喰っている奴を喰うウミウシは生態系にも優しい+石垣の海のウミウシたち
喰っている奴を喰うウミウシは生態系にも優しい+石垣の海のウミウシたち
↓良かったらクリックをお願いします


にほんブログ村
にほんブログ村
(ディナーにはポリープのプランクトン添えを)
ウミウシには「美しいグルメな肉食系」もいる
ウミウシは鮮やかな彩りでダイバーにも人気者、ノロノロ這っているようですが、今回ご紹介のウミウシ、クラテナ・ペレグリーナはヒドロ虫のポリープ部分を食べる肉食系です。それも「まさに餌を食べている最中ポリープ」を選り好んで食べるグルメです、でもなぜ?!!
(石垣の海、サンゴ礁の稚魚たち)
石垣の海のウミウシとサンゴ礁
今回はウミウシのサイエンス小ネタにつき以前に石垣島ダイビングで出会ったウミウシたちのフォトを、それだけでは淋しいので、石垣のサンゴ礁のフォトを添えています。
石垣島ダイビングの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
珊瑚礁の宝石、色鮮やか魚たち 石垣島ダイビング番外編
6月の海は恋の季節石垣島ダイビング記
光ってパートナーを育み護るサンゴ 石垣のサンゴ礁と魚たち
クジラたちの水中感覚とは捨てて拾い直した嗅覚+石垣のサカナたち
もしもしカメさんどこから来たの?+ 竜宮城のような石垣の海 番外編

(美しい肉食系ウミウシCratena peregrina)
貝殻の無い貝、ウミウシ
クラテナ・ペレグリーナ(Cratena peregrina)は体長3-5cmで鰓の働きをするたくさんの美しい突起cerataを持ち、ヨツスジミノウミウシ科(Facelinidae)、ハクセンミノウミウシ属(Cratena)に属し、地中海や北大西洋に棲んでいます。
ウミウシはクリオネやアメフラシなどとともに貝類を含む腹足綱(Gastropoda)に属し「貝殻の無い貝」です。ウミウシの仲間の食性は幅広く海藻を食べる草食系から魚卵やエビを食べる肉食系までさまざまです。
(枝に花が咲いたようなフサエダウミヒドラ)
ヒドロ虫も「仕込み毒針」を使う肉食系
一方、クラテナ・ペレグリーナの「餌」のヒドロ虫のフサエダウミヒドラ(Eudendrium racemosum)は個虫がたくさんつながった群体を作ります。フサエダウミヒドラの群体は流れてくる小さなプランクトンや小動物を刺胞と呼ばれる毒針を仕込んだポリープの触手で捕まえて食べる肉食系です。
ヒドロ虫にはクラゲと同じ仲間の刺胞動物で刺されると毒クラゲと同じようなヒドイ目に遭う種類もいます
(石垣の海のウミウシ;その1)
ポリープの選り好みをするウミウシ
ウミウシのクラテナ・ペレグリーナはヒドロ虫のフサエダウミヒドラのポリープを食べるとき選り好みをするようです。「今まさにプランクトンを喰っているポリープ」を好き好んで食べるようです。
ディナーには「ポリープのプランクトン添え」を
何故か?ただのポリープより「プランクトンをトッピングした」ポリープの方が栄養が高いからのようです。トッピングがある方がおいしいんだもん。
(石垣の海のウミウシ;その6)
ポリープは季節限定メニュー
ヒドロ虫フサエダウミヒドの群体が出現するシーズンは限られています。だからクラテナ・ペレグリーナとしては短期間に効率よく栄養を摂りとっとと繫殖する必要があります。そんなニーズ(選択圧)から進化した「食事法」なのでしょう。
(石垣の海のウミウシ;その8)
食事中に喰われるのがヒドロ虫にも好都合なの?
更に、実はヒドロ虫フサエダウミヒドラもこれでハッピーなんです。え、ポリープばかりか餌まで一緒に喰われて踏んだり蹴ったりじゃないの?いえ、その方がフサエダウミヒドラにとっても実は好都合なんです。
どうせ喰われるなら最小限でしのぐ
もしポリープだけがウミウシのディナーならいっぱい喰われてしまいます。「喰っているプランクトンと一緒に喰われる」なら喰われるポリープの数は最小限で済みます(少ないポリープでもウミウシはお腹いっぱいで満足♥)。
(石垣の海、サンゴ礁をゆくロクセンスズメダイ)
のろまな者同士の妥協、あるいはバランス
ヒドロ虫の群体は漂うだけ、ウミウシだってノロノロと這うだけ。活発に動けない、のろまな者同士の「喰う・喰われる」の絶妙な妥協が「喰っている奴を選んで喰う」戦略のようです。
(石垣の海のウミウシ;その7)
新しいタイプの捕食らしい
今回出典著者Trevor J. Willis氏らが明らかにしたウミウシの「喰っている奴をその餌ごと喰う」捕食の形態はこれまで知られていなかった新しい捕食の形態なんだそうで、「kleptopredation」とWillis氏らは名付けました。
ホントに、調べれば調べるほど自然はまだまだナゾだらけですね。
結果、生態系にも優しい
このウミウシの「喰っている奴を餌ごと喰う」捕食行動は「省エサ」ともなり、サンゴ礁などの生態系の維持にも貢献しています。「結果的に」ですけど、美しいウミウシ君は生態系にも優しいようです。
出典:”Kleptopredation: a mechanism to facilitate planktivory in a benthic mollusk” Trevor J. Willis et al. Biology Letters November 2017 Volume 13, issue 112017 DOI: 10.1098/rsbl.2017.0447
出典:This sea slug has a trick for getting an extra treat Sid Perkins Science 27 October 2017 Vol 358, Issue 6362 doi:10.1126/science.aar3678
↓良かったらクリックをお願いします

過去の記事リストは下のイラストをクリック ↓ (日本国内と南の島の記事は「ヨーロッパの話題」にまとめています)





↓良かったらクリックをお願いします


にほんブログ村

にほんブログ村

(ディナーにはポリープのプランクトン添えを)
ウミウシには「美しいグルメな肉食系」もいる
ウミウシは鮮やかな彩りでダイバーにも人気者、ノロノロ這っているようですが、今回ご紹介のウミウシ、クラテナ・ペレグリーナはヒドロ虫のポリープ部分を食べる肉食系です。それも「まさに餌を食べている最中ポリープ」を選り好んで食べるグルメです、でもなぜ?!!

(石垣の海、サンゴ礁の稚魚たち)
石垣の海のウミウシとサンゴ礁
今回はウミウシのサイエンス小ネタにつき以前に石垣島ダイビングで出会ったウミウシたちのフォトを、それだけでは淋しいので、石垣のサンゴ礁のフォトを添えています。
石垣島ダイビングの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
珊瑚礁の宝石、色鮮やか魚たち 石垣島ダイビング番外編
6月の海は恋の季節石垣島ダイビング記
光ってパートナーを育み護るサンゴ 石垣のサンゴ礁と魚たち
クジラたちの水中感覚とは捨てて拾い直した嗅覚+石垣のサカナたち
もしもしカメさんどこから来たの?+ 竜宮城のような石垣の海 番外編

(美しい肉食系ウミウシCratena peregrina)
貝殻の無い貝、ウミウシ
クラテナ・ペレグリーナ(Cratena peregrina)は体長3-5cmで鰓の働きをするたくさんの美しい突起cerataを持ち、ヨツスジミノウミウシ科(Facelinidae)、ハクセンミノウミウシ属(Cratena)に属し、地中海や北大西洋に棲んでいます。
ウミウシはクリオネやアメフラシなどとともに貝類を含む腹足綱(Gastropoda)に属し「貝殻の無い貝」です。ウミウシの仲間の食性は幅広く海藻を食べる草食系から魚卵やエビを食べる肉食系までさまざまです。

(枝に花が咲いたようなフサエダウミヒドラ)
ヒドロ虫も「仕込み毒針」を使う肉食系
一方、クラテナ・ペレグリーナの「餌」のヒドロ虫のフサエダウミヒドラ(Eudendrium racemosum)は個虫がたくさんつながった群体を作ります。フサエダウミヒドラの群体は流れてくる小さなプランクトンや小動物を刺胞と呼ばれる毒針を仕込んだポリープの触手で捕まえて食べる肉食系です。
ヒドロ虫にはクラゲと同じ仲間の刺胞動物で刺されると毒クラゲと同じようなヒドイ目に遭う種類もいます

(石垣の海のウミウシ;その1)
ポリープの選り好みをするウミウシ
ウミウシのクラテナ・ペレグリーナはヒドロ虫のフサエダウミヒドラのポリープを食べるとき選り好みをするようです。「今まさにプランクトンを喰っているポリープ」を好き好んで食べるようです。
ディナーには「ポリープのプランクトン添え」を
何故か?ただのポリープより「プランクトンをトッピングした」ポリープの方が栄養が高いからのようです。トッピングがある方がおいしいんだもん。

(石垣の海のウミウシ;その6)
ポリープは季節限定メニュー
ヒドロ虫フサエダウミヒドの群体が出現するシーズンは限られています。だからクラテナ・ペレグリーナとしては短期間に効率よく栄養を摂りとっとと繫殖する必要があります。そんなニーズ(選択圧)から進化した「食事法」なのでしょう。

(石垣の海のウミウシ;その8)
食事中に喰われるのがヒドロ虫にも好都合なの?
更に、実はヒドロ虫フサエダウミヒドラもこれでハッピーなんです。え、ポリープばかりか餌まで一緒に喰われて踏んだり蹴ったりじゃないの?いえ、その方がフサエダウミヒドラにとっても実は好都合なんです。
どうせ喰われるなら最小限でしのぐ
もしポリープだけがウミウシのディナーならいっぱい喰われてしまいます。「喰っているプランクトンと一緒に喰われる」なら喰われるポリープの数は最小限で済みます(少ないポリープでもウミウシはお腹いっぱいで満足♥)。

(石垣の海、サンゴ礁をゆくロクセンスズメダイ)
のろまな者同士の妥協、あるいはバランス
ヒドロ虫の群体は漂うだけ、ウミウシだってノロノロと這うだけ。活発に動けない、のろまな者同士の「喰う・喰われる」の絶妙な妥協が「喰っている奴を選んで喰う」戦略のようです。

(石垣の海のウミウシ;その7)
新しいタイプの捕食らしい
今回出典著者Trevor J. Willis氏らが明らかにしたウミウシの「喰っている奴をその餌ごと喰う」捕食の形態はこれまで知られていなかった新しい捕食の形態なんだそうで、「kleptopredation」とWillis氏らは名付けました。
ホントに、調べれば調べるほど自然はまだまだナゾだらけですね。
結果、生態系にも優しい
このウミウシの「喰っている奴を餌ごと喰う」捕食行動は「省エサ」ともなり、サンゴ礁などの生態系の維持にも貢献しています。「結果的に」ですけど、美しいウミウシ君は生態系にも優しいようです。
出典:”Kleptopredation: a mechanism to facilitate planktivory in a benthic mollusk” Trevor J. Willis et al. Biology Letters November 2017 Volume 13, issue 112017 DOI: 10.1098/rsbl.2017.0447
出典:This sea slug has a trick for getting an extra treat Sid Perkins Science 27 October 2017 Vol 358, Issue 6362 doi:10.1126/science.aar3678
↓良かったらクリックをお願いします

過去の記事リストは下のイラストをクリック ↓ (日本国内と南の島の記事は「ヨーロッパの話題」にまとめています)






スポンサーサイト