パリ郊外ルヴァロワの市章ミツバチには秘密がいっぱい

パリ郊外ルヴァロワの市章ミツバチには秘密がいっぱい
ミツバチが飛ぶ我が街ルヴァロワ(Levallois Perret)





Levallois Perret市庁舎downsize
(トリコロールがはためくルヴァロワ(Levallois Perret)の市庁舎(Hotel de Ville))
先にスーラの名画の舞台ジャット島は住んでいたルヴァロワ(Levallois Perret)のご近所だった、と書きましたが、スーラの頃はルヴァロワもまだ野原にミツバチがブンブンの養蜂業が盛んなパリ郊外の田舎だったようです。

フランスのミツバチは色っぽい?
だから市章もミツバチですし、市の刊行物のマスコット・キャラもミツバチちゃん。 「みつばちマーヤ」より大人っぽくちょっと色っぽいところはやっぱりフランス?もっとも野外で見かけるミツバチはすべて不妊のメスですが。
LevalloisのミツバチREVdownsizeLevallois市章REVdownsize
(ルヴァロワ市(Levallois Perret)のマスコット、ちょっと色っぽいミツバチと”正式”な市章のミツバチ)
ミツバチは身近なのにいまだにフシギがたくさんある生き物なので昔から興味を引くことが多いらしく、ミツバチについて書いた本もありますし、色々な本に話題や例として登場することもしばしば、のようです。読んでみて面白かったいくつかの本から拾ってみると結構ネタ話の宝庫です。

伝説の名機からサッカーゴールネットまで蜂の巣がお手本
かの有名な、そして僕が大好きなWooden Wonderこと、de Havilland DH.98 Mosquito(デハヴィランド社製の第二次大戦英国空軍の高速機モスキトー)も軽量化と構造強化のために蜂の巣のハニカム構造(Honeycomb、正六角柱が隙間なく並ぶ)のペーパーハニカムを構造材に採り入れました。しかもこれで70年も前にステルス機(レーダーに映らない)になったのです。革新的な航空機を作る今で言うベンチャーだったデハヴィランド社もハチに学んだわけですね。その後も宇宙船とか、F1カーとかにハニカムが採用され、今では省エネ建築材料にも使われて、サッカーのゴールネットも蜂の巣型でしょ。ハチさんすごいな。しかも規則正しい蜂の巣はデザイナーも現場監督もいない1匹1匹が自分の体をモノサシに作る自己増殖型の建築です。ハチは丸く作るんだけど集まると出来上がりが正六角形になる、缶コーヒーを隙間なく並べてみれば分ります。
Mosquito B35 @ RAF Museum downsize
(RAF Museumに展示されているMosquito B35 (TJ138号機)、P-51D Mustangと並んでます)
(RAF Museumへはロンドン地下鉄Northern LineのColindale駅が最寄です)
実は生物が作り出す構造物、蜂の巣、アリ塚、蜘蛛の巣などは材料工学、精密加工、構造設計などの最先端でもまだ追いつけないくらい良くできているものが多いのです。蜘蛛の糸を模したバイオマテリアルを開発しているバイオベンチャーもあるくらいです。
話の元ネタはJ.Scott.Turener氏著「生物がつくる<体外>構造」”The Extended Organism”(2000年)深津武馬氏監修、滋賀陽子氏訳(みすず書房)(2007年)。他にも空気ボンベを背負って潜るクモとか色々面白い話が載ってます。

ミツバチは花のとっても、とっても大事なともだち
プランシェット(Planchett)公園のチューリップdownsize
(ルヴァロワのプランシェット(Planchett)公園のチューリップ)
蜂蜜を作ってくれる(て、ゆーか、人間が横取りしてるんだけど)ミツバチさんは人間にとって大事、ヨーロッパでは牛、豚と並ぶ家畜のtop3なんですと。
でも花にとってはもっと大事。ミツバチは世界中でたった9種しかいません。一方ミツバチに花粉をはこんでもらって受粉する花(顕花植物)は17万種(約1対2万)。だからミツバチさんは忙しい。1匹の働き蜂は1日に3000の花を訪れ、1つの巣(コロニー)では1日に数100万の花を訪問しています、働き者だ!
甲虫は荒っぽく花粉を食べ散らかして花を壊すけどミツバチはやさしく花に止まり花蜜(ネクター)の一部だけをもらって花粉を運んであげるのです。だからミツバチは花の大事なともだち。
ミツバチの謎の失踪事件が多発してミツバチに受粉を頼る野菜農家が大変困ったと言うニュース覚えているでしょ。
この元ネタはJugen。Tautz氏著「ミツバチの世界」”Phanomen Honigbiene”(2007年)、丸野内棣氏訳、丸善㈱(2010年)でミツバチのすべてが分る本です。最近の本なのに「えっ、そうだったの!ミツバチすごい」と言う新鮮な話もたくさん。ハチ好きなら読んでみて下さい。

ルヴァロア準備中のビストロdownsize
(準備中のルヴァロアのビストロをのぞいてみた)
花が先?蜂が先?化石でわかった答え
花は昆虫や小鳥を蜜で誘い花粉を運んでもらうために多彩な色と複雑、精妙な構造になり、昆虫も花蜜を上手に吸うため吻など体の構造が特殊化してきました。だから共に相手に依存し共に変化する共進化(Co-evolution)をしたという訳です。
花と蜂もそうですが、でもどっちが最初に「仕掛けたの」?花か、蜂か?→はい、「蜂」です。
花が生まれた時代(1億年とちょっと前、中生代白亜紀)より前の時代(2億2千万年前、中生代三畳紀)の地層から木の空ろに作られた今のスズメバチの巣そっくりの巣の化石が見つかっています。
昆虫の化石から、花が現れるもっと前(約4億年前、古生代デボン紀)から昆虫の口器(吻など)はバラエティーに富んでいた(放散が起こっていた)と判る(チョウ、トンボ、蚊の口を比べてみて)。つまり先に食器(虫の口)の種類が出揃ってその後で料理人(顕花植物)が登場し色んな料理(花)を作ってきました。だから蜂が先輩(ミツバチはまだ若く3000万年前に出現、でも300万年前の人間のご先祖様アウストラピテクスよりはるかに大先輩)。
元ネタは化石と進化のよもやま話Nicholas.Wade氏著「化石は愉しい」”The Science Time Book of Fossils and Evolution”(1998年)、冨田幸光監修、神保睦訳、㈱翔泳社(1999年)。著者ニコラス・ウェイド氏はサイエンスライターで筆致がわかり易く面白くて、他にも出アフリカを書いた「5万年前」がいい本です。
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ミツバチはかしこいナビゲーター
巣から花へ、花から巣へ、もう一度同じ花へ・・・と1日に何度もミツバチは極めて正確な飛行をこなします。ミツバチは太陽コンパスと体内時計(biological clock)による優れたナビ機能を使って(ハチにとっては)長距離飛行を正確に飛ぶのです。
歩きではなく「飛ぶ」訳で飛行機の航法に近く、方角で行き先を判断、目印は太陽、いわゆる太陽コンパス。でも太陽は1日中動いていますから、「今何時」が分らないと方角が分らない。そこで時間を体内時計で測ります。今書いたことすべて、人間にはうまく出来ません。やっぱりハチさんえらいな。
DNAに書き込まれた本能と思うかも知れませんが、開花日は寒暖でずれますし、今日はどこで花が咲き、その花には何時頃に蜜があるかは日々変わりますから予めのプログラミングは無理。デビューしたての働きバチはうまく蜜を集められず練習が要る、つまりあの小さな脳で観察し学習しているのです。

Ferete Alaisエアショー出演のP-51 Mustang DとB downsize
(Ferete Alaisエアショー出演のP-51 Mustang D型(手前)とB型(奥)、革新的な翼のおかげで燃費が良くドイツの隅々まで長距離を飛んで行きました。開発したNorth American社も当時新興航空機メーカー、つまりベンチャーでした。)
ミツバチは自前の時計を持っている
毎日朝食に使うマーマレードでミツバチを餌付けするとやがて決まった時間にやってくる。餌がなくても来る。じゃパリからニューヨークにジェット機で一気に運んだら(6時間の時差)?NYじゃ深夜の「パリ時間の朝食時」(petit dejeuner)に巣箱から出てきたそうで、「自前」の体内時計で朝食に集まるのです。
更に蜜のありかの情報を尻ふりダンスで仲間にきわめて正確に伝えます、真っ暗闇の巣の中で。教えてもらった仲間は太陽コンパスで花園にたどり着く。ちょっと待って。最初のハチが訪れた時刻と仲間が再訪する時刻は違うから太陽の位置が違う、でもちゃんと行き着く。「聞く」方も体内時計で補正しながら飛ぶのです。あの小さな脳の能力はスゴイのです。
この2つの話の元ネタはJohn.D.Palmer氏著「生物時計の謎をさぐる」”The Living Clock”(2002年)、小原孝子氏訳、大月書店(2003年)。顕微鏡でしか見えない原生動物ミドリムシから人間までみんな生まれつき時計を持っていると言うお話でエピソードも面白くおすすめの1冊です。

ディジョン街中スイセンの花壇downsize
(ディジョン街中の花壇のスイセン)
女王蜂のハーレムなハネムーン飛行、でも雄はみんな死ぬの
蜂の巣、つまり蜂の社会は女王蜂が君臨していることはご存じですよね。人口じゃなくてハチ口が増えると分蜂、つまりのれん分けをします。
このとき古い女王の方が側近を連れて巣を離れ新しい巣を作ります(人間とは逆)。残った巣で「戴冠」した若い新女王は早速ハネムーン旅行に飛び立ちます。大勢の雄蜂を引き連れたハーレム状態(これも一部の人間とは逆)で次々交尾、精子を貯め込んで巣に戻ります。
一方雄蜂は交尾で体の「大事なところ」がもがれるので気を失って墜落、そのまま落命、哀れ。それでも次から次へと女王様にアタック。でもこの乱交パーティーもわずか10-20分くらいというからはかないものです。

食べ物で子供の将来が決まる、女王か、ひたすら働くか
巣に戻った新女王は早速産卵マシーンになり卵を産み続けます。
卵は働き蜂が世話をして幼虫に更に蛹になって羽化し成虫蜂が生まれるのですが、雌の幼虫は与えられる食事で将来が決まります。女王様とその予備軍か(でも新女王誕生に殺されます、シェークスピアみたい)、あるいは働き蜂か(子孫を残せずひたすら働く不妊の雌)、たべものはコワイな。この餌こそロイヤルゼリーです。
つまり今はやりの概念で言えばepigeneticな違いです。雄もちょっとだけ生まれます、ハネムーン以外は用なしで影うすいけど。
この2つの話の元は先に紹介したJugen。Tautz氏著「ミツバチの世界」です。

まだまだありますけど長くなるので今回はこのへんで・・・。

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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報