2つのアゴを持つ「一芸に秀でた何でも屋」シクリッド

2つのアゴを持つ「一芸に秀でた何でも屋」シクリッド

東アフリカ大地溝帯の構造湖REVdownsize
(東アフリカ大地溝帯の巨大な構造湖でシクリッドたちは高速進化しました)
世界中で繁栄、かわいいカワスズメたちは2500種
シクリッド(Cichlid、カワスズメ)は、スズキ目のシクリッド科(Cichlidae、カワスズメ科)の淡水魚で、バリエーションに富んだたくさんの種類、約2500種がアフリカ、アジア、アメリカなど全世界にいます。
こんなウェブもあります(リンク貼っていません):「熱帯魚図鑑」http://www.nettaigyo-zukan.com/
エンゼルフィッシュ、ティラピア、ディスカスなどもこの仲間。熱帯魚としても人気があり「え、同じ仲間なの?」と思うほど美しく多彩な色彩と形態です。






デバスズメダイREVdownsize
(デバスズメダイ、石垣島ダイビングより)
ただいま“高速進化中”!アフリカのシクリッドたち
今回の主役はシクリッドの内、マラウィ湖、タンガニーカ湖、ヴィクトリア湖などに棲息するアフリカン・シクリッドで、マラウィ湖に800-1000種、タンガニーカ湖に250種、ヴィクトリア湖に500種もいて大きさも3cmから1mと実に多彩です。

ニモことカクレクマノミREVdownsize
(『ニモ』ことカクレクマノミ)
八重山の海のサカナたち(再掲載)
サカナつながりで添えるフォトは八重山諸島、石垣島のダイビングで出会ったサカナたちです。
石垣島ダイビングフォト掲載の過去記事はこれです↓

みんなで育てばコワクない、植物の共存共栄+先島諸島の珊瑚礁散歩
もしもしカメさんどこから来たの?+ 竜宮城のような石垣の海 番外編
珊瑚礁の宝石、色鮮やか魚たち 石垣島ダイビング番外編
6月の海は恋の季節石垣島ダイビング記


スカシテンジクダイの大群が流れていくdownsize
(スカシテンジクダイの大群が流れていく)
新天地「構造湖」で華麗に種分化
アフリカン・シクリッドには、ガラ空きの多様なニッチ(生態的地位、Niche)を埋める大規模な「適応放散(adaptive radiation)」がごく短期間に、しかも何度か起こったらしく、その“しくみ”を探る研究をご紹介するサイエンス小ネタで、今回はその前編です。
「適応放散」の例、「海洋島」の過去記事はこれ↓
3つのWが運ぶ海洋島のユニークな生き物 生物地理学の冒険者2

ロクセンスズメダイREVdownsize
(サンゴ礁のロクセンスズメダイ)
裂けつつあるアフリカ、「大地溝帯」で繁栄するカワスズメたち
やがて「アフリカ海」となる、アフリカ大陸を引き裂きつつある大地溝帯(グレート・リフト・バレー、Great Rift Valley)には、ヴィクトリア湖、マラウィ湖、タンガニーカ湖など巨大で深い構造湖(tectonic lake)がたくさんあり、そこには多彩な種類のアフリカン・シクリッドが大繁栄しています。
もう一つの裂けつつある大地、アイスランドの過去記事はこれ↓
右足はNYへ左足はロンドンへ大地の割れ目アイスランド
氷と火の島アイスランドで生きている地球を実感


おちょぼ口がかわいいサンゴアイゴREVdownsize
(おちょぼ口がかわいいサンゴアイゴ)
多彩な環境の様々な餌に合せて多様化
シクリッド科には他の魚にはない優れた特徴があります。それは喉の奥にある「第2に顎と歯」です。
「適応放散」の結果、シクリッドたちは様々な餌の種類に応じてそれぞれに口、顎、歯などが特殊化しました。構造湖の多様な環境、多種のニッチそれぞれに特殊化、特に様々な餌に合せて特殊化しています。


シクリッド第2の顎REVdownsize
(シクリッド第2の顎)
第2の顎と歯がシクリッドの秘密兵器
おかげで「他人と争わなくていい」のは良いのですが、一方、環境が変わるとその特別な餌が減るかも知れないリスクがあります。
でも大丈夫、第2の顎、歯があれば。普段はみんなと奪い合わない“特別な餌”を食べ、その餌が乏しくなったら“普通の餌”を食べればいいんですから。つまり“安心して”特殊な餌(餌取り法)に変われると言うことです。


石垣島大崎ミノカサゴ宮殿チョウチョウウオdownsize
(大崎ミノカサゴ宮殿のチョウチョウウオ)
『一芸に秀でた何でも屋』とは?
このようにしてシクリッドたちは「一芸に秀でた何でも屋」となり大繁栄を遂げました。
「2つの顎」と言う“保険”を持つシクリッドたちは、平たい前歯の藻を食べる、尖がった口で水中昆虫を捕らえる、岩場で待ち伏せ大きな口で一気に餌を飲み込む(吸引捕食)などなど多彩な食習慣により多くのニッチに進出して、たくさんの種類に進化(種分化)したようです。


珊瑚礁はベビーがいっぱいREVdownsize
(初夏の珊瑚礁はベビーがいっぱい)
口で子育て、ウロコが餌・・変わり者たち
多彩なシクリッドたちには“変わり者“も多く、マラウィ湖には口の中で稚魚を育てるマウスブリーディングを行うシクリッドがいます。
もっぱら藻を食べるシクリッド、砂地で餌を探すシクリッド、岩の隙間から餌を吸い出すたらこ唇のシクリッド、他のシクリッドの鱗だけを食べるので口が斜めになったシクリッドなど変わったものもいます。


ミツボシクロスズメダイは眼が結構コワイREVdownsize
(ミツボシクロスズメダイは眼が結構コワイ)
繰り返し起こった「適応放散」
しかもシクリッドの急速な種分化、即ち「適応放散(adaptive radiation)」は異なる系統でおなじような変異が繰り返し起こったようです。例えば、ヴィクトリア、マラウィ、タンガニーカの3つの構造湖でそれぞれ独立に鱗食(他の魚の鱗をカジって食事にする)のシクリッドが進化しています。

フタスジタマガシラREVdownsize
(ずっとついてきたフタスジタマガシラ)
たった1万年で多彩に種分化
シクリッドたちは構造湖という環境で、2,3百万年という地質学的にとても短時間のうちに多種多様な種類に“高速進化”し多彩なグループとして繁栄しています。

「ダーウィンの申し子」よりも高速に進化した
中でも一番新しいヴィクトリア湖ではたった過去1万年~1万5千年の短い間に祖先種から500種までに種分化しました。
これは有名なガラパゴス諸島のダーウィン・フィンチでさえ数100万年で14種に進化したのに比べても、ものすごい“高速進化”です。


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過去の記事リストは下のイラストをクリック ↓ (日本国内と南の島の記事は「ヨーロッパの話題」にまとめています)
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アフリカの溝に並ぶ巨大な構造湖
アフリカン・シクリッド高速進化の舞台、「構造湖」とはどんな環境なのでしょうか?
「大地溝帯」の裂け目に沿って並ぶ「構造湖」は北からヴィクトリア湖68,800 km2、タンガニーカ湖32,900 km2、マラウィ湖29,600 km2と巨大です、669.23km2の琵琶湖より2ケタ大きいのです。
深さもタンガニーカ湖の最大水深は1470mでバイカル湖に次いで世界2位、マラウィ湖でも706mあります。


深く巨大な閉鎖系、「構造湖」は進化の実験場
「構造湖」は地殻の断層による裂け目に出来た湖なので細長く、深く、湖底の地形は複雑でその結果、生き物に様々な環境、ひいては多様な生態的地位(Niche)を提供しています。
また、海のまん中と違って、数本の川が出入りするだけの比較的孤立した閉鎖系の淡水湖なので、ガラパゴス諸島、ハワイ諸島などの海洋島と同じく、昔たどり着けたごく少数の先祖(原種)がガラ空きだった多くの生態的地位を埋めるように急速にたくさんの種類に進化しました、いわゆる「適応放散」です。


千変万化な環境を創り出す構造湖
地形が複雑で多様な環境、ひいては多くのニッチ(生態的地位)を生む構造顔では、波打ち際、岩場、藻場、砂地、洞窟など生き物には千変万化の環境が提供されます。

たどり着いた「開拓者」から華麗な一族が・・
このような場所ではたどり着いたごく少数の祖先種が多様でガラ空きの生態的地位をそれぞれ占めるたくさんの種に急速に種分化します。これが適応放散でアフリカの構造湖のシクリッド、アフリカン・シクリッドもたった2~300万年の内に「同じ仲間なの?」と思うほど多彩な種類に分れました。

「海洋島」の裏返しが「構造湖」
同じように適応放散が起こったガラパゴス、ハワイ、小笠原など大海原で陸地と隔絶している「海洋島」の環境を、水と陸をひっくり返したのがアフリカの構造湖です。

シクリッド「高速進化」のヒミツは続編で・・・
じゃ、いったいどんな仕組みでシクリッドたちは“華麗な一族”になったのかは続編に続きます。

出典: 日経サイエンス2015年8月号 「シクリッドの進化」 “Extreme Evolution” Axel Meyer氏執筆(原典: Scientific American April 2015)
出典: 「ゲノム進化:魚類アフリカンシクリッドの適応放散に関わるゲノム基質」“The genomic substrate for adaptive radiation in African cichlid fish” David Brawand et al. Nature vol513 p375 (18 Sep 2014) doi:10.1038/nature13726
http://www.nature.com/nature/journal/v513/n7518/abs/nature13726_ja.html?lang=ja
(リンク貼ってません)
原典: “The Remarkable Throat Jaws of Cichlid Fish” Axel Meyer, Scientific American Volume 312, Issue 4, Mar 17, 2015
原典: “The Extraordinary Evolution of Cichlid Fishes” Axel Meyer, Scientific American Volume 312, Issue 4, Mar 17, 2015


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