「かもめ飛びなさい」変な艦戦フルマーの物語

「かもめ飛びなさい」変な艦戦フルマーの物語

忘れぬこと、備えること
未だ復興が進まぬなか三年が経ちました。多くの方々が亡くなられたこと、未だ故郷に戻れない方々の想いを忘れないこと、明日は我が身かもと備えることを、改めて肝に銘じたいと思います。原子力が人には御しがたいものであることも・・・。

Fulmar II 809Sq HMS Victorious 側面図downsize
(空母Victorious搭載809飛行隊のフルマー II )





「変なかもめ」飛びなさい
フェアリー社(Fairey)設計のFAA(Fleet Air Arm、英国艦隊航空隊)の艦上戦闘機フルマー(Fulmar)のお話です。フルマーとはフルマカモメ(Fulmarus glacialis、ミズナギドリ科)のことです。ウィペディアに依ればノルウェー語で「悪臭のするカモメ」の意がある fulmaが語源、飛び方にしなやかさはなく、漁船が捨てた魚のアラを食べるなど「変なトリさん」です。

美しくも変な艦戦フルマーの雄姿
(美しくも変な艦戦フルマーの雄姿:ウキペディア(ENG)http://en.wikipedia.org/wiki/Fairey_Fulmar)
美しくも気になる忘れられたヒコーキ
今ではみんな忘れ去って、と言うか知らないまま時の流れに埋もれていった変なヒコーキは数多ありますが、フルマーもその1つ、でもなぜか気になる美しくも変な艦戦なんです。
私が撮った写真はないので本やウキペディアからの借り物ですが、どうですフルマーのシルエット、美しくスマートだと思いませんか?悲劇の軽爆バトルの血が流れていますので。
友情出演は、再掲載ですが、私が出会ったFAA機。これらを載せた関連過去記事は文末です。


翼を休めるタイフーンの兄貴分ハリケーン艦載型シーハリケーンdownsize
(Duxfordエアショーで翼を休めるハリケーン艦載型シーハリケーン(再掲載))
えっ、フルマーって活躍したの?
生産数 600機と少数ながらその戦果は 112機撃墜、80機撃破でFAA全戦果の30%、機種別のtopです(コルセアより多いの?)。・・と言うか、FAAの艦戦そのものがあまり活躍していないんですね。

フルマー四面図REV2downsize
(フルマー(Fulmar II)四面図)
ワンサイド勝ちの後にワンサイド負け
1940年の地中海デビューだけで会敵したイタリア空軍機を30機ほど撃墜しています。フルマーがいかに相対的な戦略優位をうまく使ったかは1940-41年はイタリア複葉戦CR42に対してワンサイド勝ち、でも1942年には単葉単座のゼロ戦に対してはワンサイド負けだったことでも分かります。

滑走路へ曳かれてゆくDuxford IWMの飛行可能なCorsair後ろ姿REVdownsize
(滑走路へ曳かれてゆくDuxford IWMの飛行可能なコルセアの後ろ姿(再掲載))
洋上の艦隊まで飛んでくる敵戦闘機はいないハズ?
ナチスドイツ双発戦Bf110の情報が不足(ウソでしょ!)のまま、「洋上のロイヤルネイビーまで敵戦闘機は来ないハズ」と言う“の~んきな”前提で仕様を出して採用しちゃったんです、フルマーを。

後ろ姿はやっぱりグリフォン系FAAのSeafire17 SX336 REVdownsize
(後ろ姿はやっぱりグリフォン系FAAのSeafire17 SX336 (Duxford)(再掲載))
駄作っ機の転職大成功♡
悲劇の軽爆バトル(Fairey Battle)の後継機Fairey P4/34は爆弾もロクに積めない超駄作っ機で不採用。でも誰も競争相手がいないのでまんまとFAAの艦戦に“転職”しちゃったのがフルマーです。
こんな変なヒコーキですが、フルマーにご興味あれば「続きを読む」をクリックしてください。

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FAAのSeafire17 SX336 REVdownsize
(FAAのSeafire17 SX336 、横顔もステキ(Duxford)(再掲載))
地中海ではフルマー奮戦!
バトル・オブ・ブリテン前夜にデビューしたフルマーですが、幸いBf109と出会うこともなく(ホッ!)、その活躍の舞台は主に地中海で、イタリア海軍を圧倒したマタパン沖海戦、タラント夜襲やマルタコンボイ「ペデスタル作戦」などの船団護衛で英空母から飛び立ち、イタリア空軍のCR42戦闘機、SM79雷爆機やルフトバッフェのFW200コンドル哨戒機、Ju87スツーカ軽爆などを圧倒しカモにしました、わずかながら速度、武装、操縦性が勝ったので・・・。

折りたたんだら前面面積がとても小さいCanadian Aviation MuseumのSwordfish downsize
(折りたたんだら前面面積がとても小さいCanadian Aviation Museumのソードフィッシュ(再掲載))
自慢のヤングマンでひらりと離着艦
Fairey社自慢のYoungman FLAPの装備により4,6ton(全備重量)もあるのに護衛空母から離着艦でき、6時間の偵察行動可能な性能、バトルの血を引く操縦の素直さはFAAにとって実用上とても重要な性能だったでしょう、たとえ軽爆並みの速度で軽爆くずれなのに爆弾も積めなくても。

バッカニアとサンダーランド、背景にコンコルドREVdownsize
(海から陸に上がってしまったバッカニア(Duxford)(再掲載))
メッキがはげた「鳥なき里のコウモリ」
でもそのまま呑気にインド洋に出向くとFAAとしては「想定外」の高性能艦戦、我らがゼロ戦の前にはカモになるだけ、99式艦爆にも追いかけまわされる破目になりました。フルマーは単座単葉の近代的戦闘機がいないハズ!の洋上で使うコンセプト、いわば「鳥なき里のコウモリ」だったもので・・・。

赤白スピナが印象的Canadian Aviation Museumのカナダ海軍Seafury downsize
(赤白スピナが印象的Canadian Aviation Museumのカナダ海軍シーフュリー(再掲載))
フルマーのアドバンテージを使い切ったFAA
第二次大戦のヨーロッパでは、空母勢力のない独伊相手だったらストリングバックこと複葉ソードフィッシュでもOKとか、近い例なら、空母のないアルゼンチン軍をBAeハリアーとスキージャンプで圧倒とか。FAAは駄作軽爆ながれの変な艦戦フルマーを時と場所を絶妙に選んで実に効果的に使い切ったということになります。

無骨なコックピットFerte AlaisエアショーのMartletクローズアップdownsize
(無骨なコックピットのマートレット(F4F)(Ferte Alaisエアショー)(再掲載))
ツン抜ける必要はない!戦略的優位とは相対的なもの
ツン抜けた科学技術ではないけど今手に入るものを最大限活用して、特に相手の弱点に付け込めるならホコリを被った技術や製品でも「相対的優位」を活かしてトコトン使い切る。いかにも海戦でのアウトレンジ砲撃(敵艦の弾が届かない距離を守って砲撃する)など戦略的、戦術的優位をトコトン使い切るロイヤルネイビーの伝統ですね。

甲板上のジャンプにも強いFAAワイルドキャットVIREVdownsize
(甲板上のジャンプにも強いFAAワイルドキャットVI(Duxford)(再掲載))
開戦前夜の艦上にはロートルと駄作っ機だけ
時を1940-1941年(太平洋戦争開戦前夜)に戻すと空母を実質運用する海軍は日英米のみ。空母の甲板に載る艦戦はと言うと、日本は当時世界一の“われらがゼロ戦”、米国はかわいいグラマン鉄工所製の頑丈なワイルドキャット、じゃ英国は?単葉単座単発の近代的艦戦はなかったのです!せいぜい複葉グラディエーターの艦戦型シー・グラディエーターだけ、あとは超駄っ作機のロックとか・・。

海鳥が羽を休めているようなFerte AlaisエアショーのAvenger downsize
(海鳥が羽を休めているようなのアベンジャー(Ferte Alaisエアショー)(再掲載))
年内で突貫デビュー「ロイヤルネイビーのゼロ戦」
フルマーの試作仕様は1937年ながら、普通2、3年かかる初飛行から→正式採用→生産開始→部隊配備→初戦果までのすべてを1940年のうちにとっとと達成する快挙?そりゃそうだ軽爆からの“転職”だもの。そんな1940年誕生のフルマーはいわばゼロ戦の同期生、性能はイマイチながら当時は「ロイヤルネイビーのゼロ戦」のような虎の子だったフルマー開発はデビューまで極秘だったそうです。

低い雲を背景に出演前のFAAコルセアdownsize
(低い雲を背景に出演前のFAAコルセア(Duxford)(再掲載))
まるで乗り遅れのロイヤルネイビー
ホーネットやイーグルのように現代のジェット軍用機では用途が戦闘+攻撃(爆撃)は当たり前ですが、まだくるくる回るプロペラ機時代では分業がフツウでした、馬力が非力なもので。

製作中のフルマーのプラモdownsize
(製作中です、フルマーの1/72プラモ)
軽爆出身の艦戦??そもそもがヘンです
プロペラ機時代、爆撃機を戦闘機にするのは、モスキート、ボーファイターやJu88みたいに時に成功するけどみな双発機であくまで用途は夜戦や戦爆機です。だから、軽快でなきゃいけない単発戦闘機を単発軽爆から作るなんて、艦上機だと言う点を割り引いても、相当に変で無茶です。

フルマーの本downsize
(超マニアックなフルマーだけを書いた本)
忘れ去られそうなフルマーの生き残り
そんなフルマーの唯一の生き残りはFleet Air Arm Museum (南西イングランドYeovilton海軍基地内)所蔵(展示)のFulmar試作原型機(のちにMk Iに改装)のシリアルN1854機のみです。やっぱりみんな忘れててなんだか可哀そうです。

フルマーII(Fulmar II)の緒元です
エンジン:Rolls-Royce Merlin 30 1,300 馬力 単発
乗員:2名
全長:12.25 m、全幅:14.13 m、全高:4.27 m
翼面積:32 m²、全備重量:4,627 kg
最大速度:438 km/h (高度 2,200 m)
航続距離:1,255 km、上限高度:8,300 m
武装:7.7 mm Browning機銃×8丁、250 lb (110 kg)爆弾×1


出典: Aircraft Profiles #254 “Fairey Fulmar Mks I & II” 1973年 David Brown氏著 (Hylton Lacy Publishers Ltd.、Profile Publications Ltd.)
出典: 「世界の駄作っ機5」2009年、岡部ださく氏(岡部いさく氏)著(大日本絵画)
出典: ウィペディア(ENG) http://en.wikipedia.org/wiki/Fairey_Fulmar


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コメント

Re: No title

ヒロシ様、拙い記事にコメントありがとうございます。フルマー、ヒロシさんもやっぱり気になりますか。変ぐあいが絶妙な気がします。ドイツレベル物はあまり作ったことがなくオリジナルか否かは私には分りませんが、元があるとしたらモールドの具合やランナーのカタチからはフロッグっぽいですよ。模型屋さんで1機だけ残っているのを買いました。ヒロシさんの足元にも及びませんがボチボチと作ってみようと思っています。

> お久しぶりです。
> フルマーは変な飛行機ですが、なんか気になる飛行機ですね。
> 私はスペシャルホビーのキットを持っていますのでそのうち作ろうと思っています。
> 製作中のドイツレベルのキット、元はどこのでしょう?マッチorフロッグ?

No title

お久しぶりです。
フルマーは変な飛行機ですが、なんか気になる飛行機ですね。
私はスペシャルホビーのキットを持っていますのでそのうち作ろうと思っています。
製作中のドイツレベルのキット、元はどこのでしょう?マッチorフロッグ?

Re: おはようございます。

バーソ様、いつもありがとうございます。こんな地味機のつたない記事なのにコメント頂きうれしです。実はフルマーの前身バトルがそもそも好きなんです(プラモ作りました)。バーソさんがおっしゃるように液冷機の魅力ですね。それに加えてムダ?に細長い風防が良く似合う気がします。確かに、翼をたたんだ鳥のようなコルセアは絵になりますね。

> 彩雲や天山もそうでしたが、乗員の多い攻撃機もカッコいいもんですね。
> 液冷エンジン機自体がスリムなので、そう思うのかもしれませんが。
> 羽を折りたたんだ姿など、艦載機はずいぶんカッコよく感じます。
> プロペラが5枚あるシーフューリーも、なかなかスマート。
> 検索したら、空冷18気筒、53,600cc。あのP51より重くて、速いんですね。

おはようございます。

彩雲や天山もそうでしたが、乗員の多い攻撃機もカッコいいもんですね。
液冷エンジン機自体がスリムなので、そう思うのかもしれませんが。
羽を折りたたんだ姿など、艦載機はずいぶんカッコよく感じます。
プロペラが5枚あるシーフューリーも、なかなかスマート。
検索したら、空冷18気筒、53,600cc。あのP51より重くて、速いんですね。

Re: No title

yoyo様、いつもありがとうございます。コルセアお好きですか、私も大好きです、特に翼をたたんだ姿が。La Fert-Alaisの博物館、もしチャンスがあれば行ってみたいですね。お近くなのでうらやましいです。面白い機体があればまた記事に書いてみます。

> kenjiさん、こんにちは。
> この飛行機、他のものと比べて何が違うのかと思ったら、操縦席から尾翼にかけてが長いんですね。上からの見た目も細いように感じます。
> ドイツの戦闘機にこういう印象の飛行機が多くありませんか?
> フルマーですか・・こちらに伺う度に少しずつ飛行機に関する知識も増えていってます。^^
>
> わたし的にはずんぐりしている方が好きかもしれません。
> コルセア、いいですね。
> 今月からLa Ferté-Alaisの博物館もオープンするので、行ってみたいと思います。

No title

kenjiさん、こんにちは。
この飛行機、他のものと比べて何が違うのかと思ったら、操縦席から尾翼にかけてが長いんですね。上からの見た目も細いように感じます。
ドイツの戦闘機にこういう印象の飛行機が多くありませんか?
フルマーですか・・こちらに伺う度に少しずつ飛行機に関する知識も増えていってます。^^

わたし的にはずんぐりしている方が好きかもしれません。
コルセア、いいですね。
今月からLa Ferté-Alaisの博物館もオープンするので、行ってみたいと思います。

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