海鳥、翼竜、マリタイム機に共通するものとは?

海鳥、翼竜、マリタイム機に共通するものとは?
洋上を遠く飛ぶ高アスペクト比で軽くて丈夫な中空骨の低翼面荷重の翼


マリタイムの仲間たち
白いカエルCatalina機downsize
(白いアホウドリのようなCatalina機も海鳥と同じ水陸両用のマリタイム機(英IWM博物館))
今回は海の上を飛ぶ海鳥とヒコーキのお話につきマリタイム機(※)やFAA機など艦載機の写真で綴っています。海を飛ぶヒコーキの塗装は海鳥の羽毛の色やパターンにとてもよく似ています。
(※マリタイム(maritime)とは「海事」、海上保安庁、コースタールコマンド、沿岸警備隊みたいな意味)


海鳥の翼
(アスペクト比; “蛇の目”なヒコーキと生き物の比較)
省エネ飛行性能の指標アスペクト比
アスペクト比 = 翼の長さ(翼開長)÷翼の平均の幅(平均翼弦長); つまり細長さの程度です。速度や運動性を無視すればアスペクト比(aspect ratio)が高いほど効率が良い省エネの翼で滑翔(soaring,
ソアリング)や長距離・長時間飛行に向いています。





関連過去記事はここ↓
恐竜が発明しペンギンに贈ったものそれは羽毛 ブルターニュの小さな港コンカルノー
空飛ぶ船サンダーランド飛行艇の洞内巡り

アスペクト比ダントツのアホウドリとリベレーター
B17フォートレスも優れたマリタイム機ですdownsize
(フォートレス(B-17 Flying Fortress)も優れたマリタイム機です(英IWM博物館))
グライダーのように風に乗って滑翔し洋上を遠く飛ぶアホウドリなどミズナギドリ目(Procellariiformes)や広い海の上を遠く長時間パトロールするリベレーター(B-24 Liberator)などマリタイム機のアスペクト比(細長さ)がずば抜けて高いことは一見して判りますよね。


海で暮らす翼竜はソアラー(滑翔者)だった
バッカニアとサンダーランド、背景にコンコルドREVdownsize
(バッカニア(Buccaneer)とサンダーランド(Sunderland)、背景にコンコルドのスゴイ組合せ;英IWM博物館)
そこまでではないものの同じく海の上を飛んでいた翼竜(Pterosaur)やウェリントン(Wellington)のアスペクト比もなかなか高いことも見て取れます(長躯ドイツ上空を飛んだフォートレスより高い)。翼竜はアホウドリと同じくグライダーのように滑翔するソアラーだったと考えられています。


Spitのように小回りの利くマガモ
翼面荷重比較REV2
(翼面荷重の比較)
一方、池や川で暮らすマガモは、インタセプター専用のSpitfireの翼に良く似ていてアスペクト比が低く、翼面積が大きい小回りの利く運動性の良い翼だと言うことも判ります。


海鳥と恐竜の本downsize
(海鳥と恐竜の本)
軽快さの指標、翼面荷重; 翼竜とゼロ戦がダントツ
海鳥とペンギンの本downsize
(海鳥とペンギンの本)
翼面過重 = 体重(自重)÷翼面積; 一定面積の翼が支える重さ。
でもアスペクト比だけでは飛行性能は決まりません。翼面荷重(wing loading)が小さいほど軽快に飛べ、離陸・着陸性能良くなります(わずかな風や助走で良い)。図を見て翼竜プテラノドン(Pteranodon)の翼面荷重がずば抜けて低い(=軽快で離着陸が楽)ことが判りますよね。そしてヒコーキ仲間ではやはり我らがゼロ戦はダントツです。
マニアックなことをダラダラ書いていますが、ご興味ある方は「続きを読む」をクリックしてください。


翼面荷重が高いと離水が大変です
宙刷りがちょっとコワイIWM博物館のB25海軍型PBJ機downsize
(宙刷りがちょっとコワイIWM博物館のB25海軍型PBJ機)
大型の水鳥は翼の広さの割に体重が重く、翼面荷重が高いから「離着陸性能」が悪い。ハクチョウ、アホウドリなどがバタバタ、バシャバシャとひと苦労している動画をよく見かけますよね。アホウドリなんかその飛行速度(24-48km/時)が15倍以上のSpitfire(580-730km./時)より翼面荷重が大きいんだもん。そしてハドソンって丸っこいけどなかなかでしょ、Wooden Wonderモスキートにも勝ってる!

ハドソン過去記事はここをクリック↓
ベンチャー成上りの礎は丸っこくかわいいハドソン機 空(そら)物語その3

ウルトラ・ライト・プレーンのような翼竜
大圏構造が垣間見えるRAF博物館のウェリントンMkX
(大圏構造が垣間見えるRAF博物館のウェリントンMkX(英RAF博物館))
一方、翼竜の翼面荷重は、数mの大型にも拘わらず、飛びぬけて低かったと考えられるそうです。そのヒミツは中空の骨で、体重がとっても軽いから、言わばストローで組んだ模型飛行機のようなもの。


低翼面荷重は一流の証し; Spitと翼竜
レア物のペンギン塗装カナダ海軍バンシーdownsize
(レア物です、ペンギン塗装カナダ海軍のバンシー(Canadian Aviation Museum))
ヒコーキの場合も同じ。ゼロセン、スピットファイアーなど一流ドッグファイターは皆、翼面荷重が小さく旋回性能、上昇性能、離着陸性能が良いことはご存じの通り。でも翼竜はそれ以上です。


シーフードのグルメだった翼竜
リベレーターのシルエット(IWM)downsize
(リベレーターのシルエット(IWM博物館))
トリが海に進出する前、恐竜が闊歩した中生代には翼竜が現在の海鳥のニッチ(niche、生態的地位)を占めていました。翼竜の化石には稀に胃の内容物が含まれるそうでイカのトンビなどが見つかるそうです。どうやら翼竜はアホウドリのように海上を舞い細長い口を水面に入れてペリカンのように餌をすくい取っていたと考えられるそうです。


アホウドリは「アホちゃいまんねん」
コアホウドリの飛翔Wikiより
(コアホウドリの飛翔(Wikipediaより↓))
(http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B3%E3%82%A2%E3%83%9B%E3%82%A6%E3%83%89%E3%83%AA)
アホウドリなどミズナギドリ目は広い海を遠くまで正確な航法で飛び、潮目など餌が集まる場所(餌生物のパッチ)を見つけます。これは季節、月齢(大潮小潮)などで変化する場所と時期をちゃんと覚えているから。だからアホウドリなど決して「アホ」じゃありません。


マリタイムの申し子リベレーター機はDavis翼
リベレーター機の最初のミッションは『大西洋無着陸航路開拓』でした。レンドリース(Lend-Lease 資源豊かな米国が英国にレンタルでヒコーキを供給した制度)のフェリー飛行のためカナダ東海岸から北アイルランドまで大西洋を自力・無着陸で飛ぶルート開発が必要でしたが、アスペクト比の大きいリベレーター機はこの任務に最適でした。その翼デザインは当時最先端のDavis翼でした(最初の図を見てください)。

新発明「大圏構造」も色あせ2軍落ちのウェリントン
マリタイム機リベレーターの本downsize
(マリタイム機リベレーターの本)
「丈夫で軽くて少々壊れても平気」が売りの新発明「大圏構造」のヴィッカース社ウェリントン機でしたが、本命ランカスターなどに職場を追われコースタール・コマンドに2軍落ち。


地味機ウェリントンここから一花咲かせ、1万機突破
ウェリントンと一式陸攻
(ウェリントンと一式陸攻; ウェリントンって鈍くさい旧式機?いえ、陸攻にも勝るデザインです)
でもここからがウェリントンの“第2の人生”。信頼性の権化のようなペガサスエンジン双発、ゆったりした機内スペースの編み籠式「大圏構造」は、暖房が行き渡り、新しい電子機器もたくさん積め、乗員の機内行き来も楽で、長時間飛行の疲労も少なく地味ながら長く活躍。ついには生産数1万機越えとなりました。


地味で地道な性能こそマリタイム機の命
天候や風が移ろいやすい海の上、水平線まで何の目標物もない大海原を広く、遠く、長時間、正確な航法で行くためには、信頼性、頑丈さ、搭乗員の居心地、扱いやすさ、省エネ(燃費)などが、速度や高度や武装などの尖がった性能よりはるかに大事な任務なので、大圏構造はうってつけだったのです。こういうシブイ、ジミ機っていいですね。

出典: “Lend-Lease Aircraft in World War II” 1996年 Arthur Pearcy氏著 (Airlife Publishing Ltd.出版)
出典: “B-24 Liberator in detail” 2000年 Bert Kinzey氏著 (Squadron/ signal publications vol.24) (Detail & Scale, Inc.出版)
出典: “Combat Legend B-24 Liberator” 2003年 Martin W. Bowman氏著 (Airlife Publishing Ltd.出版)
出典: “Covering the Approaches” 1996年 John Quinn氏、Alan Reilly氏共著(Impact Printing Ltd.出版)
出典: 「海鳥の行動と生態; その海洋生活への適応」 2010年 綿貫豊氏著(生物研究社)
出典: “Dynamics of Dinosaurs & Other Extinct Giants” 「恐竜の力学」 1989年 R.McNeill Alexander氏著、坂本憲一氏訳(1991年、地人書館)
出典: 出典: 「やっぱりペンギンは飛んでいる」2007年 いとう良一氏著、佐藤克文氏監修(技術評論社)
出典: “Dinosaurs, Spitfires, and Sea Dragons” 「恐竜解剖」 Christopher McGowan 氏1983年著, 1991年改訂、 月川和雄氏訳(1998年、工作舎)


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コメント

Re: No title

エヌエフ様、いつも訪問、そしてコメント感謝です。いえいえ、本を読みかじっただけなのにお褒め恐縮です。ムスタング私も意外でしたが、層流翼が高性能に効いていたんでしょうね。また面白い話題が見つかれば載せますね。

> 鳥類と実機を比較しながらの航空機理論…とてもためになります。
> ゼロ戦やスピットの数値はともかく、意外にもメッサーやムスタングの単位翼面荷重が大きめなのにはちょっとびっくり。
> これからもいろいろ教えてくださいね~♪

No title

鳥類と実機を比較しながらの航空機理論…とてもためになります。
ゼロ戦やスピットの数値はともかく、意外にもメッサーやムスタングの単位翼面荷重が大きめなのにはちょっとびっくり。
これからもいろいろ教えてくださいね~♪
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