光で“方角”を知るフシギな磁気感覚 + ナビで飛んだ古典機

光で“方角”を知るフシギな磁気感覚 + ナビで飛んだ古典機
動物は磁気を感じるのは確からしい

正確無比の高速パスファインダーMosquitoこれはB35downsize
(GeeやOboeなど当時ハイテクの無線航法を駆使した正確無比の高速パスファインダーde Havilland DH.98 Mosquito機、これはRAF博物館のB35型)
多くの動物のグループ(門)で磁気や磁場を感じてナビなどに使っている動物がいます。残念ながらヒトは感じられないようなのでイメージすることは難しいですが、磁気感覚は動物のあいだでは結構ポピュラーなようです。青い光も関係しているらしいフシギな磁気感覚のサイエンス小ネタです。




飛行機とナビ
航法練習機OxfordREVdownsize
(ナビを訓練する航法練習機Airspeed Oxford、黄色の塗装がカワイイけどDuxford博物館では吊り下げ展示なので下面しか見えません。手前はAvro Vulcan機のエンジン吸気口)
今回話題も写真がないので、ナビを使って長距離を飛んだプロペラ機や航法の練習機などの写真を添えます。

磁気感覚を使えば正確なナビゲーション
大空を、大海原を、はるかな距離を、ときには小さな体で、極めて正確なナビで旅する動物はたくさんいて磁気感覚(つまりは方位磁針)を使っていると考えられています。

はるか大洋を超えてゆく渡り鳥
戦後も広く使われた信頼のJu52輸送機REVdownsize
(戦後も広く使われた信頼厚いオバサンJunkers Ju 52 Tante Ju輸送機、パリ郊外Ferte Alaisエアショーにて)
大陸も大洋の超えてゆく渡り鳥、産卵場所に集まるウミガメ、北米大陸を渡るオオカバマダラ、子育ての湾に集結するクジラなどは有名ですし、身近にも正確に巣と餌場などを往復するミツバチや伝書鳩がいますね。

なかなか正体がつかめないフシギな感覚
昔から言われている動物の磁気感覚(方位磁針のように南北がわかる)ですが、なかなか正体がつかめませんでした。最近いくつかその“しかけ”が分かってきたようです。

鼻先で磁石がコトっと傾き「北からずれたよ」
デモ飛行から帰ってきたB17Fortress背景はSpitたちdownsize
(デモ飛行から帰ってきたB-17 Flying Fortress 、背景は出番待ちのSpitfireたちと言う稀有のショット: Duxford博物館のSpitfire誕生記念エアショーにて)
1つ目は、細胞の表面にある小さな磁石の向きが北からずれるとコトっと傾いて「磁石のふた」がはずれてイオンが流れこみます。これが神経を介して脳に伝わり「北からずれた」と感じるしかけ。魚の鼻先にあるそうで、海を渡って川に帰るサケなどがナビゲーションに使っているのかな。

網膜で磁気を感じる電子のペアダンス
もう1つは、“しかけ”がもっとミクロ。眼の網膜の光を”感じる”蛋白質クリプトクロム(Cryptochrome)は磁気も感知するようです。光のエネルギーで励起される電子のペアのスピンの揃い具合が磁力線の向きで変わるらしく、この“電子ペアのダンス”の変化が脳に伝わり「北からずれた」と分るのだろうと。

青い光は“時”と“方角”を教えてくれる
近代輸送機のさきがけDakotaことDC3REVdownsize
(近代的エアライナーのさきがけDakotaことDouglas DC-3、顔を上げて踏ん張った姿勢が独特、これは戦後のエンジン強化型)
このクリプトクロムが”感じる”のは青い光、青い光を見て磁気を感じ方角を知るらしい。
朝と夕方の青い光で時報合わせをする眼の光受容細胞ipRGCを以前ご紹介しましたが、青い光は“時”と“方角”を教えてくれるようです。

以前の記事はここをクリック↓
青く輝くカプリ島青の洞窟と青い光が時計を合わせる第三の視覚

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なぜ磁気を感じる器官が見つからないのか
Duxford定番のフィギュアつきB17Fortress downsize
(長躯空を行くと言えばBoeing B-17 Flying Fortress 、Duxford博物館定番の”フィギュア”つきG型)
動物の磁気感覚は長年の疑問、興味の対象でしたが、視覚と目の関係のようには、未だに「これだ!」と言う磁気を感じる器官=磁気感覚器は見つかっていません。
こんなにライフサイエンスが進み、視覚や聴覚はよくわかっているのに、なぜ磁気感覚がこれほど難しいのか?主な理由は2つあると思います。


ヒトにはピンとこない磁気感覚
1つにはヒトには磁気感覚がない(仮にあっても意識しては感じられない)ので、構造、しくみ、原理などイメージが難しいことがあると思います。

バックアップがたくさんある動物のナビ
レストア中のBlenheim機のシンプルなコックピット周りdownsize
(レストア中のBristol Blenheim機のシンプルなコックピット周り、当時のナビは素朴なものです: Duxford博物館にて)
もう1つ。動物の磁気感覚は主にナビゲーションに利用されていると考えられていますが、動物のナビ機能にはたくさんのバックアップがあって、例えば、「目隠ししたら色が分からなくなったから目で色を見てるよ」のような単純明快な研究方法、証明方法が使えないのです。

太陽が見えないなら磁気コンパスで
晴れた昼間は太陽コンパス、曇って悪天候なら磁気コンパス、潮の満ち干を知るなら月コンパス、夜の海を渡るなら星コンパス、でも近場を行き来するだけなら地形でナビ・・と臨機応変の使い分け。

動物は臨機応変にナビを組み合わせ
航法練習機型のAnson downsize
(航法練習機型のファイスフル・アニー(Faithful Anny)ことAvro Anson機: Canadian Aviation Museum)
動物は常にいくつもの違う感覚や方法を臨機応変に組み合わせてナビゲーションを行っています。自然環境では日々刻々気象、天候や地形が変わり、そんな中、夜の闇でも、悪天候でも、どれか一つはナビが使えないと困るからです。

目視がやがてGPSに、目覚ましいナビ機能の発展
昔、飛行機は昼間の天気の良いときに低い高度しか飛ばないので地形を見るナビで十分でした。そのうち、六分儀を使った天測で海の上を、夜にも飛び、ジャイロコンパスのおかげで雲の中でも正しい方角を保ち、無線誘導、レーダー、ビーコンなど電子機器のおかげで事故なく正確に太平洋横断運航も可能になり、今やGPSを使えばたとえ無人でもリアルタイムの極めて正確なナビが可能です。

でも最後は頼るナビは人の眼
哨戒と海難救助に活躍したCatalina downsize
(哨戒と海難救助に活躍した水陸両用の”両生類”Consolidated Aircraft PBY Catalina機、この角度から見ると独特の主翼とエンジンの配置が分る)
では、故障で通信や電子機器がダウンし緊急着陸するときパイロットはどうするでしょう?きっと地図、ジャイロコンパス、目視や地形など使えるものは何でも使っての”肉眼ナビ“で安全に着陸するでしょうね。だから「GPSを使うからパイロットは目視ナビができない」とは言えませんよね。

やっぱりフシギ、動物のナビ能力
これと同じことで、磁気感覚、磁気感覚器では決め手になる実験が難しいのだそうです。やっぱりミツバチや渡り鳥やクジラはまだまだ“秘密“のナビ能力を隠しているようです。

出典①: 日経サイエンス2012年5月号p.44、「動物の体内コンパス」”The Compass Within”、 Davide Castelvecchi氏執筆(原典: Scientific American Jan 2012)
出典②: 「鳥の渡りの謎」”Bird Navigation: the Solution of a Mystery?”、1994年R. Robin Baker氏著、網野ゆき子氏訳、中村司氏監修(1994年、平凡社)
出典③: 「生物時計の謎をさぐる」”The Living Clock” 、2002年John D. Palmer氏著、小原孝子氏訳(2003年、大月書店)


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コメント

Re: No title

エヌエフさま、いつも訪問、コメント感謝です。外泊がありお返事遅れました。サンデグジュベリの「夜間飛行」や「南方郵便機」など読むと、黎明期のパイロットは勇気ある冒険家だと感心します。エヌエフさんの車モデルすごいですね、製作工程をいつも興味津々で拝見しております。こちらもがんばって書きますね。

> ためになるお話し、いつもありがとうございます。
> 動物の帰巣本能とは良く聞く言葉ですが、本能の一言で片付くような簡単なものではないんですね。不思議。
> 70年も前に、壊れかけたゼロ戦で夜間戦闘に飛び立つパイロットたちの心持ちたるや…考えるだけでゾッとします。

No title

ためになるお話し、いつもありがとうございます。
動物の帰巣本能とは良く聞く言葉ですが、本能の一言で片付くような簡単なものではないんですね。不思議。
70年も前に、壊れかけたゼロ戦で夜間戦闘に飛び立つパイロットたちの心持ちたるや…考えるだけでゾッとします。
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