名機スピットの地味な兄弟は海のレスキュー隊; ウォーラス小型飛行艇

名機スピットの地味な兄弟は海のレスキュー隊; ウォーラス小型飛行艇

ウォーラス洋上
(海難救助に地味に働いたスピットの兄弟、ウォーラス)
有名な弟Spitfireには地味な兄Walrusがいた
スーパーマリン社(Supermarine)の天才レジナルド・ミッチェル氏(Reginald J. Mitchell)設計の名機と言えば、もちろんスピットファイアー(Spitfire)・・・ですが、実はとっても地味で大戦中でもほとんど交戦しなかった兄弟がいます。海難救助飛行艇、その名をウォーラス(Supermarine Walrus)と言います。





推進式のペガサスエンジンdownsize
(推進式のペガサスエンジン)
古典的スタイル、単発複葉飛行艇
1933年生まれの古典的なスタイルの小型単発の複葉飛行艇ウォーラスですが、第二次大戦を通じてずっと英仏海峡、北海、北大西洋の荒れる海でひたすら海に墜ちたRAFパイロットたちを救ってきました、時には敵のルフトバッフェのパイロットも。

海上救難向きの優れたコンセプト
海の上で活動していたプロペラヒコーキとしては、大型飛行艇、フロート付き水上機(いわゆるゲタ履き機)、艦載機、マリタイム用陸上長距離機などありますが、救難任務の小型飛行艇はユニークな存在です。たとえ小型でも海上に降りて救い上げることができる優れたコンセプトです。

ウォーラス側面図
(ウォーラス側面図)
カワイイ両生類はつまみあげてはいけません
ウォーラスはカタリナと同じamphibian(両生類)、水陸両用機です。飛行艇なのに、全長10.2m、全幅14.0mとF6Fヘルキャットとほぼ同サイズ、とってもかわいいヒコーキです、更に翼を折りたたむと幅5.33mともっとコンパクトに。コンパクト過ぎて海から船に吊り上げるのが難しかったようです。

ウォーラス下翼のおもちゃみたいな爆弾downsize
(ウォーラス下翼のおもちゃみたいな爆弾)
海上、陸上、船の上、どこでも使える便利屋
ウォーラスは水陸両用の運用だけではなく、離着陸速度が遅く空母からの救難にも重宝し、ステンレス補強の艇体(MkI)のおかげで艦船のカタパルトからも射出できた使い勝手のとても良い機体だったようです。

ウォーラス正面図
(ちょっとユーモラスなウォーラス正面図.)
エンジンは震電と同じ推進式
堅実な設計ですが、信頼性のかたまりBristol Pegasusエンジンは推進式、つまり震電みたいに後ろにプロペラがあり、妙なところでユニークです。しぶきを避けるため、あるいは、パイロットの視界を確保するためでしょうか?

舫い綱のついた艇首downsize
(舫い綱のついた艇首)
とっても便利、艇首の丸い穴
機首には丸い穴が開いています。本来は銃座なのですが(多分ほとんど使ってない)、係留したり、舫いを解いたり、海からパイロットを拾い上げたりするのにとても便利な構造です。小型飛行艇という「船」に近い形態は海上救難任務にぴったりだったようです。

ウォーラス陸上飛行場
(陸にあがったカエルのような水陸両用ウォーラス)
地味と信頼性の「無事これ名馬」
そんなウォーラスには戦史に残るような武勇伝はまったくありません。荒れる冬の北海でも日々救難任務、無事これ名馬のような、地味と信頼性を絵に描いたようなヒコーキだったようです。

ウォーラスは両生類(水陸両用)downsize
(ウォーラスは両生類(水陸両用)、主脚は下翼下面に収納します)
荒天もおして黙々と救難任務
愛知零式三座水上偵察機、ヴォートOS2UキングフィッシャーやアラドAr196などは洋上偵察、艦隊決戦の弾着観測、ときには空戦と勇ましい役割だったのですが、一方、ウォーラスはほとんどがひたすら地味な救難任務だったようです(艦隊用にはゲタばきソードフィッシュがありましたし)。

ウォーラスの少し右にオフセットの四枚プロペラdownsize
(ウォーラスの少し右にオフセットの四枚プロペラ)
エースたちの「ナイチンゲール」、ウォーラス
何冊かのRAFのエースパイロットたちの空戦記の本にもウォーラスはちょくちょく登場します。彼らにとって、海に墜ちても、荒れた海でも、敵前でも必ず駆けつけてくれるウォーラスは「地獄に仏」、いや、ナイチンゲールだったのでしょう。

ウォーラス平面図
(軽い後退翼でバランスがいいウォーラス平面図)
荒海にたおれたウォーラス
以前ご紹介したタイフーンパイロット、デズモンド・スコット(Desmond J. Scott)の手記では英仏海峡に脱出した部下パイロットを救出するべくウォーラスとともに飛びますが、海が時化て着水したウォーラスが壊れてしまいました。
パイロットたちが救難艇に救助された後、スコットは愛機タイフーンの機関砲で浪間に漂う無人のウォーラスを沈めます(敵に渡さないため)。


老雄には名誉ある最期を・・
機関砲の引き金をひきながらスコットは、フロートも失い最早飛べない「脚を折った老いた農耕馬のような」ウォーラスの最期に祈りをささげたそうです。愛されたヒコーキだったのですね。
タイフーンとスコットの過去記事はこちら↓
愛馬タイフーンを駆ってスコッティ空を行く-空(そら)物語その4

ウォーラス72分の1プラモREVdownsize
(ウォーラスの1/72プラモ)
さすがミッチェル設計の秀逸なデザイン
三面図を見ると、さすが天才ミッチェル氏の設計。軽い後退翼、ピンと跳ねた艇尾、翼よりぐんと前にでた視界良好の操縦席、何よりも全体のバランスが美しい機体です。

1/72プラモあります
こんな地味なウォーラスにもちゃんとプラモはありましてレベル(Revell)の1/72を持っています(まだ箱のままですけど)。

そっくりの兄弟ウォーラスとシーオター
(そっくりの兄弟、ウォーラスとシーオッター)
更に地味な弟、シーオッター
ウォーラスそのものも前身(兄)シーガル(Supermarine Seagull)の発展型ですが、ウォーラスには弟もいます。シーオッター(Supermarine Sea Otter)と言うのですが、そろそろジェット機が出てくる頃の1944年デビューなのに遠目に見たらウォーラスそっくり、つまり未だ複葉単発の飛行艇でした、エンジンは牽引式ですが。
シーオッターの代になるとさすがに初めから海難救助飛行艇として開発されたようです。
ウォーラスよりさらに無名でマイナーなシーオターですが、性能全般が向上し(「ウォーラスに比べて」ですけど)戦後も長く地道に働きました。


ウォーラス(Supermarine Walrus Mk I)の緒元
乗員:3-4名(救難任務では乗員数を減らしたようです)
全長:11.45m、全幅:14.0m、全高:4.6m、翼面積:56.7平方m
最大離陸重量:3,650kg、翼面荷重:57.6 kg/平方m
エンジン: Bristol Pegasus VI 680馬力 単発
最大速度:時速215km (1,450m)、航続距離:965km、上昇限度:5,650m
武装:口径7.7mm Vickers K 機銃2-3丁

出典: 航空情報臨時増刊No.138「第2次大戦イギリス軍用機の全貌」昭和36年(酣燈社)
出典: ウキペディア記事 「スーパーマリン ウォーラス」


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