愛馬タイフーンを駆ってスコッティ空を行く-空(そら)物語その4

愛馬タイフーンを駆ってスコッティ空を行く
-空(そら)物語その4

拙ブログも早や2年半、ようやく25万回アクセスとなりました。ひとえに訪問くださる皆様のおかげです。あらためてありがとうございます。

すみません、長い上に勝手にマニアックな記事です。

いかにもパワフルなタイフーンのクローズアップdownsize
(いかにもパワフルなタイフーンのクローズアップ、インヴェイジョンストライプが似合いますね: ロンドンRAF博物館にて




Scott搭乗のTyphoon初期型downsize
(スコット搭乗のタイフーン)
愛馬タイフーン
スコッティことデズモンド・スコット(Desmond J. Scott)はタイフーンと言うちょっと異色の飛行機に乗ったAceと言うより空の優れたリーダー。若干23,4歳にして基地航空団を率いました(Wing Leader)。飛ぶことが大好きな正義感溢れるその人柄に惹かれます。

翼を休めるタイフーンの兄貴分ハリケーン艦載型シーハリケーンdownsize
(翼を休めるタイフーンの兄貴分ハリケーンの艦載型シーハリケーン、マルタ島コンボイ「ペデスタル作戦」時の衣装のようです: 英Duxford IWM博物館)
ニュージーランドの野生児
ニュージーランドの牧場で育ったスコットは馬、犬など動物を愛し、飛行機をコンパニオンアニマルのように乗り回し愛したパイロットです。スコットのこの著書は戦いの孤独の中で悲しみや苦しみを呑み込みながら生き延びた一人の若者の物語りです。そして訳者は我が憧れの「岡部いさく」さんです。
出典: 「英仏海峡の空戦」”Typhoon Pilot” 1982年 Desmond Scott氏著、岡部いさく氏訳(1990年 朝日ソノラマ)

下あごのラジーエーターでブルドッグみたいdownsize
(下あごのラジーエーターのせいでブルドッグみたいな印象のタイフーン)
タイフーン、危うく駄っ作機
そもそもスコットの愛機タイフーン(Hawker Typhoon)と言うヒコーキは当初用途の迎撃機としては失敗で駄っ作機一歩手前。後に名テストパイロットとなるビーモント(R. P. Beamont)が低空攻撃専門の戦闘爆撃機として活路を見出し大活躍、スコットのような多くの名パイロットを生みました。

やはり曲者タイフーン
しかしやっぱりタイフーンは問題児で、水平2段対向24気筒のセイバーエンジンが気分次第の難物、高速ダイブで尻尾がすっ飛ぶ、巨大な3枚ペラが不時着時は地面をたたき7ton近い巨体をひっくり返すなど。でも一旦爆弾などの荷を下ろせば低空ではで無敵のタイフーン、スコット飛行隊のフォッケ、メッサーに対するキルレシオは10倍だったようです。

グっとスマートになったタイフーンの発展型テンペストII型downsize
(グっとスマートになったタイフーンの発展型テンペストⅡ型)
爆弾を忘れるハイパワー
2200馬力の強力セイバーエンジンが引っ張るタイフーンは馬力があり余っていて日本の重爆並み、1トンの爆弾を積んでもプロペラ後流で海面を泡立てながら護衛のスピットを置き去りにしてかっとんでゆく。だからスコットの部下は爆弾がまだついたままも忘れて不時着、はずれた爆弾で一同肝を冷やす破目になったりします。

RAF博物館展示のタイフーンの横顔downsize
(RAF博物館展示のタイフーンの横顔、いかにもハイパワーでかっとんで行きそう)
救難に命を賭けるスコット
ドーバーや北海を挟んだ欧州の空戦では傷ついた飛行機の多くは海上に不時着します。制空権が交錯する海上では不時着乗員を救難するリスクは高く時に2次被害につながるので司令部は常に反対。侠義を重んじるスコットは「全責任を取る」と言って常に救難に全力を挙げます。ミッションの帰路、たまたま見つけてしまった救命ボートの乗員を救うため燃料切れまで見張り、救難艇を勝手に手配し翌日も飛びようやく救い出します。いつメッサーが現れても不思議ではないフランス海岸で。

英仏海峡に面したブルターニュのロスコフ漁港downsize
(英仏海峡に面したブルターニュのロスコフ漁港、スコットの飛行隊も低空で飛び交ったかも知れない)
老馬のような救難飛行艇に黙祷
その救助作戦中に荒波でフロート失い最早飛べない、脚を折った老いた農耕馬のようなウォーラス救難飛行艇、パイロットが救出された後、スコットは機関砲で沈めてやり、コックピットで黙祷します。スコットにとってヒコーキは機械ではなくコンパニオンアニマルだったようです。
ご興味あれば「続きを読む」をクリックしてください。

その他の出典: Osprey Aircraft of the Aces 27 “Typhoon and Tempest Aces of World War 2” 1999年 Chris Thomas氏著 Osprey Aviation出版

過去の「空(そら)物語」は以下をクリック↓
空(そら)物語と飛ぶことの実感+Spit出演
美しくあまりにも個性的なWhirlwind機と天才Petter
ベンチャー成上りの礎は丸っこくかわいいハドソン機 空(そら)物語その3

過去の記事リストは下のイラストをクリック
パリの話題minisizeREVフランス街歩きminisizeREV
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タイフーン一族ながら垢抜けたデザインのテンペストII downsize
(タイフーン一族ながら垢抜けたデザインのテンペストⅡ型、2400馬力セントーラスエンジンです)
戦いに巻き込まれた馬に胸を痛める
タイフーンを駆って高度ゼロの低空攻撃、御者も逃げてしまった無人の馬車が爆音に驚いて逃げ垣根にひっかかり転倒する。馬の悲しげな表情が目に留まり胸を痛めたスコットが振り返ると馬は走り去り安堵します、対空砲火飛び交う中なのに。

中世騎士の槍のようなイスパノ20mm機関砲downsize
(中世騎士の槍のようなタイフーンの長銃身イスパノ20mm機関砲)
ブルドッグか、槍試合の中世騎士か
スコットは言います、タイフーンはブルドッグに似ていると。機首下の大きなラジエーターは気の強さを、巨大な3枚ペラは喧嘩っ早そうな気性を感じるから。主翼から4門の長銃身20mm機関砲が突き出し槍試合の騎士みたいです。昔、初期Airfixプラモのタイフーンを組み上げて手に取ると無骨だけど味があり好きになりました。

タイフーン一族の決定版はミグも墜したシーフュリーdownsize
(タイフーン一族の決定版はミグも墜したシーフュリー: Canadian Aviation Museum展示)
荒馬タイフーンとの出会い
スコットが初めてタイフーンを操縦するエピソードは初めて乗る馬を手なずけるような感覚です。まずあぶみのような胴体の金具に足を入れて3mの高さの操縦席によじ登るなどまるで馬にまたがるよう。ブーストをゆっくり全開にするとタイフーンは轟音とともに滑走路を疾走しアっと言う間に大空へ。

よくすっ飛んだタイフーンの尻尾downsize
(よくすっ飛んだタイフーンの尻尾、一見丈夫そうなんだけどなぁ)
暴れ馬をてなずける
手なずける手始めに垂直上昇させ頂点でロールしてもすぐにスピンから回復するのに感心する。垂直パワーダイブはあまりに高速でそこから引き起すと血が下がってブラックアウト寸前になる。そりゃそうだ7ton近い巨体タイフーンのセイバーエンジンは2200馬力だもの。

まだ走り足りないのか、プロペラが震えて止まる
テストを終え駐機場でタイフーンの燃料コックを閉じると、エンジンが止まり、まだ走りたがる馬のいななきように、泣きそうな唸り声を出して巨大な3枚プロペラが嫌そうに震えて止まる、「たっぷり30は分鞭を入れた」とスコットは書いています。

静かな佇まいの兄貴分ハリケーンdownsize
(静かな佇まいの兄貴分ハリケーン、スコットもタイフーンの前に乗っていました: IWM博物館)
積乱雲の林の中のオニゴッコ
スコットは飛行隊を率い訓練のためサセックスの空に舞い上がると一列縦隊で積乱雲の林を右に左に縫って飛び、大きな雲の頂上まで駆け上がると一気に駆け降りる。部下はスコットを追いかけついてゆく空のオニゴッコは楽しそうです。

幸運のピンクの象
スコットが故郷ニュージーランドを離れるとき老夫婦から金の指輪をもらいます。帆船世界一周につけて行って無事戻れたのだから、「ぼうや、きっと無事戻れるからね」と幸運のお守りに。更にピンクの小さなガラスの象をもらったスコットはいつもこれらを肌身離さずに飛んでいました。あるときピンクの象を置いてきたことに気付くとその日スコットは危うく一命を落としそうになりました。だから飛行機乗りは皆、ゲンを担ぐのですね。

スコットが愛犬を乗せて飛んだアンソン機downsize
(スコットが愛犬キムを乗せて飛んだアンソン機)
愛犬はコパイロット
スコットは時折愛犬キムを連絡機アンソンに乗せて飛びます。イギリス南部の田園を低空で飛ぶと窓越しに地上の人や馬が後ろに飛んでゆく、愛犬キムは機首から機尾まで吠えながら追いかけてゆく。愛犬キムはスコットの飛行隊が帰投すると爆音もまだ聞こえないうちから迎えに行きます、他の飛行隊のときは知らん顔なのに。ワンちゃんの聴覚は優れてますね。

リーダーに寄り添う愛犬
飛び続け、戦い続けるとパイロットの神経は疲れ果てます、スコットのような強靭な人でも。タバコを吸い過ぎる、お茶をしてもカップと皿がカチャカチャ言う、寝つけず対空砲火の悪夢で目覚めると冷や汗をかいている。愚痴や弱音を吐く相手もいないリーダーの孤独に愛犬だけが寄り添ってくれると、スコットは書いています。

英Duxford IWMのハリケーンとシーハリケーンdownsize
(英Duxford IWMのハリケーンとシーハリケーン)
闇の中の鬼火
留守の間に爆撃を受けた基地に戻ると夜の闇のそこここに焼夷弾が鬼火のように燃えていてゾっとするような光景、オフィスは直撃弾が貫通し、スコットは命拾いします。

・・・雪に散る
しかし多くのパイロットは最後には運が尽きてゆきます。アルデンヌの大反攻の冬、オランダの基地は未曽有の大雪、除雪で数mになった雪の壁に囲まれた滑走路に着陸するタイフーンのタイヤがわずかに滑るや雪壁に激突、スコットは目の前で盟友を失います。

愛機タイフーンの前に立つスコットと愛犬キムDOWNSIZE
(愛機タイフーンの前に立つスコットと愛犬キム、出典の1ページをお借りしています)
静かに孤独が降り積もる
「・・また雪が降り出した。柊の木立の赤い実はすべてが物悲しい景色のなかのわずかな色彩・・」と。共にニュージーランドから海を渡った10人の仲間の中でただひとり生き残ったスコットの孤独は一層深いものになってゆくのが行間から滲みます。

忘却の彼方へ・・・
ニュージーランド人として最年少で基地司令になったスコットですが1945年2月にコックピットから降りました。そしてタイフーンもそれを駆った若者たちも忘却の彼方に静かに消えて行った・・・、だからこの本を書いたとスコットは結んでいます。

スコットはWikipedia(ENG)にも載っています↓(リンク貼っていません)
http://en.wikipedia.org/wiki/Desmond_J._Scott


タイフーン初期型の三面図縮尺スケール
(タイフーン初期型の三面図)
タイフーン一族
今回写真を載せた、名デザイナーのシドニー・カムが生み出したタイフーン一族の戦闘機の系譜は、・・・フュリー(Fury複葉)→ハリケーン(Hurricane)→タイフーン(Typhoon)→テンペスト(Tempest)→シーフュリー(Sea Fury)・・・と、みんな嵐の名前です。

タイフーン(Hawker Typhoon) 1B の諸元・性能
乗員: 1名
全長: 9.73 m、全幅: 12.67 m、全高: 4.66 m
エンジン(Powerplant): Napier Sabre II 2,260 HP
主翼面積: 29.6 m²
最大離陸重量(Maximum Takeoff Weight): 6,010 kg
最大速度: 663 km/h
実用上昇限度: 10,729 m
航続距離:1,600 km
武装: 20mm機関砲 4門、1,000 lb (454 kg)爆弾 2発、または、RP-3 ロケット弾 8発


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コメント

Re: No title

zen様、ありがとうございます。zenさんはじめ訪問くださる皆さんのおかげで一区切りとなりました。「継続は力」の励ましをチカラに、まったく違う種類の記事をテキトウにダラダラと載せるこのスタイルはこのままで行こうと思うLevaloisbeeです。

> 25万アクセスおめでとうございます♪♪♪
> すごいです!
> やはり継続は力なりですね^^
> でもいつも内容が濃くためになる話だからこそ
> 訪れる人も多いんでしょうね。

No title

25万アクセスおめでとうございます♪♪♪
すごいです!
やはり継続は力なりですね^^
でもいつも内容が濃くためになる話だからこそ
訪れる人も多いんでしょうね。

Re: No title

ありがとうございます。イヴままさんはじめ訪問くださる皆様のおかげです。「見てくれる人いるのかな?」と始めたブログでしたが、うれしい一区切りになりました。これからもアレコレとりとめなく書いてゆきます。

> わぁ~!25万アクセスですかーー
> すごい!
> おめでとうございます~\(^o^)/
> 飛行機のことはよくわからないけれど
> 感動的なお話をありがとうございます。
> これからも楽しみにしています~

No title

わぁ~!25万アクセスですかーー
すごい!
おめでとうございます~\(^o^)/
飛行機のことはよくわからないけれど
感動的なお話をありがとうございます。
これからも楽しみにしています~

Re: No title

バーソ様、コメありがとうごいざいます。冷却器配置はなるほどそうですね。いろいろお詳しいしバーソさんもヒコーキお好きなんですね。
当初は日本の誉エンジン以上のトラブルメーカーだったセイバーを使いこなしてしまうRAFの運用能力や周辺技術により国力差を感じます。鹵獲したハリケーンのマーリンエンジンのプラグにプラチナが使われている、と日本関係者が驚いた話を読んだことがあります。

> おや、V型じゃなく、液冷水平2段対向なんですか。
> ラジエーターがこんな先端に付いてるのは、
> プロペラで強制空冷をしてるみたいですね。
> 発展機テンペストではラジエーターがなくなってますが、
> 主翼の小さなスリットがそれなんでしょう。大丈夫だったんでしょうか。
> キャノピーも小さく、P51より速そうに見えます。
> 日本の二式戦「鍾馗」と同じ思想の機なんでしょうが、
> 馬力がずいぶん違っていて、国の力を表しているようです。
> 絵がお上手。いいカラーリングです。^^)/

No title

おや、V型じゃなく、液冷水平2段対向なんですか。
ラジエーターがこんな先端に付いてるのは、
プロペラで強制空冷をしてるみたいですね。
発展機テンペストではラジエーターがなくなってますが、
主翼の小さなスリットがそれなんでしょう。大丈夫だったんでしょうか。
キャノピーも小さく、P51より速そうに見えます。
日本の二式戦「鍾馗」と同じ思想の機なんでしょうが、
馬力がずいぶん違っていて、国の力を表しているようです。
絵がお上手。いいカラーリングです。^^)/
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