3つのWが運ぶ海洋島のユニークな生き物-生物地理学の冒険者(2)

3つのWが運ぶ海洋島のユニークな生き物-生物地理学の冒険者(2)

かけがえのないローカル

雲が沸く午後の海をタンカーが行くdownsize
(雲が沸く午後の海をタンカーが行く。資源の乏しい海洋島サイパンは食料も水も船に依存しています)
生物地理学の続編、ユニークな生き物を育んできた海洋島と南半球のお話です。海洋島である小笠原諸島などに棲むユニークでローカルな生き物はかけがえのない生物資源(Biological resource)です。
写真のない話題につき南の島の写真を載せてます。

前編はここをクリック↓
南極の孤立と生物地理学の冒険者たち + サイパンの浜辺





“多数派”だけでは成り立たない生物多様性
なぜなら、生物多様性(Biodiversity)、つまり多種多様な生き物がつくる豊かな自然環境は、どこにでもいる生き物(ネズミとか)だけではなく、少数派だけどユニークな“変わり者”(イグアナとか)もいてこそ成り立っているからです。

生物多様性もベンチャーも未来のための“保険”
ハイビスカスの蜜を吸うアゲハ 石垣島REVdownsize
(ハイビスカスの蜜を吸うアゲハ; 石垣島にて)
中小企業やベンチャーの発明・技術が次の産業を興すように、アップル、グーグル、ちょっと前ならホンダ、ソニー、古くはロールスロイス、ロッキードみたいに。
このような生物多様性は未来のための“保険”です。地球が生き物を変え、生き物が地球を変えてきた、繰り返しであるように見えても同じことは起こらない、地球と生き物が踊るロンドの明日は見えないから。


水の南半球と陸の北半球
世界地図を眺めると北半球は広大で地続きの「陸の半球」、一方、南半球は広大な大洋がつながった「海の半球」という印象です。北の極には陸地に囲まれた北極海が、南の極には海に囲まれた南極大陸があり、北と南は“リバースウェア”のようです。出典①③

孤立した「南」のローカルでユニークな生き物
暮れゆくワイキキの浜辺downsize
(暮れゆくハワイ、ワイキキの浜辺、ダンス音楽が賑やかになってきました)
南極の孤立と共に1億5千万年前から拡大する海洋底に押されて裂けた古代大陸ゴンドワナ(Gondwana)の破片はますます離れ、アフリカ以外のオーストラリア、南米、マダガスカル、ニュージーランドなどは孤立した南の陸地になり、それぞれで「ローカルでユニークな」動植物が繁栄します(カモノハシとかバオバブの木とか)。出典①


広大な「北」で勝ち残るグローバルスタンダード
一方、北半球の広大なユーラシアは東西を遮る地形や気候の大きな障壁がなく、動植物や、やがて人間の文明・文化も頻繁に行き来したため、常に激しい競争があり、勝ち残った競争力のある動植物だけが「グローバルスタンダード」として占有しました(オオカミとかシカとか)。出典①

ユニークな生き物たちが導いた「進化論」と「大陸移動説」
スコールが上がった夜明けの海downsize
(スコールが上がったばかりの夜明けの海はまだ静か、雲間の陽射しがまぶしいサイパンの朝)
北半球のヨーロッパから訪れたダーウィン、ウォーレス、ウェ-ゲナーなどの生物地理学の冒険者たちがユニーク過ぎる南半球や海洋島の生き物に出会った衝撃が「進化論」や「大陸移動説」を導く少なからぬ重要なヒントになったらしいです。出典①


北からのグローバルな侵入に敗れた南のローカル
300万年前にパナマ地峡(Isthmus of Panama)が隆起して孤立していた南米は突然北米と、そしてベーリンジアで地続きのユーラシアともつながり、北からの屈強なライバルである有胎盤類に圧倒され南米の有袋類たちはたちまち滅んでしまいました。南米は海洋島と同じくユニークだけど脆弱な生物相になっていたから。それもこれも南極を孤立させた地殻変動が起こしたものです。出典①②

海の真ん中で生まれる海洋島
周囲を海洋に囲まれ大陸から遠く隔たれて一度もつながらなかった島を「海洋島(大洋島)」と言うそうです。中央海嶺のホットスポットに出現したアイスランド、ハワイ、ガラパゴスなど、また、プレート沈み込み近くの火山フロントで出来た島弧の小笠原諸島などです。日本列島も島弧ですが大陸と何度か地続きになったので海洋島ではありません。出典② 
関連の過去記事はここをクリック↓
静かなワイキキ、冬のハワイ、海洋島を目指した冒険

海を越えて生き物を運ぶ“3つのW”
落日の浜辺を歩く人downsize
(落日の浜辺をゆっくり歩くサイパンのマダム、昔、双胴カヌーで大洋を渡った勇者の末裔か)
そもそも海のど真ん中に突如出現した陸地、海洋島は最初生き物はいません。でもやがて「3つのW」が生き物を連れてきます。波(Wave)に乗ったり(ヤシの実とか)、風(Wind)に乗ったり(昆虫とか)、翼(Wing)ではばたいて(鳥やコウモリ)やってきた生き物が「最初の開拓者」になります。出典②


怖いもの知らずの「のんびり屋さん」、海洋島の生き物
石垣島シーマンズクラブ庭の花downsize
(石垣島(シーマンズクラブ)の庭の花は南国色)
300万年前の南米と同じく、このような海洋島の生き物はその環境が①火山島独特の地形・地質、②乏しい資源、③恐い捕食者がいない、④競争相手が少ない、など独特なので、倹約家(少ない餌で我慢)だけど、のんびり屋の「怖いもの知らず」というユニークな動物たちになります。
だから、ネズミ、ヤギなどの外来種が一旦上陸してしまうと脆弱な島の生き物たちはたちまち絶滅のピンチにさらされます。出典②


ガラス細工のような海洋島の生き物
ガラス細工のように美しいけれど、デリケートで脆弱な動植物を育む海洋島。絶滅の危機にある固有種も多く、「未来への保険」であるこのような生物多様性を守るために小笠原諸島などでは地元の方々や研究者が慎重で地道な努力を重ねておられます。南の島に行ったらときどき思い出したいですね。

出典①: 「なぜシロクマは南極にいないのか」”Here be Dragons: How the Study of Animal and Plant Distributions Revolutionized Our Views on Life and Earth” 2009年Dennis McCarthy氏著、仁木めぐみ氏訳(2011年、化学同人)
出典②: 「小笠原諸島に学ぶ進化論」2010年、清水善和氏著(技術評論社、「知りたいサイエンス」シリーズ)
出典③: 「南極海ダイナミクスをめぐる地球の不思議」2011年、青木茂氏著(C&R研究所、「SUPERサイエンス」シリーズ)


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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報

コメント

Re: ありがとうございました。

りもママ様、いつも訪問、コメント感謝です。「パリから帰国後のブログです」とブログ開始当初は結構マメに書いていたお断りを最近はすっかりサボってしまっており、今までりもママ様を勘違いさせていたようで、お詫びします。サイエンス小ネタもフランス話題もまた書きます。

> こんにちは、Levalloisbeeさん。
>
> 今回は、パリの方からですか?
> シジミの根付のためにご送金頂いたのでしょうか。
> 本当に、ありがとうございます。
> 私も、お友達のブログから知った
> ご住職さんの働きかけに応援したく
> みゆきさんのブログを貼らせて頂いただけですので。
> なんとか、私もご住職さんに連絡をとりたく
> 調べているところです。
>
> Levalloisbeeさんの書かれている分野の
> 事が大変好きですし、
> パリも大好きです。
>
> これからも宜しくお願いいたします。

ありがとうございました。

こんにちは、Levalloisbeeさん。

今回は、パリの方からですか?
シジミの根付のためにご送金頂いたのでしょうか。
本当に、ありがとうございます。
私も、お友達のブログから知った
ご住職さんの働きかけに応援したく
みゆきさんのブログを貼らせて頂いただけですので。
なんとか、私もご住職さんに連絡をとりたく
調べているところです。

Levalloisbeeさんの書かれている分野の
事が大変好きですし、
パリも大好きです。

これからも宜しくお願いいたします。

Re: No title

みゆきん様、わざわざうちにも訪問とコメント感謝です。みゆきんさんの呼びかけが広がって応援の輪になっていて素晴らしいですね。同感です、私も「ブログのちから」を感じます。これからも、出来ることはささやかでも、被災地のみなさんに何かできることを探しながら息長く支援、応援したいです。

> コメ&応援有難う御座います
> 宇宙みゆき、こと、みゆきんです。
> 日々、奮闘している住職の力になるべくブログで仮設の人々の応援をと思い投稿したら、沢山のブロ友や、その繋がりで勇気と希望と愛と絆をもらってました。
> 有難う御座います。
> 住職のアイディアで、仮設に住む人達に笑顔が戻ってます。
> 内職と言う仕事は明日への希望
> ブログってネットって凄い(≧ω≦)b
> 本当に有難うです。
> 時間が掛かりますが、首を長くして待っててやってください。
> 仮設に住む人や住職に代わってお礼申し上げます。
> PS
> 素敵なブログですね
> ちょくちょく遊びにきます
> これから宜しくです。

Re: ハイビスカス

ポンセさま、いつもながら訪問、コメントありがとうございます。花の名には暗く「ハイビスカス」かどうか自信ありません、間違っていたらごめんなさい。でも中国の薔薇もなかなかいい名前ですね、初めて知りました。南の島のまぶしい陽射しによく似合う花ですが、ヨーロッパの街に飾るとまた雰囲気が変わるのでしょうね。

> けんじさん、こんにちは!!
> この花の名前が知りたかったんですけど、そう、ハイビスカスですよね。
> スロバキアでは、「中国の薔薇」って、呼ぶんです。その呼び名に騙されました。バラ系だと思い込んでいました。
> そう、ハイビスカスだったんですねー。
>
> どうもありがとうございます!!
> 胸のつかえが取れました。そんな気分です。

No title

コメ&応援有難う御座います
宇宙みゆき、こと、みゆきんです。
日々、奮闘している住職の力になるべくブログで仮設の人々の応援をと思い投稿したら、沢山のブロ友や、その繋がりで勇気と希望と愛と絆をもらってました。
有難う御座います。
住職のアイディアで、仮設に住む人達に笑顔が戻ってます。
内職と言う仕事は明日への希望
ブログってネットって凄い(≧ω≦)b
本当に有難うです。
時間が掛かりますが、首を長くして待っててやってください。
仮設に住む人や住職に代わってお礼申し上げます。
PS
素敵なブログですね
ちょくちょく遊びにきます
これから宜しくです。

ハイビスカス

けんじさん、こんにちは!!
この花の名前が知りたかったんですけど、そう、ハイビスカスですよね。
スロバキアでは、「中国の薔薇」って、呼ぶんです。その呼び名に騙されました。バラ系だと思い込んでいました。
そう、ハイビスカスだったんですねー。

どうもありがとうございます!!
胸のつかえが取れました。そんな気分です。
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