美しくも楽しい種子の本から学ぶ植物の毒戦略

美しくも楽しい種子の本から学ぶ植物の毒戦略
~ 実はコワ~イ植物、その上を行く種、ヒト ~


雨上がりのウメの実(自宅の庭)REVdownsize
(雨上がりのウメの実(自宅の庭))
種子への愛が詰まった一冊
とても美しく、そして楽しい本です。写真もイラストもステキ、何度も読みました。著者の専門性、博識もさることながら、文面からは無垢な好奇心と種子(タネ)たちへの慈しみがあふれています。
ミもフタもなく恐縮ですが、この記事を読み進められるより、書店でこの原典を手にされることをお勧めします。
添えるフォトはうちの庭の木の実たちなどです。木の実や種の歌も載せてみました。






美しくも楽しい種子の本
(美しくも楽しい種子の本)
毒と薬は紙一重、さじ加減
小さなトリや森の動物には毒でも、さじ加減すれば(適正用量なら)ヒトにとっては薬効となります。
更に種が違えば代謝(解毒)も違うのでヒトには無毒で有用なものもあります。
体の大きさが違えばそれだけで体重あたり用量(暴露量)が違い所謂「さじ加減」になります。
こうしてヒトは古今東西、昔から、植物の毒を上手に使う知恵を積み重ね、文化にまで高めてきました。

毒を喰らうサラダの前回記事はこれです↓
高山のお花畑は毒の饗宴それでもヒトはサラダで喰らう フランスのサラダグルメ

グミのような赤い実(花を覚えてない)downsize
(グミのような赤い実(花を覚えてない))
ナンテン; 縁起物が雪うさぎの目に
難を転じる縁起物、冬枯れの季節の貴重な赤い彩り、ナンテン(Nandina domestica)。
子供の頃、滅多に降らない雪の日は(大阪なので・・)、漆盆の「雪うさぎ」の目と耳は手水際のナンテンの葉と実でした、今でも色鮮やかな記憶です。


Le Temps des cerisesさくらんぼの実る頃
(“Le Temps des cerises” (さくらんぼの実る頃)、「紅の豚」の挿入歌が印象的)
ナンテン; 毒を盛って客人を操る
花は夏咲くのに、実なりは秋から冬。赤、緑、青に加え紫外線と四原色のトリたちの豊かな色覚に訴える真っ赤な実。トリたちの餌が乏しくなる冬の季節に目立つ赤い実で「召し上がれ」とアピールするナンテン。

トリさんが一度に食べない理由
しかし、小鳥たちは一度に数個しか食べません(いや、食べられない)。ナンテンの実にはいく種かのアルカロイド系の毒が仕込んであるからです。少しずつ、何回も、たくさんのトリたちに食べてもらえばナンテンの種それだけ広い範囲に撒かれるから。

どんぐりころころdownsize
(「どんぐりころころ」、とにかく楽しい歌ですね)
毒アルカロイドもさじ加減で咳止めに
ナンテンの毒アルカロイドの1つドメスチン(domesticine)もヒトはさじ加減で咳止め(鎮咳剤)に使ってきました。神経を麻痺させるほどの毒なので薬効もあるのです。

ピンクがかわいいモモの蕾REVdownsize
(ピンクがかわいいモモの蕾)
エゴノキ; トリさんを操る毒もヒトには石鹸
エゴノキ(Styrax japonica)はヤマガラと特別な関係にありその実はほぼヤマガラ専用です。エゴノキの実(種子を包む果肉)にはサポニンが含まれ、ヤマガラも少しずつ食べ、また、冬に備えて実を貯金します(貯食)。忘れられた実が春に芽吹きます。何度も、何羽もヤマガラがエゴノキを訪れるので広い範囲に種子が撒かれます。
ご興味あれば「ホシガラスの貯食行動がカサマツ林を守る」過去記事も見てください↓
マツ林を再生したホシガラスの知恵 ローマ フォロロマーノ再び

里の秋downsize
(「里の秋」、すてきな曲なのに小学の頃は歌詞の意味を知りませんでした)
洗濯や漁に使いこなすヒトの知恵
エゴノキのサポニンは界面活性剤で魚毒(死ぬほどの)ですが、ヒトには無毒(吸収されない)なので、昔、エゴノキの実のしぼり汁で洗濯し、また、池川にまいて漁をしたそうです。

黒い誘導路模様の赤い花REVdownsize
(黒い誘導路模様の赤い花)
ドングリ; 若いネズミ君には両刃の刃
ドングリとはブナ科(Fagaceae)の実の総称で、量の多少はありますが、毒成分としてタンニンを含みます。脂質を多く含むドングリは森の動物たちの好物で冬を越すのに大切な食べ物です。
若くてまだ慣れてないアカネズミ君はついうっかりドングリを食べ過ぎて死んでしまいます、消化管毒性があるから。
経験を積み、共生菌が居つくほどのネズミ君なら菌が解毒してくれるので少しずつなら食べられるようになります。これも「少しずつ何回も与えて広くバラまいてもらう」戦略です。
ネズミ君には毒でもタンニンは私たち、ヒトにとっては渋味成分で、アク抜きが必要なドングリもありますが、縄文時代には大事な食糧源だったようです。


椰子の実downsize
(「椰子の実」、島崎藤村の詩がいいですよね)
ちょっと残酷、「なり年」戦略
更にドングリたちには「なり年」と言うちょっと残酷な戦略もあります。
まず、ある年にわざと実なり(ドングリ)を減らします。すると、冬を越せず多くの森の動物は餓死します。その翌年、突然たくさん実をつけるのが「なり年」。数が減った森の動物はとても全部は食べれません。
結果、あちこち貯食したり、忘れたりで、ブナ科のどんぐりたちは”確実に、広く、撒かれて、芽吹く”と言う戦略です。植物が動物を操っているんですね。


紅のドリルのようなシクラメンの蕾REVdownsize
(紅のドリルのようなシクラメンの蕾)
「園芸品種」化で牙を抜
直接“お客”、森の小動物の感覚に訴えて“食べ過ぎ”を抑える戦略もあります。近縁種がキウイの原種であるサルナシ(Actinidia arguta)の果肉には蛋白分解酵素アクチニジン(Actinidin)が含まれていて、サルたちが食べると舌も口腔内も少し溶かされ、やがてヒリヒリ“痛み”を感じると食べるのをやめます。
マタタビ科(Actinidiaceae)なので“ネコちゃんも踊る”成分も含みます。


陽に透けるコブシの若葉downsize
(陽に透けるコブシの若葉)
果物の武器でヒトは料理する
パイナップルに含まれる蛋白分解酵素(Papain)も元の働きは同じです。でもキウイもパイナップルもパクパク食べれますよね。品種改良で酵素量が減って“牙を抜かれた”からです。
更に、パイナップルで肉を柔らかくするのはこの酵素の働きで、ヒトは“植物の武器”をさじ加減でうまく使いこなしています。


下痢成分で食害を防ぐマメ科たち
蛋白分解酵素を武器にする種子もあれば、蛋白分解酵素を阻害する成分を含む種子もあります。ダイズ(Glycine max)などマメ科(Fabaceae)の豆にはヒトや動物のトリプシン(Trypsin)などの消化酵素の働きを抑えるプロテアーゼ・インヒビターが含まれています。そのまま食べたら消化不良、下痢をひき起すので動物は食べられません。

豆の毒も制したプロメテウスの子供たち
それでも“プロメテウスから火をもらった“ヒトは豆を煮炊きすることでプロテアーゼ・インヒビターを失活させ(蛋白質なので熱に弱い)おいしくいただきます。豆を発酵させても同じ効果で味噌、納豆、醤油で下痢になることはありません。
植物の毒を制し、利用することはヒトの食文化の大切な知恵だったようです。

火と調理の恵みの過去記事はこれ↓
プロメテウスの贈り物-火がヒトの高速進化を生んだ?+フランスで出会った一皿たち

今回記事の主な元ネタ、種子の本です↓
出典: 「身近な植物に発見!種子たちの知恵」2008年 多田多恵子氏著(NHK出版)

また、こんな楽しいウェブ頁もあります↓
出典: 豊田市自然観察の森
http://www.toyota-kansatsu.com/
出典: 鳥便り
http://akaitori.tobiiro.jp/simpleVC_20090320162100.html


その他の出典↓
出典: ウキペディア記事「ナンテン」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%8A%E3%83%B3%E3%83%86%E3%83%B3
出典: ウキペディア記事「ダイズ」
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%80%E3%82%A4%E3%82%BA


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