予測する動物だから騙されるマジックとは?ニューロマジック(その3)

予測する動物だから騙されるマジックとは?ニューロマジック(その3)

A-6 ルノーのショールームは妖しい集蛾灯downsize
(シャンゼリゼのルノーショールームは妖しい集蛾灯)この過去記事はここをクリック↓
シャンゼリゼを呼吸するパリのホテル;晩秋パリ散歩その4
予測する動物、ヒトの性を逆手に取ると・・・
「ニューロマジック(neuro-magic)」とはマジック(magic)と(脳)神経科学(neuroscinece)のを合せた造語です。今回は予測を逆手に取るマジックと脳の働きのサイエンス小ネタです。
前回、前々回のニューロマジック記事はここをクリック↓
ニューロマジック、手品に学ぶ脳神経科学(その1)錯覚を操る技(前編)
生きる知恵だった錯覚で楽しむ手品;ニューロマジック(その2)






艶やかなパリの夜景
予測の思い込みを操るお話につき、私にとって憧れと思い入れそして想い出でついついイメージが膨らんでしまう「パリ」、その夕暮れと夜景を添えます。すべて以前載せたフォトでその下をクリックすればその記事に飛びます。

夕暮れセーヌ20031226downsizeREV
(夕暮れのセーヌ、アレクサンドルⅢ世橋) この過去記事はここをクリック↓
晩秋のパリ歩き13区からセーヌへ
予測を裏切る驚きこそ芸術やマジックの神髄
最早“天敵もいない安全な“生活を送る私たちにとってこの「予測」し「驚く」能力は、いい意味で予測を裏切る芸術の歓びに通じます。
そしてマジシャンも観客の“予測”を操ることにより“起こりそうもないこと”を起こして見せます。


塩入れのテーブル貫通マジックdownsize
(視覚と聴覚で操るテーブル貫通マジック)
塩入れがテーブルをすり抜けるネタとは?
テーブルの上の塩入れにナプキンを掛け、「えい!」と押すと、アラ、塩入れがテーブルをすり抜けた、まさにマジック!でもちゃんとネタはあります。
ナプキンをかけたまま塩入れをそっと抜きとり手の中に隠します。でも「ナプキンが塩入れの形のまま」なので観客は塩入れがまだそこにあると思っています。


視覚と聴覚が一致すれば信じちゃいます
「えい!」と“空のナプキン”をつぶしながらテーブルの裏に塩入れを当てて音を出し、おもむろにテーブルの下から取り出せば、「アラ、ふしぎテーブルをすり抜けた」と見える訳です。
このとき音も重要です。視覚と聴覚、2つの感覚が矛盾しないのだから観客には「塩入れがテーブルをすり抜けた」としか思えないのです。


シャンゼリゼ暮れの夜景downsize
(シャンゼリゼの暮れ、イルミネーションが温かい) この過去記事はここをクリック↓
カレーを箸で食べたら君も日本通?パリジャンの日本趣味

マジシャンが科学者に教えるシンポジウム
「手品の意識シンポジウム」(2007年)ではマジシャンがもう一方のプロである脳科学者を見事に騙して見せニューロマジックの研究に貢献しました。

視線で操るコイン投げマジック
(視線で操るコイン投げマジック)
誰でも予測するくらい繰返すのがコツ
マジシャンのマックがコインを右手で放り上げて左手で受け取り、左手を開くとコインがあります。そりゃそうだ、コインが放物線を描いて左手に収まったのを”見たんだから”。そんなの3回も繰り返せば観客は十分予測できる。

シャンゼリゼ街角夕暮れdownsizeREV
(シャンゼリゼ街角の夕暮れに灯が入ってゆく) この過去記事はここをクリック↓
パリのワンちゃんのお行儀
ワ、コインが消えた、“飛ぶのを見てた”はずなのに
じゃ、もう一度、右手で投げ上げて左手で掴みますが、左手を開けると・・、わ!今度はコインが消えました。観客は“確かにコインが飛ぶのを見た”のだから驚きます。素晴らしいマジックの技です(ちなみにこのときの観客はみんな脳科学者です)。

ゼロ分に輝くエッフェル塔downsize
(毎時ゼロ分に光り輝くエッフェル塔) この過去記事はここをクリック↓
眠りは脳の閉店後のお仕事、眠りと夢の科学の続き+黄昏、宵闇のパリ
絶妙なタイミングのエアー・コイン投げで騙す
でもコインは投げられていません。マジシャンは右手で投げるフリ、そして絶妙なタイミング(万有引力の法則で落ちてくるだろう時間差)で左手が掴むフリをしただけです。コインはずっと右手の中だから左手を開いてもコインはありません。

シルエットの凱旋門downsizeREV
(夕空をバックにシルエットになった凱旋門) この過去記事はここをクリック↓
フランス塩の花と菜の花とパリ凱旋門:ありきたりだけど奥深い
視線で観客の注意を操ってるスキに・・・
更にマジシャンは眼で飛ぶコインを追いように頭を動かします。すると観客も“つられて”その「視線の先」を追います。こうして注意が引きつけられ(注意のミスダイレクション)マジシャンの手元はまったく見えていません(網膜に映っても脳には・・)。

喧騒をよそに鈍色の空に佇む彫像REVdownsize
(喧騒をよそに鈍色の夕空に佇むコンコルド広場の彫像) この過去記事はここをクリック↓
オペラからコンコルド、オランジュリー美術館へ;晩秋パリ散歩その2
注視していない視野は見てないのと同じ
一方、マジシャンの「視線」に誘導され観客が“注視” する先の(網膜の一番解像度が高い中心窩で捉える)左手が“掴むフリ”をすれば観客(の脳)は完全に騙されます。このとき眼の解像度が高いのは注視しているマジシャンの左手周囲だけで、コインが“飛んでいるはず”の空間の視野は解像度が悪く何が起こっているのかちゃんとは見えないのです(それでも脳は記憶のなかで“はっきり見た”と“主張”するのですけど・・)。

サンジェルマンのカフェdownsize
(サンジェルマンのカフェ、夜はこれから) この過去記事はここをクリック↓
フランスの牡蠣は「氏より育ち」: 日仏食材風味の違い
見てないクセに・・・脳がデッチあげる記憶
観客の脳の中ではこれらを合わせ“筋の通ったストーリー”になる、「マジシャンが右手でコインを放り上げ、コインが飛ぶのを“見た”し、そして左手で掴むのも“確かに見た”」として意識され、記憶されます。コインはずっとマジシャンの右手の中にあったのに。観客は予測で作り話をデッチあげ、それが違うと驚くと言う訳です。
ご興味あれば「続きを読む」をクリックください↓

過去の記事リストは下のイラストをクリック ↓ (日本国内と南の島の記事は「ヨーロッパの話題」にまとめています)
パリの話題minisizeREVフランス街歩きminisizeREV
ヨーロッパの話題minisizeREV生き物とちきゅうのお話minisizeREV
ヒコーキの話minisizeREVグルメ話minisizeREV

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運動は色、形とは別に予測される
視覚の“映像”はまず、網膜で受けた光の情報を視覚野の各領野が分業して色、形、傾き、動きなどを別々に検出し、これらが統合され作り上げられていきます。動きだけを捉える領野と運動を司る領野との共同作業で外界の物の動き、運動軌跡を予測します。
でもこれは色や形の検出とは切り離せます。だから注視している観客に運動だけを予測させて騙せるわけです。


慣れてくると見なくなるのは脳の省エネ
別の実験で、コインの代わりにボールを使って何度か放り上げて掴むのを学生に見せ視線の先を記録します。インタビューで「ボールが飛んでゆくのを見た」と答えたのに視線の記録ではボールをまったく見ていなかったそうです。結果が予測できるとき脳は無駄をしないのです、なにせ神経活動はグルコースと酸素を大量消費するので。

ストーンエイジのご先祖たちは予測で生き残った
人は何を見て(経験して)フシギ!と驚くのでしょうか?それは予測がはずれたから、思いもしないことが起こったからです。
ヒトは予測をする動物です。その結果、関心のあるものに“意識を集中”します。これは昔々ご先祖たちが狩りをするとき、肉食獣から逃れるときなどにとても役立ったはずです。


今や、予測を裏切る驚きこそ人生の楽しみ
でも予測と違う“思ってもみない”ことを眼にすると驚きますし、ストーンエイジなら「エライこっちゃ」の脅威なのですが、ライオンに追われることもない現代ではこの驚きは人生の楽しみになります。
例えば、サプライズのプレゼントをもらった時とか。そしてまた、これはマジックの醍醐味の1つでもありますね。


主な出典(ニューロマジックその1、その2も同じです)
出典: 「脳はすすんでだまされたがる;マジックが解き明かす錯覚の不思議」”Sleights of Mind; What the Neuroscience of Magic Reveals about Our Everyday Deceptions” 2010年 Stephen L. Macknik氏、Susana Martinez-Conde氏、Sandra Blakeslee氏共著、鍛原多恵子氏訳(2012年、角川書店)

その他の出典
出典: 「確信する脳; 『知っている』とはどういうことか」“On Being Certain; Believing You Are Right Even When You’re Not” 2008年 Robert A. Burton氏著、岩坂彰氏訳(2010年 河出書房新社)
出典: 「意識は傍観者である; 脳の知られざる営み」“INCOGNITO The Secret Lives of the Brain” 2011年 David Eagleman氏著、大田直子氏訳(2012年、早川書房)
出典: 「脳は美をいかに感じるか-ピカソやモネが見た世界」”Inner Vision – An Exploration of Art and the Brain” 1999年、Semir Zeki氏著、河内十郎氏監訳(2002年、日本経済新聞社)


視覚と脳の働きの過去記事はこれ↓
脳が創り出す「マトリックス」な世界 + 南仏の赤い村ルシヨン
見ているのに意識できない視覚 + 南仏ニース番外編
脳は多党民主制、意識は脳テンキCEOその1+ブリュッセルのグルメ
夢と記憶の妖しい関係 + 光と影が曖昧な晩秋パリ、バスティーユ
「見えないけど見ている視覚」とアラビアが薫るセビリア


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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報

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