絶えず姿を変え生き抜いてきた、たくましい落葉樹林+フランスの秋アヌシー

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落葉樹の誕生と試練
(落葉樹の誕生と試練)
寒さと乾燥を凌ぐため葉を落とす
植物、特にその葉は低温や乾燥に弱く、温帯・亜寒帯の冬や熱帯の乾季に落葉することで凌ぐ樹木が落葉樹です。添えるフォトはスイス国境に近いフランスのアヌシー(Annecy)の黄葉です。
アヌシー過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
フランスアルプスの宝石アヌシー番外編
氷河が作ったアヌシー湖と氷河期を見つけたアガシ第2章アヌシー湖とルイアガシ
氷河が作ったアヌシー湖と氷河期を見つけたアガシ 第1章





日米欧の森はよく似た風景、でも来歴も多様性も違う
冬に葉を落とすことで樹冠を開ける落葉樹は温帯の森の生態系を維持する重要なメンバーです。日本、北米、ヨーロッパなど温帯の森は一見よく似ていますが、樹種の構成や小動物、昆虫や鳥など森の生態系メンバーの種も違います。自然の歴史がそれぞれ違うためです。

愛の橋はカップルに大人気downsize
(ティウー運河河口の愛の橋はカップルに大人気)
白亜紀の極地で落葉樹は生まれた
恐竜が闊歩していた白亜紀、暖かな極地で落葉樹は生まれました。極地の太陽の無い季節を凌ぐため「葉を落とす」と言う適応を進化させました。そして夜の無い夏、白夜では一気に葉を盛んに茂らせたようです。

激変する地球の歴史を生き抜いた落葉樹
小惑星が落下して恐竜たちが滅んでも、その後の「核の冬」のような暗く寒い時代も落葉樹は高い適応力で生き残りました。暁新世には優先樹種になり、始新世の温暖化、中新世の寒冷化を生き抜き、氷河期に氷河に追われても間氷期には毎回失地を回復しました。

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(朝のティウー運河は鏡のように橋を映しています)
地球の歴史を精密に語る花粉化石
稀に偶然が重なって化石になった骨や歯と違い、毎シーズン大量に飛散する花粉の化石なら時系列が連続したデータが得られます、100年単位、時に10年単位の精度で。

湖底の花粉化石は10年単位の歴史の語り部
湖沼の堆積物などに保存されていた過去何万年かの花粉化石の種類と炭素同位体などによる年代測定からいつごろどのような植物がそこで繁茂していたかが分かります。

湖畔の紅葉と別荘REVdownsize
(アヌシー湖畔の紅葉と別荘)
氷河に合わせて南へ北へ、温帯林はえらいこっちゃ!
北米、ヨーロッパの高緯度地方では氷河の前進と後退に伴って落葉樹林も南へ、北へとに後退と前進を繰り返したようです。

氷河からの回復が遅れたヨーロッパの森
ヨーロッパの氷期には落葉樹など木々はスペインなど避難地を除き氷河によりほぼ一掃されました。そのためヨーロッパでは氷河期を生き残った樹木の種は29%にすぎません。
アルプス、ピレネーなど多くの山脈が南北を分断するヨーロッパでは氷河が去っても落葉樹林は失地回復が遅れ、かつ気候が好転して急速に北上し「空き地を埋めた」ためヨーロッパの森の多様性は低いのだそうです。


小さな運河の眼鏡橋downsize
(運河に掛かる小さなの眼鏡橋)
大陸とくっついたり離れたりで日本の森は豊かに
氷河の進出が厳しくなかった日本など東アジアでも同様で氷期と間氷期に伴う寒冷と温暖の繰り返しで落葉樹林は分布を変え、加えて海進と海退のため島になったり陸続きになったりしました。これは日本は欧米よりも落葉樹林の多様性が高い要因に1つです。

アヌシーのティウー運河べりレストランまだ準備中downsize
(スイス国境フランスの街アヌシー、ティウー運河沿いのレストランはまだ準備中)
日本の森が豊かなワケとは?
東アジアでは落葉樹は氷期に完全には一掃されず、海進で島になると孤立化し新種が出現します。そして再び地続きになると、今度は多くの種が混じり合いました。そのため96%の樹木種が氷河期を生き残りその多様性も高くなっています。北米はヨーロッパと東アジアの中間の結果であるようです。


ブタの看板のAnnecyのレストランdownsize
(ブタの看板のアヌシーのレストラン)
失地回復も一様ではない
1万年とちょっと前、最終氷期が終わり氷河が後退し北米の森が北に向かって「失地回復」の進軍をしたときも樹種によってスピードはバラバラで風散布のヤナギは年に287mなのに鳥が散布するヌマミズキは年70mと差があります。

常にメンバーが変わってきた北米の森
その結果、例えば、コネチカット州ロジャース湖底の花粉化石を分析すると、たった1万年ほどの間に、最初はツンドラ→1万2千年前、マツの寒帯林へ→9千年前、カエデなど落葉広葉樹へ→2千年前、クリの木が加わるなどの順で森の構成が移り変わってきたことが分かりました。北米の森も常に樹種が変わってきたようです。

太古の森なぞ(ほぼ)存在しない
落葉樹林は戻って来たその度に違う動植物のパートナー同士で森の生態系を新たに作り上げてきたようです。だから温帯には「悠久の原始の森」なんてないんです。

森のメンバーはたまたま居合わせた者の組合せす
動物、植物の種は気候の変動、環境の変化にそれぞれ別々のやり方で反応します(適応し進化するとか、移動してしまうとか)。温帯の森は特定の組合せの動植物が互いに依存しあう「運命共同体」ではありません。

森は地球史の中の偶然の出会いで出来てる
むしろ温帯林の生態系は、棲む環境の条件が似ているもの同士が地球の歴史の中で偶然の巡り合わせでたまたま同じ時期、同じ場所に居合わせ棲んでいる植物、動物の集団です。たまたま今日乗り合わせた電車やバスの乗客同士のようなものでしょうか?

これからの森とのつきあい方とは?
ここまでは私たち現生人類がまだ地球環境を大きく変え始める前の物語りです。それでも落葉樹や温帯の森は激変する気候や環境の中、めくるめく健気にその姿を変えながら生き延びたし、その回復力、適応力はこれから私たち森とつきあってゆくための多くのヒントがあることでしょう。

秋の紅葉は滅んだ縄文の森を落葉樹が継いだもの
落葉樹は適応力、回復力が高いたくましい植物なのです。開墾など、人々が元からあった照葉樹林を伐採し、その後何らかの理由で(例えば、14世紀のヨーロッパでペストが流行し人口が激減した)人が去れば落葉樹林が進出、占有して優先種になります。日本では縄文の照葉樹林の多くが「伐採→放置」を経て、現在は紅葉や黄葉する落葉樹林になったようです。

出典について
出典著者Askins氏は米国コネチカット大学教授、鳥類学と生態学の研究者で、同志社大学でも講義を行い日本の、特に京都の森も研究対象です。日本の自然や文化に対する造詣も深く、森の成り立ちと変化、これからについて示唆に富む本です。今回はごく一部のご紹介ですが、ご興味あれば書店や図書館で実際に手に取ってみられることをお勧めします。

出典:「落葉樹林の進化史」”Saving the World’s Deciduous Forests” 2014年 Robert A. Askins氏著、黒沢令子氏訳 (2016年、築地書館)

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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報