愛でたり食べたり身近な水草と秋色の水の街アヌシー続々編
愛でたり食べたり身近な水草と秋色の水の街アヌシー続々編

(アヌシー(Annecy)の朝、ティウー運河(Canal du Thiou)はまだ影が深い)
飾ったり食べたり、とっても身近な水草
「みずくさ」と聞いて思い浮かぶのは?熱帯魚を飼っている方は水槽のキンギョモでしょうか?それとも池に咲くスイレン?もっと身近な水草はハス、つまり今夜のおかずのレンコンかも知れませんね。

(アヌシー湖畔(Lac d'Annecy)を朝のサイクリング)
氷河湖畔の運河の街アヌシー
写真は、水辺つながりでフランスアルプスの足もとアヌシー湖畔(Lac d'Annecy)の街、アヌシー(Annecy)の風景再びです。
アヌシーの過去記事はここをクリック↓
フランスアルプスの宝石アヌシー番外編
氷河が作ったアヌシー湖と氷河期を見つけたアガシ第2章アヌシー湖とルイアガシ
氷河が作ったアヌシー湖と氷河期を見つけたアガシ 第1章湖畔の街アヌシーとチーズフォンデュ
過去の記事リストは下のイラストをクリック






(朝のティウー運河(Canal du Thiou)のそぞろ歩き)
水草が身近だった日々
幼い頃すぐ近くには小川があり、小さな流れの中でアオミドロがゆれ、浮き草が渦にクルクル舞うのを眺めていました。クーラーなどない頃、ヨシ(アシ)のすだれは夏の陽射しをしのぎ涼と風情与えてくれていました。お盆のお供えはハスの葉の上に乗せられていました。今では水草とその恩恵にすっかり疎遠な生活になってしまいましたけど。

(小さな運河の朝)
水中に逆戻り、せっかく上がったのに・・
脊椎動物は苦労してデボン紀にやっと水から陸に上がったのに、三畳紀には魚竜が、始新世にはクジラなどが海に戻ってしまいました。同じような仲間が植物にもいます、水草です。

(朝市はレストランの入口にまで広げています)
「水草」とは?水に浸かるようすで分類
誰にもなんとなく「水草」のイメージはありますが、実は定義には諸説あるそうです。でもその“水とのかかわり方“でおおまかに4つに分類されるそうです。(湿地性植物を加える分類もあります)
1.根は地中で茎葉の一部が水中の抽水植物(ヨシなど)、
2.ほとんど水没だけど葉だけ水面に浮かせ根は地中の浮葉植物(スイレンなど)、
3.茎葉は完全に水没しているけど根は地中に生えている沈水植物(キンギョモなど)、
4.葉で水面に浮かび根は水中をフラフラしている浮遊植物(ウキクサなど) です。
池などの淡水だけでなく浅い海にも水草は居て、ダイビングでよく出会うアマモがそうです。


(ランチタイムになり運河べりも混んできました)
人に役立つ水草、パピルス、畳、おせち
水草は古来、人の生活にとっても役に立ってきました。古代エジプトのパピルス、今でも使われているチチカカ湖などの葦舟(トトラ)。忍者が使ったという撒菱(マキビシ)。昔懐かしい、すだれ(ヨシ)、畳(イグサ)などの材料も水草。
食べられるものもありますよ、今も食卓にのぼるレンコン(ハス)、お節料理のクワイなどなど。

(温もりを感じるパステル色のサヴォワ(Savoie)料理レストラン)
レンコンの穴はシュノーケルです
水草だって呼吸します、じゃ、酸素は?それに光合成もするから二酸化炭素はどうするの?それにはいくつかのやり方があって、ハスの茎の一部であるレンコンの穴をたどってゆくと茎を通って水上のハスの葉の真ん中に開いている小さな穴に通じています。つまりこの穴が空気を出し入れする「シュノーケル」です。

(小さな運河は花で飾られています)
キラキラ、水草の泡は太陽のめぐみ
完全に水没している沈水植物は、エラを使う魚のように、水に溶けている二酸化炭素や炭酸イオンを使います。昼は光合成で酸素が余るので水草には小さな酸素の泡がついていますよね。
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(湖畔のシャン・ド・マルス公園(Champ de Mars)の木陰)
ボンベを背負った水草
でも夜は酸素に困るので、「酸素ボンベ」のように茎などの一部に酸素を貯えておくしかけもあるそうです。また葉が浮かぶ水草は気孔が葉の裏ではなく表にあるそうです。

(紅葉を映して静かなアヌシー湖(Lac d'Annecy))
酸素ブロー、「泡カプセル」浮上せよ!
水中に戻ったとは言えもとは陸上で花を咲かせていた水草(のうちの被子植物)、花粉を飛ばしたり、受粉するのはどうするの?やっぱり水面に浮上して行うみたいです。沈水植物のクロモなどは光合成で出来る酸素の泡のカプセルに雄花を包んで水面に放出します。海中でレギュのエアをバルーンに入れて海面に浮上させるのと同じ。

(秋の陽が水面にきらめくボート乗り場)
「浮き輪」でプカプカ
庭の池などに浮かぶコウホネ。ぷっくりと膨らんだ茎が特徴ですが、その中身はスポンジ状で空気をいっぱい含んでいます。コウホネは「浮き輪」をつけて池にプカプカ浮いています。

(サヴォワ(Savoie)料理店からもれる灯もなんだか温かい)
環境を守る水草
海の浅瀬をきれいにし、小さな魚の赤ちゃんたちを育むアマモ。東京湾のアマモたちはこうして「江戸前」を守っているのだそうです。
良い子ばかりじゃなくて・・・
なかには迷惑な水草もいて、例えば、アオコ(浮遊性の藍藻など)は赤潮と同じように酸素欠乏で魚たち窒息死させますし、水草で唯一「移入植物ワースト100」入り、“世界で指名手配中“のホテイアオイはときに取水設備をノックアウトします。でもあくまで少数派です。

(青地に白字が風景に合うTGVアヌシー(Annecy)駅)
追われる水草たち
でもやっぱり水草たちがいなくなるのはさびしいですね。水草は私たちの日常生活から消えていっただけでなく、日本の自然からもどんどん姿を減らしていて、絶滅危惧種もたくさんあります。住まいのまわりにはもう小川や池を見ることも少なくなり、川岸は土からコンクリートになり、灌漑池は埋め立てられ、水田も休耕田が増えていて、水草の棲める環境は細る一方です。
水草の保護活動
そんな中、この記事の出典の著者、田中法生氏らは水草の絶滅種を自然に戻す活動をしておられます。その水草がコシガヤホシクサ(越谷星草)、小さな星のかたちの花を咲かせる埼玉県越谷産の水草だそうです。たくさんの水草が水辺に戻ってくるといいですね。
出典: 「異端の植物『水草』を科学する-水草はなぜ水中を生きるのか?」2012年 田中法生氏著(ベレ出版)
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(アヌシー(Annecy)の朝、ティウー運河(Canal du Thiou)はまだ影が深い)
飾ったり食べたり、とっても身近な水草
「みずくさ」と聞いて思い浮かぶのは?熱帯魚を飼っている方は水槽のキンギョモでしょうか?それとも池に咲くスイレン?もっと身近な水草はハス、つまり今夜のおかずのレンコンかも知れませんね。

(アヌシー湖畔(Lac d'Annecy)を朝のサイクリング)
氷河湖畔の運河の街アヌシー
写真は、水辺つながりでフランスアルプスの足もとアヌシー湖畔(Lac d'Annecy)の街、アヌシー(Annecy)の風景再びです。
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フランスアルプスの宝石アヌシー番外編
氷河が作ったアヌシー湖と氷河期を見つけたアガシ第2章アヌシー湖とルイアガシ
氷河が作ったアヌシー湖と氷河期を見つけたアガシ 第1章湖畔の街アヌシーとチーズフォンデュ
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(朝のティウー運河(Canal du Thiou)のそぞろ歩き)
水草が身近だった日々
幼い頃すぐ近くには小川があり、小さな流れの中でアオミドロがゆれ、浮き草が渦にクルクル舞うのを眺めていました。クーラーなどない頃、ヨシ(アシ)のすだれは夏の陽射しをしのぎ涼と風情与えてくれていました。お盆のお供えはハスの葉の上に乗せられていました。今では水草とその恩恵にすっかり疎遠な生活になってしまいましたけど。

(小さな運河の朝)
水中に逆戻り、せっかく上がったのに・・
脊椎動物は苦労してデボン紀にやっと水から陸に上がったのに、三畳紀には魚竜が、始新世にはクジラなどが海に戻ってしまいました。同じような仲間が植物にもいます、水草です。

(朝市はレストランの入口にまで広げています)
「水草」とは?水に浸かるようすで分類
誰にもなんとなく「水草」のイメージはありますが、実は定義には諸説あるそうです。でもその“水とのかかわり方“でおおまかに4つに分類されるそうです。(湿地性植物を加える分類もあります)
1.根は地中で茎葉の一部が水中の抽水植物(ヨシなど)、
2.ほとんど水没だけど葉だけ水面に浮かせ根は地中の浮葉植物(スイレンなど)、
3.茎葉は完全に水没しているけど根は地中に生えている沈水植物(キンギョモなど)、
4.葉で水面に浮かび根は水中をフラフラしている浮遊植物(ウキクサなど) です。
池などの淡水だけでなく浅い海にも水草は居て、ダイビングでよく出会うアマモがそうです。


(ランチタイムになり運河べりも混んできました)
人に役立つ水草、パピルス、畳、おせち
水草は古来、人の生活にとっても役に立ってきました。古代エジプトのパピルス、今でも使われているチチカカ湖などの葦舟(トトラ)。忍者が使ったという撒菱(マキビシ)。昔懐かしい、すだれ(ヨシ)、畳(イグサ)などの材料も水草。
食べられるものもありますよ、今も食卓にのぼるレンコン(ハス)、お節料理のクワイなどなど。

(温もりを感じるパステル色のサヴォワ(Savoie)料理レストラン)
レンコンの穴はシュノーケルです
水草だって呼吸します、じゃ、酸素は?それに光合成もするから二酸化炭素はどうするの?それにはいくつかのやり方があって、ハスの茎の一部であるレンコンの穴をたどってゆくと茎を通って水上のハスの葉の真ん中に開いている小さな穴に通じています。つまりこの穴が空気を出し入れする「シュノーケル」です。

(小さな運河は花で飾られています)
キラキラ、水草の泡は太陽のめぐみ
完全に水没している沈水植物は、エラを使う魚のように、水に溶けている二酸化炭素や炭酸イオンを使います。昼は光合成で酸素が余るので水草には小さな酸素の泡がついていますよね。
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(湖畔のシャン・ド・マルス公園(Champ de Mars)の木陰)
ボンベを背負った水草
でも夜は酸素に困るので、「酸素ボンベ」のように茎などの一部に酸素を貯えておくしかけもあるそうです。また葉が浮かぶ水草は気孔が葉の裏ではなく表にあるそうです。

(紅葉を映して静かなアヌシー湖(Lac d'Annecy))
酸素ブロー、「泡カプセル」浮上せよ!
水中に戻ったとは言えもとは陸上で花を咲かせていた水草(のうちの被子植物)、花粉を飛ばしたり、受粉するのはどうするの?やっぱり水面に浮上して行うみたいです。沈水植物のクロモなどは光合成で出来る酸素の泡のカプセルに雄花を包んで水面に放出します。海中でレギュのエアをバルーンに入れて海面に浮上させるのと同じ。

(秋の陽が水面にきらめくボート乗り場)
「浮き輪」でプカプカ
庭の池などに浮かぶコウホネ。ぷっくりと膨らんだ茎が特徴ですが、その中身はスポンジ状で空気をいっぱい含んでいます。コウホネは「浮き輪」をつけて池にプカプカ浮いています。

(サヴォワ(Savoie)料理店からもれる灯もなんだか温かい)
環境を守る水草
海の浅瀬をきれいにし、小さな魚の赤ちゃんたちを育むアマモ。東京湾のアマモたちはこうして「江戸前」を守っているのだそうです。
良い子ばかりじゃなくて・・・
なかには迷惑な水草もいて、例えば、アオコ(浮遊性の藍藻など)は赤潮と同じように酸素欠乏で魚たち窒息死させますし、水草で唯一「移入植物ワースト100」入り、“世界で指名手配中“のホテイアオイはときに取水設備をノックアウトします。でもあくまで少数派です。

(青地に白字が風景に合うTGVアヌシー(Annecy)駅)
追われる水草たち
でもやっぱり水草たちがいなくなるのはさびしいですね。水草は私たちの日常生活から消えていっただけでなく、日本の自然からもどんどん姿を減らしていて、絶滅危惧種もたくさんあります。住まいのまわりにはもう小川や池を見ることも少なくなり、川岸は土からコンクリートになり、灌漑池は埋め立てられ、水田も休耕田が増えていて、水草の棲める環境は細る一方です。
水草の保護活動
そんな中、この記事の出典の著者、田中法生氏らは水草の絶滅種を自然に戻す活動をしておられます。その水草がコシガヤホシクサ(越谷星草)、小さな星のかたちの花を咲かせる埼玉県越谷産の水草だそうです。たくさんの水草が水辺に戻ってくるといいですね。
出典: 「異端の植物『水草』を科学する-水草はなぜ水中を生きるのか?」2012年 田中法生氏著(ベレ出版)
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コメント
Re: ひさしぶりです
ひさしぶりです
最近はちょっと忙しくなってなかなか うかがうことができませんが ご無沙汰しています。最初の写真をグーグルで調べてみたら見つけました。左側に喫茶店(Cafe des Ducs)のお店があるようですね。たまにこうやってどのあたりを行かれているのだろうかと調べてみるのも一興ですね。googleではこのあたりの写真もたくさん掲載されているのですぐに写されている写真と比較することができました。見つけた時は感動です。
気孔が裏でなく表というのは初めて知りました。理屈から言うとやっぱりそうじゃないとおかしいかなと思いました。ホテイアオイは池に浮かべていたら大繁殖して埋め尽くしていましたが鯉がそれを食べていたようでした。ほとんど畑の肥料にしかならなかった。
今朝はレンコンがあったので筑前煮を作りました。味付けがいまいち根菜の味がする。
気孔が裏でなく表というのは初めて知りました。理屈から言うとやっぱりそうじゃないとおかしいかなと思いました。ホテイアオイは池に浮かべていたら大繁殖して埋め尽くしていましたが鯉がそれを食べていたようでした。ほとんど畑の肥料にしかならなかった。
今朝はレンコンがあったので筑前煮を作りました。味付けがいまいち根菜の味がする。
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まとめ【愛でたり食べたり身近】
愛でたり食べたり身近な水草と秋色の水の街アヌシー続々編(アヌシー(Annecy)の朝、ティウー運河(Canal d
まとめ【愛でたり食べたり身近】
愛でたり食べたり身近な水草と秋色の水の街アヌシー続々編(アヌシー(Annecy)の朝、ティウー運河(Canal d
> 最近はちょっと忙しくなってなかなか うかがうことができませんが ご無沙汰しています。最初の写真をグーグルで調べてみたら見つけました。左側に喫茶店(Cafe des Ducs)のお店があるようですね。たまにこうやってどのあたりを行かれているのだろうかと調べてみるのも一興ですね。googleではこのあたりの写真もたくさん掲載されているのですぐに写されている写真と比較することができました。見つけた時は感動です。
>
> 気孔が裏でなく表というのは初めて知りました。理屈から言うとやっぱりそうじゃないとおかしいかなと思いました。ホテイアオイは池に浮かべていたら大繁殖して埋め尽くしていましたが鯉がそれを食べていたようでした。ほとんど畑の肥料にしかならなかった。
>
> 今朝はレンコンがあったので筑前煮を作りました。味付けがいまいち根菜の味がする。