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ハワイの夜は静かです、鳴かないコオロギのお見合い戦略

ハワイの夜は静かです、鳴かないコオロギのお見合い戦略
鳴かないコオロギはコオロギじゃない・・のか?生き物は今日も進化中!


人も樹もKuhio Beachの夕闇シルエットdownsize
(人も樹もKuhio Beachの夕闇シルエット; 冬のハワイ、ホノルル)
百聞は一見にしかず?
今回のサイエンス小ネタをイラストで表すとこうなります(イラストはゼロからの自作ですが、少しはカワイク描けているでしょうか?)





鳴かなくなったコオロギのお見合い戦略
(鳴かなくなったコオロギのお見合い戦略)
高速進化で危難を脱したハワイのコオロギ
身に降りかかった突然の危難から逃れるためコオロギやグッピーも高速進化しているようです。
今回はたった5年で鳴かなくなってしまったハワイのコオロギのお話。
昨年(2014年)の原典論文発表当時は結構話題になったようです。今回は少し違った観点で眺めてみます。


沖を行くヨットHau Tree Lanai REVdownsize
(沖を行くヨット、Hau Tree Lanaiのテラスから)
フォトはハワイつながりで・・
・・ハワイ旅行オアフ島のフォトです(再度掲載)。
ハワイの過去記事はこれ↓
穏やかで優しいワイキキ虹の島ハワイの冬を行くその1
風亘るハウツリーの木陰で朝食をハワイの冬を行くその2
普段着で味わう素朴だけどおいしいハワイグルメハワイの冬を行くその3
金色の波に陽が落ちてゆくワイキキ ハワイの冬を行くその4
この木なんの木冬のハワイ番外編


朝の空に虹がかかるdownsize
(朝の空に虹がかかる)
たった5年で鳴かなくなったハワイのコオロギ
これは出典の著者Marlene Zuk氏たちの長年の研究の結果分かったことですが、ハワイ諸島のコオロギがたった5年間で翅をこすっても音が出ない-つまりは“鳴けない”ツルツル翅、「フラットウィング」のコオロギに変わってしまいました。

影が濃くなった浜に陽が暮れてゆくdownsize
(影が濃くなった浜に陽が暮れてゆく)
恋の歌を盗み聞きする寄生バエ
コオロギの雄は夜の闇の中で鳴き声を競い雌を誘い、雌は鳴き声のステキな雄を選び、無事繁殖に至ります。
ハワイ諸島のコオロギ、ナンヨウエンマコオロギ(Teleogryllus oceanicus)はいわゆる外来種でたった150年前頃に初めてハワイに来たようです。ところが、ハワイ諸島には既に先にやって来ていた寄生バエ、オルミア・オクラケア(Ormia occhraea)がいました。
しかもこのハエはコオロギの歌を聞き取ることができました。


早朝の公園はまだ人影疎らでの~びりdownsize
(早朝の公園はまだ人影まばらでの~んびり; ♪この~木なんの木♬・・の公園です)
必殺の寄生技でコオロギ絶滅の危機
暗闇でハエは鳴き声をたよりにコオロギの雄の体に卵を産みつけ、幼虫はコオロギを食べて育ちやがて寄生されたコオロギは死んでしまいます。

雄コオロギのジレンマ;鳴くべきか、鳴かざるべきか
この事態はコオロギの雄にとっては大変なジレンマです。鳴かなければ雌に逢えなくて子孫が残せず、鳴けばハエに寄生され死んでしまい、やはり子孫を残せない。

かがり火の向こうに今陽が沈むREVdownsize
(かがり火の向こうに今陽が沈む)
鳴かない「フラットウィング」で生き残る
観察を始めて数年もしないうちにカウアイ島ではコオロギの鳴き声が聞こえなくなり、著者たちはコオロギが寄生バエによって絶滅したと思ったそうです。
ところが、暗闇をよく探すとコオロギは以前にも増してたくさんいる、でも鳴き声が聞こえない。それもそのはず、ほとんどが「フラットウィング」の雄だったから。


Ala Wai 運河を風が渡るdownsize
(Ala Wai 運河を風が渡る)
たった1つの遺伝子変異で高速進化
鳴かなくなることで寄生バエの襲撃を避けられるように“進化”したようで、しかもたった5年間の出来事、コオロギにすれば20世代ほどの進化、ものすごい「高速進化」です。
鳴くコオロギからたった1つの遺伝子の変異で鳴かない「フラットウィング」のコオロギなってしまうようで、これも高速進化のヒミツの1つです。


静かな午後に星条旗がはためくdownsize
(静かな午後に星条旗がはためく)
鳴く雄と一緒なら雌に会える
でもちょっと待って。鳴かないことで雄はハエは避けられるけど、雌は暗闇でどうやって雄を探すのでしょうか?
実はよく観察してみるとごく少数鳴く雄がいたのです。鳴かない雄はその鳴く雄の周りに集まり、雌は鳴く雄をたよりに雄の集団に出会えるというしかけだったのです。


寄生バエも恐れぬ鳴く雄の英雄的行為??
結果、鳴く雄はわが身を危険にさらしながら他の雄お出会いを助けていたのです。“擬人的”に見れば英雄的行為ですけど、もちろんコオオギにそんな気はない、と思います。

たった5年で進化のヒミツ
(こういうことじゃないか?と思うのですが・・)
遺伝子プールの変化じゃないかと思うんですけど・・
これは有名な大気汚染で黒くなった蛾(オオシモフリエダシャクの黒化)が環境改善で淡色に戻った例と同じく、遺伝子プール(中の遺伝子の比率)の変動だと思うのですが・・・。

ヒト遺伝子変異をチョコの色で考えると
(ヒト遺伝子変異をチョコの色で考えると(再掲)
マーブルチョコの色が変わるだけで“進化“する
以前にもご紹介しましたが、例えば、もともと子供が好きそうな赤、黄が中心のマーブルチョコが、ひょんなことで青に人気が出て「大人買い」されると赤や黄に替わって青が中心の比率に逆転します。でもマーブル・チョコはマーブル・チョコのまま。ただ色の比率が変わるだけで“高速に”製品が変わります。
ヒトに限らずこのハワイのコオロギのように動物の進化にはこのような仕組みの「高速進化」もあるようです。この例のように「高速進化」は珍しいものではなく、また、その仕組みもす少しずつ分ってきたようです。
ヒト高速進化の過去記事はこれ↓
ヒト進化はマーブルチョコレート 人はヒトをどのように改造してきたのか その3 ブルターニュ寸景続々
Art234人口爆発がヒト進化を加速 人はヒトをどのように改造してきたのか その2 ブルターニュ寸景 続
人はヒトをどのように改造してきたのか その1移動も進化も250倍に ブルターニュ寸景


シクリッド高速進化の最近の記事はこれ↓
2つのアゴを持つ一芸に秀でた何でも屋シクリッド
構造湖で高速進化したシクリッドたちの遺伝子のヒミツ


出典: 「私たちは今でも進化しているのか?」 “Paleo Fantasy; What Evolution Really Tells Us about Sex, Diet and How We Live” 2013年 Marlene Zuk氏著、渡会圭子氏訳、垂水雄二氏解説(2015年、文藝春秋)
原典: Katia Moskvitch “Evolution sparks silence of the crickets; Males on two Hawaiian islands simultaneously went mute in just a few years to avoid parasite.” Nature News 29 May 2014
http://www.nature.com/news/evolution-sparks-silence-of-the-crickets-1.15323
原典: Sonia Pascoal, et al. ”Rapid Convergent Evolution in Wild Crickets “ Current Biology Volume 24, Issue 12, p1369–1374, 16 June 2014
http://linkinghub.elsevier.com/retrieve/pii/S0960982214005247


過去の記事リストは下のイラストをクリック ↓ (日本国内と南の島の記事は「ヨーロッパの話題」にまとめています)
パリの話題minisizeREVフランス街歩きminisizeREV
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ヒコーキの話minisizeREVグルメ話minisizeREV

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