青く輝くカプリ島青の洞窟と青い光が時計を合わせる第三の視覚

青く輝くカプリ島青の洞窟と青い光が時計を合わせる第三の視覚




夕暮れの色彩はちょっとなまめかしい
夕暮れ コンコルドConcord広場REVdownsize
(夕暮れのパリ、コンコルド広場付近)
幼い頃、夕方の帰り道、青く沈む風景の中でなぜかピンクのホウセンカの花があざやかに浮き出て見えた。夕暮れの色彩は昼間とは違う、何かちょっとなまめかしい・・と感じたことはありませんか?今回は青い光のお話。


カプリ島「青の洞窟」は手漕ぎボートで
青の洞窟はボートで探検REVdownsize
(青の洞窟へは手漕ぎボートで)
南イタリアの旅、おのぼりさんにはカプリ島 (Isola di Capri) ははずせません。カプリ島はナポリの南、ナポリ湾に浮かぶ断崖絶壁の島。その「青の洞窟」(Grotta Azzurra)は海岸の断崖にいくつもある波が穿った洞窟、海食洞の1つ。ナポリからフェリーでカプリ島の港へ、そこからボートで向かいます。

青の洞窟の前は順番待ちのボートで混雑downsize
(洞窟の前は順番待ちのボートで混雑)

船頭さんのパフォーマンス
鎖を手繰って洞窟に躍り込むdownsize
(一瞬をはかって船頭がボートを踊り入れる)
「青の洞窟」には小さな狭い入口が1つだけ。その周りに手漕ぎボートが群がって順番待ちで相当待たされる。やっと入る番になると乗客に寝そべって頭を上げないよう注意が出る。入口は波が来るとほとんど隠れてしまうので波の谷が来て少し広がった一瞬、船頭が一気に鎖を手繰って踊りこむように洞窟に飛び込む、乗客は「ワー!キャー!」。うまいものです、これだけでもパフォーマンス。


水面が青く輝く「青の洞窟」のヒミツ
青の洞窟downsize
(幻想的なブルーに輝く青の洞窟)
「青の洞窟」に一歩入ればターコワイズ(トルコ石色)の神秘的な別世界、オールがかく水も水底もまるでライトブルーに発光しているように淡く輝いています。そのヒミツは、半没状態の海に面した洞窟の狭い入口から射しこむ太陽光線が海底に反射し、反射光が海中散乱するため青さが増した光で洞窟が満たされ水面が青く光るわけです。天候、時刻、海況などが揃わないと入れないし、美しく輝かないそうでラッキーでした。写真ではこの神秘的な美しさはなかなか伝わりません。「百聞は一見にしかず」、機会があればぜひ訪れてみて下さい(カプリ島と南イタリアの旅の続きはそのうちに)。


海中の洞窟でダイバーは青いもやに包まれる
Tinian Grott2005年downsize
(深い青に包まれる海中洞窟テニアン・グロット)
半没が「青の洞窟」ですが、全没、つまり海中にもサンゴ礁などに洞窟(グロットGrott)があります。ダイビングでグロットに潜って入ってゆくと入口の光が射しこむ方向だけが明るいのですがその海の色は一層青く感じられます。その周囲は暗いながらもボーっと独特の淡い青さに包まれていて、多分海中の細かな浮遊物(プランクトンなど)に射し組む光が散乱するためでしょう。サイパンやテニアンのグロットは幻想的な世界です。青い光はなぜか神秘的です。


エイリアンじゃないよ!

Grottでダイブ中 Saipan 2007年downsize
(ブルーに包まれてサイパンのグロットでダイブ中の私、う~ん、確かにアヤシイ)

青い光を感じる第三の視覚ipRGC/メラノプシン、
やはりそうだったか

シャンゼリゼの夕暮れ赤い窓のショップdownsize
(シャンゼリゼの夕暮れ、赤い窓明かりが映える)
視覚、つまり光を感じるのは目の網膜にある、薄暗い光でもよく見える桿体細胞と色を見分ける(色覚)錐体細胞の2種の光受容器があると習いますよね。実はもう1つあるんです。それが最近2002年にOxford大学のRussell Foster氏見つけたipRGC(内在性光感受性網膜神経節細胞)です。風景を見たり顔を見分けたりするのは桿体細胞と錐体細胞の仕事ですが、ipRGCの仕事は「見ること」ではなく、日の出、夕暮れの薄暗い空の弱い青い光を感じて体内時計(biological clock)をリセットし時刻合わせをすることです。青い光に神秘的、幻想的なものを感じるはずですね。


体内時計のビッグベン-視交叉上核(SCN)
サイパンの浜辺のレストラン El Segundos の夕暮れdownsize
(サイパンの浜辺レストラン、海に陽が落ちる)
睡眠、体温、血圧、代謝など多くの体の働きや状態にはおおよそ1日周期のリズム、概日リズム (Circadian rhythm)がありこれを作り出しているのが生物時計(biological clock)。ヒトや哺乳類など多細胞生物はたくさんの体内時計を持っているので体の働きがバラバラにならないように時刻合わせやアラーム合わせが必要になります。このような、世界標準時のロンドン・ビッグベンみたいな働きをしているのが脳の視交叉上核(suprachiasmatic nucleus、SCN)だと考えられています。


青い光で「規則正しい生活」を・・・
Pl. Vendome 暮れなずむエッフェル塔 downsize
(ヴァンドーム広場から眺める黄昏のエッフェル塔)
第三の視覚ipRGCにはロドプシンの仲間の感光色素蛋白質メラノプシン(melanopsin)あり、これが青い光を受け取り、その信号は神経を介して体内時計の中心、視交叉上核(SCN)に伝えられます。これにより生物は正しい概日リズムで日々の生活(眠ったり、餌を取りに出かけたり)を送れるわけ。毎日の規則正しい健康的な生活のためには、朝夕の青い光と第三の視覚ipRGCが大切な働きをしているみたいです、夜更かしの私が言えたことじゃありませんが・・・。


ときには夕暮れをながめましょう
文明社会が作る人工的な光環境に最近はLEDが加わり、特に青色LEDが弱い青色光を感じる第三の視覚ipRGCにどんな影響があるのかちょっと心配している研究グループ(Blue Light Club)もあるそうです。電気がない時代の人々は夜明けの淡く青い光でその日一日の活動のタイマーを押したのでしょうか、夜明けはムリでも時には夕暮れの空をながめましょうね。

出典: 「第三の光受容細胞」natureダイジェスト2011年5月号, P.20/”Seeing without seeing”, Corie Lok, nature vol.469 p.284。この記事に紹介されているOxford大学のRussell Foster氏の著書、“Rhythms of Life”「生物時計はなぜリズムを刻むのか」, Russell Foster氏Leon Kreitzman氏共著(2004年)、本間徳子氏訳(2006年、日経BP社)がもう1つの出典。この本はまたいつかご紹介しますが、とても面白いですよ。

↓良かったらクリックをお願いします


「東北関東大震災」支援クリック募金
スポンサーサイト

テーマ : 自然科学 - ジャンル : 学問・文化・芸術