役に立たないイケメン、あぁ勘違いのハイテク美学『高高度戦闘機』

役に立たないイケメン、あぁ勘違いのハイテク美学『高高度戦闘機』

銀色の駿馬ムスタングは究極の答えかもdownsize
(銀色の駿馬ムスタングは究極の答えかも・・(パリ郊外Ferte-Alaisのエアショー))
美しいだけの銀色天女
役に立たないイケメン、あるいは、銀色天女・・その名は先の大戦時のレシプロエンジン「高高度戦闘機」。正月早々勝手にマニアックな記事を書いております。すみません、しかも長いです。





憧れの高高度戦闘機
『高高度戦闘機』、字面からしてカッコいい!
真っ白な雲海をはるか下に見て青黒く澄んだ大空に冷たい太陽をキラっと反射させて薄いコントレール(航跡)を引いて飛ぶ戦闘機、高高度戦闘機って孤独でハイテクでカッコいいイメージがあります。


でも・・役に立たないイケメンたち
スラっと長いスマートな脚・・ではなく翼は高高度仕様。でも先の大戦に登場したプロペラ高高度戦闘機でまともに(本来の任務に)役立った機体はない?らしい。勘違いのハイテク美学、「高高度戦闘機」のお話しです。

高く飛ぶための工夫
(高く飛ぶための工夫)
空気が薄い高空を飛ぶためには・・・
そもそもヒコーキが高空を飛ぼうとすると高空は気圧が低い、だから「薄い空気」と「少ない酸素」の問題があります。翼の上下面を通る空気の速度差=圧力差(ベルヌーイの原理)がヒコーキを浮かべる揚力なので空気が薄いと単位面積あたりの揚力は弱くなるので→広い主翼=簡単には長い翼、が必要になります。

P47サンダーボルトの下腹は排気タービンとダクトで膨らむdownsize
(P47サンダーボルトの下腹は排気タービンとダクトで膨らむ)
薄い空気は過給機で濃縮して・・・
エンジンはガソリンを空気酸素で燃やしてパワーを出すので酸素が少ないと力が落ちます。そこで薄い空気をスーパーチャージャー(過給機)で予め圧縮する必要があります。
P-38やP-47は排気タービン過給機をスピットファイアーやP-51は2段2速過給機を装備して高空性能を確保していました。


過給機と長い翼の専門職「高高度戦闘機」
だから、「高空を飛ぶ過給機付きエンジンと長い翼の専門の機体」として多くの「高高度戦闘機」はデザインされたようです。

世界一美しい駄作機ウェルキン
(世界一美しい駄作機ウェルキン)
天才ペターの美しき駄作っ機ウェルキン
岡部ださくさんイチオシの世界で一番美しい駄作っ機こそあの悲劇の天才ペターのデザインによるウエストランド社ウェルキン(Welkin)ですが、ウィング1個分くらい作ったのに役立たずじまい。
悲劇の天才ペターのベンチャーと彼自身の成り行きは過去記事をクリックください↓
美しくあまりにも個性的なWhirlwind機と天才Petter

Whirlwind三面図REVdownsize
(Whirlwind三面図;過去記事より再掲)
「空中戦が出来ない戦闘機」
高空空襲がなくなったこともありますが、ウエルキンはあの長大な翼ではロールすら打てず「空中戦が出来ない戦闘機」だったとも言われているようです。

先尖翼スピットファイアー高高度型
(先尖翼スピットファイアー高高度型)
スピットとメッサー、高空の戦い
自由フランス軍の撃墜王Pierre Closterman氏は著書”Le Grand Cirque”でスピットファイアー(Spitfire)戦闘機の高高度型HF Mk VIIでメッサーシュミットBf109G偵察型を墜とすエピソードを書いています。

高高度でも操縦性が大事です
高度1万m以上を行くメッサーはクロステルマンのスピットに気づくとロールを打って急降下、これをクロステルマンが追いようやく“低空で”仕留めますが、一緒に追った僚機は翼が壊れて不時着。

Vickers 432メフライはソフトなイケメン?
(Vickers 432メフライはソフトなイケメン?)
長い翼でまっすぐ飛ぶだけじゃ、ちょっと・・
このように実際は高空だけでの空中戦はないし、また、高空でも優れた操縦性が必要と分ります。
このエピソードだけでも高空でも性能の落ちない通常の優れた戦闘機があれば良く、長い翼で高空をまっすぐ飛ぶしか能のない「高高度戦闘機」は“幻想”だと分ります。

関連過去記事はここをクリック↓
空(そら)物語と飛ぶことの実感+Spit出演

高高度専門職と言う幻想のお話は続きで・・
そんな「幻想」を追ったいくつかの「高高度専門職」のヒコーキにご興味があれば「続きを読む」をクリックください↓

過去の記事リストは下のイラストをクリック ↓ (日本国内と南の島の記事は「ヨーロッパの話題」にまとめています)
パリの話題minisizeREVフランス街歩きminisizeREV
ヨーロッパの話題minisizeREV生き物とちきゅうのお話minisizeREV
ヒコーキの話minisizeREVグルメ話minisizeREV

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技術におぼれたソフトなイケメン;Vickers 432
一方、戦艦金剛も作った軍事大企業ヴィッカース(Vickers)もウェリントン高高度型(MkV、これ自身駄作っ機)の与圧キャビンを流用してVickers 432(愛称メイフライ)を試作しました。意味はかげろう(mayflyですが、悪口は「飛ぶかもしれない(may fly)」、モスキートに似たシルエットの金属製機なのでTin-Mossy(ブリキのモスキート)とも呼ばれたようです。もちろん実用化されず、技術だけに固執するとビジネスで失敗する典型?でも楕円翼のシルエットはソフトな感じの「イケメン」です。

Duxford Thunderbolt REVdownsize
(Duxford IWM博物館でサンダーボルト(P-47 Thunderbolt)がレストア中(再掲))
排気タービン付き地上攻撃機??;P-47サンダーボルト
2000馬力エンジンにスーパーチャージャー(過給機)として排気タービンを装備し戦略爆撃機の護衛戦闘機の本命としてデビューしたP47サンダーボルトですが、ひょんなことから援英機が傑作万能機に化けたP51ムスタングに職場を追われ地上攻撃機の転身。何のための高高度戦闘向け排気タービンを付けたんだっけ?

タンク博士渾身の高高度戦闘機Ta152
(タンク博士渾身の高高度戦闘機Ta152)
長すぎる主翼で大丈夫?;Ta152
名機FW190ですが、デザイナーのクルト・タンク博士は本来液冷のFW190D型を作りたかったようです。やがて実績が認められ設計者名を冠したTaシリーズとしてFW190の液冷高高度型Ta152を開発しますが、遅きに失して戦局には寄与せず、“実力”は不明です。
ロール率ならグリフォン・スピットにも勝ったFW190A型の血筋だから俊敏だったのか?でも細長過ぎる主翼を見る限りウエルキンと同じ弱点(まっすぐ高く速く飛ぶだけ)、同じ運命(空中戦ができない)だったのか、名機か、駄作機なのか、評価は霧の彼方です。


爆撃型からの転身モスキートNFXV夜間高高度戦闘機
(爆撃型からの転身モスキートNFXV夜間高高度戦闘機)
杞憂に終わった高空の脅威;Mosquito Mk XV
“Wooden Wonder”こと傑作機モスキート(D.H.98 Mosquito)にMk XVという高高度戦闘機型があったのをご存じなら相当な「蛇の目派」です。
高高度空襲が心配だし、高空侵入するJu86偵察機もウザイ!と言うことで爆撃機型B Mk IVに高高度用マーリンを搭載、先尖翼、4枚ペラ、ガンパックという組合せでした。


モッシーならNF30で十分なのに・・「持てる者の贅沢な杞憂」
しかし、高高度空襲は杞憂に終わり、高高度型スピットがあるのでモスキートMk XVは実用化せず。後のモスキートNF30で高空も十分カバー可能では?「持てる者の贅沢な杞憂」ですね。

窓が開かなくて蒸し風呂に;Spitfire HFVII
与圧キャビンと2段2速過給機付き高高度用マーリンエンジンを装備した高高度型スピットHF Mk VIIは当初こそ高空で偵察型Bf109Gなどと斬り結んだようですが、その内高空での戦闘は滅多に起こらなくなりました。

密閉温室で真夏の南仏を飛ぶと・・・
「じゃ、ヒマなら手伝って」と低空の戦闘爆撃任務に駆り出されました。ところが、なんせ与圧コックピットなのでパイロットが乗ると風防をボルトで密閉してしまいます。これで真夏の南仏の低空を飛べばどうなるか?コックピット内は蒸し風呂、パイロットはすっかりのぼせ上ったそうです。

高空にすら上がれなかった者たち;中島キ87
中島キ87は排気タービン付き2000馬力級エンジンを搭載した高高度戦闘機、キ84疾風の一族でシルエットも似ています。当時の日本では排気タービンなどは技術的に無理が多かったようで試作の段階で終わっています。航空機は周辺技術も大事でエンジンや設計がツン抜けているだけではダメ、と言うことだったのでしょう。

究極の答えは”Little Friend” P-51ムスタング
じゃ、結局高空で使う戦闘機は何がいいの?高空でも性能が落ちない傑作機、B-17、B-29に随伴する長距離護衛戦闘機”Little Friend”こと万能傑作機ムスタング(P-51 Mustang)が究極の答えだと思います。

ムスタングの血を引く傑作ジェットF86セーバーdownsize
(ムスタングの血を引く傑作ジェットF86セーバー)
ジェットなら簡単じゃん!!
更に1940年代後半、ムスタングの後にはジェット戦闘機が次々実用化されます。
レシプロエンジン機は高空の薄い空気をタービンで必死に濃縮しないと馬力が出せません。
でもジェット機なら、その原理(そもそも圧縮して燃やして飛ぶ)からして普通の機体でも高空飛行は簡単です。中にはU-2のように手が届かない高空を行く者もいましたが・・・。


勘違いのハイテク美学「高高度戦闘機」
レシプロエンジンの限界を目指してP-51以外はモノにならなかった(言い過ぎか?)高高度戦闘機って何だったのでしょう?・・でも、そのスマートなフォルム結構好き♡です!

出典:「世界の駄っ作機;Mk.I to Mk.VII」岡部ださく氏(岡部いさく氏)著(全巻持ってます!)
出典: 航空情報臨時増刊No.138「第2次大戦イギリス軍用機の全貌」昭和36年(酣燈社)(生まれて初めて買った航空専門書です)
出典: ”Le Grand Cirque” 「撃墜王」1951年 Pierre Closterman氏著、矢嶋由哉氏訳(朝日ソノラマシリーズ)
出典: ウキペディア
Ta152: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%95%E3%82%A9%E3%83%83%E3%82%B1%E3%82%A6%E3%83%AB%E3%83%95_Ta152
中島キ-87: http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AD87_(%E8%88%AA%E7%A9%BA%E6%A9%9F)


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