蚊の必殺仕事人グッピーが環境破壊なの?+”Wooden Wonder” モスキート

蚊の必殺仕事人グッピーが環境破壊なの?+”Wooden Wonder” モスキート ~ 蚊が媒介する感染症との戦い(2) ~

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気が付かない間に先月末にトータルアクセスが100万回を超えておりました。拙いブログにも関わらず皆さまの温かいご支援の賜物と心から感謝と御礼を申し上げます。改めて少しでも中身のあるブログ記事にせねば、と(遅まきながら)気を引き締める次第です。ありがとうございました。Levalloisbee

グッピーは必殺仕事人か環境破壊者か
(グッピーは必殺仕事人か?環境破壊者か?)
蚊が媒介する感染症との戦い
・・・の続きです。前編はここをクリックください↓
ジカ熱に善戦するキューバ;蚊が媒介する感染症との戦い(1)+南仏エクサンプロヴァンス




伝統のボウフラ・バスターズ、グッピー
前編でご紹介したように、蚊はマラリア、デング出血熱、ジカ熱など多くの熱帯感染症を媒介する中間宿主です。優れたワクチンなど未だなく、衛生環境の劣悪だった戦前から、熱帯、亜熱帯の旧植民地諸国では蚊の駆除の切り札として、その幼虫であるボウフラを食べてくれるグッピー(Guppy、Poecilia reticulata)を湖沼に放流しました。

理不尽な運命の必殺仕事人、グッピー
ところが、グッピーは「理不尽な」判定をされそうなです。蚊駆除の「必殺仕事人」として各国でもてはやされたのに今度は生態系を壊す「容疑者」になってしまいました。

美しき天敵モスキート
(美しき天敵”Wooden Wonder”ことDH.98モスキート)
美しき天敵「モスキート」
グッピーの“仮想敵“、蚊(mosquito)がらみで”Wooden Wonder”ことモスキート(DH.98 Mosquito)のフォトを添えます。一説によれば「モスキートの流麗なデザインはカワカマスをヒントにした」とも。サカナとモスキートは他人の空似と言う過去記事はこれ↓
サカナですけど練習次第で歩けます!生きた化石の発生可塑性+Wooden Wonderモスキート~「生きた化石」その3~

モスキトーの心臓マーリンエンジンdownsize
(モスキートの心臓マーリンエンジン; ロンドン郊外RAF博物館)
グッピー放流の不都合な4つの証拠
出典著者のカナダのヴィクトリア大学Rana W. El-Sabaawi氏らは蚊撲滅目的でグッピーたちを水系に放つことが不適切であると4つの点を挙げています。
1. グッピーが「蚊の幼虫、ボウフラをよく食べてくれる」実験結果は野外では当てはまらない
2. グッピーの繁殖力は旺盛で強力な侵入種になり得る(数で圧倒する)
3. 放たれたグッピーの封じ込めは難しい(オープンな水系に放たれるため)
4. グッピーは在来種の餌と棲み処を奪い、環境を悪化させる(排泄アンモニアが水質を悪化させる)


蚊だけでなく在来種も駆逐するグッピー
ところが、放流されたグッピーたちは競争力のある「外来種」として地元の生態系を壊しているようなのです。グッピーは繁殖力が強くすぐに殖え、在来種のニッチ(餌と棲み処)を奪ってしまうそうです。

モスキトーB35 RAF博物館にてdownsize
(モスキートB35 RAF博物館にて)
グッピー、腹が減ればボウフラでも喜んで食べますが・・・
そもそもグッピーが蚊駆除の必殺仕事人であるとの科学的根拠もちょっと怪しいそうです。実験室で絶食したグッピーにボウフラを与えたら良く食べたそうですが、そりゃ腹が減れば何でも食べるから当たり前です。実際に野外ではグッピーはボウフラよりは在来種の餌を食べてしまうそうです。

もともと雑食です、グッピー
そもそも野生のグッピーは藻の切れ端、昆虫の幼生など無脊椎動物、と幅広く餌にし、また、環境次第で餌を器用に切り替えます。実験室でボウフラを食べても野外でもっと入手し易い餌(他の魚の餌も含めて)があればそちらを食べるのです。

なるほどカワカマスなモスキートdownsize
(なるほどカワカマスなモスキート)
グッピーのオシッコ(NH4+)が水系を汚す
それだけではなく湖沼、河川などの水系に排泄物のアンモニアを大量に放出し水系環境そのものを変えてしまっているそうです。富栄養化した湖沼、河川では藻が繁茂しグッピーとはニッチを競わない在来種まで影響を受けているそうです。

ワクチンのない感染症対策にグッピーへの期待は高い
もちろん一方で、やはり蚊が媒介する感染症撲滅のためにはグッピーの放流を進めるべきとの見解もあります。特に最近感染が拡大しているジカ熱、デング熱には未だ有効なワクチンもなく、途上国ではグッピーは現実的な対抗策なのかも知れません。

正確無比の高速パスファインダーMosquitoこれはB35downsize
(正確無比の高速パスファインダー、モスキート、これはB35)
「トロイの木馬」、遺伝子組み換えの蚊
新しいアプローチとして、グッピー放流の代わりに抗生物質なしでは成虫になれないよう遺伝子改変した蚊を放って蚊を減らしマラリア原虫媒介を抑える方法も2009年から南米を中心に試行中です(※)。これは組み替え遺伝子の拡散リスクと言う別の懸念もあります。自然と同じ組み換えが出来る遺伝子編集ならこのリスクを克服できるかも知れませんが・・。(※:日経サイエンス2017年3月号P.31「蚊で蚊を退治」)

今やネットでDIYのグッピー放流
グッピーで蚊を制圧する試みは現在でも感染症に苦しむ熱帯、亜熱帯諸国で引き継がれています。新しくはジカ熱、デング熱駆除のため2013年にパキスタンの、2015、2026年にブラジルの水系に放流されました。今やネットではグッピー放流を”DIY“で行う方法まで紹介されているそうです。

RAF博物館の一等席に展示されているモスキートdownsize
(RAF博物館の一等席に展示されているモスキート)
グッピーの二律背反
パンデミック(pandemic、感染症の世界流行)の制圧か、環境の保護か、今回ご紹介のかわいい「グッピー」の扱いは悩ましい二律背反の問題です。
これを解決するのは(前編でご紹介したキューバのような)昔ながらの公衆衛生の向上と(CRISPRなどを用いる)最先端の遺伝子編集でしょうか。


今こそ間尺に合った妥協を・・・
まずは必要な科学的データを集めること、そしてその地域に暮らす人々がこれを十分理解したうえで自らが政策を決めてゆくことなのでしょうね。
持続可能な環境施策とは、あくまで合理的、科学的な根拠に基づきながらも、一方で、当事者である住民が納得できるスマートな、つまりは「間尺に合った」ある種の妥協ではないでしょうか?・・と思うLevalloisbeeです。


おまけ:Mosquito B Mk.35 諸元
全長 12.497m、全幅(wing span) 16.51m、全高 5.309m
主翼面積(wing area) 40.469平方m、自重 6,638kg、全備重量(loaded weight) 11,431kg
エンジン R.R. Marlin 113/114 1690馬力×2 (双発)
最大速度 時速668km、上昇限度(service ceiling) 12,800m、航続距離(range) 2,235km
防御武装 なし、爆弾搭載量 4000ポンド(1.814トン)×1発


出典URLにリンクは貼っていませんので、参照の際はコピペしてください。
出典:”Biodiversity and ecosystem risks arising from using guppies to control mosquitoes” El-Sabaawi RW氏他Biology Letters誌 12: 20160590
http://dx.doi.org/10.1098/rsbl.2016.0590
出典:” Ecologists raise alarm over releases of mosquito-killing guppies” Kelly Servick氏 Science誌 Oct. 25, 2016 DOI: 10.1126/science.aal0304
http://www.sciencemag.org/news/2016/10/ecologists-raise-alarm-over-releases-mosquito-killing-guppies?utm_campaign=news_weekly_2016-10-28&et_rid=208065204&et_cid=940904


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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報