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大海原の密航者と島症候群+南の島の時間/生物地理学の冒険者その5

大海原の密航者と島症候群+南の島の時間/生物地理学の冒険者その5
ビーチもプールも人影まばらな正午downsize
(ビーチもプールも人影まばら、真昼のサイパンはランチタイム)
大海原を渡ってゆく冒険者のお話につき、のんびりした南の島の写真を添えています。





水も外から運ぶ海洋島、サイパン
ゆっくり時間が流れるオアフ島の午後downsize
(ゆっくり時間が流れるオアフ島の午後)
ダイビングでよく訪れたサイパン島は、まぶしい青空、真っ白なビーチ、どこまでも透き通った珊瑚礁の海など素晴らしい自然です。でも多くの井戸水は飲めません、海水が地下水に混じるので。聞けば、資源に乏しいサイパン島では多くの観光客を賄うため、食料、石油はもちろん、水までも毎日大きなタンカーで外から運ぶそうです。実際、その真水パイプラインのそばを潜ったこともあります。やはりサイパン島は「海洋島」です。


海洋島で生きるのに「男子は要らないわ」
ホノルルの目抜き通りdownsize
(ホノルルの目抜き通り; ハワイ)
これら絶海の海洋島には(人が来る前は)四つ足はほとんどいません、“3つのW”に乗れないから。飢えに強い一部の爬虫類やカメなら流木いかだの“波(Wave)まかせ”で辿り着くこともあります、でもたいていは1匹だけ。そこで海洋島では往々にして“単為生殖”(雌が雄なしでクローンを産む)で殖える種が定着して子孫を残します「雄なんて要らない」。


3つのWとは; Wing(翼)、Wind(風)、Wave(波)です(関連記事も見てみて↓)
3つのWが運ぶ海洋島のユニークな生き物 生物地理学の冒険者2

「そこの密航者、逮捕だ!」(アノール・ホイホイ曰く・・)
朝のそよ風が静かなビーチを抜けてゆくREVdownsize
(朝のそよ風が静かなワイキキビーチを抜けてゆく)
海洋島、小笠原諸島の固有種オガサワラヤモリもこの単為生殖の一例。捕食者も競争相手もいないので“ヤモリの楽園”だったのに・・・、あぁあぁ、ヒトが来てからは大変。タフなトカゲ、グリーンアノールも一緒に“密航”してきたから。小笠原固有種の一大事と、今“アノール・ホイホイ”で駆除中だとか。


「島症候群」の15項目
屋根で背伸びして見張るシーサーdownsize
(屋根で背伸びして見張る竹富島のシーサー)
このような海洋島の動植物の特徴を「島症候群」”island syndrome”(植物学者カールキスト(Sherwin Carlquist)提唱、15の項目)と呼ぶそうです。そして小笠原の生き物たちはこれらにぴったりあてはまるのだそうです。島症候群15項目とその私の勝手な理解と解釈は表として「続きを読む」の最後に載せています(奇特な方はご覧ください)。(出典①)


密航がバレたトンガのトカゲ
花に埋もれた竹富小校門downsize
(花に埋もれた竹富小学校)
太平洋に浮かぶポリネシアも海洋島、そこに棲むトカゲはわずか1種。更にトンガ、サモアなどごく限られた島だけに棲むフシギな分布。しかし、その生息地が古代トンガ王国の勢力圏とぴったり一致し、その昔に双胴カヌーに便乗した密航者だったことがバレてしまったそうです。


その他の関連過去記事はこちらをクリック↓
気まぐれな猛獣、気候変動 + 北仏モルレー街歩き
ワインの郷ボーヌ番外編と黄金の環境の国ジパング
南極の孤立と生物地理学の冒険者たち + サイパンの浜辺

多彩なソフトをインストールするヒトとシャチ
島内案内図も赤瓦ぶきdownsize
(竹富島では島内案内図も赤瓦ぶきです)
地形や海流が生物を分断して種分化が起こり海洋島に固有種が生まれます。でも例外もあって、シャチやヒトは文化でも分断され固有のグループができるようです。
シャチはイルカの仲間、やっぱり賢いのですね。長老やリーダーを見習い、その教えを忠実に守るなど、生後に多彩なソフト(習慣、文化、技術)をインストールするハード(遺伝形質)を持つからだとか。その結果、シャチは芸を覚え、ヒトは洗脳されるのだ・・・とも。


海に降るクモ
燃えるような赤のハビスカスdownsize
(燃えるような赤のハビスカスが咲く竹富島の小路)
陸や海の障壁など関係なく世界中に分布するのはアシナガグモ。仔クモは出来るだけ高いところに登り(と言っても草の葉の先くらいですが)おしりから出す糸の帆で風に乗りフワリと大空へ、偏西風にも、ときにはジェット気流にも乗って、海も超えて旅します。「遊糸飛行(Ballooning)」と優雅な名前もあります。行く先は風任せ。でもたどり着けるのはごくわずか、南シナ海は季節になると“アシナガグモの雨“が降るそうです。


穂先の発射台からTake-offする遊糸飛行
白い砂地とブーゲンビリアがまぶしい小路downsize
(白い砂とブーゲンビリアがまぶしい竹富島の小路)
涼しい晴れた朝に運が良ければ、「クモにとっての高く突き出た発射台」、フェンスの上や草の穂先などから風をとらえて旅立つクモの赤ちゃんの離陸が見られるのだそうですよ。(出典③)


【おまけ】島症候群15項目の本を読んでの“勝手な”解釈一覧
米植物学者カールキスト(Sherwin Carlquist)提唱; Island syndrome(島症候群)15項目(出典①)
島症候群1から5
島症候群6から10
島症候群11から15

出典①: 「小笠原諸島に学ぶ進化論」2010年、清水善和氏著(技術評論社、「知りたいサイエンス」シリーズ)
出典②: 「なぜシロクマは南極にいないのか」”Here be Dragons: How the Study of Animal and Plant Distributions Revolutionized Our Views on Life and Earth” 2009年Dennis McCarthy氏著、仁木めぐみ氏訳(2011年、化学同人)
出典③: 日経サイエンス 2012年9月号“海外ウォッチ” P.23 「クモはこうして飛ぶ」


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