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生き物が作る宝石、金塊、核燃料 + バルセロナのガウディ番外編

生き物が作る宝石、金塊、核燃料 + バルセロナのガウディ番外編
小石と砂のネバーエンディングストーリーその3


フィリピンの孤児たちを支援しておられるZenさんのブログです。
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バルセロナ昼下がりのカフェテラスdownsize
(バルセロナ昼下がりのカフェテラス)
小石と砂の生き物との関わりのサイエンス小ネタ。「小石と砂のネバーエンディングストーリー」の第3部です。
第1部、第2部はここをクリック↓

小石と砂のネバーエンディングストーリーとローマ番外編
集まったり別れたりふしぎな砂の物語 + サイパンビーチ寸景

生き物の艶めかしさを感じるガウディの建物
有名なParc Guellのトカゲ君downsize
(有名なParc Guellのトカゲ君)
生き物と小石の話題なので、鉄、石、陶器など無機物で出来ているのに生き物の艶めかしさを感じるガウディの建物でまだご紹介していない写真を添えています。
バルセロナとガウディの過去記事はここをクリック↓
憧れのガウディに会いに行く南欧バルセロナ
体温を感じるガウディの建物バルセロナ紀行後編
バルセロナ番外編① ガウディの先生ムンタネーとサンパウ病院
バルセロナ番外編② ヒスパノ・アラブ様式が美しいカタルーニャ音楽堂




小石の灰色は生き物が作った泥です
古代の彫像のようなCasa Milaの換気塔downsize
(古代の彫像のようなCasa Milaの換気塔)
小石の灰色の部分は主に雲母。なんとこれらの多くは生き物が作ったもの、植物から出たフミン酸や微生物の作用で岩の鉱物を分解した土が原料です。
やがて砂より細かく軽い粘土やシルトになりダストになって風に吹かれ水に流され、やがて水が淀むと積もって泥岩になってゆきます。


小石の中のプランクトンが来歴を語る
Casa Batlioのぬめりとしたフォルムの窓と灯downsize
(Casa Batlioのぬめりとしたフォルムの窓と灯)
小石の中のミクロの世界はその小石がどこの海で生まれたかの来歴や当時のことを教えてくれます。
小石の中には微化石、つまりプランクトンの化石があります。プランクトンの種類は彼らが棲んでいた海の様子を教えてくれます。海の水は一様ではなく所により温度、塩分、栄養分などが異なる「水塊」が出来、プランクトンにはそれぞれに好みの水塊があるからです。


小さな磁石が教える小石の生まれ故郷
地磁気と緯度
(地磁気と緯度)
小さな磁石も小石に含まれていて、小石が生まれた場所の緯度を教えてくれます。もっとミクロな世界をのぞくと小石の中の放射性同位元素(の比)からは「小石の年齢」が判ります。


小石が伝える地球の気候の歴史
旧市街ゴシック地区のレトロなレストランdownsize
(旧市街ゴシック地区のレトロなレストラン)
こんな小石のミクロの世界を顕微鏡や分析機器の力を借りて注意深く眺めると、地球の歴史のいつ頃に、どこの海でその小石(の素)は生まれ、そのときの海はどうだったのか、温かかったか、あるいは、寒かったか、酸素は豊富だったか、あるいは、水が淀んで酸素不足だったか、など小さな小石は当時の気候まで語り始めます。

小石は「アルミサッシのガラス窓」を煮詰めたもの
タイルなのに体温を感じるCasa Milaの換気塔downsize
(タイルなのに体温を感じる、Casa Milaの屋上でくつろぐ)
小石や砂の成分の半分以上がなんと酸素Oです。その次に多いのがケイ素SiとアルミニウムAlで、なんのことはない、うちの居間の「アルミサッシのガラス窓」と周りの空気を“地底世界で煮詰めた”ようなものです。

アレ?小石は生き物の成分と良く似てるけど・・
どう見てもフルーツSagrada Familiaの塔downsize
(どう見てもフルーツSagrada Familiaの塔)
それ以外の成分は数%ほどのマグネシウムMg、カリウムK、チタンTiなど、更に1%以下のカルシウムCa、マンガンMn、リンPなど。ほとんどが生き物の体にもあるお馴染みの元素で、わずかな成分ですが、これらが小石や岩にバラエティと個性、そして様々な色や肌触りを生み出します。

「小石にない成分」、それこそが「生き物の証し」です
きのこみたいなCasa Batlioの暖炉downsize
(きのこみたいなCasa Batlioの暖炉)
それでは小石にない成分は?もうお気づきですね、炭素C、水素H、窒素Nです。これに酸素が加わればほとんどの有機物、つまり生き物の生き物らしい成分が出来ます。だから、小石や岩の中のCHNは生き物(とその遺物)の証しとなります。

宝石に遺す「生き物の刻印」
Parc Guellのおとぎの国みたいな建物REVdwonsize
(Parc Guellのおとぎの国みたいな建物)
海底の泥の一番上の層には穴を掘ったり泥を食べたりして地味に暮らしている環形動物や軟体動物たちがいます。ゆっくり沈殿した泥はかき回され食べられて胃腸の中を通り抜けしているうちに金属成分などが入れ替わってしまい、やがて石、岩になるその成分に「生き物の刻印」を遺します。そして金属成分の混じり具合が絶妙だと宝石も誕生します。

「愚者の金」が化石を保存する
天井を見上げるとモザイクが美しいParc GuellにてREVdownsize
(天井を見上げるとモザイクが美しいParc Guellにて)
微生物が作る小石の成分の1つに「愚者の金」ことパイライトFeS2があります。一見金ぴかで「金!」と勘違い、でも時間が経つとメッキが剥げてくすんでしまう。意外なことにこの「愚者の金」が筆石など生き物の殻の中に浸みこみ、地底の高温高圧にも耐え化石として何億年と保存するのだそうです。

歯の材料が核燃料を集める
仲良しイスCasa Milaにてdownsize
(仲良しイス、Casa Milaにて・・)
海底の泥の下数cmには酸化還元境界があり、これより上は酸化的で酸素が豊富、生き物もいっぱい、下は還元的で無酸素で生き物の働きが乏しい。上の生き物が酸素を使い果たすから。この酸化還元境界にもとは生き物の殻などですが、歯の材料でもあるアパタイトCaPO4が晶析します。そしてこの酸化と還元の微妙なバランスのアパタイト層にウランが好んで蓄積します。だから核燃料は生き物が作ったものです。

生きている岩が石油を作る
バンザイしてるみたいなParc Guellのオブジェdownsize
(バンザイしてるみたいなParc Guellのオブジェ)
石炭は主に樹木の炭化ですが、石油や天然ガスなどの化石燃料も地下深い岩の割れ目に棲む微生物が料理したものだそうです。岩も“生きている”のです。

小石の白と黒の層は生き物の栄枯衰退
(環形動物を思わせるSagrada Familiaの螺旋階段)
白い層は生き物に乏しい世界を、黒い層は繁殖した生き物の名残を反映しているそうです。これが小石に残された縞模様です。その縞には季節や気候の変化、生き物の栄枯衰退、ときどき起こる火山活動など地球の歴史が記されています。

庭の小石も時の語りべ
庭の小石も時の語りべREVdownsize
(うちの庭の小石も「時の語りべ」です)
ありふれた庭の小石ですが、このようにその来歴に想いを巡らせれば悠久の旅を語ってくれます。なんだかちょっと愛おしくなりませんか?


出典: “The Planet in A Pebble; A Journey into Earth’s Deep History” 「小石、地球の来歴を語る」2010年 Jan Zalasiewicz氏著、江口あとか氏訳(2012年、みすず書房)
出典: “Sand; A Journey Through Science and the Imagination” 「砂-文明と自然」 2009年 Michael Welland氏著、林裕美子氏訳 (2011年、築地書館)
出典: “”The Earth: An Intimate History” 「地球46億年全史」 2004年 Richard Fortey氏著、渡辺政隆氏、野中香方子氏共訳(2009年、草思社)


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コメント

Re: No title

Zenさん、訪問コメント感謝です。初めての街を訪ねたり、身近な生き物たちの暮らしを知ったり、足元の石や水の来し方を思ったりすると、ちょっとだけ世界が広がって得した気分になりますよね。

> アメリカに住んでいた時にすべてのモノには意味があり
> 生を感じろと教えられていましたが今まさにそのとおりだと思いました。
> 何処にでも転がっている小石。
> しかしそこには歴史があり命があるんですね。

No title

アメリカに住んでいた時にすべてのモノには意味があり
生を感じろと教えられていましたが今まさにそのとおりだと思いました。
何処にでも転がっている小石。
しかしそこには歴史があり命があるんですね。
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