小さな藻が大気を守る、でも古代の海に逆戻りの危機かも?

小さな藻が大気を守る、でも古代の海に逆戻りの危機かも?

スカシテンジクダイのカーテンに隠れるダイバーdownsize
(スカシテンジクダイのカーテンに隠れるダイバー)
小さなプランクトンの大きな力
植物プランクトンのハプト藻類や珪藻類など海のプランクトンはその圧倒的な量で地球上の一次生産(光合成で有機物を作り出す)の45%を賄うそうです。膨大な数と種類の海の生き物を支えている存在ですが、顕微鏡でないと見えない直径5〜50μm程度の小さなかわいい生き物です。
海の生き物つながりでまだご紹介していない石垣島ダイブの写真を添えています。


プランクトンの悪臭が作る雲が地球を冷やす
(プランクトンの悪臭が作る雲が地球を冷やす)
気候は生き物の生殺与奪”の鍵
薄皮まんじゅうのような地殻に這いつくばって生きる多くの生き物(ヒトも含めて)にとって、地球の気候、気象、日々の天気は生き抜く上で生殺与奪”の鍵であり続けてきたようです。





過去の記事リストは下のイラストをクリック
パリの話題minisizeREVフランス街歩きminisizeREV
ヨーロッパの話題minisizeREV生き物とちきゅうのお話minisizeREV
ヒコーキの話minisizeREVグルメ話minisizeREV

ハナクマノミとイソギンチャクdownsize
(ハナクマノミとイソギンチャク)
生き物が気候(変化)を緩和する
生き物は気候変化に黙って耐えているわけではありません。むしろ生き物が気候を変えることもあります。30数億年前、光合成を始めたシアノバクテリアが原始大気に酸素を供給し、やがて酸素呼吸ができるような今の大気組成になりました。

緑から紅への政権交代
(緑から紅への政権交代)
プランクトン、チョークも作ってます
白亜紀の温室地球ではハプト藻類(haptophytes)が大繁殖しその炭酸塩の殻は積もり積もって白亜紀(Cretaceous period)の名前の由来でもあるドーバーの白い崖などのチョーク層を作り、後に黒板のチョークになりました。新生代にも同じくプランクトンの珪藻(Diatom)が大繁殖して大気中のCO2を吸収して「温室効果ガス」を減らすことで氷の世界「氷期」を後押ししました。

炭酸カルシウムでできたココリスの鎧をまとった円石藻
(炭酸カルシウムでできたココリスの鎧をまとった円石藻: SEM写真をお借りして色づけしてみました)
炭酸カルシウムの鎧ココリスをまとうプランクトン
円石藻(Coccolithophores)はハプト藻類のうち、炭酸カルシウムで出来たたくさんの小さな円石(coccolith、ココリス、名前がかわいいな)の鎧をまとったグループです。

逆立ちして餌をついばむミスジチョウチョウウオREV
(逆立ちして餌をついばむミスジチョウチョウウオ)
人工衛星から見えるほどの大繁殖
円石藻は光合成生物なので光の届く浅い海に棲み貧栄養の外洋を好むのですが、例外的にエミリアニア・ハクスレイ(Emiliania huxleyi) や Gephyrocapsa oceanica (日本近海に棲息)は富栄養の環境にも適応し沿岸や外洋を問わず大発生して人工衛星からでも見える巨大なブルームを形成します。

古代のMAが紅系を生んだ
(古代のM&Aが紅系を生んだ)
磯の香りで雲を作り地球を冷やす藻たち
円石藻が海のバイオマスに占める割合は大きくエミリアニア・ハクスレイ1種だけで10万m2もの海面を覆います。更に硫化ジメチル(ジメチルスルフィド、dimethyl sulfide, DMS)を大量に作り出します。硫化ジメチルは少量なら“磯の香り”ですが、大量なら悪臭の素、でもこれが核となって空に雲を作り、その「日傘効果」が地球を冷やして「人間による温暖化のイタズラ」を緩和していると言うとてもありがたい存在なのです。

このカトンボのようなダイバーはボクですdownsize
(このカトンボのようなダイバーはボクです)
「緑」対「紅」、古生代の戦い
海の藻類の仲間には“緑系”(緑藻類)と“紅系”(紅藻類)がいます。古生代までの海はミネラル乏しくO2少なく酸性(酸化的な)海だったので“緑系”の天下。でも2億5千年前のペルム紀末大絶滅を境に海はミネラル豊富(正確には金属イオンの組成の変化)O2いっぱいの中性pHの今のような海になり、“紅系”が一気にブレークし天下を取ります。ハプト藻、珪藻、渦鞭毛藻(Dinoflagellate)など紅藻類はペルム紀末大絶滅を境に緑藻類にとって換わり植物プランクトンの主流になりました。

サンゴ礁を泳ぐミツボシクロスズメダイREVdownsize
(サンゴ礁を泳ぐミツボシクロスズメダイ)
光合成廃棄物O2が大気を変えた
地球の歴史も半ばの22億年前頃、シアノバクテリアが「葉緑素(クロロフィル)による光合成」と言う画期的新技術を発明して世界を席巻し、“光合成の廃棄物”、酸素O2が海と空に大量に放出され無酸素の大気は今のように酸素に富んだ大気に変わってゆきました。

プランクトンは1次生産の45を支える
(プランクトンは1次生産の45%を支える)
M&Aで生まれた緑藻類と紅藻類
毒物の酸素にやられ滅んだ生物もいましたが、一部のプランクトンは「こりゃ便利」と“ベンチャー”のシアノバクテリアをM&Aして(共生体として細胞内に取り込み)、社内の生産工場「葉緑体」にしました。
そのときそのまま使ったのが緑色の緑藻類、赤や黄色のカロチンとかも加えて技術改良したのが紅色、褐色の紅藻類や褐藻類です。


サンゴに隠れるロクセンスズメダイdownsize
(サンゴに隠れるロクセンスズメダイ)
プランクトン・ビジネスのM&Aが生んだ“紅系”
更に、グローバル企業が大企業をM&Aするように、もっと大きなプランクトンが緑藻類や紅藻類をM&Aして(取り込んで)生産を担う子会社にしてしまいました。この内、紅藻類をM&Aしたのが、今回の主役、ハプト藻類、珪藻類、渦鞭毛藻類です。だから見た目も赤い“紅系”です。

サンゴ礁を乱舞する小魚たちdownsize
(サンゴ礁を乱舞する小魚たち)
おいしい“紅系”が生態系を豊かにした
動物プランクトンや小魚にとって“紅系”の栄養価は高くて、その後、海は豊かになり現在に続いています。その“紅系”の代表が円石藻です。より栄養価の高いバイオマスの大きい植物プランクトンなので以降の海の生物の多様化と大型化を支えました。彼らがいなければ今の海の幸は現れなかったかも知れません。

炭素循環
(炭素循環)
気候変動の鍵を握る「炭素循環」
地球誕生から間もなく常に海があった地球の気候は、他の惑星に比べれば、ある幅に収まり温和で安定していますが、人の暮らしの尺度でみれば温暖化と寒冷化の繰り返しです。その寒暖のさじ加減で鍵を握るのが「炭素循環です。つまりどのくらい炭素が温室効果ガスのCO2になり、一方でどのくらい大気CO2が他の炭素になって除去されるか、収支バランスを保っているのが「炭素循環」です。

その名もオジサンはアゴヒゲで餌を探しますREVdownsize
(その名もオジサンはアゴヒゲで餌を探します)
炭素のタンス貯金が温暖化を抑える
珪藻はシリコン製ガラスの殻なのに対して、ハプト藻は炭酸カルシウム(CaCO3)の殻なので、海洋中の炭酸イオンを、ひいては大気中のCO2を融けない殻にしてもはや海や大気に戻れなくすることでCO2を除去しています。ハプト藻類の殻はマリンスノーとなって海底に降積り、膨大な年月を経て微化石となりチョークのような地層になります。ハプト藻は、人間が増やしているCO2をせっせと除去し減らしてくれています。

豊かな海が古代の海に逆戻り、恩を仇で返す危機
でもね、急速な人為的温暖化が進むと海は酸性化します。また、開発で森が消え、肥料が流れ込む海は富栄養、貧酸素になります。そうなると豊かな海は古代の海に逆戻り、円石藻たちも滅ぶんじゃないかって危惧されています(恩を仇で返すとはこのことか)。

おいしい海の幸が食べられなくなる?
もしも“古代の海”に戻ってしまうと、おいしいエビ、カニ、カキ、マグロ、サンマなどシーフードは消え去り、渡り鳥たちは餌場を失い、海は毒性の高い渦鞭毛藻で覆い尽くされて魚も窒息するような「死の海」になるそうです。海の小さな藻たちを守らないと「えらいこっちゃ!」になります。

円石藻の光学顕微鏡写真: 「紅系」の色合いが分ります。
http://ina.tmsoc.org/CODENET/galleries/DICimages/index.htm
円石藻の走査電顕写真の1例: 小さな鎧ココリスの姿が良く分ります。
http://ina.tmsoc.org/CODENET/GuideImages/COcocco/index.htm

出典: 日経サイエンス2013年10月号 P42 「明らかになった生命爆発の主役」“Tiny Plants That Once Ruled the Seas” Ronald Martin氏、Antonietta Quigg氏執筆(原典: Scientific American June 2013)
出典: 「ミクロな化石、地球を語る」2010年 谷村好洋氏著(技術評論社 「知りたいサイエンス」シリーズ)
出典: 「正しく理解する気候の科学」2013年 中島映至氏、田近英一氏共著(技術評論社 「知りたいサイエンス」シリーズ)
出典: 「日本の海産プランクトン図鑑」2011年、岩国市立ミクロ生物館監修、末友靖隆氏編著、松山幸彦氏、上田拓史氏、上の俊士郎氏、佐野明子氏、濱岡秀樹氏、中島篤巳氏共著(共立出版)


↓良かったらクリックをお願いします


フィリピンの孤児たちを支援しておられるZenさんのブログです。
LIFE IS A TEST
そのために私たちが出来る支援としてZenさんのネットショップをご紹介します。何かご購入を頂ければフィリピンの孤児たちを支える力にもなります。
Zenさんのネットショップ「breakerbeat」

東松島市の仮設住宅の方々の工芸品ご紹介のブログにリンクしています
banner-himawari2.jpg

1クリックで1円、協賛企業から寄付されます
大震災支援募金新アイコンKT20131025

スポンサーサイト

テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報

コメント
コメントの投稿
管理者にだけ表示を許可する