泡も立派な呼吸器、潜って分る空気のありがたさ

泡も立派な呼吸器、潜って分る空気のありがたさ
クリーニングポイントをゆったり周回するマンタたちdownsize
(クリーニングポイントをゆったり周回するマンタたち、石垣島にて)
呼吸のお話につきダイビングで見た泡とサイパンの風景を添えています。水中に立ち上る泡はダイバーが吐くエア(圧縮空気)です。





潜ってみて分る空気のありがたさ
もちろんヒトは水中で呼吸できないのでダイビングでは圧縮空気のボンベを背負って潜ります。見上げると吐き出した空気がたくさんの泡になって水面に上がってゆくのを見て「あぁ空気を吸っている」と実感します。それでも水中には40分ほどしかいられませんので、いつもボンベ残量をチェック、改めて空気(酸素)のありがたさを感じます。

空気ボンベを背負って潜るクモ
のどかなサイパンの浜辺downsize
(のどかなサイパンの浜辺)
4億年以上前、デボン紀の頃に昆虫と同じく陸上進出を果たして以来、クモ類は書肺と気管系で空気(大気)から酸素を取り入れ呼吸をしています。だから水中で行動するのは大変。でも水中で暮らすその名もミズグモ(Argyroneta aquatica)というクモもいます。お得意の蜘蛛の糸(撥水性)でお椀のようなドームの巣を水中に作って空気を貯めておき、その中で息継ぎしながら水中で狩をします。出典①と②


鰓の働きをする水中ドーム
舞うように頭上を行き過ぎるマンタdownsize
(舞うように頭上を行き過ぎるマンタ)
クモはときどき水面にでては空気を体にまとって(毛が生えていて撥水性なので空気がくっつく)もどりドームに補給します。人間が作った海底基地みたいですね。でも、このお椀のような巣、単なる空気貯めではありません、水中で魚の鰓と同じような働き、ガス交換の生理機能(酸素を吸って二酸化炭素を出す)をするのです。出典①


泡も立派な呼吸器、数時間潜れます
穏やかな海に陽射しがまぶしいdownsize
(穏やかな海に陽射しがまぶしい)
昆虫のマツモムシ(Notonecta triguttata、カメムシ目)も水中で行動し狩をします。もちろん本来空気呼吸なので泡を体にくっつけて潜ります、それも5,6時間とかなり長時間。出典①



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常識に囚われないエーゲ博士の観察眼
吐くエアが水面に上がってゆく水中で見る太陽downsize
(吐くエアが水面に上がってゆく、左上は水中で見る太陽です)
「くっつけている泡が空気ボンベでしょ」と思うのが普通なのですが、昔20世紀初頭の生物学者リヒヤルト・エーゲ氏(ドイツ)はそれを疑い、エレガントな実験で試してみた(常識に囚われない着想がスゴイ)。空気、窒素だけ、酸素だけの3種の泡をマツモムシに背負わせてみたそうです。


純酸素では水中で「窒息」します
泡におどろく魚クンREVdownsize
(泡におどろく魚クン)
窒素だけは5,6分ですぐにダウン、ま、当然。一番長持ちしそうな純酸素の泡はたったの35分でダウン(空気の持続時間の10分の1以下!)。空気だと5,6時間もつ。これは「エーゲの法則」になっているそうです。出典①


窒素が泡を守る、空気じゃなきゃダメ
窒素が入った空気ならゆっくりと泡は消えてゆきます
(窒素が入った空気ならゆっくりと泡は消えてゆきます)
泡はそのままでは水中でやがては消える運命にあります、水圧と表面張力で常に周りより圧力が高く、中のガス(酸素、窒素、二酸化炭素)が水中に浸み出すから。でも虫が酸素をせっせと使うと逆に水中から泡に酸素が入ってくる。泡から水への溶けだし易さは二酸化炭素>>酸素>窒素の順なので窒素は最後まで残って泡の形を保ちます。その間、泡は水中から酸素をいくらでも取り込める(→虫が吸える)。酸素だけだと、あっと言う間に泡が消えてしまうのです。


「酸素+窒素」の空気の泡で鰓になる
泡は鰓の働きをする体外の呼吸器
(泡は鰓の働きをする体外の呼吸器)
だから、空気の泡は魚の鰓と同じ働き(酸素を取り入れ二酸化炭素を排出する)をしていることになります。ちなみに二酸化炭素は水中では簡単に炭酸になって溶ける(ビールやコーラみたいに)ので速やかに水の中に拡散してしまいます。出典①


オシリで息をするボウフラ
泡の中を泳ぐ魚たちエサがもらえるかもと寄ってきますdownsize
(泡の中を泳ぐ魚たち、エサがもらえるかも?と寄ってきます)
昆虫も幼虫の頃は結構水中暮らしが多い(トンボのヤゴとか、蚊のボウフラとか)。じゃ呼吸はどうしているんだろう?幼虫は割と融通が利くみたいでボウフラなんかはオシリの穴から空気を入れて腸で呼吸するそうです、器用な「芸人」だな。だから水たまりでプカプカ浮いているわけだ。出典①


「青い鳥」も好きだったクモのガラス宮殿
サンゴのかけらで出来た白い砂浜downsize
(サンゴのかけらで出来た白い砂浜)
あの「青い鳥」を書いたベルギーの詩人メーテルリンク(Maurice Maeterlinck)も、水に潜るときまとった空気が銀色に輝くクモ、そのミズグモが水中に作る空気の泡の「お家」に強く惹かれたようで、「ガラス蜘蛛」という作品を遺しています。生物学者に劣らない素晴らしい観察眼と子供のような無垢な感性が素晴らしいですね


水の流れが作る消えない泡の呼吸器
ビーチを望むのどかなホテルの庭downsize
(ビーチを望むのどかなホテルの庭)
フシギなのはずっと水中に居て水面に浮上しない水生昆虫(Aquatic insects)もいることです。ヒメドロムシは体の周りを流れる水の流れの速さの差が生み出す負の圧力で体についた泡をずっと安定させ(*)ながらガス交換ができるので“浮上”の必要がないのです(*:トリや飛行機の翼が浮力を生むのと同じ、ベルヌーイの定理Bernoulli's principle)。出典①


生理機能も延長する体外構造
絵にかいたようなヤシの木陰downsize
(絵にかいたようなヤシの木陰)
昆虫学や生理学では既に「ジョーシキ」だろうこの話題を書いてみようと思ったのはJ. Scott Turner氏の著書、“The Extended Organism” 「生物がつくる<体外>構造/延長された表現型の生理学」(出典①)に出会ったからです。著者Turner氏は、「利己的な遺伝子」で有名なRichard Dawkins氏の著書”The Extended Phenotype”「延長された表現型」へのオマージュとして、それを生理機能にまで展開してみせることで「生物の体外構造」を捉えています。出典①


出典①: “The Extended Organism” 「生物がつくる<体外>構造/延長された表現型の生理学」、J. Scott Turner氏著2000年、滋賀陽子氏訳、深津武馬氏監修(みすず書房2007年)
出典②: “Life, An Unauthorized Biography”, 1997年Richard Fortey氏著、渡辺政隆氏訳(2003年、草思社)

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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報

コメント

Re: No title

エヌエフさま、いつも訪問感謝です。ここしばらく、そしてさっきまでPCトラブルでブログが見れず、お返事が遅くなってしまいすみません。ブログの写真はすべて私自身で撮っています。デジカメは実に便利なもので「100枚撮って1枚使えればオッケー」と「粗製濫造」に励むとたまに使える写真が撮れてしまうということです。それよりも製作中のヒコーキプラモをエヌエフさんに見てもらえるよう写真に撮れる状態まで仕上げることが今の課題です(汗‘)。
> ためになるお話しと美しい写真の数々…素晴しい!
> これらの写真はKenjiさんご自身が撮影されているんですよね。
> いや~、うっとりします。凄い!

Re: 青い、蒼い、碧い

ポンセさま、いつもありがとうございます。さっきまでPCトラブルでブログを見れずお返事遅れてしまいすみません。説明なんて読まなくてもオッケー、写真と色字のキャッチを見て頂ければうれしいです。写真に撮ると海の中は青の世界ですが潜って目が慣れるともっと色鮮やかです。シュノーケリングなら簡単にのぞけますよ。

> 海中がきれいですね。どんな色というのでしょうね?本当に、美しい海の写真ですね。そして、時に街の写真。「たまらない」ブログです、、、。説明は読まないで、写真だけ見るときもあります。。。(ごめんなさい。)今日も、カーソルを上げ下げして、何度も眺めました。目の保養をありがとうございます。

青い、蒼い、碧い

海中がきれいですね。どんな色というのでしょうね?本当に、美しい海の写真ですね。そして、時に街の写真。「たまらない」ブログです、、、。説明は読まないで、写真だけ見るときもあります。。。(ごめんなさい。)今日も、カーソルを上げ下げして、何度も眺めました。目の保養をありがとうございます。

No title

ためになるお話しと美しい写真の数々…素晴しい!
これらの写真はKenjiさんご自身が撮影されているんですよね。
いや~、うっとりします。凄い!
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