買い物カゴを下げたラム海軍少佐のインディー・ジョーンズのような冒険

買い物カゴを下げたラム海軍少佐のインディー・ジョーンズのような冒険

このアングルがいいFerte Alaisエアショーのフランス海軍F4U7近景downsize
(このアングルがいいなぁ、パリ郊外Ferte Alaisエアショーのフランス海軍F4U-7)
空(そら)物語り その4
ひたすらマニアックな記事です。ヒコーキ好きは別として、そうでもない方は「インディー・ジョーンズ実話編」のつもりで(無理っぽいけど)、もしお暇があれば読んでみてください。
ダラダラとちょっと長いので7つのエピソード毎に分けておきますから“つまみ喰い”でも読めます。
フォトはもうひとりの主役ソードフィッシュ機とFAA(Fleet Air Arm、英国艦隊航空隊)同僚の友情出演です。






「空(そら)物語りその1」から「・・その3」はここをクリック↓
空(そら)物語と飛ぶことの実感+Spit出演
美しくあまりにも個性的なWhirlwind機と天才Petter
ベンチャー成上りの礎は丸っこくかわいいハドソン機 空(そら)物語その3

翼をたたんだCanadian Aviation MuseumのSwordfish 側面downsize
(翼をたたんだCanadian Aviation Museumの銀ピカのソードフィッシュ)
目次です
プロローグ: 英国海軍少佐チャールズ・ラム
エピソード 1: カレージアスの悲劇
エピソード 1: カレージアスの悲劇
エピソード 3: おとぎ話の谷の若き王
エピソード 4: アドリア海を舞うつばめ
エピソード 5: 夜風の如く海を行く
エピソード 6: 砂漠に舞い降りる影
エピソード 7: ネイビー・ブルーの帰還
あとがき: メカジキの血統は消えず


【プロローグ(prologue): 英国海軍少佐チャールズ・ラム】
昔作ったソードフィッシュ張り線もしていない駄作downsize
(昔作ったソードフィッシュ、張り線もしていない駄作)
買い物カゴを下げた海軍少佐
チャールズ・ラム(Charles Lamb) 海軍少佐というパイロットを知っていますか?
ご存じないでしょうね。武勲高い名パイロットではあるのですが、その飛行歴の終わり方はカッコよくないし、乗機も華やかなスピットやP-51じゃなくて、ストリングバッグ(Stringbag、買い物カゴ)こと複葉ソードフィッシュ(Fairey Swordfish)ですから。


地味な負け戦ばかりの飛行歴
確かにチャールズ・ラム少佐の華々しい飛行歴はタラント攻撃くらいのもので、あとはみな負け戦か劣性局面の地味ミッションばかり。ようやく形勢逆転の頃に捕虜になってしまい、やっと解放され復帰したら今度は大けが・・と、飛べないまま終戦。戦後も練習飛行隊や漁業監視船の指揮でとっても地味。

「インディー・ジョーンズ」か、「007」か、いえA.マクリーン
でも彼の自伝”War In Stringbag” の中の冒険談(すべて実話です)はまるで「インディアナ・ジョーンズの冒険」みたい。いやラム海軍少佐なので「007」か?むしろアリステア・マクリーン(Alistair Stuart MacLean)作品みたいなんですよ。

やはり超一流パイロット、卓越した技量と勇気
彼は一言も言っていませんが、どの“冒険”も卓越した操縦技術と勇気あってこそです。ラム少佐はやはり超一流パイロットだったようです。これが出典↓
「雷撃」”War In Stringbag” 1977年 Charles Lamb氏著、宇田道夫氏、光藤亘氏共訳(1982年、朝日ソノラマ・・・つくづく思うのですがこのシリーズの邦題はロマンが足りないと)

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【エピソード 1: カレージアスの悲劇】
無骨なコックピットFerte AlaisエアショーのMartletクローズアップdownsize
(無骨なコックピットがステキなFerte Alaisエアショーのマートレット(F4F))
絶体絶命の脱出だよ、撃ってるヒマがあったら逃げなきゃ
開戦間もなく乗っていた2万トン近い空母カレイジアス(HMS Courageous)がU-ボート(U-29)の雷撃によりたった20分で沈没(1939年9月)。
早く逃げればいいのに、急速に傾いて行く艦の大砲でU-ボートを撃とうとしたり、最後まで艦に残り部下でもないのに海兵隊員を誘導したり、多くが艦と運命をともにした悲劇からラム大尉は強運の生還を果たします。


【エピソード 2: イラストリアスの逆襲】
艦上型ではありませんがRAF Museumの Gladiator downsize
(艦上型ではありませんがRAF Museumのグラジエーターです)
タラント港を夜襲した815航空隊
タラント夜襲(1940年11月)は空母イラストリアス(HMS Illustrious)から飛び立ったラム大尉所属の815航空隊(815 Naval Air Squadron)などのソードフィッシュ機がタラント港のイタリア戦艦3隻を撃沈、大破した有名な奇襲作戦。1年後の真珠湾攻撃のお手本になったとも言われます。

一番地味で一番危ない影の殊勲
このタラント攻撃でラム大尉は一番地味で一番危ない役目パスファインダー機(Pathfinder)として対空砲火飛び交う中、終始タラント港を飛び回りマーカー(照明弾)で攻撃隊を誘導、奇襲を成功に導きました。

【エピソード 3: おとぎ話の谷の若き王】
折りたたんだら前面面積がとても小さいCanadian Aviation MuseumのSwordfish downsize
(折りたたんだら前面面積がとても小さいCanadian Aviation Museumのソードフィッシュ)
敵地山奥、秘密の「おとぎ話の谷」から夜襲出撃
ギリシャ戦(1941年)は押され気味の負け戦、わずかなソードフィッシュ機を率いてラム大尉らはアルバニアの敵地山奥に秘密基地「おとぎ話の谷」からアドリア海を渡ってイタリア軍港を夜襲して多くの戦果を挙げます。なんせイタリア側にとってはどこからやってくるのか見当もつかない奇襲なので。

月明かりを頼りに深い峡谷をぬう秘密の通り道
ラム大尉たちのソードフィッシュは場所がバレないよう曲がりくねった深い峡谷を月明かりだけを頼りに夜間を低空で飛びます。狭い崖を抜けた先の谷合が秘密基地。だから最後までバレず奇襲はいつも大成功。側方レーダーもFLIRもGPSも無い時代ですよ!卓越した飛行技術と勇気がないとできませんね。

若き王様のハイジャックで遂に基地を放棄
ある日、若きユーゴスラビア王がなんと独軍のJU88をハイジャックして秘密のはずの「おとぎ話の谷」に飛来。飛行隊は王と首相を英軍まで丁重に送り届け、もう場所がバレてしまった基地を撤収しました。

アドリア海が舞台の「紅の豚」のような冒険譚
秘密基地をつくるところなんか、いかにも英国流だし、舞台がアドリア海と「紅の豚」の1シーンみたいでもあり、ユーゴスラビア王まで“出演”してなんだかとっても映画っぽいゾ。

【エピソード 4: アドリア海を舞うつばめ】
海鳥が羽を休めているようなFerte AlaisエアショーのAvenger downsize
(海鳥が羽を休めているようなFerte AlaisエアショーのTBFアヴェンジャー(ターボン))
空中で止まっても墜ちない買物カゴ
ラム大尉の乗機、複葉ソードフィッシュ機は操縦性と安定性の化け物みたいな機体で垂直上昇し空中で“止まって”も失速せず、ひらりと下方旋回できるし、海面スレスレまで突っ込んでタイヤで水しぶきを上げても墜ちないのです。

一発も撃たずに敵戦闘機を撃墜
これを知らないイタリア戦闘機2機(Fiat CR42)が単機のラム機に攻撃をかけますが、ラム大尉の海面スレスレ宙返りの秘技の繰り返しにとうとうついて行けず2機とも海中に突っ込んでしまいました。1発も撃たず単機で敵戦闘機2機撃墜の快挙!・・なのですが、記録にはならない、撃ってないので(どこまでも地味ですね)。

【エピソード 5: 夜風の如く海を行く】
信頼のPegasusエンジンCanadian Aviation MuseumのSwordfish downsize
(信頼のPegasusエンジンが命、Canadian Aviation Museumのソードフィッシュ)
複葉ステルス機、暗闇の海面で音を消す
もう一つソードフィッシュ機の信じられない裏技に夜の海の低空でエンジンを切って音を消すと言うのがあります。毎夜マルタ島から出撃するラム大尉たちのソードフィッシュはイタリア船にまったく気づかれずに舷側まで迫って雷撃、当然百発百中。まるで複葉のステルス機です。

技量と勇気の夜の海面数mの裏ワザ
魚雷を落としたらエンジンを再スタートするのですが、真っ暗な夜の海面上数mです。優れた機体の安定性、エンジン(Bristol Pegasus)の高い信頼性、高度な操縦技術と勇気が揃って初めて成せるスゴ技です。

やっぱり派手な人が手柄を持ち去る
ソードフィッシュのほかウェリントン、ボーフォート、ブレニムなど一握りの地味機、二流機のマルタ島航空隊による通商破壊がロンメル将軍のアフリカ軍団への兵糧攻めとなり今では北アフリカ戦の重要な勝因の1つとされています。でも当時はエルアラメインでロンメルを破ったモンゴメリーが英雄ですから、ラムやっぱり地味な貢献。

【エピソード 6: 砂漠に舞い降りる影】
滑走路へ曳かれてゆくDuxford IWMの飛行可能なCorsair後ろ姿REVdownsize
(滑走路へ曳かれてゆくDuxford IWM博物館の飛行可能なFAAコルセアの後ろ姿)
敵地深くスパイを送迎する謎のSTOL機
マルタ島でラム大尉はウデを見込まれ、いかにも007の出身Royal Navyらしい怪しいミッションに
就きます。単機で地中海を越え敵地にスパイを送迎するミッション。当然飛行場を使えるはずもなく月夜に砂漠の荒地に離着陸するソードフィッシュの艦上機としてのSTOL性能を活かしたミッションです。


泥に脚をとられて捕虜になってしまう
1941年9月ラム大尉の隠密任務は何回かの成功の後、突然終わります。降りて見たらなんと沼地。泥に脚を取られた愛機ソードフィッシュは飛び上がれずラム大尉は敢え無く捕虜になってしまいます。

【エピソード 7: ネイビー・ブルーの帰還】
赤白スピナが印象的Canadian Aviation Museumのカナダ海軍Seafury downsize
(赤白スピナが印象的です、Canadian Aviation Museumのカナダ海軍シーフュリー)
やっと復帰したと思ったらデッキ事故で大けが
1942年解放後に長い療養生活を経て1943年末海軍少佐として復帰。1944年5月の独戦艦ティルピッツ攻撃に参加しましたが、終戦間際1945年7月空母インプラカブル(HMS Implacable)艦上のクラッシュ事故で大けがを負ってまた入院となりました。

ラム少佐かっこいいです、映画にならないかなぁ
出典本の巻末に著者チャールズ・ラム海軍少佐の写真が載っていますが長躯痩身で彫の深いなかなかイケメンです。卓越した操縦技能、それでいて海軍ボクシング・チャンピオンと腕っぷしも強い。Royal Navyの制服が良く似合うし、どうですヒーローっぽくないですか?いつか映画にならないかなぁ。

ブラピかジェード・ロウに・・・
ここまで読んで頂いたようでありがとうございます。ラム海軍少佐、いかがでしたか?カッコいいと思いませんか?若き日のショーン・コネリーか、今ならブラット・ピットかジュード・ロウあたりにラム大尉を演じてほしいなぁ。ジョージ・クルーニーなんかいいかも?

Wikipediaにも載る有名人
ちなみにWikipedia英語版には“Charles Lamb (Royal Navy officer)”と言う記事名で略歴などが載っています。最終階級は海軍中佐。URLはこれ↓(リンク貼っていません)
http://en.wikipedia.org/wiki/Charles_Lamb_(Royal_Navy_officer)


【あとがき(postscript): メカジキの血統は消えず】
ソードフィッシュ三面図REVdownsize
(ソードフィッシュの三面図)
もう一人の主役は買物カゴ
一方、“もう一人“の主役ストリングバッグことソードフィッシュ(Fairey Swordfish)はあまりにも有名ですから、WikipediaのURLだけ載せておきます(リンク貼ってません)。
http://en.wikipedia.org/wiki/Fairey_Swordfish


幻の名機TSR-2につながる血筋
以下のカタログ性能だけを見たら第二次大戦時でももう“化石”のような低性能。でも操縦性、信頼性、安定性など数字に出ないパフォーマンスこそが数々の武勲に輝くソードフィッシュの真骨頂です。
試作機時代ソードフィッシュはTSRⅡと呼ばれました。同じく低空侵入とSTOL性を極めたあの美しい幻の名機TSR-2(あるいはストラトス・フォー)と同じ名前です。


ソードフィッシュ(Swordfish) Iの仕様と性能
乗員: 3名、全長: 10.87m、翼幅: 13.87m、全高: 3.76m、
翼面積: 56.4平方米、全備重量: 3,500kg
エンジン: Bristol社製 Pegasus III 空冷星形690馬力×単発
最高速度: 224 km/h (高度1,450m)、上昇限度: 5,870m
航続距離: 879 km(雷装時)、航続時間: 5.7時間
防御武装: 7.7mm Vickers機銃 固定×1および旋回×1
攻撃武装: 60ポンドロケット弾×8または760kg魚雷×1または700kg爆雷または680kg爆装


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コメント

Re: こんにちは。バーソです。

バーソ様、いつもありがとうございます。お礼遅くなりました。
こんなマニアックな記事にコメント頂けるとは感激です。更に原著を読んで頂けるとはうれしいです。
制限が多い艦載機は極めるとゼロ戦の美しさになるのでしょう。F4FやTBFは優美な曲線なんか知ったことかと直線的で、間近で見ると工作も荒い。でもいかにも頑丈、なるほど「グラマン鉄工所製」。技術より文化の違いでしょうか。
これに懲りずにまたマニアックな記事書きます。

> なぜかプロペラヒコーキは、陸軍機よりも、海軍機のほうが
> かっこいいような気がするのですが、
> 「海鳥が羽を休めているようなTBFアヴェンジャー」。
> スーパーカーのガルウイングドアのようでもありますが、
> よくこんなふうに翼を一点でクルリと回転させて畳みますね。
> アメリカの雷撃機ゆえに機体構造が頑強なせいでしょうか。
> lambさんは子羊と言いながら、なかなかの狼だったようですね。
> 「雷撃」の本、図書館に予約しました。

こんにちは。バーソです。

なぜかプロペラヒコーキは、陸軍機よりも、海軍機のほうが
かっこいいような気がするのですが、
「海鳥が羽を休めているようなTBFアヴェンジャー」。
スーパーカーのガルウイングドアのようでもありますが、
よくこんなふうに翼を一点でクルリと回転させて畳みますね。
アメリカの雷撃機ゆえに機体構造が頑強なせいでしょうか。
lambさんは子羊と言いながら、なかなかの狼だったようですね。
「雷撃」の本、図書館に予約しました。
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