優しく育てられた仔は優しい母親になります・・ネズミだって+ 南仏マントン残影

優しく育てられた仔は優しい母親になります・・ネズミだって
+ 南仏マントン残影

木陰の広場カフェでくつろぐ人たちdownsize
(木陰の広場カフェでくつろぐ人たち)




サイエンスの小ネタ
優しく育てられれば優しい母になる
母親に十分かまってもらって育った仔ネズミは、ストレスに強く、やがて成長して自分も母ネズミになったとき、仔ネズミの面倒をよくみる「優しい母親」になるそうです。
反対に母親に冷たくされた仔ネズミは、臆病で用心深く、成長しても仔ネズミをちゃんと育てない「冷たい母親」になるそうです。

カフェ向かいのアイスクリーム屋冬はひまそうdownsize
(マントンの街角、カフェ向かいのアイスクリーム屋さん、冬はひまそうです)
今回の話題は写真がないので、以前ご紹介できなかったマントン(Menton)の写真を添えています。

マントンの記事はこちら↓
ピンクに染まるマントンの街はアラビアの香り: コートダジュール旅行紀

メインストリートの古いカフェdownsize
(メインストリートの古いカフェ)
同じ遺伝子の純系でも「氏より育ち」
科学研究に協力してくれるネズミたちは、ご先祖の野ネズミとは違い遺伝的に揃った(ほぼ同じ一揃い遺伝子(ゲノム(genome))を持った)”純系”と呼ばれるネズミたちです。だから皆同じ行動をとってもいいはずなのですが、やはり「氏より育ち」のところもあるようです。
マルシェ花屋さんdownsize
(マルシェ花屋さん)
優しくされた“想い出”を染色体に記録する
『幼い日の良い想い出が良い“ちゅー格”(人格じゃなくて)を作る』・・・確かにそうなのですが、これが染色体に“記録”されていることが分かったのだそうです。
シュロの囲まれたお屋敷壁の白がまぶしいdownsize
(シュロの囲まれたお屋敷壁の白がまぶしい)
染色体のタグがなければDNAは単なる記録媒体
染色体とは遺伝子DNAの長いひもがヒストンなどのたんぱく質のボールに巻きついたものが折り畳まれたものです。体のかたちや働きを決めている遺伝子DNA(gene)はそのままでは単なる“記録媒体”ですが、必要なときに読み取られてその働きを初めて発揮します(遺伝子発現gene expression)。
オークルの石壁にブゲンビリアが鮮やかdownsize
(オークルの石壁にブーゲンビリアが鮮やかです)
遺伝子を読むタグ、読まないタグ;メチルとアセチル
この「遺伝子を読む/読まない」をコントロールしている仕掛けの1つが染色体につけられる“タグ”です。ざっくり言えば、メチル基がたくさん付いていたら「読まない」、アセチル基なら逆に「読む」。もし水酸基をつければメチル基はメタノールに、アセチル基なら酢酸に、という簡単なタグ、意外ですね(遺伝子DNAがメチル化、ヒストンたんぱく質がメチル化、アセチル化、リン酸化など化学修飾されることです)。
アラビア風のお屋敷downsize
(アラビア風??の立派なお屋敷)
タグを付けるのがエピジェネティクス
受精し、「生」を受け、体を作ってゆく発生過程、胎内の環境、生まれてからは栄養や環境、さらにさまざまな体験がこのように“タグ”を染色体に付替えてゆきます、これがエピジェネティクス(epigenetics)。
柔らかな陽がこもる裏路地downsize
(柔らかな陽がこもる裏路地を歩く)
脳のタツノオトシゴがストレスから守る
脳の海馬体(※)にはストレス反応を惹き起こすコルチゾールの量を調節してストレスを緩和する働きもあります。この海馬(の神経細胞のあるたんぱく質、グルココルチコイド受容体)にメチルがたくさんつくとこの働きが抑えられ、ストレスに敏感になるそうです。
(※: 海馬体(hippocampal formation)は過去記事のタツノオトシゴの項を参照: 
夢と記憶の妖しい関係+光と影が曖昧な晩秋パリ、バスティーユ
カフェランチの前菜は野菜が新鮮downsize
(カフェランチ、前菜の野菜が新鮮!)
幼い日の記憶は染色体のタグの中に・・・
今回の研究では、舐める、毛繕いするなど「良く面倒みてもらえたこと」が、海馬(の神経細胞)の染色体にアセチル基の“タグ”を付けることで“記録”されていたことが分かったそうです。この仔ネズミはストレスに強く、そのため面倒見の良い母になったらしい。冷たくされた仔ネズミ(子育てしない母になる)は逆にメチル基の“タグ”が増えていたそうです。

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いじめちゃダメ!エピジェネティクスに残る
他の研究でも、“いじめ“にあったネズミは脳の染色体のメチルが増えていたそうです。そう言えば、私が研究でネズミ君を何匹か一緒に育てていたとき、必ず「いじめっ仔」と「いじめられっ仔」ができてしまいました。
丘の登り道にサザンカが咲いてるdownsize
(丘への登り道にサザンカが咲いてる)
オークル色の光溢れる石畳ライブハウスでしょうかdownsize
(オークル色の光溢れる石畳、ライブハウスでしょうか?)
善玉vs悪玉ではありません、「メチルの名誉」のために・・・
これは老婆心ですが、体が適切に働くためには、『ある遺伝子DNAを今は読まない』ということが大事な場面ももちろんある訳で、メチル、アセチル、どちらが善玉、悪玉という訳では決してありません、念のため。
準備中のカフェ黄色のいすが楽しそうdownsize
(準備中のカフェ黄色のいすが楽しそう)
エピジェネティクスが刻む「三つ子の魂百まで」
エピジェネティクスはこれまで時間軸に沿って一度きり起こる発生や分化、短い時間の体の働きの調節をしていることは良く調べられてきましたが、今回の研究などで生涯に亘るような長い期間の経験の記録にも働いていることが分かった、と言う訳です。「三つ子の魂百まで」でしょうか。
なるほど、やっぱりネ
昔、研究のためネズミを繁殖していました。仔ネズミは1匹1匹大きさも性格も違い、成長して仔育て上手な母ネズミになるもの、そうでないものがいます。上手な母ネズミはたくさんの素直で元気な仔ネズミを育てます。そして最近、この「なるほど、やっぱりネ」の科学記事に出会ったという訳です。

出典①: 日経サイエンス2012年3月号 p.45 「脳とこころのスイッチ:エピジェネティクス最前線」 ”Hidden Switches in the Mind” Eric J. Nestler氏

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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報

コメント

Re: 罪悪感に変わらないように

ポンセさま、いつも訪問そしてコメントありがとうございます。罠のお話、興味深く読みました。自然は偉大で時に残酷ですね。私が繁殖していたのはラット(ダイコクネズミ)とマウス(ハツカネズミ)です。

> 人間の染色体にも、気をつけなくては!
> うちの上の二人は、ものすごく面倒を見るのが上手なんです。怒らないし、妹や弟の着替えや靴紐を結のも、根気づよく待ってあげたり。私なら、、、、我慢できるかな?
>
> イライラしながら、目が釣り上がらないように、気をつけます!!
>
> ところで、ねずみって、モルモットですか?ノネズミ(ラット)と呼ばれる、大型は、まず子供に餌を盗みに行かせるそうですね。しかも、帰ってこなかったら、そこに罠があるって、わかるらしく、体の小さな弱いのから、試しに出すって、子供が学校で習って来ました、、、本能とはいえ、恐ろしい。。。

罪悪感に変わらないように

人間の染色体にも、気をつけなくては!
うちの上の二人は、ものすごく面倒を見るのが上手なんです。怒らないし、妹や弟の着替えや靴紐を結のも、根気づよく待ってあげたり。私なら、、、、我慢できるかな?

イライラしながら、目が釣り上がらないように、気をつけます!!

ところで、ねずみって、モルモットですか?ノネズミ(ラット)と呼ばれる、大型は、まず子供に餌を盗みに行かせるそうですね。しかも、帰ってこなかったら、そこに罠があるって、わかるらしく、体の小さな弱いのから、試しに出すって、子供が学校で習って来ました、、、本能とはいえ、恐ろしい。。。

Re: No title

アンペルフラウさま、ご訪問そしてコメントありがとうございます。過分のおほめ恐縮です。この記事を書こうと思ったのは、若いときネズミたちを育てていて毎日世話をし“かまってあげる”ことが大切だったのも理由の1つです。こんな記事でも何かのヒントにして頂けるならとてもうれしいです。

> こんにちは!
>
> いつもながら綺麗な写真ですね。
> お日様がまぶしい季節が待ち遠しいです・・・
>
> ねずみの子育て記事も興味深く拝読しました。
> 日々の生活に追われていると、なかなか小さな子供にずっと優しくいるわけにはいきませんが、余裕がなくなってしまった時にはこの記事を思い出そうと思います。ありがとうございました!

Re: No title

rika3377さま、いつも訪問そしてコメントありがとうございます。子供は成人してもう久しいのですが、親がやっていた、してあげた思わぬことを覚えています。言ったことも言わないことも全身で感じ取っていたのかなと思います。マントン、機会あればぜひリベンジください、フランスとイタリアの両方の匂いのする街で面白かったですよ。

> こんにちは。
> 普段は子供にやさしく接してはいるのですが、それにつけいって口でちょっと注意したぐらいじゃ聞かないこともあるんです。そうなるとついつい「いい加減にしなさい!」と声を高めることも・・・本当子育てって難しいです。
> おととしコートダジュールに2週間ぐらいバカンスで行っていたのですが、マントン、駐車場がどこもいっぱいで結局駐車できず車で素通りしたのみです。涙。
> いつかリベンジしたいと思っています。

No title

こんにちは!

いつもながら綺麗な写真ですね。
お日様がまぶしい季節が待ち遠しいです・・・

ねずみの子育て記事も興味深く拝読しました。
日々の生活に追われていると、なかなか小さな子供にずっと優しくいるわけにはいきませんが、余裕がなくなってしまった時にはこの記事を思い出そうと思います。ありがとうございました!

No title

こんにちは。
普段は子供にやさしく接してはいるのですが、それにつけいって口でちょっと注意したぐらいじゃ聞かないこともあるんです。そうなるとついつい「いい加減にしなさい!」と声を高めることも・・・本当子育てって難しいです。
おととしコートダジュールに2週間ぐらいバカンスで行っていたのですが、マントン、駐車場がどこもいっぱいで結局駐車できず車で素通りしたのみです。涙。
いつかリベンジしたいと思っています。

Re: 面白かった

必殺遊び人さま、いつも訪問そしてコメント感謝です。エピジェネティクスをあまり要領良くご紹介出来ていませんが、ご興味を持って頂きうれしいです。ご明察の通り一卵性双生児の調査はエピジェネティクスの研究に活用されているようです。で、氏(似てる)と育ち(違う)両方あるようです。また、面白いサイエンス小ネタあれば書きます。

> エピジェネティクスの記事は面白く拝見いたしました。DNAはたんなる記録媒体とばかりイメージしていましたが、これにタグが付いてのちの行動に影響を与えるという話を統計上からではなく化学的な分野から見ることができるということですね。
> 一卵双生児が別々の環境に置かれたら異なる性質になる可能性が大ということかな~?

面白かった

エピジェネティクスの記事は面白く拝見いたしました。DNAはたんなる記録媒体とばかりイメージしていましたが、これにタグが付いてのちの行動に影響を与えるという話を統計上からではなく化学的な分野から見ることができるということですね。
一卵双生児が別々の環境に置かれたら異なる性質になる可能性が大ということかな~?

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