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アルミニウムの鎧で推進1万mの超高圧を凌ぐヨコエビ+フランスのシーフード・グルメ

アルミニウムの鎧で推進1万mの超高圧を凌ぐヨコエビ
+フランスのシーフード・グルメ

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カイコウオオソコエビREVdownsize
海洋研究開発機構が超深海で見つけたヨコエビ
今回のサイエンス小ネタの主役の端脚類ヨコエビ(amphipod)の仲間、カイコウオオソコエビ(Hirondellea gigas)は日本海溝で新種として見つかった殻を持つ小さな甲殻類です。1995年、日本のJAMSTEC(海洋研究開発機構)の無人探査機「かいこう」によりマリアナ海溝チャレンジャー海淵、深度10920mで初めて採取されました。
このカイコウオオソコエビが登場する過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
日本近くの深海は汚染ゴミためって知ってました+サイパンの海




Rouenノルマンディーのオマールは絶品REVdownsize
(北仏ルーアン(Rouen)にて、ノルマンディーのオマールはやはり絶品)
フランスのシーフード・グルメ
・・のフォトを添えます。エビつながり??くらいしか思いつかなかったので・・・。
フランスのシーフードの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
昔トウガラシは辛くなかった湿地のカビ対策でスパイスに+北フランスで出会ったシーフード
予測可能な資源が競争と協力を生みヒト社会を繁栄に導いた+フランスのシーフードグルメ


水深1万m、殻も砕ける超高圧の世界
水深1万mを超える深海は超高圧の世界です。そんな高圧ではエビのような殻を持つ生物は殻が水圧に耐えられず潰れてしまうはずです。

アルミニウムの鎧をまとったカイコウオオソコエビ
そんな環境にも拘わらず体長4~5cmの小さなエビのような深海性のカイコウオオソコエビが棲んでいます。水深1万mでも殻が潰れずにすむカイコウオオソコエビの秘密はアルミニウムの鎧にあります。

Arcachonムール貝クリームソース Art16 downsize
(大西洋岸、嵐のアルカション(Arcachon)にて、ムール貝クリームソース、温まりました)
アルミニウムのゲルが超高圧から守る
アルミニウムと言ってもゲル化する水酸化アルミニウムで、このゲルが殻を守っているようです。(ゲル:寒天のように水を含んだスポンジのような構造)。
出典著者のJAMSTEC小林秀樹主任研究員らは同じマリアナ海溝チャレンジャー海淵のカイコウオオソコエビを更に調べて明らかにしました。


殻をアルミニウムのゲルがコーティング
出典著者の小林氏らの研究の結果、カイコウオオソコエビの殻(外骨格)には炭酸カルシウムとともにアルミニウムが含まれていました。アルミニウムは、アルカリ性の海水中で水酸化アルミニウムのゲルに変化して殻の表面をコーティングし水圧から守っているようです。

Saint Maloホタテの一皿REVdownsize
(北仏サンマロ(Saint Malo)にて、ホタテの一皿)
アルミニウムはどこから?
でも、ちょっと待って、そのアルミニウムはどこで手に入れたの?海水にはアルミニウムはほとんど含まれていないからです。


深海底の泥はアルミニウムが豊富
地上の土や岩と同じように深海底の泥にはアルミニウムが豊富に含まれています。酸性条件下で泥に含まれるアルミニウムは有機物と反応して生き物が利用できるかたちになります。

Menton絶品のムール貝のパスタ downsize
(南仏マントン(Menton)にて、絶品だったムール貝のパスタ)
泥のアルミをゲルにした鎧の2重の働き
カイコウオオソコエビは深海底の泥からアルミニウムを摂取して水酸化アルミニウムにします。そして水酸化アルミニウムのゲルがカイコウオオソコエビを水深1万m超えの超高圧から守っているようです。更に殻の炭酸カルシウムが溶け出してしますのも防いでいるようです。

役に立つ水酸化アルミニウム
それにしても寒天や豆腐の仲間のゲルが超高圧から生き物を守るって不思議です。水酸化アルミニウム(Al(OH)3)は白色のゲルで医薬品(日局 乾燥水酸化アルミニウムゲルなど)や吸着剤に利用され、紙に添加すると燃えない「不燃紙」になり壁紙などに使われるそうです。

水深6000メートル超えの深海底だけに棲む
カイコウオオソコエビは水深6000メートルを超える超深海底だけに棲んでいて、北西太平洋の各海溝(マリアナ海溝、フィリピン海溝、ヤップ海溝、パラオ海溝、日本海溝、伊豆・小笠原海溝、カムチャッカ海溝)見つかっています。生態はまだナゾですが、深海に落ちてくる動植物の遺骸などを食べているようです。

まだまだ不思議がいっぱいの深海
深海はまだまだ私たちが知らないヒミツをいっぱい隠しているようですね。それにしても世界の深海生物研究をリードし、最先端をゆくJAMSTECってスゴイですね。

無人探査機「かいこう」
今回研究のもう一人の主役は深海無人探査機「かいこう」です。
JAMSTECのホームページ、無人探査機「かいこう」のウェブページには
「・<中略>・・初代である「かいこう」は、マリアナ海溝水深10,911mで底生生物の「カイコウオオソコエビ」の採取や、インド洋で熱水活動と熱水噴出孔生物群の発見などを行ってきました。」とありました。
「かいこう」のページのURLです。リンク貼っていませんのでコピペでご訪問ください
https://www.jamstec.go.jp/j/about/equipment/ships/kaiko.html


出典:”An aluminum shield enables the amphipod Hirondellea gigas to inhabit deep-sea environments” Hideki Kobayashi et al. PLoS ONE 14(4): e0206710. https://doi.org/10.1371/journal.pone.0206710
出典:”This shrimplike creature makes aluminum armor to survive the deep seas crushing pressure” Rachel Fritts Science 3 May 2019 Vol 364 Issue 6439 2019 doi:10.1126/science.aax8737
出典:海洋研究開発機構(JAMSTEC)ホームページ
出典:ウィキペディア記事「カイコウオオソコエビ」、「水酸化アルミニウム」


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過去の記事リストは下のイラストをクリック ↓ (日本国内と南の島の記事は「ヨーロッパの話題」にまとめています)
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テーマ : パリ、フランス - ジャンル : 海外情報

温暖化が招く早い春の訪れが鳥や昆虫を脅かしている+パリ5月バラ通り

温暖化が招く早い春の訪れが鳥や昆虫を脅かしている
+パリ5月バラ通り

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幾重ものバラのアーチが続くdownsize
(幾重ものバラのアーチが続く:パリのペレール大通りは中央分離帯がバラの公園です)
パリ17区バラの散歩道、ペレール大通り
早い春のお話につきパリのペレール大通り(le boulevard Pereire Sud)、バラのフォトを添えています。
ペレール大通りのバラの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
パリ「ばらの散歩道」ペレール大通り




アパルトマンとバラのアーチdownsize
(アパルトマンとバラのアーチ)
地球温暖化が進んで春の訪れが早くなる
地球温暖化が進んでいる現在、冬が開け、春が訪れる時期が早くなってきています。
「早い春」は、開花する、種子を実らせる、産卵する、巣作りをする、子育てする、渡りをする・・などの動植物の行動や生態のタイミングも早めているようです。

気候変動に生き物がどう適応してきたか、の過去記事過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
絶えず姿を変え生き抜いてきた、たくましい落葉樹林+フランスの秋アヌシー
温暖化で北上のビーバーが凍土を融かして温暖化を加速+カナダ首都オタワ
氷の底で繁茂する藻が極地の海を豊かに、でも温暖化で危機かも?+仏ブルターニュの港ロスコフ
列車に乗って高速進化、300年で3つの新種を生んだ黄色い花+庭の花
高速進化する大都会の生き物たち+ヨコハマの港と運河


ピンクのバラのアーチdownsize
(ピンクのバラのアーチ)
生き物たちのレスポンスはまちまちになる
しかし、「早い春」にどのくらい応答するのか?は生物種間で差が生じます。結果、捕食、受粉媒介、共生、寄生・・など、生物間相互作用にズレを生じることになります。

子育ての季節に餌がない
例えば、鳥が子育てする時期に本来餌になる昆虫の幼虫がいない、だって「早い春」で既に羽化してしまっているから、・・・のようなことが起こるようです。

出発はロータリーの公園のバラdownsize
(おさんぽの出発点ペレール交差点のロータリー小公園のバラ)
過去半世紀、269種の活動変化を調べる
出典著者James R. Bell氏らは1965年から2012年の間、英国の269種のアブラムシ、トリ、チョウ、ガの季節に伴う活動のタイミングの変化を、経度、緯度、高度など地理的要素、年ごと、季節ごとなど時間的要素、森林、雑木林、草地など生息域などを考慮して解析しました。

森だけでは守れない
湿気があり日陰もある森は「早い春」を緩和するのではないか?との希望的観測もありましたが、出典著者James R. Bell氏らの調査結果からは答えは「No」のようで、開けた土地と温暖化の影響に大差はないそうです。

バラのアーチを散歩する人downsize
(バラのアーチを散歩する人)
じゃ、北へ行こう
地球温暖化への生き物の対応は「早い春」だけではありません。棲息地を移すことも起こります。これまで棲んでいた所に近い気候環境を求め(北半球では)北に動植物は移動して新たな棲息地をも求めて移動しているようです。

北に行けない者たち、足並みが揃う訳じゃない
どのくらいのペースで棲息地が移るのか、にも生物種間で差があります。例えば、ヒトの農地を自然環境として依存して棲んでいる生物種は北に行けません。だって、温暖化で「早い春」が来ても作物や耕作地はすぐには大きく変化したり移動したりしないからです。

涼しい気候を好む農地の小鳥たちが消えた
出典The Guardian誌記事によれば、英国の集約的農地に棲む冷涼な気候を好む小鳥たち、マキバタヒバリ(meadow pipit)、コガラ(willow tit)、キタヤナギムシクイ(willow warbler)は英国南部から姿を消したそうです。行く場所がないのです。従来の考え方「鳥は地球温暖化に合わせて活動範囲(棲み処、渡り)を移して行く」とは相反する結果だそうです。

アパルトマンを背景にピンクのバラdownsize
(アパルトマンを背景にピンクのバラ)
引っ越し先が天国とは限らない
・・・ようです。棲息地の移動でも捕食、受粉などの生物間相互作用のズレが生じます。(北半球で)北に移動しても元の棲息場所と同じ条件の棲み処(ニッチ、生態的地位)が見つかるとは限らないので、往々にしてその種の個体数減少を招きます。

スケール効果もあります
出典The Guardian誌記事で英レディング大学Tom Oliver氏によれば、生息環境(あるいはテリトリー)が小さな、例えば、チョウならまったく違う土地に移ってもどこかに似た(ミクロの)生息環境を見つけられますが、より広い生息環境が必要な鳥は新しい土地で適した生息環境を見つけるのが難しいのです。

バラ見散歩の出発点ペレールの交差点downsize
(バラ見散歩の出発点ペレールの交差点)
年数回繁殖するチョウ、ついてゆけない小鳥たち
それにチョウは環境条件が良ければ1年の内に南海も繁殖し、ベニシジミ(small copper butterfly 、Lycaena phlaeas)など年に5世代も生まれます。一方、トリの繁殖時期は通常1年1回しかありません。


温暖化で新顔ノトンボたちがやって来た
もともと暖地に棲むトンボ、イトトンボは温暖化にうまく対応しているようで、19995年以降英国に11種が新たにやってきて棲みついたそうです。一方で寒冷地スコットランドに在来のイトトンボは危機の瀕しているそうです。

青空を背景に深紅の鮮やかバラREVdownsize
(青空を背景に深紅の鮮やかバラ)
何が出来るでしょうか? 庭でもいいんです
私たちに出来る行動とは?例えば、生垣、古い庭を残すなど、昆虫や鳥が棲めるような小さくとも自然の環境を残す、あるいは作ることである、と出典著者のJames R. Bell氏らや前述のOliver氏は述べています。

日本でも同じことが起こっている
もちろん日本でも同様な研究があり、出典著者樋口広芳氏らによれば温暖化は、植物の開花時期や動物の繁殖時期などを早め、生物を北方、高所へと移動させていますが、そのペースは種によって異なり、捕食、送受粉、種子散布などの生物間相互作用にずれや狂いが生じているそうです。

ロングラン・ミュージカルのように役者が入れ替わる
温暖化のように環境が変化すると生態系は移動して行きますが、ついて行ける種とついていけない種があります。その地の元の在来種との関係もあり、生態系の構成メンバーは必ず一部が入れ替わるようです、まるでロングラン・ミュージカルのシナリオや配役は同じでも演じる役者は変わってゆくように。

孵りに寄ったテルヌ通りのワイングッズ屋さんdownsize
(孵りに寄ったテルヌ通り(l'avenue des Ternes)のワイングッズ屋さん)
新しい生態系では外来種も大事なメンバーかも?
「早い春」と「北への移動」が起これば生態系は厳密には元に戻ることはないのです。このようにして新しく構築された生態系で生物間相互作用(餌を摂る、餌になる、受粉を媒介するなど)を果たし、然るべき生態的地位=生態系のなかでの役割を担う外来種も当然出てきます。
「外来種」だからと頭から毛嫌いせずに生態系メンバーとして受け容れることも必要なのかも知れません。


出典:”Spatial and habitat variation in aphid, butterfly, moth and bird phenologies over the last half century” James R. Bell et al. Global Change Biology 2019;1–13. DOI: 10.1111/gcb.14592
出典:”Earlier springtime disrupts insect and bird lives—and it’s worse than expected” Erik Stokstad Science Vol 364, Issue 6438
出典:”Bird species vanish from UK due to climate change and habitat loss” Damian Carrington The Guardian Wed 11 Jan 2017
出典:「温暖化が生物季節、分布、個体数に与える影響」 樋口広芳 ほか 地球環境 Vol.14 No.2 189-198(2009)

Bv Pereire 地図REV
(バラの散歩道、ペレール大通りの地図)

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忘れられてるけど逆ガル翼のユニークな練習機マイルズ・マスター

忘れられてるけど逆ガル翼のユニークな練習機マイルズ・マスター
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マスター飛行姿REV3訓練中
(マイルズ・マスター練習機はとっても蛇の目なお姿)
マイルズ・マスターって知ってます?
昔、マイルズ社(Miles Aircraft)って言うちょっと変わった、とんがった航空機メーカーがありました、英国に。合計5000馬力を駆り時速600km近くで標的を曳航する「標的曳航(専用)機」モニター(Monitor)(双発戦闘機Beau(ボーファイター)をも凌ぐ性能!)などを開発した航空機メーカーです。そのヒット作がM9マスター(Master)です。




イニシャルは「M」、マイルズ社は教育専門
マジスター(Miles M.14 Magister)、マスター(Miles M.9 Master)、マーチネット(Miles M.25 Martinet)、モニター(Miles M.33 Monitor)・・とマイルズ社が正式採用されたヒコーキは社名からでしょうか?みんなイニシャルは「M」です。そしてみんな練習機か標的曳航機、第一線でドンパチやることもなく幸せな?ヒコーキたちでした。

Master Mk 3 三面図REV2downsize
(マスターの三面図、逆ガル翼がユニーク、結構コンパクトです)
いかにも「蛇の目」なお姿、マスター
練習機なのに逆ガル翼、スキュア(Blackburn Skua)を連想させる変に立ち上がった風防、RAFお約束の「教官が一段高い所からダメ出し」出来る段差タンデム座席配置。でも風がキツイので教官席にはスクーターの風除けみたいなものが付いている。もう、あまりにも「蛇の目」な姿なのです、マスターは。
同じく蛇の目なベストセラー練習機タイガーモスの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
金色の蛾が作るトモダチの輪: Ferete Alaisエアショー その2

前身は最新鋭戦闘機にひけを取らない試作練習機
ただ1機試作され1937年初飛行のマスターの前身、マイルズ・ケストレル(Miles Kestrel)試作練習機は最高速度が毎時475kmも出て当時デビューしたばかりのハリケーンと比べても遜色ない性能でした。逆ガル翼、立ち上がった風防、オムスビ型垂直尾翼など弟分マスターを彷彿させるデザインです。

Duxford IWM博物館のマジスターその1REVdownsize
(マスターの兄貴分、マジスター初等練習機
:英国ケンブリッジ工大DuxfordのIWM博物館で出会いました)
第二次大戦前夜にデビュー、即部隊配備
マイルズ・マスターは当時、速度や運動性など最高性能の高等練習機だったので、1939年に初飛行後、即、正式採用。第二大戦前夜の同年1939年には部隊配属デビューしました。まだ弱小メーカーだったマイルズ社の意気込みもあり、また、きな臭くなってきた国際情勢が後押ししたようです

時代ニーズにバッチリ、新興メーカーのクリーンヒット
大急ぎで近代化中のRAF(英国空軍)にとって、当時最先端戦闘機だったハリケーンやスピットファイアのためのパイロットを養成するには、もう複葉機じゃない!ハイテク練習機が要る・・と、第一線戦闘機にひけを取らない高性能のマスターはバッチリとそのニーズにはまったみたいです。

ウィキペディア記事のマスター
(マスターの飛行姿)
国家の非常時、いっそ戦闘機に・・・
1940年、英国存亡の危機「バトル・オブ・ブリテン」のときには、マスターはその高性能を買われ「戦闘機になるんじゃない?」と、単座にして機銃8丁を付けた「マスター・ファイター」も作られました。実戦配備には至りませんでしたが。

戦時中3000機以上作られたのに・・・
そんなマスターなのに、今では、飛行可能な機体どころか、機体そのものも博物館に1機も残っていないそうです。


Duxford IWM博物館のマジスターその2downsize
(別の角度からのマジスター:なかなかかわいかったです)
兄貴分マジスターに会った
・・のです、昔、英国ケンブリッジ郊外DuxfordのIWM博物館で。マスターの先輩で愛称「マギー」。初等練習機ですが、1937年初飛行でもちゃんと単葉なんです。さすが、マイルズ社、そしてちょっとかわいい機体でした。

ライバル「ハーバード」に水を開けられた戦後
同世代ライバルのT6テキサン/ハーバードは、映画出演するは、今でもエアショーで編隊飛行してるは、で著名度が全然違うんですけど。今でも飛んでいれば結構カワイイ飛行機なんじゃないかな?マスターは。ところでこんなマイナーはマスターのプラモって今あるんでしょうか?
T-6テキサン/ハーバードの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
アリグモ擬態の危うい損得勘定+多芸なT-6テキサン/ハーバード
シジュウカラは単語ではなく文章でサエズリを理解する+練習機T-6テキサン/ハーバード再び


米国スターに座を奪われ、忘れられて・・
実際1941年頃からレンドリースでT6ハーバード(テキサン)が大量、潤沢に供給され始めると、マスターはお役御免、急速に引退してゆきました(そしてみんな忘れちゃたのかな?)。


マーチネット標的曳航機
(弟分マーチネット標的曳航機、ほとんどマスター Mk 4だけど)
転職先は世界初の標的曳航専用機、マーチネット
・・って、自慢になるかどうかは分かりませんが、マスターは「副業」で射撃標的やホットスパーなど練習グライダーを引っ張っていましたので「この際標的曳航機に転職する?」ってことで、姉妹機マーチネッㇳが誕生、1500機ほどが作られました。お姿はマスターにソックリです。

思い出してあげたいな
マイルズ社も、マスターもいかにも蛇の目で個性が強かったと思いますが、ちゃんとしたメーカーであり、ヒコーキでもありました。やっぱり、マスターに会ってみたいですね。

マスターの諸元(Miles Master MkI)
乗員: 2名
全幅: 11.88 m、全長: 9.27 m、全高: 3.05 m、機体重量: 2,527 kg
エンジン: ロールス・ロイス ケストレル715 馬力
最大速度: 毎時364 km、航続距離: 800 km
武装: 7.7mm機関銃 × 1丁


出典:ウィキペディア記事(和英)「マスター」、「マーチネット」、「マジスター」、「マイルズ・エアクラフト」
出典: 航空情報臨時増刊No.138「第2次大戦イギリス軍用機の全貌」昭和36年(酣燈社)


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カッコウナマズの託児所はシクリッドの口の中+フランスアルプス氷河湖アヌシー

カッコウナマズの託児所はシクリッドの口の中
+フランスアルプス氷河湖アヌシー

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Cockoo catfish 原典より
その名も「カッコウナマズ」?
アフリカの大地溝帯のタンガニーカ湖に棲む、その名もcuckoo catfish(Synodontis multipunctatus)、訳すと「カッコウナマズ」か?(以下、便宜的にカッコウナマズと呼びます)体長30cm弱の淡水魚です。




紅葉の中の愛の橋REVdownsize
(紅葉の中の愛の橋; フランスアルプスの氷河湖アヌシー湖畔)
幼魚をママの口の中で育てるシクリッド
同じくタンガニーカ湖に棲むシクリッドは、他の魚と違って、卵から孵った幼魚をママが口の中で育てます。口内保育(mouth brooding)と言います。
シクリッドの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
構造湖で高速進化したシクリッドたちの遺伝子のヒミツ
2つのアゴを持つ一芸に秀でた何でも屋シクリッド
オシッコのかけ合いで縄張り争いする魚シクリッド+北仏オンフルール


ティウー運河から見る愛の橋downsize
(ティウー運河から見る愛の橋)
シクリッドの口の中を託児所として乗っ取る
カッコウナマズ(cuckoo catfish)はその名の通りカッコウの托卵(brood parasite)のように自分では子育てせず、他人=他のサカナ、この場合は口の中で幼魚を育てるシクリッドのママの口の中を託児所として利用します、勝手に。

アヌシー湖上のシャトーdownsize
(アヌシー湖上のシャトー)
フランスアルプスの氷河湖アヌシー湖
成因は違いますが、同じく深く細長い氷河湖、フランス東部アルプスの麓にあるアヌシー湖(Lac d'Annecy)と湖畔の街アヌシー(Annecy)のフォトを添えます。
アヌシーの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
フランスアルプスの宝石アヌシー番外編
氷河が作ったアヌシー湖と氷河期を見つけたアガシ第2章アヌシー湖とルイアガシ
氷河が作ったアヌシー湖と氷河期を見つけたアガシ 第1章


運河べりの洒落たレストランはまだ準備中downsize
(運河べりの洒落たレストランはまだ準備中)
宿主の産卵を嗅ぎつけ同時産卵で紛れ込む
その托卵、幼魚を育むのを他人に任せる戦略は巧妙です。
まず、カッコウナマズ(cuckoo catfish)はシクリッドの産卵を臭いで嗅ぎつけます。カッコウナマズはシクリッドが産卵する時、素早く下に潜り込んで同時に産卵します(もちろんどちらもオスメス番の共同作業です)。


郷土色いっぱいのサヴォア料理レストランdownsize
(郷土色いっぱいのサヴォア料理レストラン)
シクリッドの口の中に紛れ込むカッコウナマズの卵
シクリッドのママは生んだばかりの卵をすぐに口の中に入れて孵化するまで守ります。このときドサクサに紛れてカッコウナマズの卵も口の中に吸い込ませてしまう戦略です。

堰を飾る花REVdownsize
(アヌシーの街中、堰を飾る花)
速く大きく育つカッコウナマズの幼魚
カッコウナマズの卵は宿主シクリッドの卵より1)大きくて、2)早く孵化する、ので、シクリッドの卵が孵るときに、ちょうど卵黄を使い切って、また、歯も生えて餌を摂れるようになります。
トリのカッコウと同じですね。


栄養を摂りながらライバルを消す、一石二鳥の戦略
カッコウナマズの幼魚の餌こそ宿主シクリッドの卵から孵ったばかりの幼魚。栄養を摂りながら、ライバルを消す巧妙な戦略です。

石のパッサージュのお店downsize
(アヌシー旧市街、石のパサージュのお店)
食餌時に口の中にジャ~ンプ!二段構えの巧妙な戦略
カッコウナマズの托卵、托幼魚の戦略は、カッコウをしのぐ、二段構えの巧妙なものです。
まず、卵で托卵。もし見つかって拒絶されてもカッコウナマズの幼魚は外でも育ちます。口の中で幼魚を育てている宿主シクリッドが餌を食べるときは幼魚たちを一旦吐き出して、再度を回収しますが、そのときにカッコウナマズの幼魚は“ジャンプ一発”で紛れ込むわけです。


サカナでは唯一の托卵例
トリでは100種近く托卵する種がいるそうですが、魚類では「カッコウナマズ」ことcuckoo catfishが唯一の例だそうです、今のところ。

小さな運河の眼鏡橋downsize
(小さな運河の眼鏡橋)
鳥のカッコウよりスゴイ「乗っ取り戦略」
カッコウなど托卵鳥に似ているだけじゃなく、カッコウナマズ(cuckoo catfish)それ以上のようです。
カッコウナマズは、1)宿主に拒絶されてもある程度育つ、2)当初、カッコウナマズの幼魚はシクリッドの卵や幼魚を餌にしたのかも知れない、3)それがたまたま口内保育の乗っ取りになったのかも?


托卵戦略の進化のプロセスを見てるのかも?
だから、このカッコウナマズ(cuckoo catfish)の托卵は「いかに寄生が確立されるか」までの進化の途上を見ているのかも知れない、と出典著者のReichard氏らは述べています。次の新しい発見につながるかも知れませんね。

出典:Early life-history features associated with brood parasitism in the cuckoo catfish, Synodontis multipunctatus (Siluriformes: Mochokidae)” Cohen MS, Hawkins MB, Stock DW, Cruz A. Philosophical Transactions of Royal Society B vol.374: 20180205. http://dx.doi.org/10.1098/rstb.2018.0205, 2019
出典:“Parasitic cuckoo catfish
exploit parental responses to stray offspring” Polacik M, Reichard M, Smith C, Blazek R. Philosophical Transactions of Royal Society B vol.374: 20180412, http://dx.doi.org/10.1098/rstb.2018.0412, 2019
出典:”This cuckoo catfish tricks other fish into raising its head chomping young” Elizabeth Pennisi Science 22 March 2019 Vol 363, Issue 6433 doi:10.1126/science.aax4235


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外来種って何?ホントに悪者?強制移住先で必死に生きてるのに

外来種って何?ホントに悪者?強制移住先で必死に生きてるのに・・・
~でも侵略的外来種は×、ダメですけど~

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庭の雑草タビラコREVdownsize
(庭の雑草タビラコ)
春のアスファルトの彩り
春、都会のアスファルトの道端に可憐な黄色いリング、はい、外来種セイヨウタンポポです。でも在来種を駆逐した訳じゃなくほかの植物が住めない、でも人の都会生活の場の環境で健気に生きてるだけなんですけど・・(もちろん無害)。そもそも強制移住させられて日本に来たんですけど・・・。




2冊の出典downsize
(2冊の出典)
2冊の本を読んで・・
・・・考えさせられましたね、外来種って何だろう?本当に悪者なんだろうか?実はヒトが壊した生態系を健気に修復してるのかも知れないかも?・・・と。で、この記事を書いております。

庭の雑草ヒメジオンREVdownsize
(庭の雑草ヒメジオン)
我が庭へのかわいい侵略者たち
猫の額の我が庭にも小さな侵略者が毎年芽吹きます。かわいい侵略者=雑草、のフォトを添えます。


庭の雑草その1downsize
(庭の雑草その1:名前が分かりません)
外来種が彩る風光明媚なスイスの湖
氷河湖であるスイスのマジョーレ湖は美しい自然豊かな観光地、別荘地です。マジョーレ湖とその湖畔にはたくさんの在来種に混じってたくさんの外来種が棲んでいて、生物多様性は豊かです。スイスアルプスに近い高所の湖なのに南国生まれのシュロが茂っています。

庭の雑草ネジバナdownsize
(庭の雑草ネジバナ)
ウィリアムソンの法則、千に1つの脅威
ウィリアムソン氏によれば「外からの侵入する種の1/10が生き残る、その1/10が定着する、その内、在来種など生態系に脅威となるのはその1/10。外来種を含む侵入種1000の内、999は何もしない。ただし、移入種が脅威となる比率は島嶼などではこれより高くなる」のだそうです。

本当に問題なのは侵略的外来種(IAS)
広く在来種を駆逐することで短期間に環境を大きく攪乱し生態系の多様性も低下させる侵略的外来種(IAS、Invasive Alien Species)はさすがに介入が必要ですが、1000分の999の外来種は「目の敵」にしなくてもいいんじゃないのかなぁ?
侵略的外来種の過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
湖底の環境DNAが語るウサギが生態系を変えたいきさつ+孤島アイスランド

庭の雑草ニワゼキショウREVdownsize
(庭の雑草ニワゼキショウ)
洪水の度に生物種が入れ替わるサンフランシスコ湾
洪水で絶えず生態系が一掃されてリセットされるサンフランシスコ湾は変化することで健全な生態系を保っています。本来外来種であったものが多いながら、貝類、鳥、魚、動物など豊かな、そして絶えず変化する生態系で、ラムサール条約で保全すべき沼沢地に登録されてもいます。

外来種の多くは復興パイオニア
既に荒廃している環境に外来種が棲みつくとその外来種は「環境破壊者」として無実の罪を着せられることがままあるそうです。強力な侵略的外来種など一部の例外をのぞき、攪乱を受けた環境にしか外来種は侵入しても定着出来ません。在来種が多様性のある安定した生態系を作っているところでは外来種の居場所(ニッチ)がないからです。攪乱された環境に外来種が棲むことでやがて在来種も含めた新しい生態系が出来ることもあります。

工場跡地の劣悪な環境を改善するたくましい外来種
ロンドンのテムズ川河口の古い火力発電所や工場の跡地は産業廃棄物の山。土壌はアルカリ性だし重金属も多いので生き物には厳しい環境です。ところが外来植物が元気に生えて、特にミヤコグサは窒素固定して土壌を改善、他の植物も生えるようになり、絶滅種のはずのコガネムシの1種など昆虫が600種以上見つかったそうです。やがて再開発されるまでのつかの間の豊かな生態系だそうです。
ミヤコグサの過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
「持ちつ持たれつ」マメ科と根粒菌の地中コミュニケーション+フランス各地の街角の花たち

庭の雑草その2REVdownsize
(庭の雑草その2:名前が分かりません)
白いネズミ君の「大脱走」
昔々、私、Levalloisbeeが学生だった頃、研究室のあった大学近くの地下街で「白いネズミ」が出没すると新聞記事になりました。ご明察通り、ネズミ君は大学の実験室から「脱走」した“勇敢な”実験動物だったようです。

生き物は必ず逃げます!!
いかに厳密に管理してもヒトが囲い込んだ環境から生物は逃げ出します。動物は逃げようとしますし。動かない植物でも種を体につけてトリが脱走の手引きをしてくれます。あなたはエイリアンに拉致されたら逃げますか?諦めますか?ほかの生き物も同じです。

庭は未知の世界へのジャンピングボード
ましてや、個人の庭に植えた美しい花(でもたいてい外来種)なら、チョウ、ガ、ハチなど受粉媒介者がよってたかって「遺伝子の脱走」を、また、小鳥や風が「種子の脱走」を毎シーズン手引きしています。

外来種大量高速フェリーサービス:バラスト水
今では国際協約があって外洋に捨てますが、船のバラスト水は海の外来種を異国の港に運ぶ「高速フェリーサービス」でした。ムール貝が有名ですね、おいしいし・・。

航空サービスもあります、虫さん、微生物さん向け
いかに人間が生物種の移送を規制、自粛、防御しても、例えば、ジェットストリーム(偏西風)はクモの子をはじめ多くの虫たちに「海外渡航サービス」を行っていますし、黄砂のPM2.5 は病原菌を含む微生物の小さな輸送パケットです。外来種侵入の完全阻止は不可能なのです。

顔パスで世界を股に渡り鳥
第一パスポートも持たず世界を股にかける渡り鳥はいったい「どこの在来種」で「どこでは外来種」なんでしょうか?キョクアジサシなんか毎年北極と南極を行き来してますし。

渡り鳥エアライン
渡り鳥自身も種や小さな昆虫、を羽にくつうけて、時には病原菌も遠く海を越えて運ぶエアラインの役割をしています。離島に初めて生える植物はほぼ鳥たちが“乗り物”です。
海洋島に生きものを運ぶトリの羽の過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
3つのWが運ぶ海洋島のユニークな生き物 生物地理学の冒険者2

庭の雑草タンポポREVdownsize
(庭の雑草タンポポ:セイヨウタンポポなのかどうかは「がく」が見えないので分かりません)
常に入れ替わり変化するのが生態系
今では、過去も現在も生態系にとっては常にメンバーが入れ替わり変化し、流動することがフツウの状態であると分かっています。
在来種と外来種がうまく折り合いをつけた生態系(たとえ新しい構成となっても)が目指すべきものなのかも知れません。


外来種と在来種のごちゃ混ぜでよみがえる新しい自然環境:New Wild
そもそも何が外来種かは人為的な線引きですし、長い時間軸で見ればそもそも在来種などほぼ存在しません。アマゾンにもアフリカにも「手つかずの自然」は無く、もはやヒトの影響を受けていない自然環境はほぼ無いと言われます(沿海以外の海は別として)。
出典著者Fred Pearce氏は「絶えず更新される自然に外来種はいちはやく乗り込み定着する。・・・私たちにとって不都合なこともあるが、自然はそうやって再野生化を進行させる。それがNew Wild」としめくくっています。


出典:「外来種は本当に悪者か?」 “The New Wild” 2015年 Fred Pearce氏著、藤井留美氏訳、岸由二氏解説 (2016年 草思社)
出典:「なぜわれわれは外来生物を受け入れる必要があるのか」 “Inheritors of the Earth” 2017年Chris D. Thomas氏著、上原ゆうこ氏訳 (2018年 原書房)


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地味に活躍した苦労人ブリストルボーフォート

地味に活躍した苦労人ブリストルボーフォート
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RAF博物館のボーフォートはツインワスプ装備のII型downsize
(RAF博物館で出会ったボーフォートはツインワスプ装備のII型)
ブレニム以上ボーファイター以下
英国老舗航空機メーカー、ブリストル社は高速ビジネス機ブリテンファースト(Britain First)をベースにして、ほんの一時「戦闘機より速かった」軽爆のブレニム(Blenheim)を開発しました。そのブレニムから派生したコースタールコマンド(英国沿岸航空隊)向けバージョンがボーフォート(Beaufort)です。でもボーフォートから開発された戦闘機ボーファイター(Beaufighter)が結局はコースタールコマンドの主力となってゆきました。そんな「ブレニム以上ボーファイター以下」の地味機ボーフォートのお話です。
ブレニム一家の過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
「イギリスが一番」は遠い日の夢 ブレニム一家の「風立ちぬ」
Beauよ君はホントに戦闘機か 前編 なんせ間に合わせなもんで
Beauよ君はホントに戦闘機か 後編 いえ空のインディ・ジョーンズ





エンジンや魚雷でえらい苦労の初期のボーフォート I 型
(エンジンや魚雷でえらい苦労の初期のボーフォート I 型)
コースタールコマンド新人三羽烏
大戦前の1930年代後半、旧式複葉機ばかりのコースタールコマンドの近代化を図るため近代的新型機3機種が一挙導入されました、ラーウィック、ボウタ、そしてボーフォートです(この3機種ともご存知なら相当な蛇の目ファンですね)。

期待の星じゃなかったけど「期待」がコケた
当初ボーフォートはあまり期待されず配備先は二流の海外植民地が予定され、英本土の海を守る本命「期待の星」はボウタでした。ところが、ボウタは見事な駄作機、急遽ボーフォートが英本土と海外の両方で第一線に立ちました。あ、そうそう、双発飛行艇ラーウィックも見事な駄作機でしたが、幸い米国生まれのカタリナが穴を埋めました。
両方とも岡部ださくさん(本当はいさくさん)の「世界の駄っ作機」に晴れて取り上げられています。


横から見たRAF博物館のボーフォートdownsize
(横から見たRAF博物館のボーフォート)
ボーフォートのお仕事はシーレーン防衛
第二次大戦頃の英国には空軍にコースタールコマンド、沿岸航空隊があって「大英帝国圏」の各植民地の防衛と本国と植民地との間のシーレーン防衛が主務でした。

陸攻とはコンセプトがまるで違うRAF(英空軍)陸上雷撃機
コースタールコマンドは哨戒機とは別に陸上雷撃機なる機種も配備していて、ボーフォート雷撃機の任務は自国シーレーンを脅かす艦船の排除と敵の船舶を攻撃して敵のシーレーンを断つことでした。戦艦や空母を狙った一式陸攻とはまるでコンセプトが違います。

ボーフォート I型 II型と幻の地中海スキーム
(ボーフォートI型からII型へのヴァージョンアップ、幻の地中海スキームはある?)
クリーンヒット!グナイゼナウを廃艦に追い込む
戦艦でもグナイゼナウは通商破壊戦が任務なのでコースタールコマンドの宿敵。ブレスト港停泊中に雷撃したボーフォートの魚雷で戦闘不能に、最後は廃艦になりました。

疫病神トーラス・エンジン、救世主ツインワスプ
実はボーフォートも危うく「駄っ作機」になるところでした、初期のトーラス・エンジンが不調で。なりふり構わずRAFは実績のある米国製ツインワスプ・エンジンに交換してしのぎました。

生存率17%の過酷な現実
欧米の空軍では出撃回数や飛行時間で区切って勤務交替し、休暇をとらせたり、異動したりします。1942年頃のRAF勤務交替の区切り200飛行時間の搭乗員生存率は概して高くないのですが、陸上雷撃機(=ほとんどボーフォートのこと)は特に酷くてたったの17%でした。

出来の悪い魚雷でエライ苦労、大損害
その原因は、最先端だった日本の酸素魚雷と違って初期の英米の魚雷は出来が悪く、遠くまで届かず、真っ直ぐ走らず、減速してそっと落とさないと壊れる、という代物。対空砲火でハリネズミ状態のドイツ艦船に減速してから肉薄し魚雷を落とすから、そりゃ大きな損害が出るわけです。

ブレニム一家
(ブレニム一家(再掲))
無名の激戦、地中海シーレーンの戦い
そんな悪条件下でもボーフォートは大戦初期の地中海戦線じゃ唯一の雷撃機(夜だけ飛ぶソードフィッシュもいたけど)。シーレーンの戦いでは一手に矢面に立って奮闘しました。地味で無名ですけど。

ボーフォートからボーファイターへdownsize
(ボーフォートからボーファイターへ)
トーボーが来るまでの我慢!唯一の陸上艦船攻撃機として・・・
地中海戦線のRAFコースタールコマンドのたった3飛行隊、第47 中隊、第217 中隊、第39中隊のボーフォートはトーボー(雷撃機型ボーファイター)が配備されるまで唯一の陸上艦船攻撃機として必死で戦い、戦局を変える働きもしています、知られてないけど。

ブレニム一家総出で戦いロンメルを破る
1942年10月エルアラメインの戦い前夜、補給路を断たれたロンメルの最後の望みの船団がイタリアを出港しました。北アフリカとマルタ島のRAFコースタールコマンドは総力をあげてこの船団を地中海上で攻撃し殲滅し、結局ロンメルには何も届かず、やがてエルアラメインで敗走します。
この無名の地味な海上襲撃戦にはブレニム一家が総出で戦いました、ブレニムV(ビスレイ)、ボーフォートIそれにボーファイター1Cです。


本命II型の役立った八木・宇田アンテナ、役立たない機種下銃座
ボーフォートもツインワスプ・エンジン装備のII型になると機体のあちこちに八木・宇田アンテナを付けてASV対艦レーダーを装備、対艦攻撃に大いに役立ちました。背部砲塔も改良。防御が弱いからとI型シリーズ2で機首下に遠隔照準銃座を新設するもまったく役立たず、代わりに現地で機首固定武装が強化されたりしています。ボーフォートはII型になってやっと本来のコンセプトで活躍できる機体に仕上がりました。

弟、ボーに職を奪われ豪州では輸送機に転職
でもそのうちに、ボーフォートから発展した弟分、ボーファイターが潤沢に配備されるとボーフォートは一線から退き、多数ライセンス生産されたオーストラリアでは輸送機に転職しました。

傑作機じゃないけど敢闘機なんじゃない?ボーフォート
ボーフォートは傑作機でも殊勲機でもなく地味で初期はつまずきましたけど、岡部さんも書いておられるように、苦しい局面でよくやったんじゃないでしょうか?「敢闘機」ですかね。

幻?のブルー・スリー・トーンの地中海衣装
そんな地味なボーフォートなのでプラモはスペシャルホビーの1/72のものがあるくらいでしょうか?昔はフロッグの1/72もあったかと思いますが。それでも地中海ブルー3トーン迷彩(上面ダークとミディアムのメディタレイアン・ブルーに下面エイザー・ブルーの)のボーフォートがいたかも?で作ってみたいのです。実際、ブレニムIVやカタリナにはこのスキームがありますし。

ボーフォート(Beaufort Mk. I)の諸元
1940年頃の1000馬力級双発機としてはまずまずの性能です。
乗員:4名
全幅:17.63m、全長:13.46m、全高:4.34m、翼面積:46.73平方m、翼面荷重:206kg/平方m
全備重量:9,629 kg
エンジン:ブリストル トーラス(Bristol Taurus) II, III, VI, XIIまたはXVI、1130馬力×2基
最大速度:毎時420 km、航続距離:2,600 km、上昇限度:5,030 m
武装:7.7 mm 機銃×7丁(機首・主翼固定3丁、背部砲塔2丁、側部・下部旋回各1丁)、爆弾(または機雷)907 kg、 または728kg魚雷1本


出典:“The Armed Rovers” 1995年 Roy Conyers Nesbit氏著 (Airlife Publishing出版)
出典:“The Bristol Beaufighter” 2002年 Richard A. Franks氏著 (SAM Publications出版)
出典:世界の駄っ作機 番外編 蛇の目の花園2 2010年 岡部いさく氏著(大日本絵画)
出典:ウィキペディア記事「ブリストル ボーフォート」「Bristol Beaufort」


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毒チョウがいないと擬態する無毒のチョウも毒を作りだす+春の庭の花

毒チョウがいないと擬態する無毒のチョウも毒を作りだす
+春の庭の花

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擬態する手本がいないと毒チョウになる
(擬態する手本がいないと毒チョウになる)
捕食者教育:「ド派手色模様は毒、食べるな」
毒チョウのQ(queen butterfly, ジョオウマダラ、Danaus gilippus)はオレンジと黑の鮮やかな「警告色」、ひどい味で一度食べてその毒のせいでひどい目にあった鳥(※)や捕食昆虫(カマキリなど)は二度と食べません。ちなみに毒と言っても致死的ではありません。捕食者は一度食べてヒドイ目に遭うけど生き残り、二度と食べないと学習します。(※:チョウを食べる鳥にはマヒワやホシガラスなどがいるそうです)
添えるフォトは今年の春、うちの庭に咲いてくれた花たちです





こぼれうめdownsize
(こぼれうめ:今春の庭の花)
毒チョウそっくりに化けてだます擬態
無毒のチョウV(viceroy butterflies、ヴァイスロイ、Limenitis archippus)は毒チョウQにそっくりの色模様で鳥をだます、いわゆる擬態です。毒チョウQをうっかり食べて学習した捕食者は擬態しているチョウVも食べなくなります。
毒チョウに擬態する過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
「毒入り」は嘘ぴょ~ん、遺伝子のドミノ倒しで作る蝶の擬態+フランスの看板

手本の毒チョウがいないと「脅し」が効かないけど
毒チョウQもこれを擬態するチョウVもフロリダ半島の山地に棲みますが、毒チョウQは半島南部だけで半島北部にはほとんどいません。一方、チョウVは半島全体に分布しています。
では、擬態する手本の毒チョウQがいない、つまり擬態しても鳥など捕食者に対して脅しの効果がない半島北部のチョウVはどうしているのでしょうか?


サクラソウdownsize
(サクラソウ)
フロリダ半島のチョウと餌植物を調べた
出典著者のKathleen L. Prudic氏らはフロリダ半島の毒チョウQとチョウVの分布と各々の毒化学物質の種類(南北でそれぞれ80匹を分析)、チョウQとVの幼虫が食べる植物の種類、毒成分、分布、またトリなど捕食動物の行動を調べました。

木瓜downsize
(木瓜)
手本がいないなら自身が毒チョウに
出典著者のPrudic氏らは、手本の毒チョウQがいないフロリダ半島北部のチョウVは自ら毒を作るようになっている(そのように進化している)ことを発見しました。

半島南北で違うローカルな進化
また、チョウQのいる南部ではチョウVは相変わらず無毒でした。つまりチョウVの毒チョウ化は「地域限定」のローカルな進化です。

水仙downsize
(水仙)
幼虫時代に毒の葉を食べ毒を貯める
でもそんなに簡単に毒を作れるようになるものだろうか?いえ、ゼロから作るのではなく、チョウVは幼虫のときに食べる毒のある植物の葉から毒を得ていることが分かりました。幼虫時代にせっせと毒を貯め、羽化すると「毒チョウV(viceroy butterflies)」になるわけです。
植物の毒戦略の過去記事はこれです↓(クリックで飛びます)
美しくも楽しい種子の本から学ぶ植物の毒戦略

チョウの分布は餌の植物次第
そもそも毒チョウQが半島北部にいない理由も北部にはその幼虫の餌になるwhite twinevine (Funastrum clausum)が生えてないからで、 チョウQも幼虫が半島南部に生えている餌植物white twinevineの毒を貯めこんで毒チョウになるそうです。

幼虫の餌植物が生えていればチョウも棲む
一方で、チョウVの幼虫の餌になる植物Carolina willow (Salix caroliniana)は半島全体に分布していて、チョウVも半島全体に分布します(北部が多いが)。しかし、毒を貯めて毒チョウになるのは、毒チョウQのいない半島北部のチョウVだけで幼虫は毒植物Carolina willowの葉も食べて毒を貯めるようになるようです。

材料があっても必要がないなら毒を貯めない
Carolina willowは半島全体に生えていて、同じく半島全体に棲むチョウVの幼虫の主な餌植物です。それでも北部のチョウVだけがCarolina willowの毒を貯めるようになったのは毒チョウQいないことに適応した進化です。たとえ材料が揃っていても毒をためて毒チョウになるのはコストがかかるのでしょう。


白梅downsize
(白梅)
食べ物が違うと毒化学物質も違う
外見はそっくりで(擬態してるから)、幼虫時代に毒を食べて毒チョウになると言う戦略も同じですが、毒チョウQと、毒チョウ化する北部のチョウVでは毒物質が異なります、幼虫時代に食べる毒植物の種類が違うからです。チョウQの毒はフェノール配糖体(phenolic glycosides)でチョウVの毒は揮発性フェノール類でした。
一見同じに見えても、チョウVは短期間に独自の種内のローカルな進化を起こして毒チョウに変身したわけです。


オオカバマダラは擬態の手本にならない
なお、フロリダ半島にはもう1種、オオカバマダラ(Danaus plexippus)という数千kmの渡りをする有名な毒チョウがいます。チョウVはオオカバマダラにも似ているのです。しかもフロリダ半島に渡って来るときオオカバマダラは南北を問わず分布します。ところが、オオカバマダラが棲むのは平地で毒チョウQやチョウVが棲む山地にはいないため、半島北部のチョウVにとっては「擬態するにも手本の毒チョウがいない」という状況は変わらないそうです。

質問:「元々毒チョウでは?」「いいえ、無毒の系統」
ところで1つ疑問が沸きませんか?「チョウVが元々毒チョウでチョウQと同じ場所に棲むようになって毒を貯めるのを止めて代わりに擬態するようになった」と考えてもこの結果は説明できるのでは?、と。それに「元々毒チョウなら初めから黒とオレンジのド派手な体色で擬態も簡単だった」とも。でもチョウVの系統の他のチョウの研究から元々もチョウVは無毒のチョウの系統だったそうです。


出典:”Mimicry in viceroy butterflies is dependent on abundance of the model queen butterfly” Kathleen L. Prudic et al. Nature Communications Biology vol.2, Article number 68 (2019)
出典:”Tasty butterflies turn sour without toxic wingmen” Jake Buehler Science 8 March 2019 Vol 363, Issue 6431

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ネズミも眠りは大切、眠らないと脳の指令が滞り心筋梗塞になりますよ+みなとみらいの夜

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睡眠不足でネズミ君は動脈硬化に
(睡眠不足でネズミ君は動脈硬化に)
動物にとって眠りは餌にも恋にも優る大事なもの
ほぼすべての動物が眠ります。寝ている間は敵に襲われやすく、餌も摂れず、恋の相手も探せないのに!です。だから眠りはきっととっても大切なんだろうな、動物にとって。




ネズミ君、眠らないと動脈硬化を起こします
ネズミ君にとっても眠りは大切、眠らないと動脈硬化が進み、血栓ができて、脳梗塞や心筋梗塞になるリスクが高まります。ヒトもそうかも?と言うサイエンス小ネタです。
眠りの過去記事です↓(クリックで飛びます)
睡眠不足で脳にゴミが溜まりますよ+パリ、セーヌ再び
眠りは脳の閉店後のお仕事、眠りと夢の科学の続き+黄昏、宵闇のパリ


夜空に白があでやかな日本丸日本丸downsize
(夜空に白があでやかな日本丸)
ハマのみなとの夜
ま、眠りのお話と言うことでヨコハマみなとみらいの夜景を添えます。
ヨコハマの過去記事です↓(クリックで飛びます)
ハイカラな不死鳥ハマの港の歴史に触れる博物館+ハマの寸景
ヨコハマたそがれ青い回廊といずもと飛鳥
プレート“おしくらまんじゅう”で出来た「かながわの地」+横浜散歩番外編
ハマの新開地朝の散歩で見つけたもの司馬さんを辿って


ハードロックカフェの夜downsize
(ハードロックカフェ、ハマの熱い夜)
2分に1回バンブーダンスじゃ眠れやしない
眠りの働きを調べるには強制的に眠れないようにする(断眠)条件で影響を調べます。ネズミ君のお家(飼育ケージ)の床を2分に1回棒が横切りネズミ君の足に当たる、その度に起こされたネズミ君はずっと「バンブーダンス」を踊り続ける実験条件です(これが一番優しい断眠だそうで、以前はプールで泳がせたりしたそうです)。でもこれじゃ眠れないですよね。

ネズミ君を眠らせない(断眠)と動脈硬化に
遺伝的に動脈硬化を起こしやすい系統のマウスをこのような仕掛けで眠らせないようにすると、動脈硬化(※)がひどく進んでしまいました。このまま行けば心筋梗塞や脳梗塞を起こします。
(※:血管壁にコレステロ-ルが溜まったプラークの大きさでアテローム性動脈硬化の進行度をみています)


ジャックの塔夜の顔downsize
(ジャックの塔は夜の顔)
代謝、体調そして睡眠も司る視床下部
これは一体どうゆうつながり何だろう?脳の底辺りに視床下部(hypothalamus)と言う部位があり、食事、代謝、血圧など体調のバランス(ホメオスタシス)を司ります。そして睡眠も、のようです。

青い回廊大さん橋downsize
(青い回廊、大さん橋)
マウロファージはコレステロールを食べる掃除屋さん
血液中の血球は骨髄で造られますが、その1種、単球(monocyte)から成熟したマクロファージ(macrophage)は病原菌や老廃物を食べる貪食細胞で本来の働きはガードマンで掃除屋さんです。

コレステロールが多すぎるとマクロファージは悪者の変身!
マクロファージは血管壁のコレステロールも食べて掃除し、高速道路の道路補修車みたいな働きです。でもコレステロールが溜まりすぎていると掃除しきれず血管壁に潜り込んで「泡沫細胞(foam cell)」に化けてコレステロールをどんどん溜めてプラーク(plaque)になり、アテローム性動脈硬化の原因になります。道路工事で通行止めだらけになって高速道路がマヒするみたいにです。

「血は夜飲みます」じゃなくて「血は夜造られる」
「血は夜飲みます」それはドラキュラ、じゃなくて、血は骨髄で夜の間に造られます。だって起きている昼間は体の色々な臓器が忙しく燃料(グルコース)や材料(アミノ酸、タンパク質)が手一杯だから

みなとみらい遠望downsize
(みなとみらい遠望)
「夜間操業命令書」ヒポクレチン(オレキシン)
そこで体の代謝などをコントロールする司令部「視床下部」から「骨髄が血を作るのは夜間操業だけにしろ」と命令書が出されます。その命令書がヒポクレチン(オレキシン)(hypocretin (orexin))と言う神経ペプチド(アミノ酸がいくつかつながった信号物質)で食欲を高め、覚醒状態にします(要するに「起きている」状態)。

視床下部から命令書で骨髄は夜だけ働く
活動期の昼(夜行性のネズミ君の場合は夜)は視床下部からヒポクレチンが出ますが睡眠時の夜(ネズミ君では昼)になると出なくなるので骨髄の生産制限が解除され血の血球成分(赤血球、白血球、血小板(の素)、リンパ球(の素)など様々な血球)が生産され明日に備える訳です。

ところが、不眠になると骨髄は24時間操業になる
ところが、断眠で不眠になるとヒポクレチンが出ない=骨髄は24時間操業になる→すると余計な分の血球が出来る、訳です。

ぷかり桟橋のライトアップdownsize
(ぷかり桟橋のライトアップ)
余剰生産の血球が血管で悪者に変身して動脈硬化が進む
その余分にできる血球の中に免疫細胞の単球があり、マクロファージに育ちます。今回出典著者のCameron S. McAlpine氏らが使ったマウスは動脈硬化を起こしやすい系統なので、もともとコレステロールが多いのです。断眠で増えたマクロファージが血管やって来ると悪者の「泡沫細胞」に変身し、動脈硬化がかえって進行してしまいました。

断眠すると単球(マクロファージ)が増えた
出典著者のMcAlpine氏らの「バンブーダンス」断眠実験では、実際に血液中の免疫細胞である単球(Ly-6Chigh monocytes、マクロファージの素)や好中球が増えていたそうです。また、ヒポクレチンが遺伝的に造れないマウスでは血液中の免疫細胞が多いそうです。

生産制限指令書ヒポクレチン注射で動脈硬化がマシになった
更に出典著者のMcAlpine氏らは断眠した動脈硬化を起こしやすいマウスに視床下部からの生産制限指令書であるヒポクレチンを注射すると今度は動脈硬化が抑えられたそうです。

指令書ヒポクレチンを受け取るのは単球生産を促す細胞だった
骨髄には「指令書」ヒポクレチンを受け取る機能=受容体、があるはず、そこで調べてみると、やはりヒポクレチン受容体(hypocretin receptor)を持ち、単球などの生産を促す物質CSF-1(colony stimulating factor 1)を出す細胞があったそうです。

脳が骨髄の血球生産量をコントロールしている
つまり、脳の視床下部から→ヒポクレチンが出て→ヒポクレチン受容体を持つ細胞が受取り、→単球の生産を促すCSF-1を出さなくなり→活動期(ヒトなら昼、ネズミ君なら夜)には骨髄で単球生産が控えられます。脳が骨髄の血球生産量をコントロールしている訳です。

睡眠不足で動脈硬化に、「風が吹けば桶屋が儲かる」話
ところが、睡眠が不足するとヒポクレチンが出ない→・・・→骨髄でも単球生産が止まらない→そしてもし、コレステロールがもtもと高いと血管壁で泡沫細胞になり→動脈硬化が進む、と言う訳です。これはまだ出典著者のMcAlpine氏ら学説ですが・・・。

ヒトでも睡眠不足は動脈硬化を招くみたい
別のJose Ordovas氏らの臨床研究では、ヒトでも睡眠不足だと動脈硬化をより惹き起こし易いそうです。ネズミ君で見つかったことが必ずしもヒトにも当てはまる訳ではありませんが、今後の動脈硬化改善、心筋梗塞や脳梗塞の予防の新たな治療法につながるかも知れませんね。

出典:“Sleep modulates haematopoiesis and protects against atherosclerosis” Cameron S. McAlpine, Nature volume 566, pages383–387 (2019)
出典:“Poor sleep could clog your arteries. A mouse study shows how that might happen” Kelly Servick, Science 1 March 2019 Vol 363, Issue 6430 doi:10.1126/science.aax0042
出典:知りたいサイエンス「動物はいつから眠るようになったのか?」2018年、大島靖美氏著(技術評論社)


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