「毒入り」は嘘ぴょ~ん、遺伝子のドミノ倒しで作る蝶の擬態+フランスの看板

「毒入り」は嘘ぴょ~ん、遺伝子のドミノ倒しで作る蝶の擬態+フランスの看板

Honfleur裏通り看板も競い合って賑やかdownsize
(オンフルールの裏通り、看板も競い合って賑やか)





蠱惑的なチョウの翅の作り方は?
蝶の翅は美しく神秘的ですね。どのようにしてあの華麗な紋様が出来るのか?
また、その翅の紋様を使って擬態のような適応がどのようにして速やかに起こるのか?(19世紀の英国の工業化による大気汚染でわずか数10年オオシモフリエダシャク(Biston betularia)の工業暗化(industrial melanism)、つまりはその保護色である翅の色が白から黒になったのは有名ですね)
今回写真は「フランスの愉快な看板」番外編、看板のある街角風景です。

フランスの看板enseigneの過去記事はこれ↓
フランスの看板enseigneは個性的で楽しい

シロオビアゲハの擬態
(1つの遺伝子で無毒のシロオビが毒蝶ベニモンに化ける)
進化と擬態の先駆者ウォーレスとベイ
チャールズ・ダーウィン(Charles Robert Darwin)とともに進化論を打ち立てたアルフレッド・ウォレス(Alfred Russel Wallace)と昆虫学者ヘンリー・ベイツ(Henry Walter Bates)はともにアマゾンのチョウを研究し、ベイツは無毒のニセモノが有毒のホンモノに化ける「ベイツ擬態(Batesian mimicry)」を見出しました。

Ezeの古い石壁ににくいほどぴったりの看板downsize
(フランス鷹ノ巣村エズの古い石壁ににくいほどぴったりの看板)
今でもヒミツいっぱいのチョウの紋様
先駆者ウォーレス、ベイツ以来、多くの科学者の興味をそそってきた蝶の翅の紋様ですが、そこには今でもヒミツがいっぱいあるようです。

発生の遺伝子発現はドミノ倒し
(体づくりは遺伝子のドミノ倒し)
シックな蝶が妖しい衣装に着替えるとき
シロオビアゲハ(Papilio polytes)は名の通り本来は雄雌とも黒地に「白帯」のシックなデザインのアゲハ蝶です。ところが、一部の雌の翅は別の種であるベニモンアゲハ(Pachiliopta aristrochiae)の赤い斑点がある派手な翅にそっくり、つまり「擬態(mimicry)」しています。
でもベニモンが居るところでしかシロオビ雌はベニモン型にならないのです。


Ezeの看板downsize
(エズの看板は石積みとよく合っている)
『きれいなものには毒がある』??・・嘘ぴょ~ん
ベニモンアゲハは毒蝶で一度食べた鳥は二度と食べない、それはベニモンアゲハの派手な翅の模様が「毒があるぞ」という警戒色になっているからです。
シロオビアゲハの雌は翅模様がベニモンアゲハそっくりなので無毒なのに鳥は食べません。


翅の穴開け実験
(チョウの翅の穴開け実験、渓流の石のような効果)
擬態は『他人のそら似』です
シロオビアゲハとベニモンアゲハとでは種どころか属も違うほど遠い関係なのにそっくりの翅模様になるのは何ともフシギです。

Epernay薬局の看板REVdownsize
(エペルネーで見つけた薬局の看板)
たった1つの遺伝子で化けられる
その上、シオロビアゲハの雌がベニモン型に“変身”する擬態、すなわち翅全体の紋様の切換がたった1つの遺伝子の変化だけで起こるようです(K. Kunte氏他の研究)。これは他種で性決定にも関係する遺伝子でその名も意味深な”doublesex”です。

Quimperの陶器屋さんの看板downsize
(カンペール、陶器屋さんの看板)
チョウの翅はモザイク画
チョウの翅の色彩やパターンは小さな鱗粉が描くモザイク模様です。鱗粉1つが1つの細胞なので各細胞はそれぞれに「受け持ちの色」を発現しています。

Eze山頂近くのカフェ木彫りの看板downsize
(エズ村山頂近くのカフェは木彫りの看板)
少ない遺伝子でモザイク画を描くには?
もし鱗粉1つ1つの色につき遺伝子が指令を出しているなら、チョウの翅の華麗な模様を描くには無数の遺伝子が要ることになってしまいますから、何か違う“しかけ”がありそうです。
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Paris Mouffetar通の看板downsize
(パリ5区Mouffetar通のパブの看板)
擬態には共通の仕組みがある?多分・・
他の研究でも、種を越えて擬態するチョウの間では同じ遺伝子のグループが擬態の派手な色彩パターンに働いていることが分ったそうです。どうやらチョウの擬態には共通の“仕組み”がありそうです。

Ezeのレストランの看板downsize
(エズのレストランの看板)
体づくりは遺伝子の『ドミノ倒し』
発生(体づくり)はHox遺伝子など調節遺伝子が他の遺伝子をon-offし、その遺伝子がまた次の遺伝子をon-off、その結果、体の特定の場所でいくつかの遺伝子のon-offの組合せ(遺伝子が作る蛋白質などの組合せ)次第で何が出来るか、どんな体づくりになるかが決まってゆくようです。
言わば発生は遺伝子の「ドミノ倒し」です。


チョウの翅を伝わる紋様に波
チョウの翅の紋様(パターン)の基本は横縞模様でこれに目玉模様や斑点が加わって複雑華麗になりますが、翅の根元から外縁に向かって波が伝わってゆくような縞が基本です。

Quimperの辻角の看板downsize
(カンペール、辻角の看板)
模様づくりには「数学」も使う
生き物の模様、特に斑点や縞模様については初めにある遺伝子がon-offされると、活性化と抑制の化学物質の波(濃度勾配)が組み合わさりきれいな幾何学的パターンを作りだすこともありそうです。
遺伝子の指令は少なく簡単でも一旦引き金が引かれれば後は勝手に(自律的に、自己触媒的に)チョウの翅のパターンが「数学の法則」に沿って出来るようです。


遺伝子の『カタログ・ショッピング』
まるで“部屋のコーディネート”のように“色模様のカタログ”から発生の調節遺伝子が“好みの絵柄を選ぶ”(特定の遺伝子が特定の場所とタイミングで働く)だけで、あとは数学的、物理化学的法則に従って自律的に(自動的に)チョウの翅の“絵柄”を作ることが出来るらしいのです。

Annecyの看板downsize
(アヌシー街角の看板)
翅に穴を開けてチューリング理論を検証してみると・・
例えば、サナギの段階で翅の素、「翅原基(wing disc)」に穴を開けたスジコナマダラメイガの翅の模様は、まるで石で遮られた川の流れが変わるように、変わってしまいます。ヒョウの斑点は成長とともに体が大きくなると(キャンバスが広がると)模様が移り変わっていきます。これらはチューリングの活性ー抑制系の理論に沿っているのだそうです。

生き物の模様パターンづくりのお話しはもう少し続きます・・・

出典: 「チョウの擬態を担う単一遺伝子」 “Butterfly disguise down to single gene” natureダイジェスト 2014年5月号 P.3 Ewen Callaway氏執筆(原典: “doublesex is a mimicry supergene” Kunte, K. et al. Nature vol.507 P.229 (13 March 2014))
出典: 「かたち;自然が創り出す美しいパターン」 “Shapes; Nature’s Patterns/ A Tapestry in Three Parts” 2009年Philip Ball氏著、林大氏訳(2011年、早川書房)
出典: ウキペディア(リンク貼っていません)
「擬態」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%93%AC%E6%85%8B
「シロオビアゲハ」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%AD%E3%82%AA%E3%83%93%E3%82%A2%E3%82%B2%E3%83%8F
「ベニモンアゲハ」 http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%83%99%E3%83%8B%E3%83%A2%E3%83%B3%E3%82%A2%E3%82%B2%E3%83%8F
出典: 日本数理生物学会 2008年 「蝶の羽のカラーパターンとその多様性の生成」 中部大学 関村利朗
出典: 比較内分泌学 Vol. 34 (2008) No. 131 P 219 フォトエッセイ「テントウムシに関連した擬態」 名古屋大学 後藤 久美子, 大場 裕一, 柳沼 利信, 新美 輝幸


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