉、ペルム紀末大絶滅を引き起こしたシベリアトラップLIP
陸地の巨大LIPであるシベリアトラップがペルム紀末大絶滅の主な原因とされるように、いくつかのLIP、特に大陸や島など陸地で噴火が起こった大規模LIPのいくつかと大量絶滅の時期が一致するそうです。多くのLIPが絶滅、大絶滅(紀や期の生物相の入れ替わり)の原因ではないか、と著者は述べています。

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これほど巨大なのになぜ人目につかなかったのか?
超巨大火山LIPはその研究もここ数10年と新しいのですが、ではなぜ長らく人目につかず知られなかったのでしょうか?

火山島だったLIPも今では深海の底
海にも陸にもLIPはありますが、現在、海のLIPはすべて深海にあります。活動していた当時は火山島だったようですが、島は浸食され、更に海洋プレートに乗って移動し今では多くが深海にあります。

引き裂いた大陸の両側に残る痕跡
陸のLIPの多くは大陸を裂く(大陸移動、プレートテクトニクス)の引き金になったようですが、大陸が分れた後は両方の大陸にその痕跡だけが残っています。

溶岩の大洪水でできた高地トラップ
シベリアトラップ、デカントラップなど陸地に残るLIPもありますが、広大な面積に大量の洪水玄武岩が溢れ出た噴火でした。その地形は「トラップ」、階段状の高地です。

有史以前にLIPの噴火は終わっていた
どのLIPも噴火などの火山活動が終わっていますし、これらが超巨大噴火「巨大火成岩岩石区(LIP)」であると理解されるにはプレートテクトニクスによる大陸移動がまず理解される必要があったからでしょう。

海洋プレートはベルトコンベアー
海洋底(海洋プレート)は中央海嶺からのマグマ噴出で拡大してゆきます。その中央海嶺が3つも出会う、“プレート縫い目”の交差点「海嶺-海嶺-海嶺三重点」でLIPが生まれやすいのだそうです。
このような場所には下部マントルから巨大なマグマの塊、スーパープルームが“沸き上がり”、超巨大火山、LIPとして噴出し、やがてマグマの対流が生まれてプレートテクトニクス(海洋底拡大、大陸移動)が駆動されるらしいのです。現在、超巨大マントルプルームは南太平洋直下とその反対側アフリカ大陸直下にあるそうです。


南太平洋のプレートの“縫い目”で生まれたLIP群
南太平洋にはLIPが多数存在しますが、当初はまだ小さかった太平洋プレートの周囲のプレート(イザナギプレートなど)との「海嶺-海嶺-海嶺三重点」でこれらLIPが生まれたようです。
やがて太平洋プレートの拡大(=古いプレートの後退・消失(流れ落ちる))に伴い、これらLIPは南太平洋に散在するようになり、元の場所(マグマ貯まり)はいくつかのホットスポットになったようです。
これらの火山は現在南太平洋のポリネシア、ミクロネシアなどの島々になっています。

海洋島とその生き物の過去記事はこれ↓
3つのWが運ぶ海洋島のユニークな生き物 生物地理学の冒険者2

巨大すぎて潜りこめないLIP
LIPは大陸を裂いて分断し、やがて地球規模のマントル対流が生まれ、海洋プレートが更新していきますが、そのLIPも海洋プレートに乗ってプレート境界面の下に流れ去ってゆきます。
しかし、通常の海洋プレートの地殻に比べLIPの地殻は巨大で10倍以上分厚く、プレート境界面に潜りこむときに“つっかかって”すべては潜れず、一部は陸側プレートに乗りあげます。これが付加体です。


日本列島にもあるLIPのかけら
日本列島にもLIPの名残りが見られます、流れ去ってしまったイザナギプレートが運んだ”幻のLIP“が日本列島に乗り上げ「付加体」となりました。今では地層「みかぶ帯」として断続的にその痕跡が中央構造線に平行に九州から北海道まで残っているそうです。
日本の土地もLIPと関わりがあるようです。

かながわの地の成り立ちの過去記事はこれ↓
プレートおしくらまんじゅうで出来たかながわの地 横浜散歩番外編

出典: BLUE BACKS 「地球を突き動かす超巨大火山(新しい『地球学』入門」 2015年、佐野貴司氏著(講談社)
出典: ウキペディア記事「巨大火成岩岩石区」https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%B7%A8%E5%A4%A7%E7%81%AB%E6%88%90%E5%B2%A9%E5%B2%A9%E7%9F%B3%E5%8C%BA
“Large igneous province”
https://en.wikipedia.org/wiki/Large_igneous_province


過去の記事リストは下のイラストをクリック ↓ (日本国内と南の島の記事は「ヨーロッパの話題」にまとめています)
パリの話題minisizeREVフランス街歩きminisizeREV
ヨーロッパの話題minisizeREV生き物とちきゅうのお話minisizeREV
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コメント

Re: No title

ありがとうございます。アイスランドの地に立つと地球が動いている実感がありました。はるかに凌ぐLIPはすごいなと思った次第です。大川原さまのブログをいつも楽しく拝読しています。もっと歴史を深く知りたくなりますね。

> こんばんは。
>
> アフリカ大陸の分裂やアイスランドのギャオには、少年時代から興味をもっています。
>
> 貴重な写真や情報をありがとうございました。
>
> 楽しく拝見させていただいています。、

No title

こんばんは。

アフリカ大陸の分裂やアイスランドのギャオには、少年時代から興味をもっています。

貴重な写真や情報をありがとうございました。

楽しく拝見させていただいています。、
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