ワインの郷ボーヌ番外編と「黄金の環境の国ジパング」

ワインの郷ボーヌ番外編と「黄金の環境の国ジパング」
生物地理学の冒険者その4

雨上がりきらきらと色瓦が美しいdownsize
(雨上がりきらきらと色瓦が美しい)
「黄金の国ジパング」じゃなく、「黄金の環境の国、日本」

「黄金の国ジパング」はマルコポーロが伝えた夢物語ですが、黄金ではなく気候と環境こそが日本の恵み、「黄金の環境の国、日本」と言うサイエンス小ネタです。

生憎の雨でカフェのテラス席は休業downsize
(生憎の雨でカフェのテラス席は休業)
今回は気候のお話、土と水と気候とが醸すつながりで、フランス、ブルゴーニュ地方のワインの郷、ボーヌ(Beaune)の、まだご紹介できていないフォトを番外編として添えます。

以前のボーヌの記事はここをクリック↓
街を包む小雨も旅の贈り物、ワインの郷ボーヌ




過去の気候を探る
旗が並ぶブルゴーニュワインの取引所downsize
(旗が並ぶブルゴーニュワインの取引所)
地層、氷床、湖底や海底の堆積層、などを調べる研究(堆積物の種類、鉱物の組成、化石、空気の組成、花粉などでそのときの環境を、同位体の比率などでその年代を調べる)が進んで過去の気候についてかなり分かるようになってきたようです。


過去の暮らしを探る
雨上がり濡れた家壁と敷石が艶めかしいREVdownsize
(雨上がり濡れた家壁と敷石が艶めかしい)
更に、人工衛星を使うなど遺跡を見つけたり、調べたりする技術も進んで、ご先祖様たちが、いつごろ、どこで、どんな気候や自然環境の中で、どんな物を食べ、何をして暮らしを立ててきたか、どのくらいの人口か、どんな社会か、など、生き生きと当時を想像できるようになっているようです。
最近は科学番組などで研究者ではない一般の人々もCGの力で当時の様子を、まるでドキュメンタリーのようにTVで楽しむことも出来ます。うれしい時代ですね。


植物は炭素の偏食家
カーヴの中の試飲は楽しいdownsize
(カーヴの中での試飲は楽しい)
C13はフツウに空気にある炭素C12の同位体(同じ元素だけど中性子の数が、そして重さが違う)でごくわずか存在します。植物の9割以上は光合成で使う炭素のえり好みが激しく、ちょっと重たい(ちょっと代謝がしんどい)C13は嫌います、要するに偏食なんですね。


C13が明かす農業事始め
ワインカーヴの静かな裏庭よく手入れされてますREVdownsize
(ワインカーヴの静かな裏庭、よく手入れされてます)
一方、世界の主要穀物(小麦、稲、トウモロコシなど)であるC4植物(光合成で最初にできるのが炭素4つの化合物)はC12かC13かを選びません。だから化石のC12とC13の比を測れば当時食べていた穀物が分ります。すると1万年前頃から突然C13が多くなる、つまり“栽培した”C4植物を食べだしたことが分るんだそうです。これが農業事始めの証拠。


たまの戦争より毎日の食糧.
静かな佇まいのカフェdownsize
(静かな佇まいのカフェ)
歴史年表で習った文明や帝国の興亡は、軍事力や戦争や英雄よりも、気候変動が大きく影響しているとのことです。たまに起こる戦争より、毎日の食糧を賄う農業漁業、社会を支える産業と交易が生活を立てるには大事だし、これらを左右する気候変動の方が文明の生殺与奪を握る。これに伴って起こる人口の流入や移動も大いに影響したようです(人手が増えるが食い扶持も増える、今で言えば「移民問題」)。


氷期が明けたらもう戻れない人口増加
落着いた品位を感じるワインショップREVdownsize
(落着いた品位を感じるワインショップ)
約20万年前頃誕生した私たち現生人類の人口は8万年前頃まで横ばい、8-5万年前に突然激減(数千人くらいまで)しましたが、出アフリカで切り抜けヒトは世界に拡がります。やがて最終氷期を抜けた気候は温暖・湿潤となり食糧が豊かになった1万5千年前頃には狩猟採取をしていたヒトの集団は人口が急増したようです。


突然ハシゴをはずす気候
旧市街入口に向かう城壁の小路downsize
(旧市街入口に向かう城壁の小路)
ところが1万年前頃、地球の気候は突然の“寒の戻り”ヤンガードリアス期に入りもはや狩猟採取だけでは多くの人口を養えなくなりました。何とか安定して食糧を得たい、これが農業の契機になったようです。


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寒の戻りが農業を生んだ
立派な構えのワイン市場入口EU旗の意味はREVdownsize
(立派な構えのワイン市場入口EU旗の意味は)
もちろんそれまでに道具の発達、社会の形成、植物についての知識の集積などの条件が揃い、かの肥沃な三日月地帯(Fertile Crescent)で、特にトルコの高原で栽培品種化しやすいコムギなどの原種があったという幸運も重なっていますが、でも“寒の戻り“は大きな動機付けになったはずです。


気まぐれモンスーン
苔むしたスレート屋根と淡色の石壁がシックdownsize
(苔むしたスレート屋根と淡色の石壁がシック
でも一旦このサイクル・・

<充分な食糧供給→人口の増加→都市化と分業(食糧を生産しない層)→食糧需要の急増→灌漑による農地開拓・・>
が回り始めるともう後戻りはできなかったようです。

気候の気まぐれが古代文明を滅ぼす
淡い色調の街並みが雨の景色を柔らかにするREVdownsize
(淡い色調の街並みが雨の景色を柔らかにする)
やがて気まぐれなモンスーンがちょっとコースを変えた(ウォーカー循環と言われる、北大西洋振動、南方振動、更にはエルニーニョなどの変動で)だけでメソポタミアやエジプトは干上がり、いまさら狩猟採取にも戻れない古代国家は滅びたようです。後に残るのは遺跡と環境破壊だけ・・。マヤ、アステカ、クメールなども気候のきまぐれに翻弄されて水、食糧が尽き、疫病も加わり衰退したようです。戦争の結果ではありません。


水の恵みが絶えない国、日本
通るだけで甘い香りに包まれそうなピンク色のリキュール屋さんREVdownsize
(通るだけで甘い香りに包まれそうなピンク色のリキュール屋さん)
常に水、雨、四季の変化に恵まれてきた日本では、狩猟採取や漁猟中心の“縄文“の頃も、その後”弥生“の頃から稲作農業に移っても、時に飢饉があったとは言え、食糧問題、水問題、環境問題などで国や文明が滅びる、民族が流浪するというようなことはありませんでした。また、四方の海は簡単に侵略を許さない自然の防壁でもありました。


”黄金の環境の国ジパング“を大切に・・・
泊まった四つ星の赤い帽子ホテルREVdownsize
(泊まったディジョンの四つ星「赤い帽子ホテル」”Hostellerie du Chapeau Rouge”)
地球の他の地域に比べ私たちは幸せな土地に住んでいると思います。前にも書きましたが、これが先住を滅ぼさず、移住を排除せず、違う地からやって来た人々が交じり合いながら、遺伝的多様性を長らく保ってきた日本人のDNAの特徴にもつながっていると思います。やっぱり”黄金の環境の国ジパング“、自分たちの暮らしはもちろん、こどもたちのためにも大切にしたいですね。

過去の関連記事はここをクリック↓
DNAに見る人類史に類を見ない日本人の優しさ 心が優しくなる三冊の本(1)

旧市街への入口にあったオオカミ?の紋章downsize
(旧市街への入口にあったオオカミ?の紋章)
今回あちこち引用していますので、出典は主なものをまとめて挙げておきます。


出展①: “Pandora’s Seed”「パンドラの種;農耕文明が開け放った災いの箱」2010年 Spencer Wells氏著、斉藤隆央氏約(2012年、化学同人)
出展②: 「世界を変えた異常気象」2011年 田家康氏著(日本経済新聞出版社)
出展③: “The Great Warning Climate Change and The Rise and Fall of Civilization”「千年前の人類を襲った大温暖化」2008年 Brian Fagan氏著、東郷えりか氏訳(2008年、河出書房新社)
出展④: “The Long Summer How Climate Changed Civilization”「古代文明と気候大変動」2004年 Brian Fagan氏著、東郷えりか氏訳(2005年、河出書房新社)
出展⑤: “Climate Crash; Abrupt Climate Changes and What It Means for Our Future” 「異常気象の正体」2005年 John D. Cox氏著、東郷えりか氏訳(2006年、河出書房新社)
出展⑥: 「気候文明史; 世界を変えた8万年の攻防」2010年 田家康氏著(日本経済新聞出版社)


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コメント

Re: 近所みたい

ポンセさま、いつも訪問、コメントありがとうございます。ポンセさんの地元にも同じような石壁と屋根があるんですね。そう言えば木組みの家はブルターニュでもアルザスでも見かけましたし、イギリスやドイツにもあるようですね。それぞれ違うようでヨーロッパの建物は共通のところも多いのでしょうか、日本と韓国の家が似ているように。

> 石の壁と茶色い屋根は、この辺りとよく似ています。びっくり!近所かと思いました。
>
> ワインの記事、じっくり読みますねー。

Re: ワインの話題

Panda NEKOさま、いつも訪問、そしてコメントありがとうございます。日本の自然、四季の美しさ、気象の繊細さなど、外に出て、外を見て比べてつくづくありがたいと思いますね。ワインカーヴでのワイン試飲は最初キンチョーしました(TV番組で見ると格調高そうなので)。でも、日本の地方のご当地産品の試食コーナーと変わりません。なあ~んだと気楽に飲んでおすすめを買って帰りました。

> おはようございます。
> ワインの話題につられて、コメントさせていただきました。
> ワインの取引所や試飲の様子などの写真は、中でもとても気になりました。
> それと、水の恵みの話がありましたが、その点は確かに日本は恵まれていると思います。本当にありがたいことですね。

近所みたい

石の壁と茶色い屋根は、この辺りとよく似ています。びっくり!近所かと思いました。

ワインの記事、じっくり読みますねー。

ワインの話題

おはようございます。
ワインの話題につられて、コメントさせていただきました。
ワインの取引所や試飲の様子などの写真は、中でもとても気になりました。
それと、水の恵みの話がありましたが、その点は確かに日本は恵まれていると思います。本当にありがたいことですね。
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