規制を守って翼を切られた怪鳥の悲喜劇;スターリング物がたり

規制を守って翼を切られた怪鳥の悲喜劇;スターリング物がたり
~ 誰が彼女を駄作っ機にしたのか? ~


ジェット時代のHeavyの3V一員Vulcan(IWM)downsize
(ジェット時代のHeavies、3Vボマーの一員Vulcan(IWM;英国ケンブリッジ郊外DuxfordのImperial War Museum))
古きに学ぶのはヒコーキの世界にも・・・
現実や現場を踏まえていない、あるいは、何となく既存のしがらみが絡みついた規制やルールは「百害あって一利なし」。そんな例はヒコーキの世界にもあったと言う「勝手にマニアック」な記事です。





海鳥の翼
(名機、名鳥、名怪獣はアスペクト比が高い;「海鳥の翼」の再掲)
博物館にさえ忘れられたパイオニア
残念ながらStirlingの写真はありません。英国初の近代的四発重爆なのに博物館にも飾ってもらえないくらい忘れられたヒコーキなので。代わってレトロな大型プロペラ機のポートレートを添えています。
アスペクト比の過去記事はここをクリック↓
海鳥、翼竜、マリタイム機に共通するものとは?

Stirling平面図
(それに比べ格納庫幅に合わせてしまったStirlingのアスペクト比は低い)
三羽烏の1羽は怪鳥Stirling
第二次大戦時、英国空軍(RAF)には重爆三羽烏がいました、Lancaster、Halifax、え、もう一つは?スターリング(Stirling)と言います。(もっとも戦後もRAFには3Vボマー(Valiant、Vulcan、Victor)なんてありましたから、語呂合わせに近いかも?)

悲喜劇のうちに消えて行った怪鳥
このスターリング(Stirling)、いかにも見た目がコワそうな怪鳥です。Stirlingは近代的四発重爆のパイオニアの一人になるはずのところを余計な規制のおかげで悲喜劇のうちに早々に引退しました。

StirlingへSunderlandの翼を移植
(飛行艇のパーツ流用、安易な四発機の作り方)
細長い翼は高く遠く飛べる
後退翼がまだないプロペラ機時代、ヒコーキは主翼のアスペクト比が大きい(細長い)ほど巡航性能と高空性能が良くなる、つまり高く、遠く飛べる。大海原を飛翔するアホウドリをみれば分ります。長距離重爆として、哨戒機として優れていたLiberator(B-24)は長大な高アスペクト比の翼を持っています。
ご興味あれば「続きを読む」をクリックください。
サンダーランド飛行艇の過去記事はこれ↓
空飛ぶ船サンダーランド飛行艇の洞内巡り

過去の記事リストは下のイラストをクリック
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怪鳥Stirling羽ばたくdownsize
(いかにも「怪鳥Stirling羽ばたく」と言う感じです(出典“The Stirling Story”より拝借))
怪鳥Stirlingの羽はニワトリのレベル
重爆も高射砲がコワイから高く飛びたい、敵陣深く攻め入りたいから遠く飛びたい、B-29の主翼を見れば一目瞭然です。ところがStirlingは戦略重爆のくせにその主翼はニワトリの羽のように小さくて短い(アスペクト比が小さい)。

新製品でも箱のサイズに合わせなさい
第二次大戦前夜の英国、多くの飛行場の格納庫はまだ複葉機時代のままの狭いもの。そろそろ近代的な単葉四発の大型重爆を作らなきゃ、となったが、「今の格納庫に収まること」が制限条件についてしまった。だから「大型機と言えども主翼幅は格納庫幅を越えてはならない」と。

Duxford定番のフィギュアつきB17Fortress再掲 downsize
(Duxford IWM定番のフィギュアつきB-17 Fortress(再掲))
後出しじゃんけんの後輩たち
でも後から出来たLancasterやHalifaxでは主翼幅の制限もなくなり、三羽烏の後輩2羽は期待通りの性能と働きを見せてメデタシメデタシ。でもこれ“後出しじゃんけん”じゃん、とShort社は嘆いただろうな。

ヒコーキを雨に濡らしてはいけませぬ
「ヒコーキは格納庫に入れておかねばならない」、うん、平時ならね。でも一旦戦いが始まり、昼夜を置かず出撃すると滑走路脇の野外で整備してまた出撃ってことになるので、修理でもない限り、格納庫は使わないのが現実。じゃ、あの主翼幅の制約は何だったんだ。

リベレーターのシルエット(IWM)再掲downsize
(B-24 リベレーターのシルエット(IWM)(再掲))
実績あります、空飛ぶフネですが・・・
この近代重爆Stirling開発を受注したのはShort社、飛行艇メーカーで大型機(と言っても空飛ぶフネの)の実績があり、四発飛行艇サンダーランド(Sunderland)も開発したし、と言う理由だったらしい。

飛行艇上陸す、でも車輪が大変なことに
それは良いのだが、Short社は陸上機Stirlingに水上の飛行艇Sunderland(サンダーランド)の要素をたっぷり盛り込んじゃった、多分“安全策”だったのでしょう。主翼をそのまま流用、さすがエンジンは強化したけど、飛行艇なら合理的な中翼配置は陸上大型機では脚が長くなり怪物のような降着装置(主車輪)になっちゃった。ちゃんとした引き込み脚なのですが、なんと2段階に分けて引き込むフクザツな仕掛けでした。

デモ飛行から帰ってきたB17Fortress背景はSpitたち再掲downsize
(デモ飛行から帰ってきたB-17 Fortress、背景はSpitたち(IWM)(再掲))
手抜きなのヤラ、慎重なのヤラ
一方、1/2スケールの模型M4まで飛ばして飛行特性を調べていて、手抜きなのやら、慎重なのやら訳がワカラン顛末に。結局、宮崎アニメに登場する“悪者たち”のアナクロ的大型機のようになっちゃた。

四パツはみんな転職組
B-24は飛行艇のデザインをベースに輸送機も視野に入れた爆撃機、LancasterとHalifaxは元双発中爆(それでも日本の重爆の2倍は積める)を四発化した重爆でLancasterの胴体の小窓の列は輸送機兼用、長大な爆弾倉は雷撃機兼用が当初構想にあった証しだし。もちろんコンドルは旅客機の脆弱さを抱えたままの哨戒機。

リストアされflyableなB17機種のクマちゃんは何だろう(IWM)REVdownsize
(リストアされflyableなB-17機種のクマちゃんは何だろう(IWM))
本来ならパイオニアなんだけど・・・
この時代、純粋に四発戦略重爆として設計されたのはなんとB-17とStirlingだけで(プロパガンダ重爆のソ連はこの際考えない、伊仏は論外)、本来ならパイオニアの一人のはずだったのですが・・・。しかし、その後の両機の活躍、功績、知名度には愕然たる差がついてしまった。

メンフィス・ベルのB-17と映画にならないStirling
B-17の活躍は今更なので省きますが、Stirlingの作戦高度はLancasterの半分ほどの3000mでこれでは高射砲の弾幕に遭ってしまうわ、長くグロテスクな脚はしょっちゅう着陸事故を起こすわ、短い翼では遠くまで飛べないわ、それもこれも短い中翼配置の翼のタタリです。Stirling主演で“メンフィス・ベル(Memphis Belle)”みたいな映画は出来るはずがないもの。

ダッチスコードロンのMitchell II (IWM)downsize
(ダッチスコードロンのMitchell II (IWM))
白昼堂々護衛なし+「的」まで付けて・・
それでもStirlingはB-17に1年も先駆けて白昼に護衛なしで占領下フランスに出撃、そこそこ成果を挙げました。しかし、国籍マークを狙って撃てば防御のかなめ、動力銃座が動かなくなることをルフトバッフェに見破られ、あっさり撤退、なにせ蛇の目なので胴体に「的」が描いてあるようなもんです(初めに気づかんかい)。

やっぱり「夜のお仕事」に・・
そこでRAF機らしく夜の戦略爆撃に転向したけど、高く遠く飛べず事故の多いStirlingは間もなく本命のHalifaxとLancasterに職場を追われてしまいました。それでもWellingtonと並んで戦略爆撃の基礎を築いたんですけどね。

Stirling側面図
(怪鳥Stirlingの側面図)
転職先はありますか?
「転職先として哨戒機は?」、優秀なLiberator(B-24)が既にあるので要らない。じゃ、馬力はあるからグラーダー曳航機は、と出来たStirling Ⅳ型は「史上最大の作戦」ノルマンディー上陸でちょっと活躍、その後、輸送機として作られたⅤ型が使われたのは場末のビルマ戦線のみで、戦後たちまちLancasterの輸送機型Yorkに座を奪われ、とうとうStirlingは引退してしまいました。

思い込みのタタリじゃ
純粋な四発戦略重爆として誕生しながら、転職組に次々職を奪われ、華々しいことは何人一つなく引退したStirling。「ヒコーキは格納庫に入れておかねばならない」と言う思い込みで主翼幅を制限されたことがどこまでも祟ったようです。

出典の本REVdownsize
(出典の本)
怪鳥Stirlingのシルエットが好き♡
Stirlingについてずいぶんなことを勝手に書きましたが、怪鳥を思わせるあのシルエットは結構好き♡なんです。Airfixの1/72のStirling(MkⅢ)は作るのに気合いが要りそうでまだ買っていませんけど。

規制は進化する生きものでなくちゃ
規制や取り決めは“化石”になってはいけない、世の流れ、変化に応じて“進化する生きもの”でなければ弊害を招く・・・と言う例になるのかなぁ?

Short Stirling Mark Iの緒元
全長26.6m、全幅30.2m、全高6.9m、翼面積135.6平方米、アスペクト(Aspect)比6.5
自重21,274kg、最大離陸重量(Max.take-off weight) 31,752kg
エンジンBristol Hercules II 1,375馬力×4発、乗員7名
最大速度454km/h(高度3,800m)、航続距離3,750km、上昇限度5,030m


出典: “The Stirling Story” 2002年 Michael JF Bowyer氏著(Crecy Publishing Limited出版)
出典: Osprey Combat Aircraft-19 “Sunderland Squadrons of World War 2” 2000年、Jon Lake氏著 (Osprey Publishing)


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コメント

Re: No title

yoyo様、いつもありがとうございます。カッコイイですか、ありがとうございます。中世の騎士のような無骨さと案外スマートな胴体のシルエットが私には素敵に思えます。ぜひ作ってみてくださいね。

> kenjiさん、こんにちは!
> アスペクト比のことはよく分かりませんが、このスターリングというのは、カッコイイですね〜。
> また作りたいものが増えました♪
> スミマセン、こんなコメントで・・。

No title

kenjiさん、こんにちは!
アスペクト比のことはよく分かりませんが、このスターリングというのは、カッコイイですね〜。
また作りたいものが増えました♪
スミマセン、こんなコメントで・・。

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Re: No title

エヌエフ様、いつもありがとうございます。
柔らかい発想、と言うのは簡単ですが、失敗出来ない開発となると難しいのが現実でしょうか。「ヒコーキか、生き物か」、どっちも好き♡なので難しい質問ですね。交通事故で聴覚と平衡感覚を半分づつ失ったことが致命的と知るまではパイロットが子供の頃の夢でしたけど。

> 「性能が先か、それとも格納性が先か」… そこはさすが重爆、艦載機のように翼端を折りたたむ発想はなかったようですね^^
>
> おはようございます。
> いつもお世話になっております。
> 「航空機学が先か、それとも生物学が先か」… Kenjiさんの少年時代の夢は、どちらが先だったんでしょう。
> 鳥とヒコーキの比較記事を拝見するたび、いつもそう思いながら読むのが楽しみです。

No title

「性能が先か、それとも格納性が先か」… そこはさすが重爆、艦載機のように翼端を折りたたむ発想はなかったようですね^^

おはようございます。
いつもお世話になっております。
「航空機学が先か、それとも生物学が先か」… Kenjiさんの少年時代の夢は、どちらが先だったんでしょう。
鳥とヒコーキの比較記事を拝見するたび、いつもそう思いながら読むのが楽しみです。
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