テナガエビ幼生は眼の色をフォトニック結晶で自在に変えて背景に隠れる+フランス、シーフードグルメ
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【お詫び】
Levalloisbeeです。春以来、諸事多忙で新しい記事を載せる余裕もなく、皆さまのブログへ訪問させていただくのも途絶えがちです。勝手ながら、夏に向かい落ち着きましたら皆さまへの訪問、新規の記事掲載など戻してゆきたいと存じます。見捨てずによろしくお願いします。

(キブロン(Quiberon)、浜辺でムール貝を味わう;フランス南ブルターニュ)
おいしいフランス料理シーフード、テナガエビ
今回の主役はテナガエビ(オニテナガエビ)、フランス料理のシーフード食材、lanbpistine(ラングスティーヌ)です。パスタなどに和えるととてもおいしいです。エビ、カニの仲間の「甲殻類」のほとんどが含まれる十脚目(decapod)の生物です。フランス各地で出会ったシーフード料理のフォトを添えます。
フランスで出会ったシーフードの過去記事です↓
アルミニウムの鎧で推進1万mの超高圧を凌ぐヨコエビフランスのシーフードグルメ
昔トウガラシは辛くなかった、湿地のカビ対策でスパイスに+北フランスで出会ったシーフード
予測可能な資源が競争と協力を生みヒト社会を繁栄に導いた+フランスのシーフードグルメ
高山のお花畑は毒の饗宴それでもヒトはサラダで喰らうフランスのサラダグルメ

(北仏ノルマンディーのサンマロ(Saint Malo)、ホタテの一皿)
まさに「プレディタ―」、透明なクラゲ、エビ、カニ
クラゲ、一部のイカとともに、エビ、カニなど甲殻類の幼生(赤ちゃん)は透明で、「透明人間」みたいに天敵から見えないのです。石垣島ダイビングで出会ったスカシテンジクダイも透明サカナでした。
スカシテンジクダイに出会ったダイビングの過去記事です↓
6月の海は恋の季節、石垣島ダイビング記
透明ニンジャたちの泣き所、不透明な眼
でも体が透明でも眼だけ隠せません。なぜなら、物を見る視覚には“不透明な“眼の色素が欠かせないので、眼は「不透明で色つき」になるからです。

(南仏マントン(Menton)、絶品シーフードパスタはさすが仏伊国境の街)
眼の色を海の色にして隠れる赤ちゃんエビ
ところが、出典著者Keshet Shavit氏らの研究で、テナガエビの1種、オニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)の幼生は環境に応じて眼の色を環境の色に変えて天敵から隠れてしまうことが分かりました。
青い海では眼はブルー、濁った河口なら黄緑に
アカバ湾の透明な青い海に棲むオニテナガエビ幼生の眼はブルーでしたが、河口の泥で濁った汽水域に棲む幼生の眼は黄緑色でした。オニテナガエビ幼生は眼の色を棲む環境の海と同じ色にして天敵から隠れます(体の他の部分は透明なので)。

(南ブルターニュ、アルカション(Arcachon)、ビスケー湾の生ガキは絶品)
じゃ、電子顕微鏡で調べてみよう
オニテナガエビ幼生の眼の色のナゾを解くため、出典著者Shavit氏らは電子顕微鏡などを用いて眼の構造を調べました。すると・・・

(フランス中部ディジョン(Dijon)名物のエスカルゴ)
眼を覆うナノ粒子のフォトニック結晶で色を変える
オニテナガエビの幼生の眼はイソキサントプテリン(isoxanthopterin)のナノ結晶粒子が層になった反射板で覆われていています。更に、イソキサントプテリンのナノ粒子はフォトニック結晶、つまり、条件によって反射する光の色が変わる結晶構造~でした。
ナノ粒子層の反射板が特定の「色を付ける」
このイソキサントプテリンのナノ粒子が並んだ層が反射板になって特定の光を反射し、幼生の眼は特定の色に見えます。いわゆる「構造色」ですね。
構造色の過去記事です↓
輝くメタリックブルーの秘密、色素の要らない生き物たちの構造色

(北仏ルーアン(Rouen)、ノルマンディーのオマールは絶品)
ナノ粒子の粒径に近い波長の光に「色づく」
オニテナガエビ幼生の眼のイソキサントプテリンのナノ粒子の粒径が小さくて青の光の波長に近い、250-325nmなら青い眼になり、400nm以上の大きい粒径ならその眼は黄緑色でした。
夜は青い眼、昼は黄緑の眼で海に隠れる
オニテナガエビの幼生は動物プランクトンで、深い海で過ごす昼間は海の色の青い眼、夜、浅瀬の濁った海に昇るときはその海水の色に近い黄緑色の眼に変わります。イソキサントプテリンのナノ粒子のサイズを変えて環境の色に合わせて隠れるのです。

(南仏マントン(Menton)、ムール貝のパスタ、おいしいです)
ナノ粒子を並び替えて眼の七変化
幼生の眼は異なった環境では異なった色を反射できるようです。
実験室でオニテナガエビ幼生を4時間太陽光に晒すと眼は銀色がかった黄色になりました。イソキサントプテリンのナノ粒子の配列がぐちゃぐちゃに崩れたことによると思われます。
暗闇でナノ粒子が再配列
そして、幼生を一晩暗闇に置くと眼は緑色になりました。このときナノ粒子は層上に配列されるます、各層では揃っていないままですが。
このように環境に適応して眼の色を変えることで幼生は海の異なる場所でそこの海の色に隠れることが出来ます。
眼を隠してもピンホールカメラで見てます
でも、1つ疑問が湧きますね。眼がイソキサントプテリンの層で覆われた幼生は周りが見えるのでしょうか?ナノ粒子のツブツブのすき間から(特定の角度で)光が通り、多分ですが、まるで「ピンホールカメラ」のように、見えるのだそうです。むしろ、より良く見えるのだとか・・。
テナガエビの赤ちゃんは大人に似てない
オニテナガエビの幼生はおとなのオニテナガエビとは外見が似ていません。フォトニック結晶で覆われた眼と透明な体は、しばしばエサにされる弱い幼生時代を無事乗り切るためのカムフラージュ、つまり保護色です。
塗料なんかに応用できるかも?
この研究結果、「ナノ粒子のサイズを変えて反射する(=見える)色(光の波長)を変えるオニテナガエビ幼生の“ワザ”は何かに、例えば、太陽光パネル、塗料などに応用できるんじゃない?」と出典著者らは述べています。
生きものの世界はまだまだたくさんのヒミツを隠しているようですね。
出典:”A tunable reflector enabling crustaceans to see but not be seen” Keshet Shavit et al. SCIENCE 16 Feb 2023 Vol 379, Issue 6633 pp. 695-700 DOI: 10.1126/science.add4099
出典:”Glassy eyes may help young crustaceans hide from predators in plain sight” Erin Garcia de Jesú Science News FEBRUARY 16, 2023
出典:”Prawn larvae conceal their eyes with reflectors to hide from predators” Alice Klein NewScientist 16 February 2023
出典:ウィキペディア記事「オニテナガエビ」「フォトニック結晶」
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おいしいフランス料理シーフード、テナガエビ
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まさに「プレディタ―」、透明なクラゲ、エビ、カニ
クラゲ、一部のイカとともに、エビ、カニなど甲殻類の幼生(赤ちゃん)は透明で、「透明人間」みたいに天敵から見えないのです。石垣島ダイビングで出会ったスカシテンジクダイも透明サカナでした。
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6月の海は恋の季節、石垣島ダイビング記
透明ニンジャたちの泣き所、不透明な眼
でも体が透明でも眼だけ隠せません。なぜなら、物を見る視覚には“不透明な“眼の色素が欠かせないので、眼は「不透明で色つき」になるからです。

(南仏マントン(Menton)、絶品シーフードパスタはさすが仏伊国境の街)
眼の色を海の色にして隠れる赤ちゃんエビ
ところが、出典著者Keshet Shavit氏らの研究で、テナガエビの1種、オニテナガエビ(Macrobrachium rosenbergii)の幼生は環境に応じて眼の色を環境の色に変えて天敵から隠れてしまうことが分かりました。
青い海では眼はブルー、濁った河口なら黄緑に
アカバ湾の透明な青い海に棲むオニテナガエビ幼生の眼はブルーでしたが、河口の泥で濁った汽水域に棲む幼生の眼は黄緑色でした。オニテナガエビ幼生は眼の色を棲む環境の海と同じ色にして天敵から隠れます(体の他の部分は透明なので)。

(南ブルターニュ、アルカション(Arcachon)、ビスケー湾の生ガキは絶品)
じゃ、電子顕微鏡で調べてみよう
オニテナガエビ幼生の眼の色のナゾを解くため、出典著者Shavit氏らは電子顕微鏡などを用いて眼の構造を調べました。すると・・・

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眼を覆うナノ粒子のフォトニック結晶で色を変える
オニテナガエビの幼生の眼はイソキサントプテリン(isoxanthopterin)のナノ結晶粒子が層になった反射板で覆われていています。更に、イソキサントプテリンのナノ粒子はフォトニック結晶、つまり、条件によって反射する光の色が変わる結晶構造~でした。
ナノ粒子層の反射板が特定の「色を付ける」
このイソキサントプテリンのナノ粒子が並んだ層が反射板になって特定の光を反射し、幼生の眼は特定の色に見えます。いわゆる「構造色」ですね。
構造色の過去記事です↓
輝くメタリックブルーの秘密、色素の要らない生き物たちの構造色

(北仏ルーアン(Rouen)、ノルマンディーのオマールは絶品)
ナノ粒子の粒径に近い波長の光に「色づく」
オニテナガエビ幼生の眼のイソキサントプテリンのナノ粒子の粒径が小さくて青の光の波長に近い、250-325nmなら青い眼になり、400nm以上の大きい粒径ならその眼は黄緑色でした。
夜は青い眼、昼は黄緑の眼で海に隠れる
オニテナガエビの幼生は動物プランクトンで、深い海で過ごす昼間は海の色の青い眼、夜、浅瀬の濁った海に昇るときはその海水の色に近い黄緑色の眼に変わります。イソキサントプテリンのナノ粒子のサイズを変えて環境の色に合わせて隠れるのです。

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ナノ粒子を並び替えて眼の七変化
幼生の眼は異なった環境では異なった色を反射できるようです。
実験室でオニテナガエビ幼生を4時間太陽光に晒すと眼は銀色がかった黄色になりました。イソキサントプテリンのナノ粒子の配列がぐちゃぐちゃに崩れたことによると思われます。
暗闇でナノ粒子が再配列
そして、幼生を一晩暗闇に置くと眼は緑色になりました。このときナノ粒子は層上に配列されるます、各層では揃っていないままですが。
このように環境に適応して眼の色を変えることで幼生は海の異なる場所でそこの海の色に隠れることが出来ます。
眼を隠してもピンホールカメラで見てます
でも、1つ疑問が湧きますね。眼がイソキサントプテリンの層で覆われた幼生は周りが見えるのでしょうか?ナノ粒子のツブツブのすき間から(特定の角度で)光が通り、多分ですが、まるで「ピンホールカメラ」のように、見えるのだそうです。むしろ、より良く見えるのだとか・・。
テナガエビの赤ちゃんは大人に似てない
オニテナガエビの幼生はおとなのオニテナガエビとは外見が似ていません。フォトニック結晶で覆われた眼と透明な体は、しばしばエサにされる弱い幼生時代を無事乗り切るためのカムフラージュ、つまり保護色です。
塗料なんかに応用できるかも?
この研究結果、「ナノ粒子のサイズを変えて反射する(=見える)色(光の波長)を変えるオニテナガエビ幼生の“ワザ”は何かに、例えば、太陽光パネル、塗料などに応用できるんじゃない?」と出典著者らは述べています。
生きものの世界はまだまだたくさんのヒミツを隠しているようですね。
出典:”A tunable reflector enabling crustaceans to see but not be seen” Keshet Shavit et al. SCIENCE 16 Feb 2023 Vol 379, Issue 6633 pp. 695-700 DOI: 10.1126/science.add4099
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出典:ウィキペディア記事「オニテナガエビ」「フォトニック結晶」
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カメレオンはミクロのミルフィーユで瞬時に体色を変える+早春の庭の花
カメレオンはミクロのミルフィーユで瞬時に体色を変える
+早春の庭の花
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(赤が鮮やかな木瓜の花)
カメレオンは色を変えてヘンシ~ン
カメレオンと言えば・・・自在に体色を変えて「変身」、忍者のように背景に隠れる・・・ってイメージありませんか?(あるいは、♪カメ~レオン、アーミー!♪とか・・・)
ちょっと前ですが面白い話題につき・・・
たまたまカメレオンの科学記事の関連を検索する内に見つけたのが今回のサイエンス小ネタです。既に数年前に発表された研究成果でしたが、面白いので記事にしました。

(白梅、紅梅にさきがけて咲きます)
早春の庭の花たち
鮮やかに色を変えるカメレオンつながりでわが庭の花のフォトを添えます。毎年春の訪れを告げるように咲いてくれます。

(福寿草、少しづつ黄色の衣をひろげます)
瞬時に色を変えるネオンテトラとカメレオン
最近の研究で分かったらしいのですが、カメレオンは、そして熱帯魚のネオンテトラも皮膚の細胞の中のミクロの多層膜構造(ミルフィーユですね)の「膜の隙間」を変えることで一瞬のうちに体色を変えるようなのです。やっぱり「ニンジャ」だ!
何で色を変えるの?ハイ、モテルためです
普段カメレオンの体色は背景に溶け込むような緑の保護色ですが、オスがメスにアピールするときには(多分、コーフンして!)瞬時に鮮やかな黄色から赤色の体色に変わります。

(真っ赤なセンリョウの実)
色が無いのに色が見える、構造色
シャボン玉、水たまりの油膜、CD/DVDのディスク・・・色が無いのに虹色が見える物ってありますよね。ヒトが見える光(可視光※1)の波長に近いくらいの幅の無色透明な薄膜だと光の干渉(※2)により“特定の波長(=特定の色)”の光が増幅(または減殺)されるため、その膜には「特定の色」がついて見えます。
(※1:波長の下限(紫)360-400 nmから上限(赤)760-830 nmまで)
(※2:光が波であるため干渉が起こります)
♪飾りじゃないのよ、真珠は、ハッハァ~♪;装甲です
例えば、アワビなどの貝殻の内側はCDディスクみたいに虹色です。この「構造色」は貝殻の内側の真珠層で虹色に光ります、え、何で?見えない内側なのに?色のためではなくてベニヤ板のように積層することで軽くて強い「装甲」にしているのです。

(グアニン)の構造式)
手近の材料の結晶で虹色構造色
グアニンは遺伝子DNAの文字AGTCの1つ「G」で、生きものにとって大事な、そしていつでも、どこでも手に入る「素材」の1つです。そのグアニンのミクロの結晶の薄膜がミルフィーユのように重なった多層薄膜構造が細胞の中の「虹色素胞」
グアニン結晶を利用するホタテの過去記事です↓
おいしいホタテの眼力はハッブル宇宙望遠鏡並みです+ホタテの海鮮レシピ

(沈丁花が少しづつ咲いてきました)
「ミルフィーユ」のすき間を変われば色が変わる
構造色の発色の細かい原理(光の干渉)は措きますが、「ミクロのミルフィーユ」のような薄層が積み重なった多層膜構造が色づいて見えるのが構造色です。「ミルフィーユのすき間」、積層の間隙(厚さ)が変わると色が変わります(干渉で増強される光の波長が変化して)。
カメレオンは多層膜のすき間を変えて瞬時に変身
カメレオンはグアニン結晶のミルフィーユ;多層膜のすき間を変えて体色を一瞬で変えるようなのです。
実は同じテクをエビの赤ちゃん(幼生)も使っているそうで、これは近々の記事でお知らせしますね。
どうやってすき間を変えているの?→ブラインド仮説
詳しいメカはまだ不明だそうですが、ネオンテトラに関しては、ひもを引いて窓のブラインドの傾きを変えるとすき間も変わる・・これと同じようなメカでは?と言う仮説もあるようです。
以下、余談; 5億年前カンブリア紀は虹色の海??
虹色に輝く化石って・・・?アンモナイト(などの一部)は化石になってもCDディスクみたいに虹色に輝くそうです。構造色を生むミクロの構造が化石になっても保存されたようです。
5億年+α前のカンブリア紀の「生命爆発」のときに(いや、正確にはその前に)三葉虫(の祖先)が眼を「発明」し、「喰う/喰われる」の時代が始まります。動物たちはにわかに武器(歯)と鎧(殻)を揃えました。その鎧、殻は炭酸カルシウムのミクロの多層構造で強化されました(段ボールですね)。するとカンブリア紀の海の中では構造色の虹色キラキラで溢れてたかも?だそうです(以前読んだ本によれば)。
出典:”The chameleon reorganizes its nanocrystals to change colors” PRESS RELEASE
Geneva | 5 March 2015 UNIVERSITE DE GENEVE
出典:「カメレオン色変化の仕組みを解明、スイス大」【3月11日 AFP】
2015年3月11日 13:31 発信地:パリ/フランス
出典:「魚類の体色変化と個体間のコミュニケーション」大島 範子(構造色の原理と応用 The Society for Bioscience and Bioengineering, Japan NII-Electronic Library Service The Sooiety for Biosoi)
出典:「青い魚はなぜ青い」 東邦大学メディアセンター
出典:ウィキペディア記事「色素胞」「カメレオン」
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カメレオンは色を変えてヘンシ~ン
カメレオンと言えば・・・自在に体色を変えて「変身」、忍者のように背景に隠れる・・・ってイメージありませんか?(あるいは、♪カメ~レオン、アーミー!♪とか・・・)
ちょっと前ですが面白い話題につき・・・
たまたまカメレオンの科学記事の関連を検索する内に見つけたのが今回のサイエンス小ネタです。既に数年前に発表された研究成果でしたが、面白いので記事にしました。

(白梅、紅梅にさきがけて咲きます)
早春の庭の花たち
鮮やかに色を変えるカメレオンつながりでわが庭の花のフォトを添えます。毎年春の訪れを告げるように咲いてくれます。

(福寿草、少しづつ黄色の衣をひろげます)
瞬時に色を変えるネオンテトラとカメレオン
最近の研究で分かったらしいのですが、カメレオンは、そして熱帯魚のネオンテトラも皮膚の細胞の中のミクロの多層膜構造(ミルフィーユですね)の「膜の隙間」を変えることで一瞬のうちに体色を変えるようなのです。やっぱり「ニンジャ」だ!
何で色を変えるの?ハイ、モテルためです
普段カメレオンの体色は背景に溶け込むような緑の保護色ですが、オスがメスにアピールするときには(多分、コーフンして!)瞬時に鮮やかな黄色から赤色の体色に変わります。

(真っ赤なセンリョウの実)
色が無いのに色が見える、構造色
シャボン玉、水たまりの油膜、CD/DVDのディスク・・・色が無いのに虹色が見える物ってありますよね。ヒトが見える光(可視光※1)の波長に近いくらいの幅の無色透明な薄膜だと光の干渉(※2)により“特定の波長(=特定の色)”の光が増幅(または減殺)されるため、その膜には「特定の色」がついて見えます。
(※1:波長の下限(紫)360-400 nmから上限(赤)760-830 nmまで)
(※2:光が波であるため干渉が起こります)
♪飾りじゃないのよ、真珠は、ハッハァ~♪;装甲です
例えば、アワビなどの貝殻の内側はCDディスクみたいに虹色です。この「構造色」は貝殻の内側の真珠層で虹色に光ります、え、何で?見えない内側なのに?色のためではなくてベニヤ板のように積層することで軽くて強い「装甲」にしているのです。

(グアニン)の構造式)
手近の材料の結晶で虹色構造色
グアニンは遺伝子DNAの文字AGTCの1つ「G」で、生きものにとって大事な、そしていつでも、どこでも手に入る「素材」の1つです。そのグアニンのミクロの結晶の薄膜がミルフィーユのように重なった多層薄膜構造が細胞の中の「虹色素胞」
グアニン結晶を利用するホタテの過去記事です↓
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「ミルフィーユ」のすき間を変われば色が変わる
構造色の発色の細かい原理(光の干渉)は措きますが、「ミクロのミルフィーユ」のような薄層が積み重なった多層膜構造が色づいて見えるのが構造色です。「ミルフィーユのすき間」、積層の間隙(厚さ)が変わると色が変わります(干渉で増強される光の波長が変化して)。
カメレオンは多層膜のすき間を変えて瞬時に変身
カメレオンはグアニン結晶のミルフィーユ;多層膜のすき間を変えて体色を一瞬で変えるようなのです。
実は同じテクをエビの赤ちゃん(幼生)も使っているそうで、これは近々の記事でお知らせしますね。
どうやってすき間を変えているの?→ブラインド仮説
詳しいメカはまだ不明だそうですが、ネオンテトラに関しては、ひもを引いて窓のブラインドの傾きを変えるとすき間も変わる・・これと同じようなメカでは?と言う仮説もあるようです。
以下、余談; 5億年前カンブリア紀は虹色の海??
虹色に輝く化石って・・・?アンモナイト(などの一部)は化石になってもCDディスクみたいに虹色に輝くそうです。構造色を生むミクロの構造が化石になっても保存されたようです。
5億年+α前のカンブリア紀の「生命爆発」のときに(いや、正確にはその前に)三葉虫(の祖先)が眼を「発明」し、「喰う/喰われる」の時代が始まります。動物たちはにわかに武器(歯)と鎧(殻)を揃えました。その鎧、殻は炭酸カルシウムのミクロの多層構造で強化されました(段ボールですね)。するとカンブリア紀の海の中では構造色の虹色キラキラで溢れてたかも?だそうです(以前読んだ本によれば)。
出典:”The chameleon reorganizes its nanocrystals to change colors” PRESS RELEASE
Geneva | 5 March 2015 UNIVERSITE DE GENEVE
出典:「カメレオン色変化の仕組みを解明、スイス大」【3月11日 AFP】
2015年3月11日 13:31 発信地:パリ/フランス
出典:「魚類の体色変化と個体間のコミュニケーション」大島 範子(構造色の原理と応用 The Society for Bioscience and Bioengineering, Japan NII-Electronic Library Service The Sooiety for Biosoi)
出典:「青い魚はなぜ青い」 東邦大学メディアセンター
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ミツバチは腸内細菌に助けられ毒入り花蜜も平気+ミツバチの街ルヴァロワ
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(花に囲まれた春のルヴァロワ市庁舎.jpg)
腸内細菌は大切なトモダチ、ヒトもミツバチも
私たちヒトに限らず、ミツバチたちにとっても腸内細菌は大切です、密や花粉で中毒しないために。
ミツバチ(花粉や花蜜を集める働きバチ)が「毒物カプセル」のアミグダリン入りの花蜜や花粉を摂っても大丈夫なのは体内(腸内)の微生物叢(microbiota)が解毒してくれるからです。
ミツバチと腸内微生物の酵素遺伝子などの遺伝子解析などにより出典著者Erick VS Motta氏らはこれを明らかにしました。
腸内細菌の過去記事です↓
お腹の中のアリエッティーが棲む熱帯雨林を大切に

(市章も市庁舎もマスコットもかわいいルヴァロワ)
毒は植物の防御兵器です
植物は昆虫(特に幼虫)などの葉などの食害(食べられる)ことを防ぐため毒を体内で作ります(生合成する)。
植物の毒戦略の過去記事です↓
美しくも楽しい種子の本から学ぶ植物の毒戦略

(ルヴァロワ市役所)
植物の毒を食らうヒト
その毒をヒトは喰ら、香辛料や薬剤に使っています。
植物の毒を喰らうヒトの過去記事です↓
植物の毒を喰らい、知恵で使いこなす唯一の種、ヒト
高山のお花畑は毒の饗宴それでもヒトはサラダで喰らうフランスのサラダグルメ
チョウも植物の毒を喰らって毒チョウに・・
ある種のチョウの幼虫は毒入りの葉を食べて体内に毒を貯め「毒チョウ」になります。植物と昆虫の「毒軍拡戦争」はフクザツです。
毒チョウの過去記事です↓
毒チョウがいないと擬態する無毒のチョウも毒を作りだす+春の庭の花
「毒入り」は嘘ぴょ~ん、遺伝子のドミノ倒しで作る蝶の擬態+フランスの看板

(水に映るボートハウス:ルヴァロワ駅そばのジャット(Jatte)島にて)
花粉を運ぶ協力者、ミツバチも毒に晒される
植物が食害(昆虫などの)対策のために作る毒は花粉や花蜜にも含まれます。すると困ったことに、植物の協力者であるミツバチなどの受粉媒介者も毒に晒されてしまいます。もっともこれらの毒は花粉媒介者を病原体から守ってもくれるのですが・・。

(ルヴァロワ市役所の庭で早春のひなたぼっこ)
パリ郊外ミツバチの街、ルヴァロワ
ミツバチつながりでパリ在住時のわが街でしたルヴァロワ(Levallois Perret)のフォトを添えます。
ルヴァロワとハチの過去記事です↓
パリ郊外ルヴァロワの市章ミツバチには秘密がいっぱい
道具を使って蜜を取り一族にワザを伝えるマルハナバチ+パリ郊外ハチの街ルヴァロワ
除草剤に善玉菌をやられミツバチが感染症で大量死かも?+ミツバチの街ルヴァロワ
庭のお花が都会の昆虫を蜜のご褒美で守る+ハチミツの街、パリ郊外ルヴァロワ

(プランシェット(Planchett)公園のチューリップ:ルヴァロワ駅近く)
ハチたちは植物の化学防御の毒に晒される
エサを選り好みをしないミツバチやマルハナバチは植物が病原体や動物による食害からの防御のために作り出す(生合成する)様々な二次代謝産物、つまりは「毒」に晒されます。
少量でもハチたちの健康のみならず行動に影響
これら植物二次代謝産物は、たとえ低用量でも、ハチたちの健康や行動に、プラスにもマイナスにも影響を与えます。例えば、相手を惹きつけたり、抑止力になったりと・・・。

(プランシェット公園から見上げるアパルトマン)
アーモンドやチェリーも実は「毒入り」
色々な花から広く花蜜を集めるハチが慢性的に晒されている植物二次代謝産物の1つがアミグダリン(※1)。アミグダリンはアーモンド、リンゴ、チェリー、ネクタリンなどに含まれる青酸配糖体です。更に、アミグダリンは花蜜と花粉にも含まれるのです。例えば、ミツバチがアーモンドの花蜜を集めると花蜜に含まれる毒(の前駆体)であるアミグダリンも摂ってしまいます。
※1:アミグダリン(amygdalin):青酸配糖体でそれ自身は無毒だが、体内で代謝されてシアン化水素(青酸)を発生する

(逆光の中のガラス張りバス停:ルヴァロワ駅始発)
動物にとって毒は薬にも・・
多くの動物は知らず知らずに食物から毒成分を摂ってしまいます。これらの毒物は複雑な結果をもたらすそうです。摂食した毒物は有害であることが多いのですが、時に病原菌や寄生生物から守ることで有益な場合もあるのだそうです。
毒もさじ加減でクスリに
アーモンドとその花粉はヒトやミツバチに食べられます。見かけは毒性が無いように見えますが、アーモンドに含まれるアミグダリンは代謝されると、なんと猛毒の青酸ガス、シアン化水素になるのです。
確かにアーモンドの花蜜には(少量)アミグダリンが含まれるがミツバチにとって毒となる量ではなく、むしろミツバチを寄生者から守る働きを示すようです。

(ジャット島から見るルヴァロワ(Levallois)橋)
植物は傷つけられるとアミグダリンを猛毒の青酸ガスに
アミグダリンの毒性はその分解産物の毒性によるものです。例えば、害虫などにかじられて植物組織が損傷すると、細胞(の液胞)に蓄えられていたアミグダリンは細胞質のグリコシダーゼ(glycoside hydrolase)(GHs)でプルナシンとグルコースに分解され、プルナシンは更にマンデロニトリル (mandelonitrile)に、そして最終的にベンズアルデヒド (benzaldehyde)と青酸ガス、シアン化水素(Hydrogen Cyanide)に分解されます。

(当時ゆきつけのご近所カフェLe Narval:ナルヴァルとは海獣イッカクのこと)
摂取毒物の解毒には腸内微生物も協力
摂食された植物の毒物(二次代謝産物)は酵素の代謝を受け、その毒性が増すか、減るか、変わらないか、様々なのですが、宿主自身の酵素で毒物を分解することに加えて、腸内微生物が毒物を含む摂取化合物の分解に寄与しています。
腸内微生物がいないと猛毒が溜まる
腸内微生物の働きを確かめるため、出典著者のMotta氏らが「腸内細菌を除いたミツバチ」にアミグダリンを与えると・・・猛毒のプルナシンに代謝されたまま、それ以上分解できずプルナシンが腸に蓄積してしまいました。

(ルヴァロワ橋からセーヌの鉄道橋を望む)
ミツバチに棲むビフィズス菌が猛毒を分解
ミツバチの腸内細菌、特にビフィズス菌の仲間、Bifidobacterium wkB204や、Bombilactobacillus,や Gilliamellaなどの微生物の代謝とミツバチの代謝によりアミグダリンの代謝物プルナシンはシアン化水素にまで分解され、猛毒プルナシンは蓄積されないのです。
微生物による分解の主役、酵素を特定
実際、出典著者のMotta氏らは、in vitro 実験で、アミグダリンを分解する腸内細菌の分解酵素はglycoside hydrolase family 3 (GH3)などであることを確かめました。
なぜ猛毒の青酸ガスが平気なのか?
でもね。不思議なことに、アミグダリンが完全に代謝されて猛毒であるシアン化水素になってもハチや腸内微生物への影響は見られないようです。むしろ、病原体や寄生生物から守っているようなのです。
シアン化水素の毒性はミトコンドリアの呼吸鎖の阻害と、赤血球ヘモグロビンに結合し酸素運搬能の阻害による急性毒性であり、致死的なのですが・・・。少量なら毒がクスリになるのでしょうか(ミツバチにとって)??
ミツバチが摂る青酸はクスリになるサジ加減か?
ミツバチがアーモンドなどの「毒入り」花蜜・花粉を摂ることで、結果、含まれるアミグダリンの代謝産物シアン化水素、青酸が寄生虫を追い払うが毒にはならないレベルに保つことになるのでしょうか?
ミツバチのビフィズス菌に感謝してハチミツをいただきましょう
いずれにせよ、私たちは、ミツバチ腸内細菌が解毒してくれるおかげでハチミツを安全に楽しむことが出来ると言うわけです。ひとまずは、ミツバチの腸に棲むビフィズス菌に感謝しましょう。
出典:”Host-microbiome metabolism of a plant toxin in bees” Erick VS Motta et al. eLife 11, e82595 (2022) https://doi.org/10.7554/eLife.82595
出典:“Honeybee self-medication”, Caroline Ash SCIENCE 9 Feb 2023 Vol 379, Issue 6632 pp. 550-551
出典:ウィキペディア記事「amygdalin」「Prunasin」「シアン化水素」
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+ミツバチの街ルヴァロワ
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(花に囲まれた春のルヴァロワ市庁舎.jpg)
腸内細菌は大切なトモダチ、ヒトもミツバチも
私たちヒトに限らず、ミツバチたちにとっても腸内細菌は大切です、密や花粉で中毒しないために。
ミツバチ(花粉や花蜜を集める働きバチ)が「毒物カプセル」のアミグダリン入りの花蜜や花粉を摂っても大丈夫なのは体内(腸内)の微生物叢(microbiota)が解毒してくれるからです。
ミツバチと腸内微生物の酵素遺伝子などの遺伝子解析などにより出典著者Erick VS Motta氏らはこれを明らかにしました。
腸内細菌の過去記事です↓
お腹の中のアリエッティーが棲む熱帯雨林を大切に

(市章も市庁舎もマスコットもかわいいルヴァロワ)
毒は植物の防御兵器です
植物は昆虫(特に幼虫)などの葉などの食害(食べられる)ことを防ぐため毒を体内で作ります(生合成する)。
植物の毒戦略の過去記事です↓
美しくも楽しい種子の本から学ぶ植物の毒戦略

(ルヴァロワ市役所)
植物の毒を食らうヒト
その毒をヒトは喰ら、香辛料や薬剤に使っています。
植物の毒を喰らうヒトの過去記事です↓
植物の毒を喰らい、知恵で使いこなす唯一の種、ヒト
高山のお花畑は毒の饗宴それでもヒトはサラダで喰らうフランスのサラダグルメ
チョウも植物の毒を喰らって毒チョウに・・
ある種のチョウの幼虫は毒入りの葉を食べて体内に毒を貯め「毒チョウ」になります。植物と昆虫の「毒軍拡戦争」はフクザツです。
毒チョウの過去記事です↓
毒チョウがいないと擬態する無毒のチョウも毒を作りだす+春の庭の花
「毒入り」は嘘ぴょ~ん、遺伝子のドミノ倒しで作る蝶の擬態+フランスの看板

(水に映るボートハウス:ルヴァロワ駅そばのジャット(Jatte)島にて)
花粉を運ぶ協力者、ミツバチも毒に晒される
植物が食害(昆虫などの)対策のために作る毒は花粉や花蜜にも含まれます。すると困ったことに、植物の協力者であるミツバチなどの受粉媒介者も毒に晒されてしまいます。もっともこれらの毒は花粉媒介者を病原体から守ってもくれるのですが・・。

(ルヴァロワ市役所の庭で早春のひなたぼっこ)
パリ郊外ミツバチの街、ルヴァロワ
ミツバチつながりでパリ在住時のわが街でしたルヴァロワ(Levallois Perret)のフォトを添えます。
ルヴァロワとハチの過去記事です↓
パリ郊外ルヴァロワの市章ミツバチには秘密がいっぱい
道具を使って蜜を取り一族にワザを伝えるマルハナバチ+パリ郊外ハチの街ルヴァロワ
除草剤に善玉菌をやられミツバチが感染症で大量死かも?+ミツバチの街ルヴァロワ
庭のお花が都会の昆虫を蜜のご褒美で守る+ハチミツの街、パリ郊外ルヴァロワ

(プランシェット(Planchett)公園のチューリップ:ルヴァロワ駅近く)
ハチたちは植物の化学防御の毒に晒される
エサを選り好みをしないミツバチやマルハナバチは植物が病原体や動物による食害からの防御のために作り出す(生合成する)様々な二次代謝産物、つまりは「毒」に晒されます。
少量でもハチたちの健康のみならず行動に影響
これら植物二次代謝産物は、たとえ低用量でも、ハチたちの健康や行動に、プラスにもマイナスにも影響を与えます。例えば、相手を惹きつけたり、抑止力になったりと・・・。

(プランシェット公園から見上げるアパルトマン)
アーモンドやチェリーも実は「毒入り」
色々な花から広く花蜜を集めるハチが慢性的に晒されている植物二次代謝産物の1つがアミグダリン(※1)。アミグダリンはアーモンド、リンゴ、チェリー、ネクタリンなどに含まれる青酸配糖体です。更に、アミグダリンは花蜜と花粉にも含まれるのです。例えば、ミツバチがアーモンドの花蜜を集めると花蜜に含まれる毒(の前駆体)であるアミグダリンも摂ってしまいます。
※1:アミグダリン(amygdalin):青酸配糖体でそれ自身は無毒だが、体内で代謝されてシアン化水素(青酸)を発生する

(逆光の中のガラス張りバス停:ルヴァロワ駅始発)
動物にとって毒は薬にも・・
多くの動物は知らず知らずに食物から毒成分を摂ってしまいます。これらの毒物は複雑な結果をもたらすそうです。摂食した毒物は有害であることが多いのですが、時に病原菌や寄生生物から守ることで有益な場合もあるのだそうです。
毒もさじ加減でクスリに
アーモンドとその花粉はヒトやミツバチに食べられます。見かけは毒性が無いように見えますが、アーモンドに含まれるアミグダリンは代謝されると、なんと猛毒の青酸ガス、シアン化水素になるのです。
確かにアーモンドの花蜜には(少量)アミグダリンが含まれるがミツバチにとって毒となる量ではなく、むしろミツバチを寄生者から守る働きを示すようです。

(ジャット島から見るルヴァロワ(Levallois)橋)
植物は傷つけられるとアミグダリンを猛毒の青酸ガスに
アミグダリンの毒性はその分解産物の毒性によるものです。例えば、害虫などにかじられて植物組織が損傷すると、細胞(の液胞)に蓄えられていたアミグダリンは細胞質のグリコシダーゼ(glycoside hydrolase)(GHs)でプルナシンとグルコースに分解され、プルナシンは更にマンデロニトリル (mandelonitrile)に、そして最終的にベンズアルデヒド (benzaldehyde)と青酸ガス、シアン化水素(Hydrogen Cyanide)に分解されます。

(当時ゆきつけのご近所カフェLe Narval:ナルヴァルとは海獣イッカクのこと)
摂取毒物の解毒には腸内微生物も協力
摂食された植物の毒物(二次代謝産物)は酵素の代謝を受け、その毒性が増すか、減るか、変わらないか、様々なのですが、宿主自身の酵素で毒物を分解することに加えて、腸内微生物が毒物を含む摂取化合物の分解に寄与しています。
腸内微生物がいないと猛毒が溜まる
腸内微生物の働きを確かめるため、出典著者のMotta氏らが「腸内細菌を除いたミツバチ」にアミグダリンを与えると・・・猛毒のプルナシンに代謝されたまま、それ以上分解できずプルナシンが腸に蓄積してしまいました。

(ルヴァロワ橋からセーヌの鉄道橋を望む)
ミツバチに棲むビフィズス菌が猛毒を分解
ミツバチの腸内細菌、特にビフィズス菌の仲間、Bifidobacterium wkB204や、Bombilactobacillus,や Gilliamellaなどの微生物の代謝とミツバチの代謝によりアミグダリンの代謝物プルナシンはシアン化水素にまで分解され、猛毒プルナシンは蓄積されないのです。
微生物による分解の主役、酵素を特定
実際、出典著者のMotta氏らは、in vitro 実験で、アミグダリンを分解する腸内細菌の分解酵素はglycoside hydrolase family 3 (GH3)などであることを確かめました。
なぜ猛毒の青酸ガスが平気なのか?
でもね。不思議なことに、アミグダリンが完全に代謝されて猛毒であるシアン化水素になってもハチや腸内微生物への影響は見られないようです。むしろ、病原体や寄生生物から守っているようなのです。
シアン化水素の毒性はミトコンドリアの呼吸鎖の阻害と、赤血球ヘモグロビンに結合し酸素運搬能の阻害による急性毒性であり、致死的なのですが・・・。少量なら毒がクスリになるのでしょうか(ミツバチにとって)??
ミツバチが摂る青酸はクスリになるサジ加減か?
ミツバチがアーモンドなどの「毒入り」花蜜・花粉を摂ることで、結果、含まれるアミグダリンの代謝産物シアン化水素、青酸が寄生虫を追い払うが毒にはならないレベルに保つことになるのでしょうか?
ミツバチのビフィズス菌に感謝してハチミツをいただきましょう
いずれにせよ、私たちは、ミツバチ腸内細菌が解毒してくれるおかげでハチミツを安全に楽しむことが出来ると言うわけです。ひとまずは、ミツバチの腸に棲むビフィズス菌に感謝しましょう。
出典:”Host-microbiome metabolism of a plant toxin in bees” Erick VS Motta et al. eLife 11, e82595 (2022) https://doi.org/10.7554/eLife.82595
出典:“Honeybee self-medication”, Caroline Ash SCIENCE 9 Feb 2023 Vol 379, Issue 6632 pp. 550-551
出典:ウィキペディア記事「amygdalin」「Prunasin」「シアン化水素」
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高菜ちりめんじゃこ炒飯 シンプルにおいしい 割合が大事
高菜ちりめんじゃこ炒飯 シンプルにおいしい、割合が大事
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(シンプルにおいしい高菜ちりめんじゃこ炒飯)
シンプルをきっちり、ゆっくり作る
シンプルにおいしい高菜とちりめんじゃこのチャーハンです。でも①ゆっくり作ること、②材料や調味料の割合、③下準備、などが大事です。
(材料です)
材料です
割合が肝心です。
・冷ご飯:おおよそお米1合分
・卵:3個
・高菜:刻んで水気を絞ったもの約100g
・ちりめんじゃこ:約30g (分包して冷凍保存したもの;便利です)
・ガラスープ顆粒:ティースプーン2杯強
・サラダ油:大さじ1、ごま油:大さじ1/2
(卵は半熟オムレツ状に、同時に油もなくなる)
下準備をしておきます
それほど手間ではありませんが、材料の処理をしておきます。
1. 冷ご飯はレンジで温めておきます。
2. 高菜は刻んで水気を絞っておきます
3. 卵はといておきます。
(火を止めて卵とご飯をザックリ混ぜる)
作り方です
中華だけど、途中で火を止めたりとゆっくり作ります。
1. 中華鍋のサラダ油とごま油を入れて強火で加熱します(サラサラになるまで)。
2. 卵を入れ、スプーン(大さじ)で混ぜ、半熟のオムレツ程度になったら(同時に油もなくなる)火を止めます。
3. ご飯を加え、火を止めたままスプーンでザックリ混ぜます。ご飯と卵の大きな塊がなくなればOKです(均一にする必要はありません)。
4. 高菜とちりめんじゃこを加えガラスープ(顆粒)も加えます。
5. ここで再度火をつけて強火にし、スプーン2本を使って“底から返すように”手早く混ぜます。高菜の水気が飛べばOKで火を止めて完成です。器に盛って、いただきます。
(具と調味料を全部入れ再度火をつける)
ポイント
いろいろとやってみた結果、気づいたこととして・・・
・高菜に塩気があるので、ガラスープは控え目にします。
・卵とご飯を混ぜるときには火を止めておきます。
・卵と油の比率が大事で、多すぎると卵が半熟になっても油が残りますし、少なすぎると焦げてしまいます。
・ウー・ウェンさんの本↓の「プロが使う火力のない家庭の料理では炒飯はゆっくり時間をかけて作る」を参考にしています。
(高菜とちりめんじゃこの炒飯の完成です)
参考:「大好きな炒めもの」ウー・ウェン著(2002年、高橋書店)
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(シンプルにおいしい高菜ちりめんじゃこ炒飯)
シンプルをきっちり、ゆっくり作る
シンプルにおいしい高菜とちりめんじゃこのチャーハンです。でも①ゆっくり作ること、②材料や調味料の割合、③下準備、などが大事です。

(材料です)
材料です
割合が肝心です。
・冷ご飯:おおよそお米1合分
・卵:3個
・高菜:刻んで水気を絞ったもの約100g
・ちりめんじゃこ:約30g (分包して冷凍保存したもの;便利です)
・ガラスープ顆粒:ティースプーン2杯強
・サラダ油:大さじ1、ごま油:大さじ1/2

(卵は半熟オムレツ状に、同時に油もなくなる)
下準備をしておきます
それほど手間ではありませんが、材料の処理をしておきます。
1. 冷ご飯はレンジで温めておきます。
2. 高菜は刻んで水気を絞っておきます
3. 卵はといておきます。

(火を止めて卵とご飯をザックリ混ぜる)
作り方です
中華だけど、途中で火を止めたりとゆっくり作ります。
1. 中華鍋のサラダ油とごま油を入れて強火で加熱します(サラサラになるまで)。
2. 卵を入れ、スプーン(大さじ)で混ぜ、半熟のオムレツ程度になったら(同時に油もなくなる)火を止めます。
3. ご飯を加え、火を止めたままスプーンでザックリ混ぜます。ご飯と卵の大きな塊がなくなればOKです(均一にする必要はありません)。
4. 高菜とちりめんじゃこを加えガラスープ(顆粒)も加えます。
5. ここで再度火をつけて強火にし、スプーン2本を使って“底から返すように”手早く混ぜます。高菜の水気が飛べばOKで火を止めて完成です。器に盛って、いただきます。

(具と調味料を全部入れ再度火をつける)
ポイント
いろいろとやってみた結果、気づいたこととして・・・
・高菜に塩気があるので、ガラスープは控え目にします。
・卵とご飯を混ぜるときには火を止めておきます。
・卵と油の比率が大事で、多すぎると卵が半熟になっても油が残りますし、少なすぎると焦げてしまいます。
・ウー・ウェンさんの本↓の「プロが使う火力のない家庭の料理では炒飯はゆっくり時間をかけて作る」を参考にしています。

(高菜とちりめんじゃこの炒飯の完成です)
参考:「大好きな炒めもの」ウー・ウェン著(2002年、高橋書店)
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沈香は毛虫襲来のフェイク情報でスズメバチに種子を散布させる
沈香は毛虫襲来のフェイク情報でスズメバチに種子を散布させる
+我が町(だった)ルヴァロワ
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(マルゼルブ(Malesherbes)通りのカフェ;ルヴァロワとはお隣のパリ17区)
肉食のスズメバチが植物の種を運ぶ、え?
今回のサイエンス小ネタの主役は、おおよそ縁のなさそうな沈香とスズメバチで、肉食のスズメバチが香木の沈香の種子散布に協力しているらしいのです。
ハチの過去記事です↓
庭のお花が都会の昆虫を蜜のご褒美で守る+ハチミツの街、パリ郊外ルヴァロワ
道具を使って蜜を取り一族にワザを伝えるマルハナバチ+パリ郊外ハチの街ルヴァロワ
ずぼらな芝刈りがハチは大歓迎!環境にも良いかも?
ミツバチを殺人ハチに変えたのは巣を守るための脳内ペプチド+ミツバチの街ルヴァロワ
(パリ郊外ルヴァロワ(Levallois Perret)の市章はミツバチ;養蜂が街興しなので)
我が街(だった)パリ郊外、ミツバチの街ルヴァロワ
ハチと言えば3年のパリ生活を過ごした我が街(だった)ルヴァロワ(Levallois Perret)は養蜂で興った街、その繋がりでルヴァロワの街のフォトを添えます(古い使い回しですみません)。
パリ郊外ルヴァロワ界隈の過去記事です↓
パリは花の街、隠れた見どころプランシェット公園
パリ郊外ルヴァロワの市章ミツバチには秘密がいっぱい
パリ途中下車のぶらり旅メトロ3番線編
ワンちゃんはかまってくれる人にはかわいい仔犬顔+パリの地元ルヴァロワ界隈
除草剤に善玉菌をやられミツバチが感染症で大量死かも?+ミツバチの街ルヴァロワ
庭のお花が都会の昆虫を蜜のご褒美で守る+ハチミツの街、パリ郊外ルヴァロワ
(スズメバチ;ウィキペディア記事より)
スズメバチは雑食なの?
スズメバチは確かに肉食で成虫は昆虫などを捕食しますが、これは幼虫に餌として与えます。成虫自身の栄養源は幼虫が分泌する栄養液です。
(ジャット島のボートハウスと花;ルヴァロワを流れるセーヌ川の中州です)
ガソリン給油としての花蜜
でも十分ではない(幼虫が若い時など)ときは花蜜や樹液をエネルギー源として摂り「給油」します。また、秋にはキノコも食べる雑食なのです。
(シナジンコウの実;ウィキペディア記事より)
ひ弱すぎるシナジンコウの種子
南西中国の熱帯に分布する沈香(※)の1種、シナジンコウ(Aquilaria sinensis)は20mにもなる常緑樹です。実は蒴果で種子は堅い殻に包まれていて殻が外れる(裂開)と種子が飛び出しますが、暑く、乾燥した林冠の外気に晒されるとたった数時間で死んでしまう、とてもひ弱は種子です。
(※:樹脂が分泌されたものが香木に、その最高級品が「伽羅」)
速やかな種子散布者募集しま~す♪
出典著者らによると、何千年後でも発芽するハスのように種子はタフな印象ですが、シナジンコウは真逆でひ弱。だから短命なシナジンコウの種子は迅速に種子散布してもらう必要があるそうです。
(小さくてかわいいルヴァロワ(Levallois Perret)の市庁舎(Hotel de ville)
「毛虫襲来」のフェイク情報でスズメバチを呼ぶ
出典著者らの研究によると、シナジンコウは毛虫もいないのに、葉が毛虫に喰われたときに天敵を呼ぶ「毛虫襲来」の香りの「フェイク情報」でスズメバチたちを呼び寄せます。
(ルヴァロワ市庁舎の庭で早春のひなたぼっこ)
お肉じゃないけど甘いものでもいいや
シナジンコウの種子には糖、アミノ酸、脂肪がたっぷりのエライオソーム(種枕)(※)が付いています。「毛虫」フェイク情報に騙されたスズメバチは代わりにエライオソーム付き種子を巣に持ち帰ります。スズメバチは花蜜などをエネルギー源にする食性があるからです。(※:スミレなどのエライオソーム付き種子をアリが巣に運びエライオソームを食べて種子を捨てることで種子が散布されます)
種子散布に協力させられるスズメバチ
暑さと乾燥に極端に弱い種子にとって、湿った暗く涼しい場所まで運んでくれるスズメバチは理想的な種子散布者になります。
(旧フランス銀行前の花に埋もれたマリア像;マルゼルブの変則四差路)
スズメバチの「ファーストフード・デリバリー」
実が開いて数分で巣へ種子持ち帰り
スズメバチの巣は大きな樹にあります。スズメバチは殻の裂開から数分以内にシナジンコウの種子を巣に持ち帰りエライオソームだけ食べて種子を捨てます。もう1つ大事なポイント、スズメバチたちは新鮮な(=裂開したばかりの実の)エライオソームしか食べない、まるでファーストフードのデリバリーなのです。
(水に映るボートハウス;冬のジャット島)
湿った暗い大樹の陰で種子が発芽
落ちた種子は湿った大きな樹陰に落ち、“生き残って”発芽します。結果、スズメバチはシナジンコウの種子散布に協力しています。散布範囲は親の樹から平均166m離れていました。
植物の防御物質の種子散布利用の初の研究
今回の出展著者らの研究結果は、植物が防御用の化学物質を種子の拡散に利用していることを示した初めての例だそうです。また、スズメバチによる種子散布の報告例もほとんないそうです。
(逆光の中のガラス張りバス停;デファンス(La Défense)行バスの始発駅ルヴァロワ)
喰われた葉は「毛虫襲来」化学シグナルで天敵を呼ぶ
なぜ、スズメバチはシナジンコウを訪れるのか?多くの植物では葉が毛虫(昆虫の幼虫)など(植食者)にカジられると葉は「毛虫襲来=餌があるよ」と香りのシグナル(※)を出して天敵の捕食者を呼び寄せます。(※:植食者誘導性植物揮発性物質(HIPV; Herbivore-Induced Plant Volatiles))
香りを操る植物の過去記事です↓
植物は“危険の香り”を盗み嗅いで守りを固める+パリの花
(ご近所のプランシェット公園(Parc de la Planchette)から見上げるアパルトマン)
「毛虫襲来」化学シグナルをフェイクに転用
シナジンコウの殻が外れる(蒴果の裂開)と実から、葉が出す「毛虫襲来」と似た香り(高揮発性の誘引物質)が放出され、毛虫捕食者のスズメバチを引き寄せます。フェイク情報で誘うわけです。
高揮発性短鎖化合物がスズメバチを誘引する
出典著者らは電気生理学的分析と野外実験から3種のスズメバチたちがシナジンコウの実(蒴果)から放出されるアルデヒド、ケトン、アルコール、有機酸などの高揮発性の炭素5個から9個(C5–C9)の短鎖化合物に惹かれることを明らかにしました。
更にこれらの化合物は、葉が喰われたときに放出され天敵を誘引する化学物質(ホンモノの毛虫襲来シグナル)の14から17種と共通でした。
何かに使えるかも?
シナジンコウの見事なフェイク転用ですが、何かに使えそうですね。出典著者らは、このような迅速な種子散布はもっと広くみられるのではないか、と推察しています。
出典:日経サイエンス2023年1月号P.23記事「お役立ちスズメバチ」
出典:” Plant-defense mimicry facilitates rapid dispersal of short-lived seeds by hornets” Rui-Min Qin, Ping Wen, Richard T. Corlett, Yuanye Zhang, Gang Wang and Jin Chen Current Biology VOLUME 32, ISSUE 15, P3429-3435.E5, AUGUST 08, 2022 Published: June 30, 2022 DOI :https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.06.034
出典:ウィキペディア記事「スズメバチ」「Hornet」「沈香」「Aquilaria sinensis」「エライオソーム」「蒴果」など
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肉食のスズメバチが植物の種を運ぶ、え?
今回のサイエンス小ネタの主役は、おおよそ縁のなさそうな沈香とスズメバチで、肉食のスズメバチが香木の沈香の種子散布に協力しているらしいのです。
ハチの過去記事です↓
庭のお花が都会の昆虫を蜜のご褒美で守る+ハチミツの街、パリ郊外ルヴァロワ
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ずぼらな芝刈りがハチは大歓迎!環境にも良いかも?
ミツバチを殺人ハチに変えたのは巣を守るための脳内ペプチド+ミツバチの街ルヴァロワ

(パリ郊外ルヴァロワ(Levallois Perret)の市章はミツバチ;養蜂が街興しなので)
我が街(だった)パリ郊外、ミツバチの街ルヴァロワ
ハチと言えば3年のパリ生活を過ごした我が街(だった)ルヴァロワ(Levallois Perret)は養蜂で興った街、その繋がりでルヴァロワの街のフォトを添えます(古い使い回しですみません)。
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パリは花の街、隠れた見どころプランシェット公園
パリ郊外ルヴァロワの市章ミツバチには秘密がいっぱい
パリ途中下車のぶらり旅メトロ3番線編
ワンちゃんはかまってくれる人にはかわいい仔犬顔+パリの地元ルヴァロワ界隈
除草剤に善玉菌をやられミツバチが感染症で大量死かも?+ミツバチの街ルヴァロワ
庭のお花が都会の昆虫を蜜のご褒美で守る+ハチミツの街、パリ郊外ルヴァロワ

(スズメバチ;ウィキペディア記事より)
スズメバチは雑食なの?
スズメバチは確かに肉食で成虫は昆虫などを捕食しますが、これは幼虫に餌として与えます。成虫自身の栄養源は幼虫が分泌する栄養液です。

(ジャット島のボートハウスと花;ルヴァロワを流れるセーヌ川の中州です)
ガソリン給油としての花蜜
でも十分ではない(幼虫が若い時など)ときは花蜜や樹液をエネルギー源として摂り「給油」します。また、秋にはキノコも食べる雑食なのです。

(シナジンコウの実;ウィキペディア記事より)
ひ弱すぎるシナジンコウの種子
南西中国の熱帯に分布する沈香(※)の1種、シナジンコウ(Aquilaria sinensis)は20mにもなる常緑樹です。実は蒴果で種子は堅い殻に包まれていて殻が外れる(裂開)と種子が飛び出しますが、暑く、乾燥した林冠の外気に晒されるとたった数時間で死んでしまう、とてもひ弱は種子です。
(※:樹脂が分泌されたものが香木に、その最高級品が「伽羅」)
速やかな種子散布者募集しま~す♪
出典著者らによると、何千年後でも発芽するハスのように種子はタフな印象ですが、シナジンコウは真逆でひ弱。だから短命なシナジンコウの種子は迅速に種子散布してもらう必要があるそうです。

(小さくてかわいいルヴァロワ(Levallois Perret)の市庁舎(Hotel de ville)
「毛虫襲来」のフェイク情報でスズメバチを呼ぶ
出典著者らの研究によると、シナジンコウは毛虫もいないのに、葉が毛虫に喰われたときに天敵を呼ぶ「毛虫襲来」の香りの「フェイク情報」でスズメバチたちを呼び寄せます。

(ルヴァロワ市庁舎の庭で早春のひなたぼっこ)
お肉じゃないけど甘いものでもいいや
シナジンコウの種子には糖、アミノ酸、脂肪がたっぷりのエライオソーム(種枕)(※)が付いています。「毛虫」フェイク情報に騙されたスズメバチは代わりにエライオソーム付き種子を巣に持ち帰ります。スズメバチは花蜜などをエネルギー源にする食性があるからです。(※:スミレなどのエライオソーム付き種子をアリが巣に運びエライオソームを食べて種子を捨てることで種子が散布されます)
種子散布に協力させられるスズメバチ
暑さと乾燥に極端に弱い種子にとって、湿った暗く涼しい場所まで運んでくれるスズメバチは理想的な種子散布者になります。

(旧フランス銀行前の花に埋もれたマリア像;マルゼルブの変則四差路)
スズメバチの「ファーストフード・デリバリー」
実が開いて数分で巣へ種子持ち帰り
スズメバチの巣は大きな樹にあります。スズメバチは殻の裂開から数分以内にシナジンコウの種子を巣に持ち帰りエライオソームだけ食べて種子を捨てます。もう1つ大事なポイント、スズメバチたちは新鮮な(=裂開したばかりの実の)エライオソームしか食べない、まるでファーストフードのデリバリーなのです。

(水に映るボートハウス;冬のジャット島)
湿った暗い大樹の陰で種子が発芽
落ちた種子は湿った大きな樹陰に落ち、“生き残って”発芽します。結果、スズメバチはシナジンコウの種子散布に協力しています。散布範囲は親の樹から平均166m離れていました。
植物の防御物質の種子散布利用の初の研究
今回の出展著者らの研究結果は、植物が防御用の化学物質を種子の拡散に利用していることを示した初めての例だそうです。また、スズメバチによる種子散布の報告例もほとんないそうです。

(逆光の中のガラス張りバス停;デファンス(La Défense)行バスの始発駅ルヴァロワ)
喰われた葉は「毛虫襲来」化学シグナルで天敵を呼ぶ
なぜ、スズメバチはシナジンコウを訪れるのか?多くの植物では葉が毛虫(昆虫の幼虫)など(植食者)にカジられると葉は「毛虫襲来=餌があるよ」と香りのシグナル(※)を出して天敵の捕食者を呼び寄せます。(※:植食者誘導性植物揮発性物質(HIPV; Herbivore-Induced Plant Volatiles))
香りを操る植物の過去記事です↓
植物は“危険の香り”を盗み嗅いで守りを固める+パリの花

(ご近所のプランシェット公園(Parc de la Planchette)から見上げるアパルトマン)
「毛虫襲来」化学シグナルをフェイクに転用
シナジンコウの殻が外れる(蒴果の裂開)と実から、葉が出す「毛虫襲来」と似た香り(高揮発性の誘引物質)が放出され、毛虫捕食者のスズメバチを引き寄せます。フェイク情報で誘うわけです。
高揮発性短鎖化合物がスズメバチを誘引する
出典著者らは電気生理学的分析と野外実験から3種のスズメバチたちがシナジンコウの実(蒴果)から放出されるアルデヒド、ケトン、アルコール、有機酸などの高揮発性の炭素5個から9個(C5–C9)の短鎖化合物に惹かれることを明らかにしました。
更にこれらの化合物は、葉が喰われたときに放出され天敵を誘引する化学物質(ホンモノの毛虫襲来シグナル)の14から17種と共通でした。
何かに使えるかも?
シナジンコウの見事なフェイク転用ですが、何かに使えそうですね。出典著者らは、このような迅速な種子散布はもっと広くみられるのではないか、と推察しています。
出典:日経サイエンス2023年1月号P.23記事「お役立ちスズメバチ」
出典:” Plant-defense mimicry facilitates rapid dispersal of short-lived seeds by hornets” Rui-Min Qin, Ping Wen, Richard T. Corlett, Yuanye Zhang, Gang Wang and Jin Chen Current Biology VOLUME 32, ISSUE 15, P3429-3435.E5, AUGUST 08, 2022 Published: June 30, 2022 DOI :https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.06.034
出典:ウィキペディア記事「スズメバチ」「Hornet」「沈香」「Aquilaria sinensis」「エライオソーム」「蒴果」など
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温暖化でシロアリの炭素貯金(植物遺骸)分解が進む+ガウディ、バルセロナ
温暖化でシロアリの炭素貯金(植物遺骸)分解が進む
+ガウディ、バルセロナ
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(グエル公園のサイケなトカゲ君:スペイン、バルセロナにアントニ・ガウディを訪ねて・・)
温暖化はシロアリに炭素貯金を引き出させる
地球温暖化が進む中、シロアリは地球の木質分解(=炭素貯金の引き出し)により大きな役割を担うかも知れない、って言うサイエンス小ネタです。
(絵タイルのコラージュが楽しいベンチ:グエル公園(Parc Guell))
バルセロナのガウディ
シロアリ→蟻塚→ガウディの作品・・・に会いに行ったバルセロナのフォトを添えます(ムリムリですけど)、昔のフォトの使い回しですが・・・。
バルセロナとガウディの過去記事です↓
憧れのガウディに会いに行く南欧
体温を感じるガウディの建物バルセロナ紀行後編
バルセロナ番外編①ガウディの先生ムンタネーとサンパウ病院
バルセロナ番外編②ヒスパノ・アラブ様式が美しいカタルーニャ音楽堂
生き物が作る宝石、金塊、核燃料+バルセロナのガウディ番外編

(果物がなっているようにも見える塔:サグラダ・ファミリア(Sagrada Família))
シロアリって悪者?いえ、資源リサイクルしてます
・・・じゃないんです、環境にとっては。ヒトが住むところでは、お家を喰いつぶすシロアリは駆除すべき害虫なのですが、熱帯など自然界では植物(の遺骸)のセルロースを分解して資源リサイクルに貢献しています。
リサイクル事始めのキノコの過去記事です↓
1つのキノコが地球の歴史を変えた+北仏ノルマンディー再び
シロアリ、環境づくりもやってます
野生(主に熱帯)ではシロアリの巨大な巣、蟻塚は、ビーバーのダムと同じく、周りの他の生物に多様な環境を提供しています。ちなみにシロアリはアリじゃなくてゴキブリの仲間です。シロアリの蟻塚は典型的な「体外構造(自身の体の延長)」です。
シロアリの過去記事です↓
シロアリは水玉模様を作って砂漠化を防いでいる+パリ晩秋サンマルタン運河
体外構造の過去記事です↓
温暖化で北上のビーバーが凍土を融かして温暖化を加速+カナダ首都オタワ
(柔らかな曲線で風景を切り取るカサ・バトリョの窓:バルセロナ市中)
森の「炭素貯金」
樹木そのもの、更には枯れ木になった後の木質も重要な地球上の大きな炭素貯蔵「炭素貯金」です。そして、その規模は(部分的に)生物による分解に依っています。
炭素貯金の過去記事です↓
地球上の炭素はどこに?知られざる「炭素貯金箱」草地の土壌
(光と影の入れ子模様:グエル公園)
気候で枯れ木の分解速度が変わる
生物の分解速度は気温や降水量によりさまざまです。それは気候が、枯れ木などの木質分解者に及ぼす影響が一因です。
樹(木質)を分解する微生物と昆虫
微生物は木質の分解者として広く知られていますが、熱帯の生態系ではシロアリなど昆虫など動物も鍵を握る分解者です。
シロアリも重要な木質分解者
微生物による木質分解速度が気温と降水量の変動に反応することは知られていますが、シロアリも熱帯における重要な木質分解者ですが、あまり研究されていないそうです。

(天井を見上げるとモザイクが美しい:グエル公園)
気候変動の木材分解への影響を測る
マイアミ大学のAmy E. Zanne氏らは6か国の133地点での、微生物やシロアリによる木材分解の気候による変化を定量化しました。
気温上昇でシロアリの木材分解は活発に
微生物やシロアリなどによる植物の「炭素貯金」、木材(木質)の分解は気温上昇によって活発になります。

(岩壁の生き物の巣のようなカサ・バトリョ(Casa Batilo):バルセロナ)
シロアリの木材分解は気温により敏感
出典著者Zanne氏らはシロアリの木材分解は気温に非常に敏感であることを見出しました。気温が10℃上昇すればシロアリによる木材分解は6.8倍以上となり、これは微生物による分解の感度を上回ります。
シロアリの木材分解加速は熱帯で顕著
シロアリの木材分解の気温上昇の効果は「雨緑林」※、熱帯サバンナ、亜熱帯砂漠において最も大きかったそうです。(※:tropical seasonal forest(雨緑林)、雨季に緑葉をつけて活動し,乾季に落葉する森林)

(内装のガラス鏡アーチ木枠が絶妙な質感を醸す:ガウディの先生ムンタネー作サン・パウ病院(Hospital de Sant Pau))
シロアリは気候変動に敏感
気候は微生物、シロアリいずれによる分解にも影響しますが、シロアリの存在や活動はより気温に敏感であると分かりました。
温暖化でシロアリの「炭素貯金」引き出しが増える
温暖化によって「熱帯化」が広がることでシロアリが利用できる土地が広がり、シロアリによる木材(木質)分解=「炭素貯金の引き出し」は増加すると懸念されます。
出典:”Termite sensitivity to temperature affects global wood decay rates” Amy E. Zanne Paul-Camilo Zalame SCIENCE 22 Sep 2022 Vol 377, Issue 6613 pp. 1440-1444 DOI: 10.1126/science.abo3856
出典:ウィキペディア記事「シロアリ」、「アントニ・ガウディ」
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温暖化はシロアリに炭素貯金を引き出させる
地球温暖化が進む中、シロアリは地球の木質分解(=炭素貯金の引き出し)により大きな役割を担うかも知れない、って言うサイエンス小ネタです。

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バルセロナのガウディ
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・・・じゃないんです、環境にとっては。ヒトが住むところでは、お家を喰いつぶすシロアリは駆除すべき害虫なのですが、熱帯など自然界では植物(の遺骸)のセルロースを分解して資源リサイクルに貢献しています。
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シロアリ、環境づくりもやってます
野生(主に熱帯)ではシロアリの巨大な巣、蟻塚は、ビーバーのダムと同じく、周りの他の生物に多様な環境を提供しています。ちなみにシロアリはアリじゃなくてゴキブリの仲間です。シロアリの蟻塚は典型的な「体外構造(自身の体の延長)」です。
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森の「炭素貯金」
樹木そのもの、更には枯れ木になった後の木質も重要な地球上の大きな炭素貯蔵「炭素貯金」です。そして、その規模は(部分的に)生物による分解に依っています。
炭素貯金の過去記事です↓
地球上の炭素はどこに?知られざる「炭素貯金箱」草地の土壌

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気候で枯れ木の分解速度が変わる
生物の分解速度は気温や降水量によりさまざまです。それは気候が、枯れ木などの木質分解者に及ぼす影響が一因です。
樹(木質)を分解する微生物と昆虫
微生物は木質の分解者として広く知られていますが、熱帯の生態系ではシロアリなど昆虫など動物も鍵を握る分解者です。
シロアリも重要な木質分解者
微生物による木質分解速度が気温と降水量の変動に反応することは知られていますが、シロアリも熱帯における重要な木質分解者ですが、あまり研究されていないそうです。

(天井を見上げるとモザイクが美しい:グエル公園)
気候変動の木材分解への影響を測る
マイアミ大学のAmy E. Zanne氏らは6か国の133地点での、微生物やシロアリによる木材分解の気候による変化を定量化しました。
気温上昇でシロアリの木材分解は活発に
微生物やシロアリなどによる植物の「炭素貯金」、木材(木質)の分解は気温上昇によって活発になります。

(岩壁の生き物の巣のようなカサ・バトリョ(Casa Batilo):バルセロナ)
シロアリの木材分解は気温により敏感
出典著者Zanne氏らはシロアリの木材分解は気温に非常に敏感であることを見出しました。気温が10℃上昇すればシロアリによる木材分解は6.8倍以上となり、これは微生物による分解の感度を上回ります。
シロアリの木材分解加速は熱帯で顕著
シロアリの木材分解の気温上昇の効果は「雨緑林」※、熱帯サバンナ、亜熱帯砂漠において最も大きかったそうです。(※:tropical seasonal forest(雨緑林)、雨季に緑葉をつけて活動し,乾季に落葉する森林)

(内装のガラス鏡アーチ木枠が絶妙な質感を醸す:ガウディの先生ムンタネー作サン・パウ病院(Hospital de Sant Pau))
シロアリは気候変動に敏感
気候は微生物、シロアリいずれによる分解にも影響しますが、シロアリの存在や活動はより気温に敏感であると分かりました。
温暖化でシロアリの「炭素貯金」引き出しが増える
温暖化によって「熱帯化」が広がることでシロアリが利用できる土地が広がり、シロアリによる木材(木質)分解=「炭素貯金の引き出し」は増加すると懸念されます。
出典:”Termite sensitivity to temperature affects global wood decay rates” Amy E. Zanne Paul-Camilo Zalame SCIENCE 22 Sep 2022 Vol 377, Issue 6613 pp. 1440-1444 DOI: 10.1126/science.abo3856
出典:ウィキペディア記事「シロアリ」、「アントニ・ガウディ」
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テッポウエビは透明ヘルメットをかぶってハサミ衝撃波で戦う+南ブルターニュ、キブロン
テッポウエビは透明ヘルメットをかぶってハサミ衝撃波で戦う
+南ブルターニュ、キブロン
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(ハサミ衝撃波でエサの小魚をノックアウト)
パッチン!巨大ハサミが衝撃波兵器のテッポウエビ
名前からしてブッソウなテッポウエビ(テッポウエビ科、Alpheidae)は熱帯から亜熱帯の汽水域、マングローブ、干潟、タイドプール、藻場、サンゴ礁などの浅い海でたくさんの種が棲んでいます。
体長数㎝で10本の脚の内2本はハサミで内1本は体長の半分と分不相応なほど巨大で、そのパッチン!の衝撃波がテッポウエビの武器です。
(青いさかなの看板;フランス、南ブルターニュ、キブロン半島ママチャリの旅にて)
南ブルターニュのキブロン半島
何の脈略も無いのですが、フランス南ブルターニュのキブロン半島(Quiberon)のチャリンコ旅のフォトを添えます(古い使い回しですが)。
キブロンの過去記事です↓
ママチャリで行くキブロン半島とフランス温泉旅館:ブルターニュ小旅行<前編>
「ご自宅拝見」バイオロギングで垣間見る動物の私生活+南ブルターニュ、キブロン
カマキリ君は動くものを3Dで見て必殺アタック+南ブルターニュの旅キブロン

(テッポウエビの決闘;透明ヘルメットが脳を守る)
熱帯の浅い海底の巣穴に棲んでます
今回主役のテッポウエビbigclaw snapping shrimp (ビッグクロウ、Alpheus heterochaelis)は日本の親戚同様に、亜熱帯から熱帯の大西洋西岸(フロリダ、バハマ諸島など)の浅い海の海底で巣穴に棲みます。
異変を感じると巣穴に逃げ込む慎重派
何か周辺に“異変を感じる”とサッと巣穴に引っ込んでしまいます。デカい武器の割に「慎重派」です。
(かわいいヨットが並ぶ小さな浜辺)
キャビテーション衝撃波でエサをノックアウト
テッポウエビbigclaw snapping shrimp(ビッグクロウ)が、①巨大ハサミを高速で閉じると、②ジェット水流が噴出して陰圧になり、③無数の小さな泡が生まれ(キャビテーション)、④その泡がすぐさまはじけることで、⑤強力な衝撃波(超音波)が発生します。
ハサミ衝撃波で脳震盪、ノックアウト
テッポウエビは小魚や藻類をエサとする雑食性ですが、巣穴に潜み小魚が近づくとパッチン!
ハサミ衝撃波を受けた小魚は脳震盪を起こしノックアウト!テッポウエビ、ビッグクロウのエサになります。
(ローカル線の終点キブロン(Quiberon)駅)
捕食者にも縄張り争いもハサミ衝撃波で戦う
このテッポウエビのパッチン!ハサミ衝撃波はエサだけでなく、捕食者(サカナやタコ)を撃退するときにも、テッポウエビ同士の縄張り争いにも使われます。
ハサミ衝撃波で戦えば共倒れでは?
そもそもテッポウエビのハサミ衝撃波は自分自身も浴びるはず。更に、縄張り争いで、テッポウエビ同士が共にハサミ衝撃波で戦えば互いに脳震盪を起こしそうなのですが、でも平気!なぜ?
(壁の白と窓のブルーのコントラストが鮮やか)
脳を守る眼の透明ヘルメット
実は、テッポウエビ、ビッグクロウの眼(眼球)は透明なヘルメットのようなゴーグル(眼覆)で覆われていて、眼の下の脳も守っているようです。
透明ヘルメットを外すとハサミ衝撃波でフラフラに
そこで出典著者のAlexandra C.N. Kingston氏らは、パイプの人工巣穴を用意、テッポウエビの眼球の「透明ヘルメット」を除去してハサミ衝撃波と同じような衝撃波を浴びせました。
するとテッポウエビは“一発喰らったボクサー”みたいにフラフラ、正しい姿勢を取れず、“人工巣穴”に潜るにもより時間がかかりました。テッポウエビの習性を使ったスマートな評価法ですね。
(キブロンの街並み)
じゃ、体の外と内の衝撃波を測ってみよう
どうやら眼球の透明ヘルメット(眼覆)が衝撃波から脳を守っているようなので、出典著者のKingston氏らは、衝撃波を受けたときの透明ヘルメットの内外での衝撃波の強さをミクロのセンサーで測ってみました。
透明ヘルメットで衝撃は半分に
測定の結果、透明ヘルメットの内側では衝撃波の強さは半分に減殺されていました。いったいどのような仕掛けで?
(古い石造りの家がそこここに残っています)
水で衝撃を逃がすエアバッグのようなヘルメット
テッポウエビ、ビッグクロウの眼球透明ヘルメットには前下に穴があり水が出入りします。透明ヘルメットがハサミ衝撃波を受けるとここから水が噴出され、衝撃波エネルギーの一部が水流のエネルギーに変換され、衝撃波が減殺される仕掛けです、車の「エアバッグ」みたい。
透明ヘルメットをシールすると役立ちません
これを確かめるため、出典著者のKingston氏らは、テッポウエビの透明ヘルメットの水の出入り口をシールして、衝撃波を浴びせました。すると衝撃波の減殺効果は消滅し、透明ヘルメットが役立たずになり、穴からの水流の噴出が衝撃波を減殺していることが確かめられました。
(サンピエ-ルキブロンの家)
生き物の防御から学べるかも?
生物の「武器」の進化はよく研究されているが、この透明ヘルメットのような防御、身を守る方法はあまり研究されていないそうです。
出典著者らはこの研究結果は、初めて明らかにされた衝撃波防御の生体システムであり、将来、人体を衝撃波から守る防御システムに応用できるかも知れないと述べています。
出典:”Snapping shrimp have helmets that protect their brains by dampening shock waves” Alexandra C.N. Kingston et al. Current Biology 32, 3576–3583 August 22, 2022 https://doi.org/10.1016/j.cub.2022.06.042
出典:「キツツキが脳震盪を起こさないわけ」 日経サイエンス 2023年1月号 P.18
出典:Wikipedia記事 “Alpheus heterochaelis”
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(ハサミ衝撃波でエサの小魚をノックアウト)
パッチン!巨大ハサミが衝撃波兵器のテッポウエビ
名前からしてブッソウなテッポウエビ(テッポウエビ科、Alpheidae)は熱帯から亜熱帯の汽水域、マングローブ、干潟、タイドプール、藻場、サンゴ礁などの浅い海でたくさんの種が棲んでいます。
体長数㎝で10本の脚の内2本はハサミで内1本は体長の半分と分不相応なほど巨大で、そのパッチン!の衝撃波がテッポウエビの武器です。

(青いさかなの看板;フランス、南ブルターニュ、キブロン半島ママチャリの旅にて)
南ブルターニュのキブロン半島
何の脈略も無いのですが、フランス南ブルターニュのキブロン半島(Quiberon)のチャリンコ旅のフォトを添えます(古い使い回しですが)。
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(テッポウエビの決闘;透明ヘルメットが脳を守る)
熱帯の浅い海底の巣穴に棲んでます
今回主役のテッポウエビbigclaw snapping shrimp (ビッグクロウ、Alpheus heterochaelis)は日本の親戚同様に、亜熱帯から熱帯の大西洋西岸(フロリダ、バハマ諸島など)の浅い海の海底で巣穴に棲みます。
異変を感じると巣穴に逃げ込む慎重派
何か周辺に“異変を感じる”とサッと巣穴に引っ込んでしまいます。デカい武器の割に「慎重派」です。

(かわいいヨットが並ぶ小さな浜辺)
キャビテーション衝撃波でエサをノックアウト
テッポウエビbigclaw snapping shrimp(ビッグクロウ)が、①巨大ハサミを高速で閉じると、②ジェット水流が噴出して陰圧になり、③無数の小さな泡が生まれ(キャビテーション)、④その泡がすぐさまはじけることで、⑤強力な衝撃波(超音波)が発生します。
ハサミ衝撃波で脳震盪、ノックアウト
テッポウエビは小魚や藻類をエサとする雑食性ですが、巣穴に潜み小魚が近づくとパッチン!
ハサミ衝撃波を受けた小魚は脳震盪を起こしノックアウト!テッポウエビ、ビッグクロウのエサになります。

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捕食者にも縄張り争いもハサミ衝撃波で戦う
このテッポウエビのパッチン!ハサミ衝撃波はエサだけでなく、捕食者(サカナやタコ)を撃退するときにも、テッポウエビ同士の縄張り争いにも使われます。
ハサミ衝撃波で戦えば共倒れでは?
そもそもテッポウエビのハサミ衝撃波は自分自身も浴びるはず。更に、縄張り争いで、テッポウエビ同士が共にハサミ衝撃波で戦えば互いに脳震盪を起こしそうなのですが、でも平気!なぜ?

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脳を守る眼の透明ヘルメット
実は、テッポウエビ、ビッグクロウの眼(眼球)は透明なヘルメットのようなゴーグル(眼覆)で覆われていて、眼の下の脳も守っているようです。
透明ヘルメットを外すとハサミ衝撃波でフラフラに
そこで出典著者のAlexandra C.N. Kingston氏らは、パイプの人工巣穴を用意、テッポウエビの眼球の「透明ヘルメット」を除去してハサミ衝撃波と同じような衝撃波を浴びせました。
するとテッポウエビは“一発喰らったボクサー”みたいにフラフラ、正しい姿勢を取れず、“人工巣穴”に潜るにもより時間がかかりました。テッポウエビの習性を使ったスマートな評価法ですね。

(キブロンの街並み)
じゃ、体の外と内の衝撃波を測ってみよう
どうやら眼球の透明ヘルメット(眼覆)が衝撃波から脳を守っているようなので、出典著者のKingston氏らは、衝撃波を受けたときの透明ヘルメットの内外での衝撃波の強さをミクロのセンサーで測ってみました。
透明ヘルメットで衝撃は半分に
測定の結果、透明ヘルメットの内側では衝撃波の強さは半分に減殺されていました。いったいどのような仕掛けで?

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水で衝撃を逃がすエアバッグのようなヘルメット
テッポウエビ、ビッグクロウの眼球透明ヘルメットには前下に穴があり水が出入りします。透明ヘルメットがハサミ衝撃波を受けるとここから水が噴出され、衝撃波エネルギーの一部が水流のエネルギーに変換され、衝撃波が減殺される仕掛けです、車の「エアバッグ」みたい。
透明ヘルメットをシールすると役立ちません
これを確かめるため、出典著者のKingston氏らは、テッポウエビの透明ヘルメットの水の出入り口をシールして、衝撃波を浴びせました。すると衝撃波の減殺効果は消滅し、透明ヘルメットが役立たずになり、穴からの水流の噴出が衝撃波を減殺していることが確かめられました。

(サンピエ-ルキブロンの家)
生き物の防御から学べるかも?
生物の「武器」の進化はよく研究されているが、この透明ヘルメットのような防御、身を守る方法はあまり研究されていないそうです。
出典著者らはこの研究結果は、初めて明らかにされた衝撃波防御の生体システムであり、将来、人体を衝撃波から守る防御システムに応用できるかも知れないと述べています。
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出典:「キツツキが脳震盪を起こさないわけ」 日経サイエンス 2023年1月号 P.18
出典:Wikipedia記事 “Alpheus heterochaelis”
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夜の地中海を渡る蛾のナビのヒミツに超小型発信機で迫る+夜戦たち
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(移行期種族のジェット艦載夜戦シ―ベノム;英国ロンドン郊外RAF博物館にて)
海を越える蛾を追うハイテク
海を越えて大陸間飛行する蛾がいます。それも夜に、ただ風に流されるのではなく、時に向かい風にも抗いながら、正確なナビで目的地に向かいます。超小型のバイオロギング器材でそのナゾに迫るサイエンス小ネタです。
(バイオロギング(Bio-logging)って?:動物に装着して動物自身がデータを集める記録計や調査方法(ウィキペディア記事より))
バイオロギングの過去記事です↓
「ご自宅拝見」バイオロギングで垣間見る動物の私生活+南ブルターニュ、キブロン
海のトップスイマー、マグロでも、陸のママチャリ並みです、バイオロギングその2
空飛ぶ者たちを追う愉快なローテク;バイオロギングその3
「空賊」グンカンドリ、バイオロギングが明かした空中生活
バイオロギングが明かすアマツバメの10か月ほぼ空中生活+南イタリアのソレント

(究極のレシプロ夜戦NF30ではないけどDHモスキート;英国RAF博物館)
最強夜戦、取敢えず夜戦、転職夜戦、純製夜戦・・さまざま
読者の皆さまにはバレバレですが、夜空を長駆飛ぶと言えば・・・と、Levalloisbeeが出逢った夜戦のフォトを添えます。夜戦と言えば、取敢えずのお試し夜戦ブレニムやボストン、夜戦でも大活躍モッシーとボー、夜戦転向でやっと活躍Bf110、満を期しての本命なんだけど・・のウーフー、ブラックウィドウなど。
(今回の主役、ヨーロッパメンガタスズメ;ウィキペディア記事からお借りしてます)
♪Love is a mystery ・・・ 光る海を越えるわ~♪
・・・と小さな体で広大な夜の海を渡る蛾がいます。今回の主役、メンガタスズメ属の蛾、ヨーロッパメンガタスズメ Acherontia atroposです。
(デファイアントの前で演じる1分の1フィギュア;RAF博物館名物です)
渡りの極致、両極を往復するキョクアジサシ
長距離の渡りをする動物は多くいます、極めつけは両極を往復するキョクアジサシ。オオカバマダラなど昆虫も長距離を渡ります。しかし、その渡り飛行のモニタリングは至難の業でした。
動物の渡りの過去記事です↓
オオカバマダラ蝶は鱗粉が作る渦で4千kmを渡る+パリ郊外原っぱのヒコーキたち
小さな日時計ジオロケーターが明かす小鳥の渡り生活みなとヨコハマ
虫レーダーが捉えたハナアブ数10億匹の渡り、追い風に乗り英仏海峡を行く
灼熱の砂漠の昼間は高空を渡るオオヨシキリ+南仏ニース、マントン
(ボーファイターNF1実機の半スケレトン;RAF博物館)
虫の渡りは依然としてナゾです
広大な距離の渡りを行う多くの動物種がどのようにナビ(航法)しているのか、ほとんど分かっていません。特に小さな無脊椎動物(の渡り)をモニターするのは至難の技でした。
(リヒテンシュタインレーダーでカマキリっぽいBf110;RAF博物館)
研究者は夜戦パイロット
出典著者のMyles H. M. Menz氏らドイツのマックスプランク研究所(動物行動学、MPI-AB)の研究者はセスナ機で蛾が発信する電波を追います、レーダー波を追う夜戦パイロットのように。
(夜戦型もあった初のジェット戦Me262;RAF博物館)
親から子へ孫へ・・とバトンを繋ぐ大移動
同じ蛾のオオカバマダラもそうですが、小さな短命の昆虫にとって海を越え大陸を跨ぐ移動は幾世代もがバトンを繋ぐ旅です。
(機首がすっかり変わったJu88夜戦;RAF博物館)
多くて小さくて1匹ずつは追えない
広大な距離の渡りを行う多くの動物種がどのようにナビ(航法)しているのか、ほとんど分かっていません。特に小さな無脊椎動物(の渡り)をモニターするのは至難の技でした。集団の旅の様子は分かっても1匹1匹の個体のナビは分からなかったのです。従来の追跡装置(バイオロギング)は蛾が小さすぎて(軽すぎて)使えませんでした。
超軽量のタグ
ところが、新たなテクノロジーによる動物に装着できる超軽量、わずか0.2gのタグが新たな研究を可能にし、個体追跡により夜行性のガの長距離飛行経路制御が明らかになりました。ちなみにこのタグの重量は蛾の体重の15%ほどです。
蛾の航路を1匹ずつ追跡可能に
Menz氏らはこのようなタグを用いて欧州とサハラ以南のアフリカを渡るメンガタスズメ属の蛾(ヨーロッパメンガタスズメ、death’s-head hawkmoth、Acherontia atropos)の一匹一匹、個体ごとの飛行を追跡しました。
外を知らずに育てた蛾でちゃんと渡る
Menz氏らは研究室で蛾を幼虫から成虫になるまで蛾の各個体が「外を知らない」ナイーブな状態で育て、このナビ実験にチャレンジしてもらいました。
蛾の絶妙な夜間飛行術
夜、海を渡った蛾たちは、好ましい追い風の時は高空をゆっくり飛び風が運ぶに任せますが、向かい風や横風の場合は地表近くの低空を速度を上げて飛び正しい航路をキープしました。長らく小さな昆虫が渡るときは「風まかせ」だと思われてきましたから、驚きの発見なんです。
蛾はナビって正しい航路を取っている
この蛾たちは強い風や高い山に面しても正確なコースを外れないよう飛行を調整が出来ることが分かりました。これらの蛾は単に正しい方角に飛行するのではなく、内在性の地図とコンパスによる能動的な航法をとっていることが分かりました。
出典:” Individual tracking reveals long-distance flight-path control in a nocturnally migrating moth” MYLES H. M. MENZ et al. SCIENCE 11 Aug, 2022 Vol 377, Issue 6607, pp. 764-768, DOI: 10.1126/science.abn1663
出典:”Study achieves longest continuous tracking of migrating insects” Max Planck Institute of Animal Behavior, news, August 11, 2022
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(移行期種族のジェット艦載夜戦シ―ベノム;英国ロンドン郊外RAF博物館にて)
海を越える蛾を追うハイテク
海を越えて大陸間飛行する蛾がいます。それも夜に、ただ風に流されるのではなく、時に向かい風にも抗いながら、正確なナビで目的地に向かいます。超小型のバイオロギング器材でそのナゾに迫るサイエンス小ネタです。
(バイオロギング(Bio-logging)って?:動物に装着して動物自身がデータを集める記録計や調査方法(ウィキペディア記事より))
バイオロギングの過去記事です↓
「ご自宅拝見」バイオロギングで垣間見る動物の私生活+南ブルターニュ、キブロン
海のトップスイマー、マグロでも、陸のママチャリ並みです、バイオロギングその2
空飛ぶ者たちを追う愉快なローテク;バイオロギングその3
「空賊」グンカンドリ、バイオロギングが明かした空中生活
バイオロギングが明かすアマツバメの10か月ほぼ空中生活+南イタリアのソレント

(究極のレシプロ夜戦NF30ではないけどDHモスキート;英国RAF博物館)
最強夜戦、取敢えず夜戦、転職夜戦、純製夜戦・・さまざま
読者の皆さまにはバレバレですが、夜空を長駆飛ぶと言えば・・・と、Levalloisbeeが出逢った夜戦のフォトを添えます。夜戦と言えば、取敢えずのお試し夜戦ブレニムやボストン、夜戦でも大活躍モッシーとボー、夜戦転向でやっと活躍Bf110、満を期しての本命なんだけど・・のウーフー、ブラックウィドウなど。

(今回の主役、ヨーロッパメンガタスズメ;ウィキペディア記事からお借りしてます)
♪Love is a mystery ・・・ 光る海を越えるわ~♪
・・・と小さな体で広大な夜の海を渡る蛾がいます。今回の主役、メンガタスズメ属の蛾、ヨーロッパメンガタスズメ Acherontia atroposです。

(デファイアントの前で演じる1分の1フィギュア;RAF博物館名物です)
渡りの極致、両極を往復するキョクアジサシ
長距離の渡りをする動物は多くいます、極めつけは両極を往復するキョクアジサシ。オオカバマダラなど昆虫も長距離を渡ります。しかし、その渡り飛行のモニタリングは至難の業でした。
動物の渡りの過去記事です↓
オオカバマダラ蝶は鱗粉が作る渦で4千kmを渡る+パリ郊外原っぱのヒコーキたち
小さな日時計ジオロケーターが明かす小鳥の渡り生活みなとヨコハマ
虫レーダーが捉えたハナアブ数10億匹の渡り、追い風に乗り英仏海峡を行く
灼熱の砂漠の昼間は高空を渡るオオヨシキリ+南仏ニース、マントン

(ボーファイターNF1実機の半スケレトン;RAF博物館)
虫の渡りは依然としてナゾです
広大な距離の渡りを行う多くの動物種がどのようにナビ(航法)しているのか、ほとんど分かっていません。特に小さな無脊椎動物(の渡り)をモニターするのは至難の技でした。

(リヒテンシュタインレーダーでカマキリっぽいBf110;RAF博物館)
研究者は夜戦パイロット
出典著者のMyles H. M. Menz氏らドイツのマックスプランク研究所(動物行動学、MPI-AB)の研究者はセスナ機で蛾が発信する電波を追います、レーダー波を追う夜戦パイロットのように。

(夜戦型もあった初のジェット戦Me262;RAF博物館)
親から子へ孫へ・・とバトンを繋ぐ大移動
同じ蛾のオオカバマダラもそうですが、小さな短命の昆虫にとって海を越え大陸を跨ぐ移動は幾世代もがバトンを繋ぐ旅です。

(機首がすっかり変わったJu88夜戦;RAF博物館)
多くて小さくて1匹ずつは追えない
広大な距離の渡りを行う多くの動物種がどのようにナビ(航法)しているのか、ほとんど分かっていません。特に小さな無脊椎動物(の渡り)をモニターするのは至難の技でした。集団の旅の様子は分かっても1匹1匹の個体のナビは分からなかったのです。従来の追跡装置(バイオロギング)は蛾が小さすぎて(軽すぎて)使えませんでした。
超軽量のタグ
ところが、新たなテクノロジーによる動物に装着できる超軽量、わずか0.2gのタグが新たな研究を可能にし、個体追跡により夜行性のガの長距離飛行経路制御が明らかになりました。ちなみにこのタグの重量は蛾の体重の15%ほどです。
蛾の航路を1匹ずつ追跡可能に
Menz氏らはこのようなタグを用いて欧州とサハラ以南のアフリカを渡るメンガタスズメ属の蛾(ヨーロッパメンガタスズメ、death’s-head hawkmoth、Acherontia atropos)の一匹一匹、個体ごとの飛行を追跡しました。
外を知らずに育てた蛾でちゃんと渡る
Menz氏らは研究室で蛾を幼虫から成虫になるまで蛾の各個体が「外を知らない」ナイーブな状態で育て、このナビ実験にチャレンジしてもらいました。
蛾の絶妙な夜間飛行術
夜、海を渡った蛾たちは、好ましい追い風の時は高空をゆっくり飛び風が運ぶに任せますが、向かい風や横風の場合は地表近くの低空を速度を上げて飛び正しい航路をキープしました。長らく小さな昆虫が渡るときは「風まかせ」だと思われてきましたから、驚きの発見なんです。
蛾はナビって正しい航路を取っている
この蛾たちは強い風や高い山に面しても正確なコースを外れないよう飛行を調整が出来ることが分かりました。これらの蛾は単に正しい方角に飛行するのではなく、内在性の地図とコンパスによる能動的な航法をとっていることが分かりました。
出典:” Individual tracking reveals long-distance flight-path control in a nocturnally migrating moth” MYLES H. M. MENZ et al. SCIENCE 11 Aug, 2022 Vol 377, Issue 6607, pp. 764-768, DOI: 10.1126/science.abn1663
出典:”Study achieves longest continuous tracking of migrating insects” Max Planck Institute of Animal Behavior, news, August 11, 2022
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