古代のパリジャンはネアンデルタール人

古代のパリジャンはネアンデルタール人

ご近所Bvd de Chateau通には日本大使邸があるdownsize
(ご近所Bvd de Chateau通には日本大使邸もある)

街づくりがうまいルヴァロワ
ルヴァロワ市(Levallois-Perret、正確にはコミューン)はパリのベッドタウンとオフィス街が混在していて多分税収が潤沢なのでしょう、公園、道路など公共施設がよく整備されています。ちょっと歩くとグローバル企業のオフィスがいくつもありますが、看板を見ないと気付かないくらい街の風景と同化していて街づくりがうまいな、と思います。アパートのとなりが病院なのですが、このゆかいなかわいい看板を見ないと病院と気付きません。少し前はミツバチの里だったと書きましたが、更に昔は・・・
隣の病院の看板downsize
(アパートの隣の病院看板)

ルヴァロワで発見された石器
アナトールフランスのパン屋downsize
(隣駅アナトールフランスAnatole Franceのいきつけのパン屋さん)
実はルヴァロワは考古学でも有名なのです。あのネアンデルタール人(Homo neanderthalensis、我々現生人類に先立ち20万年前~3万年前に西アジアからヨーロッパに住んでいたご親戚)が使っていた石器が出土したからです。中期旧石器時代ムスティエ文化(Mousterian industries)のもので以降その技術は「ルヴァロワ技法(Levallois technique)」と呼ばれています(核となる石(石核)を別の石で打って剥片を剥離させ鋭利な石器にする技法)。
ネアンデルタール人は現生人類のクロマニョン人(Cro-Magnon)と千年くらい共存しやがて入れ替わるように3万年前ころ姿を消したそうです。(クロマニョン人とは化石人の名前で生物種としては我々と同じアフリカで生まれた現生人類、ヒト(Homo sapiens sapiens)だったと考えられています)


ひょっとして古代のハーフかも?(最新の論文から)
アナトールフランスのカフェdownsize
(アナトールフランスのカフェ)
遺伝子DNAの研究などからネアンデルタール人と現生人類との混血はほとんどなかったと考えられています。でも、最近シベリアのデニソワ洞窟で発見された4万年前のデニソワ人は遺骨のミトコンドリアと核のDNA分析から我々現生人類の新たなご親戚らしい、そのデニソワ人のゲノム(1個体の遺伝子全体のこと)はネアンデルタール人のそれとも現在のメラネシアの人々のそれとも共通点があり「ひょっとしたらハーフかも?」と言うことらしくなかなかロマンがあって面白いですね。
「デニソワ人が語る人類祖先のクロニクル」”Shadows of early migrations”
原典: Carlos D. Bustamante & Brenna M. Henn, Nature vol. 468, 1044-1045
出典: nature ダイジェスト 2011年3月号 28-30


隠れ暮らしたご親戚、そのうちぼくらも「旧人」に?
交差点の小公園ベンチもあるdownsize
(交差点の小公園にはベンチもある)
既成の概念は新発見で塗り替えられることもしばしばで人類の歴史はこれからもまだまだ新発見があるだろうし、最近の有名な話題としては2003年にインドネシアのフローレス島でホモ・フローレシエンシス(Homo floresiensis)が見つかり、現生人類がすっかり「世界征服」を果たした後の13,000年前(~38,000年前の幅がある)までご親戚(旧人)が生きていたことが分りました。1m足らずで同じく見つかったゾウと同じく島嶼矮小化(資源が少ない離れ島では節約のため体が小さくなる)と見られひっそりと隠れ住んでいたと考えられています。あと何万年かしたら我々も「旧人」になってしまうのかも・・・。


ネアンデルタール人のサラリーマンは見分けがつかない、やっぱりご親戚だ

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ネアンデルタールの本downsize
(ネアンデルタール人に関することが載っていた読んだ本)
「ネアンデルタール人の正体-彼らの「悩み」に迫る」
赤澤威氏編著(2005年)、朝日新聞社発行(他の10人の著者名は割愛します)
概して日本の自然科学の研究者の本は、話題になりそうなことを派手に書くこともなく、自説のみを強く主張することもなく、大変バランスの取れた真摯な論旨、論評が多いのですが、一方で読物としてのストーリー性やダイナミックさにはやや欠ける感じがします。しかし、赤澤氏はこの本で10人の日本人研究者の寄稿をうまくまとめて科学的な論理性、公平性を保ちつつ全体を通して面白く読める本に仕上げています。写真の通りもう何回も読んで表紙がボロボロです。農耕の起源地でもある「肥沃な三日月地帯」のシリアやイスラエルの洞窟遺跡の日本人研究者による発掘と研究がネアンデルタール人研究に大きな貢献をしたことを改めて知りちょっとうれしく思いました。特に面白いのはネアンデルタール人の復元です。化石、石器、DNAなどをもとに考古学、遺伝学、解剖学などから体格、骨や顔の発達、脳やのどの構造(しゃべれたか)を解析し、行動、コミュニケーションも推測して「ネアンデルタール人の一日」まで想像しています。姿かたちもスーツを着て電車に乗ってくればほとんど区別がつかないそうです(写真が載っています)。やっぱりネアンデルタール人はご親戚なんですね。


ヒトの正式名はジュゲムジュゲム
我々現生人類、つまりヒト(生物分類は名前をカタカナで書きます、犬ではなくイヌとか)は「動物界 後生動物亜界 脊索動物門 羊膜亜門 哺乳綱 真獣亜綱 正獣下綱 霊長目 真猿亜目 狭鼻猿下目 ヒト上科 ヒト科 ヒト下科 ホモ属 サピエンス種 サピエンス亜種」(ウキペディアより)と分類される生物種だそうで、長いな!

人がヒトを語る難しさ
人がそういう「ヒト(Homo sapiens sapiens)」を語るとき、脳のお話などもそうですが、たとえ科学的推論や記述であっても「自らを知る、語る」ことのバイアスが忍び込む。特に化石や遺跡を頼りに今の我々(現生人類)のルーツや歴史をたどろうとすると実験による研究(仮説の設定とその立証または反証)は難しく「講釈師、見てきたような嘘を言い」に近いリスクがつきまとう。また、どうしてもそのときの時流に乗る、主流となる研究や説が出来てしまうのも避けられない。
そこで知りたいことや興味があることはなるべく複数の本を読むことにしています。比較すると面白いし、かえってそれぞれの著者(研究者)の立脚点が良く判ったりします。
もちろんここで書いていることはすべて元ネタがあります。ネアンデルタール人や人類の旅に関する本で読んで感銘を受けたものをご紹介しています。この他にも良い本があります。


ネアンデルタール人はやさしかった・・・と思いたい
「ネアンデルタール人の首飾り」”El Collar del Neandertal”
Juan Luis Arsuaga氏著(1999年)、藤野邦夫氏訳、岩城正夫氏監修(2008年)、㈱新評論発行
一時話題になりましたよね、イラクのシャニダール洞窟のネアンデルタール人は失った親しい人を花で飾って埋葬していたのだと。著者はスペイン人で母国スペインの遺跡の研究が中心ですが、等身大のやさしいまなざしでネアンデルタール人を含む我々の遠いご親戚(ヒト科ヒト属、Hominidae Homo)の歴史を語っています。


壮大なGreat Journey、人類5万年前の旅
「5万年前」”Before The Dawn - Recovering the lost history of our ancestors”
Nicholas Wade氏著(2006年)、安田喜憲氏監修、沼尻由起子氏訳(2007年)、㈱イースト・プレス発行
先にも紹介したサイエンスライターNicholas Wade氏が現生人類の起源と世界各地への放散(旅)を科学研究の成果や最新の取り組み(Project)を縦糸に、「出アフリカ」の壮大なものがたりを横糸に書いた、読んでいて面白く良くまとまった本です。やや西欧に力点が置かれている気はしますが、日本人の著書をと併せて読めば全体が分ります。どの話題も面白いです。

「5万年前に人類に何が起きたか?意識のビッグバン」”The Dawn of Human Culture”
Richard G. Klein氏、BlakeEdger氏共著(2002年)、鈴木淑美氏訳(2004年)、㈱新書館発行

「人類の足跡10万年全史」”Out of Eden the Peopling of the World”
Stephen Oppenheimer氏著(2003年)、仲村明子氏訳(2007年)、㈱草思社発行


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テーマ : 自然科学 - ジャンル : 学問・文化・芸術